ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『小さな赤い花』

2008-08-13 10:51:44 | 新作映画
(原題:看上去很美/英題:Little Red Flowers)

「これ、かなり変だ」
----えっ、中国の全寮制幼稚園のお話じゃニャいの?
良いことをした子は紙で作った赤い花がもらえると言うんで、
主人公の少年チアンが努力するんでしょ。
「そう。だけど、それも途中まで。
ここの幼稚園の統制はあまりにも厳しく、
女性の先生なんて
まるで昔映画によく出てきたナチスの女将校という感じ。
たとえば、チアンが怖い夢を見て
女の子のベッドに夢遊病のように潜り込み、
そこでおしっこしてしまうエピソードがあるんだけど、
それを先生みんなで輪になってあざけり笑う。
『たいしたものだ(笑)』とね」

----それは少年も悪いけど、先生も悪い。
フォーンだって、ちゃんと砂のトイレでするのに。
「そうそう。トイレと言えば、これがまたスゴい。
溝みたいなところに一列に並んで一緒に。
それも男の子と女の子が一緒。
で、ちゃんとうんちが出たら赤い花がもらえる」

----スゴい話だニャあ。
そんなの映像で写すの?
「そうなんだよね。
しかもこのシーンに限らず、
やたらと子供たちの下半身が露出されるんだ。
一人ずつ下着を脱いでお尻を拭かれたりとか、
お尻の部分が破れたズボンを履いたりという風に。
おねしょした後は、下半身何も身に付けていない」

----それはまた過激だね。
「話をストーリーに戻すと、
チアンはそのあまりにも厳しいしつけに疑問を抱き、
というか本能的に嫌悪し、
いよいよ反抗的になる。
みんなをけしかけ、先生を妖怪に仕立て上げる。
このシーンもシュールだよ。
夜、子供たちが先生のベッドにうじゃうじゃ」

----うわあ。でもそれはただじゃすまないよニャ。
「うん。先生側はチアンを孤立化させ、
やがてチアンはみんなから無視されるようになる。
そこで耐えきれず外へ飛び出した彼が目にしたものは…。
と、少し『大人は判ってくれない』を思い出したね。
もっとも本国では『カッコーの巣の上で』や『ソドムの市』と比喩されたらしいけど」

----でも、これっていつの時代のお話ニャの?
「どうやら文化大革命の頃らしいということは
クライマックスで明らかとなってくる。
でも監督のチャン・ユアンは、『時間を特定したつもりはなく
わざと架空の年代を作った』ということのようだ。
『現在の中国では、
私は直接の手法で社会問題を具体化することができない。
だから私は子供の小さい世界に助けを借りることしかできず、
今日の社会を比喩している』」

----へぇ~っ。そんなにまでして監督が言いたかったことって?
「じゃあ、監督の言葉を続けよう。
『私はここで皆さんが集団と個人の矛盾した関係を見られること、
また個人と栄誉の錯誤を見つけることを望む』」

----ふうん。それにしてもこの夏は
アジアの子供を主人公にした映画が多いね。
『闇の子供たち』もそうだし 『地球でいちばん幸せな場所』もそう。
「うん。地球の未来は子供たちが創り出してゆくもの。
いまの世界をこんな風に
大人たちの勝手にしていいのかということを感じさせられるよね。
そうそう、『闇の子供たち』といえば現在大ヒット街道を驀進中。
興行だけでなく評価も 「試写室ランキング」8月号表ベストで第一位と高いけど、
なんとこの「試写室ランキング」が
「MovieWalker」のリニューアルとともに
次回9月号でその幕を下ろすんだ」

----えっ、なくなるニャりか?
「うん。もったいないよね。
前例がないくらいにユニークな企画だし、
ぼくなんかも休みの日に、
何を観るかの参考にしていたのに…。
編集のれがあるFさんは
現在、受け皿となるウェブ媒体を探しているところ。
どこか名乗りを上げないかなあ。
詳しくは「MovieWalker試写室ランキング ただ今、編集中」(7.31)を」


           (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「かなり変態チックな映画みたいだニャあ」なにこれ?

※まるで昔作られた映画を発掘したみたいな、ぼわ~んとした映像だ度

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