シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

アナザープラネット

2014-02-21 | シネマ あ行

「ザ・イースト」ブリットマーリングが素晴らしかったので、彼女の過去の作品を見てみようとレンタルしました。この作品でも主演だけでなく、脚本も担当しているのですね。サンダンス映画祭で審査員特別賞を受賞したそうです。

MITに合格した秀才高校生ローダ(マーリング)は合格祝いのパーティの帰り、「もうひとつの地球」という地球にそっくりの惑星が発見されたニュースをカーラジオで聞く。空を見上げるとその惑星が見えた。それに夢中になりながら運転していたローダは、大学教授のジョンウィリアムメイポーザーが家族と乗っている車に衝突。ジョンの妊娠中の妻、4歳の息子がその事故で亡くなってしまう。

4年の刑期を終えて出所したローダはエリートコースから完全に外れ、人と接触するのもイヤで高校の清掃員という仕事に就く。被害者のジョンに謝罪に行くつもりで彼の家に行ったが、怖気づいてしまい自分の身元を明かすことができない。事故の加害者に関しては未成年ということでマスコミには公表されず、ジョンは自ら復讐してしまうことを恐れて裁判記録を見なかったのでローダのことは知らなかった。

ローダは自分の正体を隠して、清掃サービスのお試し期間ですと嘘を言い、妻子を亡くして世捨て人のようにゴミ屋敷に住んでいたジョンの家を掃除する。それから週に一回ジョンの家を掃除するようになり、少しずつお互いに打ち解け仲良くなるジョンとローダ。ある日、一線を越え男女の仲になってしまう。

それと並行して「もうひとつの地球」に関する様々なニュースが流れ、「もうひとつの地球」には私たち一人一人が存在するということが分かる。自分とまったく同じ人間が同じように「もうひとつの地球」で暮らして同じ人生を歩んでいるのだと。ローダはそこに旅立つ一行に申し込んでいた。そして、その一行の一員に選ばれる。

恋人のような関係となったジョンにローダは自分がジョンの妻子をひき殺した犯人だと打ち明ける。当然、錯乱状態になりローダを拒否するジョン。2度と顔も見たくないと追い出されてしまう。

ローダが「もうひとつの地球」に旅立つ準備のために訓練に向かう前、テレビを見ていると科学者がこの地球と「もうひとつの地球」は我々が「もうひとつの地球」を発見したことでシンクロしなくなってしまっているという事実を知る。つまり、あちらでは事故は起きていないかもしれない。ジョンの妻子は生きているかもしれない。そう考えたローダは「もうひとつの地球」行きの権利をジョンに譲り、ジョンは「もうひとつの地球」へと旅立った。

その後、ローダの前に「もうひとつの地球」からやってきたもう一人のローダが現れる。

作品のポスターとか「もうひとつの地球」とか、やたらとSFチックな雰囲気なんだけど、物語はほとんどローダの心情とローダとジョンの関係が描かれ、SFというより「贖罪」の物語という色のほうが濃いので、SFものを期待した観客はがっかりしたんじゃないかな。ワタクシは特にSF好きというわけではないのでそれでも全然良かったですが。それにSFものって時に哲学的な要素を含んでいることがありますよね。この物語も「贖罪」とか自分たちの「存在」とかどこか哲学的な感じがしました。それにしても、この物語をSFと融合させようと考えるってすごい発想ですね。

ローダの清掃員の仕事仲間のおじさんが自ら目を潰したり、耳を潰したりしてしまった件に関しては詳しくは語られないけれど、それも彼が過去に犯した罪への「贖罪」の話ということでローダの心情とつなかっているのだと思いました。

結構終始暗~い感じなので、ブリットマーリングが美人さんじゃなかったら正直ずっと見てるのは辛かったかも・・・「贖罪」の話としてはよくできていると思いましたが。ローダがジョンと男女の関係になったときは「それはアカンやろー」と思ったけど、彼女は彼女なりにジョンを幸せにできるかもしれないと思ったんですよね。そして、多分自分自身も。そんな都合よく行くわけはないけど、彼女はまだ若いし、捕まった17歳で時が止まっているとしたらありえなくはないかな。でも、ローダの正体を知ったジョンとしてはたまらないですよね。自分の妻子を殺した女性を好きになってしまったわけですから。

最後にやってきたローダは何の目的でこちらに来たのかは分からないけど、こちらのローダとは違ってきちんとしたスーツを着て、キャリア女性っぽい風貌でしたから、やはりこちらの世界と「もうひとつの地球」とはシンクロしてなかったんだなということが分かります。ならば、ジョンも向こうの妻子に会えたはず。会えなかったとしても遠くから見たりすることはできたということでしょうね。向こうにも当然ジョンがいるわけですから、その妻子を自分のものにはできないけど、成長した息子やちゃんと生まれてきた赤ん坊の姿を見ることができただけでもきっとジョンは満足したでしょう。

これをだらだら上映されたら辛いところでしたが、93分とコンパクトにまとまっているところに好感が持てました。