風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

歌舞伎座新開場 こけら落四月大歌舞伎 『盛綱陣屋』(4月11日)

2013-04-11 23:50:49 | 歌舞伎

【盛綱陣屋】

で、二部の玉さまにうっとりしながら外へと出た私。

・・・・・あれ?・・・幕見の列、さっきよりも更に短くない・・・?

思わずスタッフのお兄さんに「今から並んで座れますか?」と聞いてみると、答えはYes。
三部の一幕目は、盛綱。今朝あんなに感動した仁左衛門さんが主役。。
三部は千穐楽直前にチケットを確保してあるのですが、思わず・・・購入してしまいましたよ、一幕見券。。
通しではなく、盛綱のみで。

もっとも、突然の思いつきで観てしまったため、作品についての予備知識はほぼゼロ状態(私にとって歌舞伎は“間”も重要なので、その邪魔をされるイヤフォンガイドは好きではないのです)。
なので最後まで、和田秀盛が盛綱を訪問した本当の理由が、わからずじまいでした。
そんないい加減な知識で観ていたにもかかわらず、自分でもびっくりですが、泣いてしまった盛綱陣屋。
何が良かったって、まずは小四郎役の金太郎くん。初めて歌舞伎で子役に泣かされました。。。
金太郎くんが誰かも知らなかった私ですが、「高麗屋!」の掛け声でわかりました。染五郎の息子さんか。なるほど、美少年なわけだわ。
切腹をした後に朦朧とした意識のなか「そんならわしが死ぬるので、ととさまの軍(いくさ)が勝ちになるのか」って…(泣)
地面に両手を彷徨わせながら「婆さまはどこにぞ」って…(泣泣)
「伯父さま、伯母さま、かかさまにも逢うて死ぬるは嬉しいが、たった一つ悲しいは、ととさま――…」って…(泣泣泣)!!
高綱、あんた息子に何てことをさせんのよ(怒)!!

そして、仁左衛門さんの盛綱。
所作や見得がことごとく絵のように美しくて、もう見惚れっぱなしでした。手もとっても綺麗~。指なが~い。
本当になんなのでしょう、この69歳。自分の父親より上の年齢にもかかわらず、微妙に縋る場面なんか、思わずときめいてしまったじゃないの…(>_<)

すみません、マジメな感想をします。。。

仁左衛門さんの盛綱は、とても優しい盛綱でした。
微妙に「小四郎を切腹させてくれ」と頼むときもとても辛そうですし、ラストで父親の計略のために見事に切腹してみせた小四郎に対する哀れみと優しさも、とてもはっきりと表現されています。
私のような素人にもはっきりと盛綱の心情が伝わってくる、“わかりやすい”お芝居でした。
首実検の一連の演技も、とってもわかりやすいですよ。
まず、首を自分の正面に向ける。それが弟の首ではないと知り、ほっと小さく息を吐く。そして時政から顔を隠すようにして、可笑しそうに笑みを浮かべる。これは影武者の首をとらせた相変わらず計略家な弟に対して、思わず漏れた笑みだと思います(ここにも盛綱の主君に対する思い入れの少なさが現れていますね)。
しかしすぐに、はっと目を見開いて倒れている小四郎を見る。そして小四郎が切腹した理由、つまり高綱の計略を一瞬にして悟り、苦悶し、決意し、「高綱の首に相違ない」と言う。
この一連の流れをはっきりと観客に示すにもかかわらず、演技が全く安っぽく見えないのは、仁左衛門さんの上手さでしょう。
そして時政が去ったことを確かめた後、隠れていた篝火を呼び、篝火と微妙に「(小四郎を)褒めてやれ、褒めてやれ」と畳み掛けるように言うその言い方が、暖かくて……悲しくて……。ここ、もう一気に「う、わぁ…っ」ってきました……(号泣)
小四郎の顔に手をあてる姿、本当に本当に美しかった。こういうシーンでああいう絵を見せる歌舞伎って素晴らしいなぁと、改めて歌舞伎という芸術に感心いたしました。

