ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『夢のまにまに』

2008-08-25 23:25:57 | 新作映画
----木村威夫?知らない監督だニャあ。
ん?でもスタッフロールで見たような記憶も…。
「おっ、なかなかいいところ突いているね。
彼こそは正真正銘、映画美術界の巨匠。
豊田四郎、黒木和雄、鈴木清順、熊井啓、伊丹十三、篠田正浩と、
日本を代表するさまざまな監督と組んでいる」

----ス、スゴいニャあ。
みんな日本を代表する監督ばかりだ。
「だよね。
現在、彼はいくつかの大学で客員教授として教鞭をふるう一方、
日活芸術学院では学院長を務めている。
この映画は、その彼自身をモデルとしたといってもいいんじゃないかな。
主人公はNK学院の学院長・木室創(長門裕之)。
映画は、この木室が見た戦時中の夢から始まり、
学生・村上大輔(井上芳雄)との世代を超えた交流、
そして自らの青春の日々の回想、
そして戦争が現代に及ぼしている陰りを
美術監督ならではの独自の映像美で描いていくんだ」

----そうか、新藤兼人監督の 『石内尋常高等小学校 花は散れども』と同じく
ここでも戦争が大きな意味を持っているんだね。
「うん。
木室の妻・エミ子(有馬稲子)は
ヒロシマの原爆で姉を亡くしている。
そんな中、統合失調症の病を抱えて苦悩する村上は、
かつて戦争によって若者が命を散らしたことを知り、
さらにその苦悩を深めてゆく。
この井上の設定がちょっと変わっていて
腕にはマリリン・モンローの刺青なんかしている。
ところが実生活で彼が恋するのは、なんと巫女さん。
この両極端にも見える井上の嗜好は
彼の分裂した内面を象徴しているとも言えるけど、
やはり美術監督・木村威夫が
自分の世界を描きたかった----そっちの方が大きいんじゃないかな」

----自分の世界って?
「それはねこういうこと。
木村威夫の仕事。
それは過去、長きに渡って美術という側面から
幾多の監督が創りあげてきた世界をサポートすること。
そこには熊井啓のようなリアリズムもあれば清純美学もある。
そんな現場に居合わせてごらんよ。
自分の映画的引き出しは増えこそすれ決して減ることはない。
この映画には、そんな“美術監督”木村威夫ならではの
ビジュアル的なオモシロさが満ちあふれているんだ」

----ニャるほど。
でもそれって
テーマはどうでもいいってことじゃニャイよね…。
「もちろんだよ。
木村威夫の反戦平和への願い。
この映画は、それがいかに強いものかを
ぼくらに教えてくれる」

----そういえばキャスティングもそんな感じ。
「若い日の木室に永瀬正敏、
そしてヒロインとも言える女性に宮沢りえ。
それぞれ『紙屋悦子の青春』『父と暮せば』の主演。
いずれも黒木和雄監督が戦争の犠牲者を悼んだ作品だ。
この映画には、知覧の特攻平和会館も出てくるけど、
そこで監督が取り上げた、ある一通。
それを読み上げる声の向こうには、
まさしく戦争で失われた命への慟哭が聞こえくる。
90歳という高齢になってもいまなお
映画に対する情熱を持ち続けている木村威夫。
その彼がなぜ長編初監督の題材としてこの映画を選んだ理由----
それは痛いほど伝わったね」


           (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「でも映画としてはどうなのニャ?」複雑だニャ

※まあ、それは人によりけりだ度

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