宇江佐真理著"彼岸花"を読みました。
短編集です。
"つうさんの家"
材木商のお嬢さんとして裕福に暮らしてきたおたえですが
商売がうまくいかずに店を畳んでしまいました。
おたえは田舎の年老いたつうさんの家にあずけられます。
つうさんと両親や自分との関係は知らされていません。
貧乏ぐらしです。水も川に汲みにいかなければなりません。
畑を耕し売り物に出来るものを作り売りに行くというような
生活をしています。
慣れない暮らしに不満を持っていたおたえはしだいに慣れて
いきます。数ヶ月後に両親の元へ引き取られていきました。
つうさんが実の祖母だったことをはじめて知らされます。
韓国映画の"おばあさんの家"を思い出しました。
おたえはこの映画に出て来るわがまま少年のような、
わがまま娘ではありません。
でもなんとなく状況が似通っているなぁと感じました。
お祖母さんから受けた愛情はどちらの孫も一生忘れないで
心を暖めてくれることでしょう。
"おいらのツケ"
三吉の父が病気になった時隣の梅次、おかつ夫婦が三吉を
預かってくれました。父が亡くなった後もそのまま隣で
暮らしました。
大工の見習いとして働き始めます。
梅次が亡くなって実の息子が結婚して家に戻ってきたい
からと追い出されてしまいます。
幸せだった過去ですがもう戻れない眺めているだけの
場所になってしまいました。
"あんがと"
尼寺に4人の尼さんが暮らしています。
安然とその養女の恵真、またその養女の妙円と浄空です。
恵真、妙円、浄空と幼い時に寺に捨てられていたり両親が
亡くなり孤児となり寺に引き取られた人たちです。
またおさない女の子が置き去りにされていました。
おとという女の子は言葉が発達が遅れているようです。
妙円が特にかわいがります。
親戚が見つかり引き取られていきます。
しばらくして寺にやってきたおとは「あんがと」とお礼を
いいます。
"彼岸花"
おえいの家は小作人をかかえている農家です。
夫は婿養子です。家を取り仕切っているのは母親です。
嫁にいった妹のおたかの夫は武士です。夫の為輔は人の
話を聞かず疎まれ勤めを辞めてしまいました。
おたかは大八車を引いて実家へ頻繁に訪れるように
なります。
暴力をうけきびしい生活をしていても帰ってきたらと
すすめる姉の言葉を受け入れません
"野紺菊"
夫は亡くなり夫が連れてきた子供と義姉夫婦といっしょの
家に住んで痴呆症となった義母の世話をしてきたおりよの
話です。
"振り向かないで"
おくらは一膳めし屋で働いています。
男にだまされたりして何回か仕事先を変えています。
店で巳之吉と出会い付き合いが始まります。
巳之吉は友達のおけいの夫です。
おけいに悪いと別れようとしますが巳之吉の方が別れようと
しません。
おけいの父親が亡くなって葬儀に行った時巳之吉がおけいの
方を向こうとした時に発せられたのが「振り向かないで」と
いう言葉です。
江戸の人情者です。
生活の厳しさがうかがえるような話が多いです。
食べていくための日々の生活のたいへんさが伝わってきます。