長くなってしまったので、後は簡単に。
時蔵さんの篝火は、母親らしくて良かったです。
我當さんの時政も、冷徹で抜け目のない武将らしさが出ていて迫力がありました。
松緑の息子さんの大河くんも、頑張っていました(花道の見得、よかった)。
吉右衛門さんの和田秀盛も、さすがの一言。熊谷のような役も素敵ですが、こういう豪快な役もとっても似合いますね。
そして盛綱と秀盛が二人並んだ、最後の見得の美しさ。仁左衛門さんって吉右衛門さんよりも細いのに、同じくらい大きく見えた。
このお二人の見得、最高にかっこよかったです!!!
あとは、盛綱が時政を迎えるときに着ていた黒地に金糸と白地に銀糸の刺繍の衣装が、美しくてよかった。ああいう色合い、大好きです。仁左衛門さんにとてもよく似合っていました。
また千秋楽直前にチケットを買ってあるので、楽しみです^^


今回一部~三部までを通しで観て、吉右衛門さんの頑張りが半端じゃないことがわかりました。
四月の一~三部でずっと主役や準主役をやることになったのは團十郎さんの代役をされているからですが、あの全力演技で朝から晩まで一ヶ月間、一日の休みもなくぶっ通しって、、、決して若くはないのに大丈夫なんだろうか。。。
「6月まで体がもってくれるか心配だけど、命がけでやる。そういう姿をこれからを担う若い人達が見て、自分はもっと頑張ろうと思ってもらえれば」って、歌舞伎座開場時の記者会見で仰っていたけれど。。。
仁左衛門さんも決して丈夫ではなさそうですし、菊五郎さんもがんどう返し&富樫をひと月間だし、幸四郎さんも弁慶って超ハードだし、みなさん本当に心配。。。
せめて一週間に一日くらい休演日を入れることはできないのだろうかと、歌舞伎を観るたびにいつも思います。。。


※2回目(4月27日)の感想

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歌舞伎座新開場 こけら落四月大歌舞伎 第二部(4月11日)

2013-04-11 23:25:49 | 歌舞伎

というわけで、一部を満喫して外へと出た私。
そこで見たものは――。

・・・あれ?なんか前回来たときよりも幕見の列が短い・・・?もしかして、二部イケる?

それなら将門をもう一回観たい!と、近くにいたスタッフの方に「将門の幕見が観たいんですけど」と言うと、「将門はこの列の後方に並んでください。弁天は完売です」とのこと。お目当ては将門なので、かまわないです。発売までの30分くらいは待ちますよ。
で、列はどんどん進んでいき、スタッフのお兄さんが順に「将門でいいですか?」と聞いている。
ん?聞くってことはまだ弁天もOKってこと?と「弁天も買えるんですか?」と聞いたところ、「はい。立ち見ですが」と。「通しで買うと、将門は座れます?」と聞いたら、窓口まで確認に行ってくれてYesとのこと。
どうせ将門まで時間を潰すためにカフェでケーキセットでも食べていたら千円以上は使っちゃうし、それなら二千円でもう一度弁天も観たい、と急遽第二部を通しで購入することに。
はじめての幕見&立見体験です。
4階の女性スタッフの方に「将門」の席をとるときはどのタイミングで動くべきか?と聞いたところ、「一幕目が終わったらすぐに席を確保してください。荷物の置かれていない席はとってしまって構いません。とにかくまずはお席を確保すること。お手洗いなどに行かれるのはそれからで」とのこと。おかげで、ばっちりな席をとることができました。ありがとうございました、親切なスタッフさん^^


【弁天娘女男白浪】

まったく同じ演目&役者さんの2回目ですが、4日に比べて、全てが良くなっていることにまず吃驚。
4日でも十分大満足だったのに、前回より皆さん慣れてきたのか、すごくいい感じ。
何より驚いたのは、吉右衛門さんの日本駄右衛門がとても良かったこと。ちゃんと吉右衛門さんらしい個性が出てる!声も前回よりずっと出てるし。
でもって菊よ、藤の方よりこの若旦那役の方がずっと色っぽく見えるのは何故なのか。。。
三津五郎さん、声がいいなーと今回気づきました。
菊五郎さんの極楽寺屋根での立ち回りも、今回の方が迫力があった気がします。
そして今回は吉右衛門さんがとってもよかったので、山門の場で顔(というか胸から上)がまったく観えなかったのが、くぅ・・・っ(><)となりました。。。


