シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

エスター

2012-05-29 | シネマ あ行

ケーブルテレビで見ました。

3人目の子どもを死産で亡くしたケイトヴェラファーミガとジョンピーターサースガートはその赤ちゃんに与えるはずだった愛情を恵まれない子供にあげたいという思いから養子をとることを決める。見に行った施設で目に留まったのは絵の上手なエスターイザベルファーマンという少女だった。一風変わった服装をしているエスターだったが、夫婦は彼女との絆を感じ養子にすることにする。

エスターは耳の聞こえない下の妹マックスアリアーナエンジニアとすぐに仲良くなり、手話もすぐに上達するが、長男のダニエルジミーベネットはダサい服装のエスターを好きになれずにいた。

このあたりの兄妹&エスターの関係がうまく物語上で利用され展開していくのがうまい。そして、母親のケイトはピアノの先生であるにも関わらず、娘が聾唖者であるということや、(おそらく3人目の子を亡くしたショックからか)ケイトが元アルコール依存者で、アルコールに溺れているときに家の前の凍った池のところでマックスが事故に遭い死にかけたという過去、一見善き夫に思えるジョンが昔浮気したという事実があることなど、エスターの数々の不気味な悪事がこういった背景の中でうまく機能していく。エスターの不気味さを倍増させるような設定がとてもうまいのだ。

エスターは少し変わった服装をしてはいるものの、頭が良く、機転が効いて優しい子という外面で大人(特にジョン)を惹きつけ、多少悪い評判が耳に入ったとしても「あの娘に限ってそんなはずはない」と思わせてしまうところがある。ケイトがアルコール依存症だったこともあり、何かがおかしいと感じたケイトがジョンに何を訴えようとそれはパラノイアということで片付けられてしまう。

聾唖者の妹マックスを巧みに利用して遠くからケイトとジョンの電話での会話をくちびるを読ませて盗み聞きしたり、幼いマックスに犯罪の片棒を担がせて親にチクるのを防いだりとエスターのやり方は陰湿極まりない。いくらサイコパス、ソシオパスといってもまだたった9歳の子どもが?と思うと何か悲しい過去の話でも登場するのではないかと思いながら見ていたのだけど、(あ、これはワタクシが純真な子供というものを信じているからではなく映画的にという意味です)まさかあーいうオチだとは思わなかった。そう考えるとエスターがジョンに色目を使ったことも説明できるというワケか。精神科医を騙すのなんてエスターには日常茶飯事だったのかもね。

結局エスターのせいで夫婦はバラバラになってしまうわけだけれど、奥さんのことをちゃんと信じてあげていれば殺されなくて済んだのにねー。バカだなジョンは。そこにも一見円満そうに見える夫婦や家族の実はもろい絆にうまく付け込んでいくエスターの巧妙さと元の設定が生きている。

それにしても、エスターを演じたイザベルファーマンという女の子の演技が正体がバレる前もバレた後もすごくうまくて、今回は奇妙な役だったけど顔も美人だし、末恐ろしい気がした。

ここからはかなりのネタバレですが、エスターはホルモン異常で本当は33歳なのに9歳くらいにしか見えないという病気だったんですが、そのこととエスターのサイコなところは当然切り離して考えるべきで、彼女がサイコであることの原因などは語られていないので、ともすればこういう病気を持っている人から苦情でも来そうな内容だなと思ったけど、なんでもかんでも苦情を寄せる風潮というのもワタクシは好きではないので、「当然切り離して考えること」という良識を持っていたいものです。

少し映画から離れてしまいました。視覚的にもエグいシーンがあるし、ベッドシーンもあるせいで日本ではPG12、アメリカではR(17歳以下は保護者同伴で)というレートがついています。血しぶきが出るのとかが苦手な方は要注意かも。




「映画」もいいけど「犬」も好き。という方はこちらもヨロシクです。我が家の犬日記「トラが3びき。+ぶち。」



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