ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『大丈夫であるように---Cocco 終らない旅---』

2008-10-22 23:51:50 | 新作映画
「まいったなあ。
これ、どこから話せばいいんだろう。
他の映画とはあまりにも違いすぎる」

----どういうこと?
Coccoのドキュメンタリーなんじゃニャいの?
あっ、そうか。
えいはCoccoのことあまり知らないんだよね。
「うん。
だってフォーンが彼女のこと
『暗い』と言っていたし、
リス●カッ●などの噂も聞いていたし、
なんか血の匂いがするような暗さなのかと
ちょっと敬遠していたんだ。
ところが観てみてビックリ。
喋る喋る。
いったい、この人のどこが暗いの?」

----だから、えいは分かっていないんだよ。
暗いというのは、そういう意味じゃなく
内省的ということ。
「それなら分からない気もしないでもないな。
でも80年代に『暗い』という言葉が
否定的に使われたのがそもそもの間違いだね

----自分の内面から出たものを
そのまま音楽にしているって感じだよね。
「うん。
ただ最初は
Coccoという人、なんて涙もろいんだと…・。
ところが観ているうちに次第に考えが変わってきた。
彼女は痛いほどにセンシティブで
悲しいほどにピュア」

----いまごろ、それに気づいたわけね。
ところでこの映画、<旅>となっているけど
どんな<風景>が収められていたの?
「昨年、14番目のシングルとなる「ジュゴンの見える丘」を発表したCocco。
それは米軍基地移設予定の海・辺野古に
2頭のジュゴンが現れたことに喚起されて生まれたもの。
そんなある日、Coccoは青森の女性から一通の手紙をもらう。
そこには六ヶ所村の核再生処理施設のことが書かれていた。
そう、自分たちウチナンチューと同じ痛みを抱える人が
日本中にはたくさんいたわけだ。
青森のコンサート会場。
Coccoはファンの前で泣きながら詫びる。
それまで沖縄に生まれ育ったことで被害者と思っていた自分たちも
実は同じように知らずに何かをしてしまっていたことを……」

----ニャるほど。
「もちろん、Coccoの演奏シーンもたくさん含まれてはいるけど、
カメラが捕えるのは圧倒的に彼女の“言葉”。
その一つひとつを聞き漏らすまいとする監督・是枝裕和の気持ちが
これまた痛いほどに伝わってくる」

----えっ、監督は是枝裕和ニャの?
「そうなんだ。
彼は言う。『泣きながらカメラを回したのは生まれて初めてだ』と。
でも、この気持ちは分からないでもないな。
『青い鳥』の村内先生の言葉を借りるなら
彼女の言葉はすべて『本気』。
だからこそ、とてつもない迫力で観る者の胸に迫ってくる」

----フォーンも、あとでYouTubeで
『ゴミゼロ大作戦』の映像を観たけど、
まるでキリストの生まれ変わりのように思ったよ。
「それはまたスゴい言葉だなあ。
でも確かに観ていて、
このCoccoという人、大丈夫かなという思いは抱いたね」

----撮影の間、彼女が口にしたのは伊平屋島産の黒砂糖のみ。
拒食症で入院したとか聞いたけど…・・。
「そうらしいね。
でも、ぼくが言いたいのはそういうことじゃない。
天から、ある才能と使命とを与えられた者だけが持つ
命を削っているような、あやうさが彼女にはあるんだ」

----!!!!!!
「映画的には、
ジュゴンが現れた辺野古の海を見下す丘で行なわれた
是枝監督のインタビューが秀逸。
それまではカメラのこちら側にいることに徹していた彼が、
生き急ぐかのように全力で走り続けるCoccoに、
『歌の中では“ゆっくり”と、みんなに言っている』と、やんわりと。
さすがだよね。
あと映画ファンにとって見逃せないのが
『もののけ姫』の<結末>に対するCoccoの言及。
彼女がライヴで訴えている『生きろ。』と併せて聞くと、
この言葉、より感慨深いと思うよ」


           (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「ニャんでも観ないと分からないのニャ」身を乗り出す

※ほんとうにビックリした度

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