ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『私は貝になりたい』(中居正広版)

2008-10-21 20:07:00 | 新作映画
----これってSMAPの中居くんの主演作だよね。
「あらっ、フォーンも中居正広のこと
中居くんって言うんだ」

----あっ、ほんとだ。
やはりそれだけ一般化しているのかニャあ。
確かこれは、その中居くんがかつての名作に挑戦した映画だよね。
「うん。最初にテレビで放映されて
あまりの反響の大きさにすぐ映画化。
そのときは脚本の橋本忍が自らメガホンを取っている」

----橋本忍って
黒澤明の映画なんかでよく見かける
脚本の大御所でしょ?
「うん。デビューが『羅生門』。
黒澤映画以外でも
『切腹』(小林正樹)や『砂の器』(野村芳太郎)など、
重厚な日本映画を手がけては
右に並ぶ者はいないだろうね」

----そんな脚本の大御所が監督したくらいだから
思い入れは相当なものってことかニャあ。
「そこがオモシロいところでね。
この作品、世評は高いのに、
黒澤明は脚本を受けとると、首をひねり、掌に載せ、
目方を計るように少し上下に動かして
『橋本よ……これじゃ貝にはなれねぇんじゃないかな』と言ったというんだ」

----それ。よくは分からないけどスゴいコトバだね。
そもそも“貝になる”とはどういうこと?
「じゃあ、物語を簡単に。
高知の漁港町で妻・房江(仲間由紀恵)と
理髪店を営む清水豊松(中居正広)。
その彼の元に赤紙=召集令状が届く。
配属されたのは中部軍の部隊。
ところがそこで上官の命令に従い、
捕虜となった米軍の飛行兵を処刑したことから、
戦後、彼はMPに捕えられ、死刑を言い渡されてしまう」

----えっ、それってどこかで聞いたような…。
「そう、 『明日への遺言』だね。
実際にこの映画にも
『明日への遺言』の主人公・岡田資中将のような、
部下の罪は全部自分にありと主張する矢野中将(石坂浩二)とかも出てくる。
でも子供の頃は、そんなこと分からずにテレビを観ていたからなあ。
第一、彼が配属されたのは外地とばかり思っていたし…」

----えっ、子供の頃に観ているの?
「うん。リアルタイムではないけどね。
なにせ、その頃は家にまだテレビはなかったし…。
おそらく何度もリバイバルされて、
その中の一回だったんじゃないかな。
ただ、それがテレビ版だったのか
それとも映画版だったのかは分からない。
覚えているのはラスト、
主演のフランキー堺が処刑台をあがるところ。
その番組でぼくは
処刑台=13階段と初めて知ったんだ。
映像が陰鬱なモノクロだし、とにかく恐くって……。
その後に、『私は貝になりたい』のモノローグが流れたような…。
これは
生まれ変われるとしたら人間ではなく
海の底にひっそりといる貝になりたい。
そうすればこんな過酷な運命もない-----という
あまりにも悲痛な言葉なんだ」

----へぇ~っ。
これってそういうお話だったんだ。
しかし舞台が高知とは思わなかったニャあ。
仲間由紀恵は豪雪の中を歩いているし…。
「あれはぼくも不思議だったね。
後で調べて分かったのは
この映画のロケが日本海に浮かぶ島根の西ノ島で行なわれたということ。
ここはリアリズムよりも
その厳寒の中、減刑の嘆願署名を集めて回る
妻・房江の苦難の姿を描きたかったんだろうけど、
どうもぼくには違和感が残ったなあ。
でも、子供の頃には分からなかったこと、
たとえば実際には彼は処刑しているとはいえないとか、
目新しい発見もいくつかあったたね」


           (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「中居くんは『模倣犯』以来の映画なのニャ」ちょっと怒るニャ

※主題歌はミスチルだ度

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