奇跡の緊急着陸でたくさんの命を救ったパイロットウィップウィトカー機長デンゼルワシントンは英雄か?それとも犯罪者か?このコンセプトが面白そうだと思い見に行きました。
まーーーーとにかく冒頭からの飛行シーンがすごいよーーーー!!!もおおおOMG!!!!!もうしばらくは飛行機乗れないよ。
離陸直後の乱気流を乗り越えたと思ったら、機材の調子が悪く機体が急降下を始めた。これをなんとかするためにウィトカー機長は機体を180度回転させ背面飛行することで機体をグライドさせ住宅地を避けその先の草原にもう一度機体を戻して不時着。クルー2名、乗客4名は亡くなってしまったものの、100名もの命を助けた。
彼は英雄と称えられるが、事故調査委員会の調査でウィトカーの血中アルコール濃度が非常に高かったことが分かる。ウィトカーは前日にクルーの一人トリーナナディーンヴェラスケスとしこたま飲み一夜を共にし、目覚めにコカインをやっていた。しかも、機内でも客用の小さいウォッカを2本オレンジジュースに入れて飲んでいた。観客には徐々に分かっていくのだが、彼は完全なアル中で周囲の人間もそれを知っていたようだ。
冒頭の迫力ある飛行シーンから一転、ストーリーはウィトカー個人のアル中との戦いにスポットが当たっていく。彼は事故直後は自らお酒を断とうとしていたが、事故調査委員会に血中アルコール濃度を指摘されてからはヤケになりまた飲むようになっていた。入院中に知り合ったオーバードーズで入院していたニコールケリーライリーと付き合うようになるが、彼女が自助グループに入りドラッグやアルコールから抜け出そうとしている一方でウィトカーはどんどんお酒に溺れていった。最初ニコールの役は必要?とも思ったけど、自分の意志で抜け出そうとする彼女とウィトカーとの対比が良かったし、お酒のためにいくらでもウソをつくウィトカーと見せるのにもニコールは必要だったんだなと思いました。
「英雄から一転犯罪者に」という劇的な展開を期待していたのだけど、世間やマスコミが彼を英雄と持ち上げた時期の描写がすごく少ないので分かりにくい。彼はずっとマスコミをシャットアウトしていたから、世間がどんなふうに彼を持ち上げて最後には落としたのかという部分が薄い。おそらく、ロバートゼメキス監督が焦点を当てたかったのはそこではなかったんでしょうね。ワタクシはキャッチコピーの印象から、マスコミや世間がいかに自分勝手にヒーロー像を作り上げ、それに沿わないと分かるとひどく罵り始めるというマスコミ批判的な部分があるのかなと想像していたので、ちょっと肩すかしでした。
物語はそのような社会批判的なものよりも、ウィップウィトカーという一人のアルコール依存症患者が立ち直っていくまでのお話になっています。もちろん、あの事故で彼の技術なしには誰一人として助からなかっただろうし、6名の人が亡くなったのも彼の飲酒やドラッグとは関係はないと思いますが、彼の私生活そのものはもうムチャクチャでしたね。しかし、あんな頼んない副操縦士ケンエヴァンスに「助かったのは神様のおかげです」とか言われたら、「神様なんかのおかげじゃねーよ、俺のおかげだよ」と言いたくなるような気持も分からないではないですね。この映画の中では随所に神様がどうのこうのっていうのが出てきたんですが、それはウィトカーが信心がないことを責めたかったのかちょっとその辺は意図が分かりませんでした。
最後の公聴会の前日にも気を失うくらい飲んでしまって、時間がない中で頭をスッキリさせるために弁護士ドンチードルと組合のエライさんブルースグリーンウッドがウィトカーにコカインを吸わせるところは、クエンティンタランティーノあたりの映画だったら大笑いしちゃうシーンなんだけど、この作品ではまったく笑えない。当たり前だけど。。。
最後に調査委員長メリッサレオに機内から見つかったウォッカのボトルに関して、死んだクルーのトリーナが飲んだと思うか?と質問されたとき、ワタクシは映画的には"Yes."と言ったほうが面白いなぁと思いながら見ていたんですが、これはワタクシが意地悪だからなんでしょうね。良心的なロバートゼメキスが監督なんだからあそこで"Yes."と言うのは考えられませんよね。もっとブラックな監督だったらアリだっただろうけど。事故調査院長役を務めていたのがメリッサレオだったので少し驚きました。彼女に似ているなぁと思ったんですが、どうも彼女はホワイトトラッシュな役のイメージが強くってこんなエリートのイメージがなかったので。でも、意外にとてもよく似合っていました。
全体的なデキとしては期待したよりも良くはなかったと思いますが、デンゼルワシントンほどの人ですから、彼が引っ張っていく2時間はやはり見ごたえはありました。