シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

人生、ブラボー!

2013-02-06 | シネマ さ行

予告編を見て面白そうだったので行きました。

42歳のダヴィッドパトリックユアールは若いときに小遣い稼ぎのため、693回の精子提供を行いその結果533人の子の父親になっていた。彼がそれを知ったのはそのうち142人の子どもたち(年齢的にちょうど青年期の子たちばかり)が父親の身元を開示するように求める裁判を起こしたと知ったときだった。

初めはこんなの冗談じゃない!と憤るダヴィッドだったが、弁護士アントエワーヌベルトランに渡された原告の書類から抜き取った1枚がたまたま有名なプロサッカー選手だったため、有頂天になりそれをきっかけに他の子どもたちにも自分の身元は隠してこっそり会いに行き始める。

ダヴィッドは借金もあるし、家業の肉屋を父親と兄弟と一緒に経営しているが、いつもさぼってばかりでうだつがあがらない。恋人ヴァレリージュリールブレトンは妊娠したと言うがダヴィッドと育てる気は毛頭なく、一人で育てるから消えてとまで言われるような男。

それでも、なんだかダヴィッドは憎めない男なんですよね。なぜか彼を嫌う者はいないっぽいし、見ているこっちもダヴィッドに対してイヤな感情は持たなかった。

そんな無責任男ダヴィッドが、ひとりひとりの子どもたちと正体は隠したままでも少しずつ関わっていく中で、徐々に彼の中に父性が生まれ始める。原告となっている子どもたちは142人いるので、さすがに全員は紹介されないが、最初のプロサッカー選手を筆頭に俳優の卵の子がオーディションに行く助けをしたり、ジャンキーの子が立ち直るきっかけを与えたり、スーパーのお客様係の子にいっぱいのチップをあげたり、ストリートミュージシャンの子の演奏をずっと聞いていたり、障害を持つ子のところに面会に行ったり、といったようなエピソードがそれぞれにユーモラスで心温まる。

それと同時にダヴィッドの友人で弁護士の4人の子持ちシングルファーザーの親子関係とか、ダヴィッドの家族、恋人との関係がうまい具合に挿入されて、ドラマに膨らみをもたせているし、結局いつも冴えないダヴィッドに文句ばかり言っていたお父さんが名乗り出ようかどうか迷っているダヴィッドの背中を押してくれるシーンにはほろりと涙までしてしまう。ううう、とーちゃん、あんた、良い人だねぇって。

設定そのものが荒唐無稽だし、子どもたちを引き取った養父母とか子どもたちの中での意見の相違とかそういうややこしい話は一切排除して、主にダヴィッドの人生にスポットを当てているところは、評価の分かれるところだと思うけど、ワタクシとしてはシンプルな人生賛歌で気に入った。

最後にデヴィッドの恋人に赤ちゃんが生まれてたくさんの異母兄弟姉妹たちが祝福してくれるシーンが最高でした。そして、ダヴィッドとのひとりひとりのハグも良かったし、全員で巨大なハグをするシーンも笑っちゃうけど、同時にじーんともしました。あんな巨大なハグを上から撮った絵というのはある意味映画史に残るかも。なんかそれを見ているだけで心が洗われる気がして、やっぱりハグには心を清浄化する効果があるなと改めて思いました。



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