シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

ヘルタースケルター

2007-02-28 | シネマ は行
チャールズマンソンのこともシャロンテート事件のこともなんとなくは知っていたけど、ここまでエグい話やとは思っていなかったので、この作品を見てとてもショックを受けた。

ネットで検索すると「ヘルタースケルター」という映画は1976年の作品しかヒットせず、ワタクシの見た2004年バージョンはアメリカのヤフーで発見したのだけど、そこの情報によると1976年のものはテレビ映画だったようで今回のものもそうなのかもしれないけれど、はっきりしなかった。1976年版は裁判の様子にスポットが当てられていたらしいが、2004年版では、マンソンファミリーの様子やその犯行、チャールズマンソンジェレミーデイビスの発言などにスポットが当てられていた。

マンソンファミリーの生活の様子もかなり詳細に描かれていたが、こういうカルト集団の典型である強烈なカリスマ性を持ったリーダーとそれに盲目的に従う信者たち、そして、そこへ新しく入った者の戸惑いなどが分かりやすく描かれていた。彼らの生活ぶりは外から見るとかなり疑問に思う部分が多いのだが、洗脳されてしまうとそんなおかしな部分も見えなくなってしまうのだろうと思うとかなりゾッとする。マンソンファミリーには男性も女性も同じ数くらいいて、ドラッグをやって乱交状態になったりもしていたし、不必要な発言で殴られたり、女性が食事を口にできるのは犬が食べ終わった後、とかいうまったく理不尽なルールがあったにもかかわらず、ファミリーの女性たちの中でどっぷり漬かってしまっている者たちはマンソンに惹かれ自分たちが虐げられているという感覚を持っていない。その中にも、新しく入った子クレアデュバルはかなり戸惑いを感じていたし、ファミリーの暴力性に怯えて逃げられなくなっていた子たちもいたようだ。

チャールズマンソンは黒人と白人の戦争が起こると予言し、それを「ヘルタースケルター」と呼んでいたようだが、それはビートルズの「ホワイトアルバム」を自分へのメッセージと思い込んだところから始まったらしい。そして、自身も曲を書いたりして、ビーチボーイズのアルバムに参加したりしていたなんてまったく知らなかったので、めちゃめちゃ驚いてしまった。特に、ビーチボーイズに詳しくないワタクシはビーチボーイズと言えば、なんか能テンキなハッピーゴーラッキー的なイメージしかなかった。そんな彼らにチャールズマンソンが陰を落としていたとは…

その「ヘルタースケルター」とやらは、黒人が白人を虐殺し始めるということらしく、実際にはそんなことが起こらないから、シャロンテート他何人もの殺人はマンソンファミリーが黒人の代わりに裕福な白人を殺害して、それを黒人のせいにし「ヘルタースケルター」をおっぱじめようという、完全にイカレタ犯行だったわけであるが、それにしてもその殺害の方法が一人一人、何十回も刃物で刺して殺していて、その血で壁にメッセージを残すという残忍極まりないものだったなんて。まさか、ここまでと思っていなかったワタクシは本当に度肝を抜かれたし、一人で見ているのが怖くなってしまった。

この犯行が明るみに出たとき、もっとも盲目的にマンソンを崇拝していた女の子は、警察に捕まっても自分たちのしたことが正しいことだと信じきっているから、ベラベラと犯行の内容をしかも得意げに話す。(これは、見ていて滑稽でもあり、もっとも恐ろしいところでもあったが、ある意味でこの集団の中では彼女の行動がもっとも“正しかった”のかもしれない)一方、リーダーであるマンソンは、なかなか犯行のことを話さない。しかも、彼は自分では一切手をくだしていないからその点もやっかいだ。こういう点もまさにカルト集団の典型的な例を示しているようだ。

そして、最後に驚かされたのはワタクシは彼がとっくに死刑になって死んでいると思っていたのだが、現実には彼は仮釈放の可能性がある終身刑に処されているという。おそらく彼が仮釈放になることはないだろうと考えられているみたいだけど、もし仮にそんなことにでもなったら、世界中に彼のシンパがいることを考えるともの凄く怖い。。。

それにしても、こんな男にどうして惹かれるんだろうと不思議でしょうがなかったのだけど、映画を見ているときにワタクシもふと「まぁ、言っていることの中には正しいこともあるなぁ」などとぼんやり思ってしまっていた。そして、ワタクシがそう思った矢先、クレアデュバル扮するマンソンファミリーに恐れをなして逃げ出した女性が言った。
「チャールズマンソンは真実の中から嘘を作り出すのがうまい」この瞬間ワタクシは“ハッ”とした。そうだ。「正しいこともあるなぁ」なんてぼんやり思っているうちにその隙間に真実の中から巧妙に作り出した嘘が入り込んできてしまう。こういう心理って恐ろしい。(マンソン自身がそれを“嘘”だと思っていたかどうかは不明だが)

映画として“良い”と言ってしまうには内容が内容だけに抵抗があるが、マンソン役のジェレミーデイビスの演技は素晴らしいし、残虐映像に気をつけて、見てみる価値はある作品だと思う。


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