【将門】

玉さま・・・!今日もお美しい・・・!
如月のときに光圀に向かって人差し指でちょいちょいってする仕草が、色っぽくてもう・・・。
本気で、心の底から、「男の人は女なんかよりよっぽどこの玉さまの方に惹かれてしまうのではなかろうか」と思ってしまいましたよ。
そして、光圀と闘い始めるときに家の脇の木から枝を折って、無造作にぺっぺっと光圀に向かって放り投げる玉さま。 さっきまで散々切々と誘っていた相手に対して、正体がばれた途端にこの態度(笑) 最高です。
やっぱり玉さまは地味に耐え忍ぶ妻&母の役よりも、こういう派手で上から目線の姫系が似合う!
ラストの玉さまが観えないことは百も承知だったので今回は焦らずゆったりと眺めていたら、最後に蝦蟇ちゃんを従えながら平家の赤旗をさぁって投げる投げ方が、かっこよすぎ!手しか見えなかったけど(泣)!!


③につづく

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歌舞伎座新開場 こけら落四月大歌舞伎 第一部(4月11日)

2013-04-11 23:04:33 | 歌舞伎



どうも!
4日に引き続き、今回は杮茸落の第一部に行ってまいりました。
de――。
「第一部の終了→第二部幕見の発売→第二部の終了→第三部幕見の発売」のスパイラルに見事に嵌まり、結局第一部~盛綱まで、江戸時代さながらに一日中を歌舞伎座の中で過ごしてしまいました。。。
だって・・・・・、並ばないでも幕見が買えちゃったものだから・・・・・、つい。。。


【壽祝歌舞伎華彩(ことぶきいわうかぶきのいろどり) ~鶴寿千歳~】

私の鑑賞予習方法はいつも「あらすじ」&youtubeなわけですが、この演目はネット上で筋も動画も見つけることができなかったことから、まったく予備知識ゼロの観劇となりました。一体どんな演目なのか、ワクワクどきどき。こういうのも楽しいものですね~♪
そしたら――。
う・・・わぁ・・・、すっごいツボ!
まさかの平安絵巻じゃないですか!素敵素敵素敵(><)
というのも、ちょうど行きの電車の中で読んでいたのが『源氏物語』の紅葉賀の章だったのですよ。
光の君&頭中将が宮中で舞を舞う場面は、この物語の中でも特に好きな場面のひとつ。
まさにその場面さながらの舞に、大感激でした。
最初に登場するのは、染五郎の春の君と魁春さんの女御。
涼やかな薄水色の衣装を纏って桜の枝を差した冠をのせた染五郎は、光源氏が物語の中から飛び出てきたような美しさ。染五郎って薫は演じたことがありますが、光源氏はないのですよね。この人、生真面目な薫よりも、プレイボーイな光源氏の方が絶対に似合うと思うんだけどなぁ。
しっとりとした女御と、すっきりとした春の君の舞は、まるで絵巻物の一頁を眺めているようでした。染五郎の舞は優雅さに少々欠ける気もしましたが、顔が美しかったから許しちゃいます、笑。
そして、宮中の男達&女達10名が勢揃いした舞台の華やかなこと!
それぞれの装束の色合いが、もう、たまらなく美しい。。。。。。私は襲の色目の本を一日中でも飽かずに眺めていられる人間なので、こういう演目は至福以外の何物でもございませぬ。いつまででも観ていたかったです。
橙色衣装の壱太郎くん、みーっけ。相変わらずカワユイ。青い装束の松也とよくお似合い^^
そして、中央のセリから藤十郎さんの鶴がご登場~。白生地に金糸と銀糸が刺繍された衣と透けた白い上衣が美しい。ゆったりと大らかな舞で、おめでたい気分をたっぷりと味わわせていただきました。
若手の皆さんの舞はまぁ、ビミョー・・・?な感じでしたが^^;、全体としては大満足でした♪


