2時間半。なんだこの異常な緊張感は。。。さすが、キャサリンビゲロー監督。
テロ組織関係者の尋問の現場にやって来るCIAアナリストのマヤジェシカチャスティン。映画はいきなり拷問シーンから始まる。尋問官ダニエルジェイソンクラーク以外は覆面をしている中、マヤも覆面を取り堂々と容疑者に顔を曝した。一見か弱そうな女性の前で繰り広げられる拷問。普通の女性なら当然耐えられるシーンではない。しかし、マヤは淡々とした表情で拷問を見守っていた。
マヤは若いが非常に優秀なアナリストで、莫大な予算を掛けながら一向に進まないビンラディン追跡に派遣されてきた。拷問された囚人の心理をうまく利用して情報を引き出すマヤ。ビンラディンの連絡役をしていた男の手がかりを追っていく。
彼女は自分も命の危険にさらされながら追跡を続ける。ある作戦でCIAの同僚が自爆テロの犠牲者となってしまってからはまさに狂気に似た執念を燃やすようになっていく。
ビンラディンを追い詰める10年にも及ぶ歳月をビゲロー監督は「ハートロッカー」のときと同じように実に淡々と綴っていく。物語は時系列に並んでいるのでややこしくはないが、マヤの10年間を断片的に語っていく手法はともすれば観客を置いてけぼりにしてしまう恐れがあるが、ビゲロー監督独特の緊張感とマヤを演じるジェシカチャスティンの鬼気迫る演技でまったく飽きることがない。2時間半まさに文字通り画面に釘付けにされてしまう。
ジェシカチャスティンの鬼気迫る演技と書いたが、彼女はCIAの上司カイルチャンドラーを相手に怒りを爆発させたり、CIA長官ジェームズガンドルフィーニを相手に堂々と自分の意見を述べたりするシーン以外は実はだいたいのシーンにおいて「静」の演技のほうが多い。その静の演技の中で彼女が瞳の奥に見せる決意がものすごい。高校でCIAにリクルートされたほどの人物だから相当優秀な人なんだと思うんだけど、そういう人特有の孤高の精神が彼女の瞳には宿っていた。
CIA長官の前で「この隠れ家にビンラディンがいる確率は何%か?」と問われ、男たちがビビッて60%とか適当なことを言う中でマヤだけがはっきりと「100%。でも100%だとビビるだろうから95%」と言うシーンがめちゃくちゃカッコ良くてしびれてしまいました。
隠れ家を発見してから、政治家たちがなかなかGOサインをくれず苛立つマヤの代わりに説得に当たっていた上司を演じたマークストロングもすごくカッコ良かったですね。最初は彼も政治的な駆け引きに負けてしまうタイプなのかと思っていたら違っていましたね。
いざ、シールズが襲撃するときの映像がまたすごくてビックリしました。突入作戦となってから、あそこまで長い時間をかけてまるで作戦を完全に再現しようとしているかのような映像を見せられるとはまったく思っていなかったので。結構ショッキングな映像でした。
ブッシュ政権からオバマ政権に変わって、拷問ができなくなり囚人などから得られる情報が減ってしまいCIAはオバマを憎んだみたいですね。そのあたりもこの映画には描かれています。そして、ビンラディン殺害をさも自分の政権の手柄のように発表したオバマ大統領にも当時は批判がありました。
ワタクシはこの映画のデキとは関係ない話ですが、オバマ大統領がビンラディン殺害を得意げに発表した時とても落胆したことを覚えています。核廃絶の演説をしたような大統領がテロ組織のリーダーを軍の極秘任務で殺害するのかと。アメリカに彼を捕らえて裁判にかけるという選択肢は1ミリたりともなかったのでしょうか?それはいまでもワタクシの中で大いに疑問です。
映画の最後の特殊作戦で目の前で親や親戚のおじさんおばさんをアメリカ軍に殺された子供たちはやがて“ジハード”という言葉を覚えるでしょう。結局のところ憎しみの連鎖をまた長引かせたに過ぎないのではないか。
そして、この映画はそれを訴えるものなのか?それとも、ビンラディン殺害に貢献した女性を称えたかったものなのか?そのあたりのビゲロー監督の意図が分からなくて少し混乱している自分もいます。
最新の画像[もっと見る]
- 否定と肯定 7年前
- オリエント急行殺人事件 7年前
- 奇蹟がくれた数式 7年前
- 怒り 7年前
- ドリーム 7年前
- ヘイトフルエイト 7年前
- AMY エイミー 7年前
- ジャングルブック 7年前
- 帝銀事件 死刑囚 7年前
- THE FORGER~天才贋作画家 最後のミッション 7年前
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます