雑記帳

日常の出来事や、読んだ本のあらすじや感想など書いています。

天才までの距離

2011-09-12 20:01:32 | 
門井 慶喜
文藝春秋
発売日:2009-12-05


門井慶喜著"天才までの距離"を読みました。
少し前に読んだ"天才たちの値段"の続編です。
京都の美術大学の准教授になった佐々木と東京で美術
コンサルタントをしている神永美有の美術作品を
めぐる連作短編集です。
おもしろいです。けど美術の話は難しいです。
ほとんどわかっていません。

"天才までの距離"
佐々木は神永に会いたくてたまりません。
尊敬し芸術に対する神永の審美眼を信頼してます。
でも会うのを半年間がまんしてきました。ちなみに
どちらも男性です。
そこへ昔の教え子の、とんでもなくはじけ飛んでいる
自称イヴォンヌが訪ねてきます。
神永に悪い噂があるから東京へ来るよう勧めます。

画商の地下室で見せられたのは岡倉天心の絵というものです。
絵画の発展に寄与した天心ですが自身は作品を書いていません。
その天心の作品だというのです。
神永が現れ画商のつけた値段以上の値で買取ます。
絵は横山大観のものだといいます。

神永は画商が気づかない値打ちに気づいてその作品の
本来の価値で取引することで作品を本来の位置に置くと
いうことをしているのでした。

こうして佐々木と神永との付き合いは再開されます。
なんといっても京都と東京の間ですから。

"文庫本今昔"
文庫本の表紙になっていた模様とそっくりな切絵が知り合い
の家から出てきました。
その家の息子は離婚してそのまた息子はまだ幼く親の
離婚後は人が話していても聞こえないふりをしています。
離婚で心を痛めて人との係わりを絶って身を守ろうと
しています。
平福百穂の作品だといいます。
しかし実際は・・・・・
神永が子供の心を開かせるような解決策をさずけます。

"マリーさんの時計"
付き合っている男性から貰ったふりこ時計の鑑定を
頼まれます。
古い時計と思っていたら後ろからコードが出て電気で
動いています。
佐々木、神永の調査でなんとマリー・キューリーの夫が
作りマリーに送った時計だとか・・・

"どちらが属国"
山野辺ゆかりとイヴォンヌの争いに巻き込まれます。
神永がゆかりとイヴォンヌのどちらの体面をも守って
解決するようにします。
紙の原料が問題の答えを示します。

"レンブラント光線"
浦本豪、収集家ですが権力を見せびらかすための収集です。
佐々木は自分の女子学生がお金に困って大学を卒業でき
なくならないようお金を作りたくて仲介者となり作品を
浦本に売ろうとしています。
天心の絵として持っていきましたが、浦本に天心の絵では
ないと証拠を突きつけられました。
神永の助けでどういう絵なのかを突き止めます。
森鴎外が美術学校で講師をしていた時に学生に書かせた
絵だと証明してみせます。

なかなかおもしろい本でした。
美術品とミステリーがお好きな人には楽しめる本では
ないですか。8/26