雑記帳

日常の出来事や、読んだ本のあらすじや感想など書いています。

空飛ぶタイヤ

2011-09-21 23:00:05 | 
風も雨もたいしたことはなくて、台風が通り過ぎて
いったという感じはありません。
私の所は無事でしたが名古屋市内で浸水した
地域があります。お気の毒です。

池井戸 潤
実業之日本社
発売日:2006-09-15


池井戸潤著"空飛ぶタイヤ"を読みました。
本の最後にフィクションですと書かれていますが実話を
基にしていることが窺えます。
何年か前にトラックのタイヤが外れて歩いていた人を
直撃して死亡させたニュースが流れたことを覚えている
人は多いと思います。
最初のうちは整備不良と言われていましたが後にハブに
欠陥があることがわかりました。
同様な事故が多発しているにもかかわらず自動車会社が
リコール隠しをして死亡事故を発生させました。
この話が基になっています。

赤松運送のトラックが脱輪を起こして小さな子供と
歩いていた主婦を直撃して、主婦を死亡させて
しまいます。
原因は整備不良だとされ警察の家宅捜査が入ります。
整備は整備士門田がしっかりとしており、記録も
きちんと残っています。
社長の赤松は整備のせいではなくトラックの部品の
不良ではないかと疑います。
トラックはホープ自動車製です。事故車は警察から
ホープに持ち込まれ調査依頼されます。
結果は整備不良とされます。
赤松は部品を返してもらって他の調査期間へ持ち込もうと
考えますがどんなに返せと申し入れてもああだこうだと
言って頑として返しません。

大きな取引先が取引停止を申し入れてきます。
ホープは重工、自動車、銀行を抱える大企業です。
お客さんである赤松運送をどうでもいい中小企業として
話を聞くまでももないと横柄な態度です。
お客さんの方にぜんぜん目を向けていません。
会社内部の抗争が一番の関心事です。
数年前にもリコール隠しが発覚してマスコミにたたかれ
業績が下降しました。
企業の体質を改めると発表していたのにまったく
実現していません。

赤松運輸の取引銀行はポープ銀行です。
銀行は貸付を断ったばかりか今まで借りていた資金の
貸し剥がしをしてきます。
赤松運送は倒産の危機にみまわれます。
週刊誌の記者がホープの事故を調べています。
リコール隠しのことを暴く記事が出るはずでしたがホープに
潰されてしまいました。
記者から今まで発生した事故情報を貰って赤松は独自で
日本中の会社を聞いて回って部品の不良だと突き詰めていきます。
同じ事故を起こしたことがある会社が仕事を廻して
くれたりホープ銀行から借りていた資金を全額引き受けて
くれる銀行が現れたりして赤松運送はかろうじて倒産を
免れています。

ホープ自動車は隠すことは当然のことと考えています。
間違ったことをしているとはまったく考えません。
人が死亡することが発生することがわかっていてもそれが
どうしたという態度です。
どんなに赤字を出そうとも何億円とグループ銀行が出して
くれることが当然のことと要求するその思考回路が
どうなっているのか到底理解できないものです。

赤松の努力が実りリコール隠しの証拠が見つかります。
警察が動きます。
ホープ自動車の社長たちが逮捕されることになります。

一気に読んでしまいました。
中小企業の社長の心意気と大企業の驕り、両方の視点
から書かれています。
あきらめた会社がすべての中、自社の運営や社員を信じて
真実を追究した赤松社長の信念はすごいものです。
大企業の驕りは外から眺めればどれほどばかばかしいものか
簡単にわかるものです。
内部にいると内部だけで完結して広い世界は見え
なくなるものなんでしょうか。
たとえどんなに大企業でも潰れることはあるのに
どうしてありえないと考えられるのでしょう。9/11