ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『宮廷画家ゴヤは見た』

2008-08-26 23:43:10 | 新作映画
(原題:Goya's Ghosts)

----これって久しぶりのミロス・フォアマン監督作品だよね。
なかなか気に入ってるみたいじゃニャい?
「うん。実に見応えがあったね。
映画とはこうあってほしいというお手本のような作品。
なんといってもジャン=クロード・カリエールが
脚本を担当しているのがなによりも嬉しい」

----だれ?その舌を噛みそうな名前の人…。
「よく知られているのはルイス・ブニュエル監督との仕事だね。
『ブルジョワジーの密かな愉しみ』や『自由の幻想』など、
主に後期の破天荒なスタイルのブニュエル作品を多く手がけている。
この映画もさすがにあそこまでシュールというわけではないけれど、
なかなか一筋縄ではいかない。
いい意味で最後まで翻弄される」

----ふうん。でもこのタイトル変だよね。
まるで『家政婦は見ていた』って感じ(笑)。
「確かにそうかも。
でもゴヤというのは、
『歴史上、最初に戦争を視覚的に捉えたレポーター』------
と、これはゴヤの伝記の著者ロバート・ヒューズの言葉だけどね。
実際、観る前に抱いていた先入観とは違い、
ゴヤは意識的に政治に関わっているわけではない。
絵の方も宮廷の人々を描くと同時に、
普通の人々をも描いている」

----ピーター・グリーナウェイが監督した
『レンブラントの夜警』のレンブラントのように
反骨精神溢れた画家というわけではなかったわけだニャ。
ところで彼は何を見たわけ?
「じゃあ、そろそろ映画のお話に入るとしよう。
舞台は1792年、マドリッド。
そこでゴヤ(ステラン・スカルスガルド)は2枚の肖像画を描いていた。
1枚はゴヤの友人で裕福な商人トマスの娘イネス(ナタリー・ポートマン)。
もう1枚は初めて依頼されたロレンソ神父(ハビエル・バルデム)だ。
まったく接点がないように見えるふたりのモデル。
ところがロレンソ神父のある野心がきっかけで
彼らの運命の歯車が回り始める」

----ゴクッ。オモシロくなってきたニャあ。
いったいなにが起こるんだろう?
「当時、カトリック教会は国王の監督の下、
異教徒や無神論者を罰する権限を持っていた。
だが、それは実際はほとんど機能していなかったんだ。
そこでロレンソ神父は教会の力を復活させるべく、
異端審問を強化させることを提案。
そしてその網に引っかかってしまったのがこのイネス。
彼女は居酒屋で豚肉を嫌がったために
ユダヤ教徒と疑われてしまったんだね。
審問に続いて残酷な拷問が開始。
イネスはなんと裸で吊るし上げられてしまう」

----つ、つまりナタリー・ポートマンは汚れ役を演じちゃうってこと?
「そう。イネスというのは
ゴヤが彼女を天使のモデルにしたというくらいに清楚。
それだけにここはほんとショッキングだったね。
さてイネスの父トマスに頼まれたゴヤはロレンソに、
肖像画の代金と教会の修復費を引き換えにイネスの解放を願う。
ところがロレンソが異端審問所を訪ねると、
彼女はすでに拷問を受けていた。
脅えるイネスを慰めるロレンソ。
その心には情欲の炎が湧いてくる」

----!!!!!
「さて、ここから物語はだれもが思いもよらぬ方向へと発展。
トマスがまさかの行動に出るんだ。
それによってロレンソは窮地に陥り、
ついには姿を消してしまう」

----えっ、トマスは何をしたの?
それにロレンソがいないんじゃ、
話は終わっちゃうじゃニャい。
「う~ん。喉まで出かかっているけど、
やはりこれは観るまでの楽しみに取っておいた方がいいだろうね。
ジャン=クロード・カリエール。
その大胆な脚本術を味わうためにもね。
15年後。
フランスでは革命に続いて、ナポレオンがヨーロッパ中を侵略。
ここスペインでも彼はその内紛に介入し、
自分の兄ジョゼフをスペイン国王に任命する。
異端審問も廃止され、
イネスもようやく外へ。
しかし、かつての美貌は見る影もなく…」

----ニャるほど。
この映画のオモシロさはその脚本の妙と、
ナタリー・ポートマンってわけか…。
「詳しくは明かせないけど、
実はポートマンはもう一役演じている。
彼女のファンにはたまらないだろうね。
もちろん、ミロス・フォアマンの演出もぼく好み。
たとえば遠くで鳴り響く爆音。
その凄まじさを、
音の一つひとつに驚く鶏を写すことで表したり、
また、いまにも処刑が行なわれようかというまさにそのときに、
処刑台そばのロバが地面の草を食むカットを入れたり。
こういう何気ないショットがかえって
ドラマの緊迫をいや増す。
ゴヤという人物を普通の常識人にする設定も含めて
映画らしい映画を観させてもらったという気がしたね」


           (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「これは見応えありそうだニャ」身を乗り出す

※濃い映画時間が味わえる度

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