シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

エミリーローズ

2014-04-24 | シネマ あ行

公開時の宣伝で悪魔に取り憑かれた少女エミリーローズジェニファーカーペンターの話と思っていたので、こんなに法廷のシーンが多いとは知りませんでした。法廷劇プラスホラーというなんとも珍しいジャンルの作品です。

19歳の女子大生エミリーローズが自宅で死亡。彼女の悪魔祓いを行っていたムーア神父トムウィルキンソンが過失致死罪で逮捕される。弁護士のエリンブルナーローラリニーはこの裁判に勝ったら昇進させてもらうという約束で彼の弁護を引き受けることにした。ローラリニーは結構優等生的な演技が似合う人なので弁護士の役がぴったりでした。

エミリーは精神病だったのに、悪魔憑きを主張する神父によって薬の服用をやめさせられたために死亡に至ったとする検察イーサントマスキャンベルスコットと、悪魔祓いに成功することができずエミリーは死に至ってしまったが決して神父の過失ではないと主張する弁護側が対立する形で裁判は進行した。

この話は1976年に亡くなったドイツのアンネリーゼミシェルの死を巡る裁判が基になっているそうで、公開時のコピーも「この映画はホラーではない。実話である」だった。もちろん、映画化の際に色んな部分で修飾されているので、あくまでも「基にした」と考えるほうがいい。映画のほうでは弁護側は悪魔はいる可能性もある。それは誰にも分からないのだから。という論点で攻めていくが、おそらく実際の裁判ではそういうことが焦点ではなく、家族や神父の過失致死について論じられたのだろうと勝手に推測している。

さて、作品のほうですが。検事局としては、神父というデリケートな被告人を一刀両断に裁いたと世間から思われないために担当検事には敬虔なメゾジストを選んだ。一方、弁護士のエリンブルナーは自身を不可知論者と言い、不可知論者が何かってのはちょっとググっていただくとして、まぁとにかく神だの悪魔だの宗教だのっていうそんな実態の分からないものは信じていないという立場の人だ。その2人が自分の信条とは正反対の主張でやり合うという面白さがあった。

結局のところ、弁護士の論点としては、悪魔なんてものがいるかいないかは知らないけど、その可能性は本当にないか?そして、少なくとも神父とエミリー自身がそれを信じ善意において医師を遠ざけ悪魔祓いをしたとしたら、それは過失致死には当たらないんじゃないのか?ということだった。これを裁判官相手にやったら、鼻で笑われるだけかもしれないけど、陪審員が結論を出す以上、どんな形であれ陪審員の心に響けばいいわけで彼女の戦略は間違っていなかったと思う。実際有罪にはなったけど、“刑期の最終日は今日”という大岡裁き的な結論に至る。

エミリーに悪魔が取り憑いている様子や悪魔祓いの様子は映像的にはやっぱりちょっと怖い。大学の教室で隣に座っている学生の目から突然黒い液体がどばーっと流れるシーンはマジでびっくりしてしまった。それと法廷が交互に映って見ているこっちは気持ちの切り替えが忙しいが、趣向的にはなかなか面白かった。不可知論者の弁護士までこの裁判に影響されて悪魔的な体験を夜中にするってのはちょっとおいおいって思ったけど、人間の思い込みや潜在意識にある恐怖心からそういう現象を引き起こしてもおかしくないのかもしれない。

しかしまぁ、エミリーは聖母マリア様に会って、悪魔の存在を世に知らしめるために悪魔に憑かれた状態でいることを選んだっていう感動的な(?)ラストにはまいった。まさかそんな展開だったとは。神父はエミリーのその姿勢に心底感動したんだろうね。だからこそ、エミリーのことを法廷で語りたかったんだね。

ワタクシなんかは信仰心のかけらもないから、悪魔が6人も小娘に取り憑いて、できるのはせいぜいその娘に虫を食わせたり、大声で叫ばせたり、痙攣を起こさせたりする程度なの?ってちょっと笑えるなぁとも思ってしまった。悪魔だったらもっと恐ろしいことを引き起こせばいいのにねぇ。って真剣に突っ込むこともないんですが…

ワタクシは法廷ものが好きなので良かったですが、ホラー映画だと思って見た人はがっかりするかもしれません。本物のアンネリーゼミシェルのドキュメンタリーがあるそうなので、そちらも見てみたいと思います。



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