【十八世中村勘三郎に捧ぐ ~お祭り~】

三津五郎さんの踊りがカッコいい!
そして勘九郎と七之助が七緒八くんの手を引いて花道から登場し、三津五郎さんと中村屋ファミリーが舞台でそれを迎えたときには、中村屋にそれほど深い思い入れのない私でさえ、涙が出ました。。。
彼らがみんな笑顔なだけに、余計に。。。。。。
「さぞ十八代目も喜んでいることでありましょう」。だから泣かせないでってば、三津五郎さん・・・(><)!
しかし鳶頭姿の勘九は、惚れ惚れするいい男ですね。
芸者姿の七も色っぽくて、七緒八くんと三人で床几の上で寛いでいる姿は、“妻に先立たれた若いお父さん+その恋人の芸者”以外の何物にも見えませんでした(笑)
この演目は、床几に座って寛いでいる中から一人or数人が順にさっと前に出て踊り、残りの者達はそれを楽しげに眺めている、という構図なのですが、それが大変ツボでした。こういう振付、かっこよくて大好きなんですよ。BBLのディオニソス組曲の祭りの場面と同じ。ただ勘九の踊りは少々真面目風というか、祭りの粋なノリがもうひとつ感じられなかったのがちょっと残念でした。
みんな勢揃いの最後の見得は華やかで大満足。お父さんが気になって仕方がないという風にちらちら勘九の顔を振り返っている七緒八くんが可愛かったです^^
勘三郎さんの「お祭り」も、この歌舞伎座で観てみたかったなぁ。


【一谷嫩軍記(いちのたにふたばぐんき) ~熊谷陣屋~】

さすがは人気演目。見応えがありました~。
玉三郎さんの相模と菊之助の藤の方は“母親”の雰囲気があまり感じられない気がし、個人的には少し残念でしたが(さよなら公演の藤十郎さん&魁春さんの印象が強すぎるせいか・・・)、仁左衛門さんの義経が!絶品!
品があり、将としての冷静さがあり、そして人としての情があり。勧進帳と同じく、この義経は「この人のためなら命も投げ出す」と家来達に感じさせるような魅力が必要で、それがないと舞台自体に説得力がなくなってしまうような、登場場面は少なくても大変重要な役だと思うのです。
弥陀六に「堅固でおったな」と言うときの微笑みも、「熊谷には子供を殺させておいてよく笑ってそんなことが言えるわ」と普通なら思ってしまうところですが、この義経の場合はそう感じさせないんですよね。彼はなすべきことを命じただけで、彼の中には熊谷に対する負い目は一切ないのです。あるのはただ、透明な哀しみのみ。勧進帳の義経が弁慶たちに負い目がないのと同じです。だから自分の両親の回向も熊谷に頼んだりできちゃうわけです。大将というものはこうでなくちゃなりません。そしてもちろん熊谷の側にも、「命令されたから仕方なく殺した」などという感情はないでしょう。
最後に立ち去ろうとする熊谷を「こりゃ」って呼びとめるところも、良かったなー。で、最後にもう一度息子の首を見せてやり、自分は顔を背ける。これは「非情な命令をした自分はとても熊谷に顔向けができない」というわけではもちろんなくて、熊谷の息子との最後の別れの場に自分はいるべきではない、ということなんだと思います。(主であり、しかも息子を殺す命令を下した)自分がじっと見ていたら、熊谷は存分に悲しむことができない。だから「私はお前を見ていないぞ。だから存分に息子との別れをしろ」と態度で示してあげたのだと思います。だから熊谷は存分に悲しむことができた。いい主だなぁ。。
それから地面に蹲った熊谷に再び視線を戻し、そして静かに目を伏せて、そのまま幕。やはり致し方がなかったとはいえ、義経にも、いたたまれない哀しみがあるのでしょう。この最後の一連の義経は本当によかった。
一言でまとめると、仁左さま、美しすぎ・・・(オイ)。こんな色っぽい69歳、反則でしょ。
そして吉右衛門さんの熊谷。もう何も言うことはないです。これほど魅力のある義経に全く負けていないなんてスゴすぎる。
心の奥から絞り出たような「十六年は一昔」・・・・・、もう・・・・・(泣)
法螺貝と陣太鼓の音に反射的に武士の顔に戻り、それからそんな自分に気づいて小さく首を振るところなんか・・・・・、うぅ・・・・(号泣)
熊谷という人間が生きてきたこれまでの人生と、これから生きていくであろう人生を、すべて一本の花道で表現しきった吉右衛門さんに拍手!!!!!
すばらしい舞台を、本当にありがとうございました。


②につづく

『熊谷陣屋』(2回目)

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