シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

ニュートンナイト~自由の旗を掲げた男

2017-02-08 | シネマ な行

南北戦争時代のアメリカ。まだ少年と言えるほどの年齢の甥が徴兵され、目の前で殺されたニュートンナイトマシューマコノヒーは甥の遺体を故郷に届けるべく戦線を離脱。元々金持ちが奴隷制を維持するために奴隷も持たない貧乏人が代理で戦争しているという考えだった彼は、そのまま脱走兵となる。

南軍は軍隊のためと貧乏な農民から農作物や家畜を搾取していく。残された女性と子供たちに銃を持たせ、南軍を追い払ったナイトはお尋ね者となったため、南部の沼に逃げ匿ってもらう。そこでは逃亡した奴隷たちがひっそりと生活をしていた。

そこでナイトは逃亡奴隷たちと、同じく南軍から逃れてきた白人たちを率いて南軍の搾取と戦うことになる。

ナイトは生まれも育ちも南部だが、貧乏な家で奴隷制とは遠いところで育ってきたのだろう。金持ちの白人に搾取される奴隷たちと自分たちに何の違いもないという価値観を持っていた。そして、どこかカリスマ性のある彼は自然とたくさんの人を率いるリーダーとなっていく。こういうカリスマ性のあるリーダーをやらせたら、マシューマコノヒーのカッコいいことカッコいいこと。

南北戦争の陰にこんな人がいたなんてことはもしかしたらアメリカでも知られていなかったことなのかな。彼は南軍から奪取した土地で「Free State of Jones」という名前を掲げて独立宣言までしてみせた。(もちろん、北軍も南軍もそんなものを国とは認めなかっただろうけど)彼の国でのルールは「人はみな人」ということが基本にあった。黒人も白人もみな人。誰も自分が種を蒔いた作物を搾取されてはならない。そんな当たり前のルールがどんなに貴重なものであったか。

南北戦争時代のアメリカの合間合間に時折挟まれる裁判の様子。ナイトの時代から80年以上経ったアメリカ南部。最初はいまいち何のことか分からないのだけど、どうやらナイトと黒人女性レイチェルググ・ンバータ=ローの間に生まれた子の子孫が白人と結婚したかどで裁かれているようだ。いわゆるOne-Drop Ruleというやつで、8分の一黒人が入っている彼は白人の女性と結婚することは法律違反で罪に問われていた。

先祖のナイトが達成したかったことは3世代下の時代になってもまだ達成されていなかった。しかし、ナイトの血を引く彼は裁判に屈せず、結婚を取りやめないと言ったため投獄される。

ナイトの時代では、戦争が終わり奴隷解放宣言がなされたのもつかの間、リンカーン大統領の次のジョンソン大統領になると“年季奉公”と称し実質奴隷制を復活させる。選挙権を与えられた黒人たちもKKKの妨害に遭い、先導する者はリンチで殺されてしまう。

それでもナイトは北部に逃げることはせず故郷の南部に留まり続けた。(それゆえに3世代下の子孫が裁判にかけられるハメになるのだけど、おそらく彼も自分の故郷を離れようとは思わなかったのだろう)

映画としてはちょっと冗長な部分があり、後半少しダレてくるところもある。歴史の勉強としてはとてもいいし、心に残る力強い作品ではあるのだけど、140分の映画にしてしまうよりHBOあたりのミニシリーズにして歴史的な背景なんかもじっくり描いたほうが良かった題材だった気はする。



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