ナチス関連の作品はよく見に行くのですが、今回はブレンダングリーソンとエマトンプソンが主役を演じるという時点で英語劇であるということが分かっていて少し微妙かなとも思いつつ、世界市場を考えて言語が英語になる作品はたくさんあるので最近ではあまりそこんとこは気にしないようにしている。
こういう題材なので、はばかられる部分もあるのだけど、映画作品の作りという意味では少し退屈だった。それだけヴァンサンペレーズ監督は変に脚色しないで作りたかったということなのかなと好意的に見たりもしているのですが。
オットーとアンナクヴァンゲルの夫婦は一人息子を戦争で亡くす。それ以来オットーは葉書にナチス政権批判を書いてベルリンの街角にそっと置くという抵抗運動を始める。ナチス政権批判を扇動したものには死刑が待っている。そんなことは百も承知で夫妻は地味ながらも抵抗運動を続ける。
その葉書を拾った市民は警察に届けた。エシャリヒ警部ダニエルブリュールは捜査に乗り出す。ナチス親衛隊はこのようなことはあってはならないとエシャリヒ警部にすぐに犯人を逮捕するよう圧力をかけてくる。
逮捕されるまで実に3年もの間に285枚の葉書を書き続けたオットー。そのうち警察の手に渡らなかったのはたった18枚だった。ナチスを恐れてか、本当にナチスを信奉していたか、そのどちらかは分からないが93、4%の割合で警察に届けられたことになる。エシャリヒ警部が捜査を始めたとき、部下がこんなものを書いても95%は我々の手に渡りますよと言っていて、大きく出たもんだと思ったのだけど、実際ほとんどその通りになってしまった。それを考えるとやはり独裁政権って恐ろしい。
クヴァンゲル夫妻はナチス政権に息子を殺されたから抵抗運動を始めたのであって、ナチスのユダヤ人や社会的弱者などの迫害や独裁主義的な政治という部分に反対して運動を始めたのではない。途中、夫妻が同じアパートに住むユダヤ人のおばあさんをかばうシーンがあったので、ユダヤ人迫害に賛同していたわけではないということは表現されていた。彼らは強い信念を持ってこの運動をしたというよりもどちらかと言えば息子を亡くして自暴自棄になった夫婦という印象だった。ただやはり自暴自棄という言葉だけでは説明できない普段の生活からのナチス政権への抵抗が彼らにはあったのだと思う。
オットーのメッセージをほとんどすべて読み、ナチス親衛隊の理不尽な暴力を目の当たりにしてきたエシャリヒ警部の心がかき乱されていく後半はなかなかに見どころだと思う。原作が完全なドキュメンタリーではなく実際の事件を基にしたフィクションであるということからエシャリヒ警部が自殺したのはフィクションの部分なのだろうなと勝手に想像しているのですが。
展開が静かすぎて眠くなってしまう部分も正直ありましたが、重厚なドラマではありました。
最新の画像[もっと見る]
- 否定と肯定 7年前
- オリエント急行殺人事件 7年前
- 奇蹟がくれた数式 7年前
- 怒り 7年前
- ドリーム 7年前
- ヘイトフルエイト 7年前
- AMY エイミー 7年前
- ジャングルブック 7年前
- 帝銀事件 死刑囚 7年前
- THE FORGER~天才贋作画家 最後のミッション 7年前
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます