ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『青い鳥』

2008-09-06 09:30:03 | 新作映画
----『青い鳥』って、メーテルリンクだよね。
幸せはすぐ近くにあったという……。
このプレスの表紙に載っている、
雨に打ち捨てられた机と椅子じゃ
それとはあまりにもイメージが違うけど……。
「じゃあ、そこから説明しよう。
この映画は 『きみの友だち』も評判を呼んだ重松清の連作短編集。
その表題作を映画化したものなんだ。
臨時教師、村内先生(阿部寛)と、
映画は、彼がバスに乗ってやってくるところから始まる。
カメラは彼の足や背中だけを写し、
教室に入って挨拶するまでその顔を写さない。
職員室で紹介されても、チャイムが始まると無言で教室へ」

----へぇ~っ。どういうこと?
「これは、おそらく彼の生き方を映像で表現しているものだと思う。
生きている時間を無駄にしてはならない。
彼は教師としてそのときそのときを
“本気”で生きているんだ。
この“本気”というのがこの映画のキーワードだね。
この学校では、どうやら以前にいじめがあって
一人の生徒が自殺未遂の後、転校したらしいということが分かる。
学校では生徒たちに反省文を何度も何度も書かせ、
“再出発”しようとしていた。
その一つに、悩みを生徒会に伝える『青い鳥ボックス』がある。
ところが村内先生は、教室にその生徒の机と椅子を運び込ませ、
毎朝、『野口君、おはよう』と挨拶する」

----うわあ、それって生徒たちが動揺しそう。
「うん。映画は、
なぜこの先生がそんなことをするのか?
ということを謎として提起し、
次第にそれが分かっていくというスタイルを取る。
不謹慎を承知であえて言えば、
ミステリー的スタイルで観る者を惹き付けるんだ。
そうそう、大事なことを言い忘れたけれど
この先生は吃音。
だけど、それゆえに発せられる言葉の一つひとつが
観ている者の耳にしっかりととどく。
こちらもその言葉を聞き漏らすまいと
一生懸命に耳を傾けるんだね。
そういう意味でも、これはきわめて映画的とも言える。
と、ちょっと評論家的に喋っているけど、
実は、この村内先生が最初に口を開いたその時点で
すでにぼくの涙はボロボロ。
クライマックスに向けて感情が盛り上がってくる映画というのはよくあるけど、
冒頭15分で泣いたというのは初めてだね。
それだけ阿部寛の演技は素晴らしいし、
そこで語られるセリフも心にしみる」

----どんなことを話すの?
あっ、それは言えないか……。
「うん。観る人の感動を奪うことになるからね。
でもプレスで紹介されている言葉を一つだけ。
それがきっかけで多くの人が観に行ってくれたら嬉しいし…。
『人は弱いから、強くなろうとする。
でも、強くなんて、ならなくていい。
頑張るだけでいいんだ。
今より少しでも、人の気持ちを想像するだけでいいんだ』。
実はこの映画には、もう一人の主人公がいる
野口が書いた遺書の中で指摘されていた
いじめた人の名前、
彼の親友だった園部真一はそれは自分ではないかと、
ずっと心を痛めている。
これは村内先生がそんな園部に語る言葉」

----園部はだれがやっているの?
「本郷奏多。『HINOKIO(ヒノキオ)』『テニスの王子様』の主人公の少年。
彼は今年の新人賞の最有力だと思う。
このふたりが向かいあうシーンは本年度きっての名場面だ。
そうそう、この先生、
映画が進むにつれてなぜかゴーストのように感じてくる。
それを決定的にしているのが
学校を去る時の校門での写し方。
それまでの切り返しが
校内と校外を挟んだ村内先生と島崎先生(伊藤歩)の
引きのショットになる。
こちらの世界とあちらの世界……」

----それ、考えすぎじゃニャいの?
「ぼくも最初はそう思って、
こんなこと考えるのぼくくらいかなと…。
そしたら、なんとプレスに同じことを書いている評論家の方が……。
嬉しかったけど、ヤラレタって感じがしたね」


           (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「これは、みんなが観なきゃいけない映画なのニャ」おっ、これは

※いじめが終わったタオから、始まるというのがスゴい度

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4 コメント

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Unknown (あん)
2008-12-10 18:12:10
>生きている時間を無駄にしてはならない。
>彼は教師としてそのときそのときを“本気”で生きているんだ。
う~む、職員室で紹介されても、無言で教室へ行く村内先生はちょいと風変わりな先生だなぁ~、なんて私は思ってたんですが...。
ここのレビューを読ませて頂いて...あ~!そうだったんだ!と。
うう、自分の理解力の浅さが恥ずかしい...(汗)


自分のブログでは阿部寛の事を書いてなかったんですが、彼にしては異色の役で別な引き出しを見せてもらったな、と驚きました。
"本気さ"を表すのに、阿部寛の存在感と迫力が活かされていましたね。

私も、最後に立ち去っていく村内先生を見た時、何だか人間を超えた存在のような気がしましたよ。

観ているこちらも、色々思い出し考えさせてくれる映画でした。
返信する
■あんさん (えい)
2008-12-10 22:22:45
こんばんは。

実は、この映画、10日前に
映画館でもう一回観たんです。
やはり秀逸な作品でした。

実は原作も読んだのですが、
どのエピソードも
「間に合ってよかった」が
貫かれていました。
映画を観ていることもあってか、
感慨はひとしおでした。
返信する
時空をかけたのかも (にゃんこ)
2008-12-14 22:29:57
こんばんは~
今日、やっと観てくることができました。
阿部ちゃん演ずる村内先生が、静かにずっと見つめ続けている姿
あの大きな目が印象的でした。
タイトル『青い鳥』なんですよねぇ
なんかそんなところも合わせて考えると、村内先生
バスで時空を超えているんじゃないのかなぁ~なんて
想ってしまった猫がいます。
返信する
■にゃんこさん (えい)
2008-12-15 21:33:50
こんばんは。

観ていただけて本当にうれしいです。
年末の映画レースに絡んでこないのが実に残念ですが、
個人的には『GSワンダーランド』と並ぶ、
本年度の日本映画の大収穫。
村内先生は時空を超えている……
それを感じさせてくれるこの映画、
そう、まさにこれは<映画>です。
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