シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

マーガレットサッチャー~鉄の女の涙

2012-03-23 | シネマ ま行

今年のアカデミー賞主演女優賞に輝いた作品。さっそく見に行ってきました。

ワタクシが物心ついたときからイギリスの首相と言えばサッチャーさんメリルストリープ。その後はメージャー、ブレアと続くけど、やっぱり何と言っても印象が強いのサッチャーさんですね。

サッチャー首相の映画ということで、彼女の生い立ちから娘時代、政治家、首相時代と続いていくのかと思いきや、認知症になった現在のサッチャーの様子が中心に描かれていた。

最初、夫ジムブロードベントが普通に登場して会話しているからなんの違和感もなく見ていたら、実は夫はとうに亡くなっているのに、認知症の影響からか、夫の姿が彼女には見えているということだった。現実と妄想が分からなくなっていく中、過去の出来事が頭に浮かぶ。

時系列はバラバラだけど、彼女が地方の政治家であった父親アルフレッドロバーツイアングレンの考え方に大きく影響されたということはよく伝わってくる。実際彼女はよく父親が必要なことはすべて教えてくれたと公言していたそうだ。

あの時代、労働組合とのせめぎ合いがあり、IRAのテロが続き、フォークランド紛争があり、冷戦終結があり、と10年以上首相の立場にいた彼女には数えきれないほどのプレッシャーがあったことだろう。フォークランド紛争とか人頭税など疑問に思うところは多々ありますが、彼女の業績に関する賛否はここで議論しないでおきます。映画ではかなり肯定的に映し出されていたとは思います。まぁ、彼女自身が振り返っている形なんでそれは仕方ないのかもしれません。映画的な話で言えば、イギリス映画と言えばケンローチに代表されるような左派の労働者階級の映画を思い浮かべるワタクシとしてはやはり、サッチャーは敵!っていうイメージが強いんですけどね。それでも映画の中で「一日たりとも戦っていない日はない」と彼女自身が言っていたように、まさに最前線に立って戦い続けた彼女の強さには敬服しましたね。

映画の描き方については、政治家としてよりも一人の人間としての彼女を垣間見るようになっているので、もっと彼女の政治家としての姿や周囲の評価などを知りたかった人にはちょっと物足りないものになっていたかもしれないけれど、ワタクシは結構好きでした。

この映画を語るにはやはりメリルストリープの演技についてというのが一番にくることになると思う。彼女は実に17回もアカデミー賞にノミネートされているが、それでも実際の受賞となると1982年の「ソフィーの選択」以来となった。今回、彼女が30年振りに受賞したわけだけど、これには本当に納得する人が多いんじゃないかと思う。メリルストリープという人はどんな作品に出てもメリルストリープという存在感が消えることはないのに、かつ別の人に見えてくるという魔力を持っていると思う。彼女の演技なくしてはこの映画はまったく成り立たなかったと思うけれど、それプラス、アカデミー賞のメイキャップ賞を受賞していて、それがまたまた納得の素晴らしさだった。老けメイクというのはハリウッドの技術ではもう当たり前になっているけど、この作品の老けメイクは本当に自然過ぎて怖いくらい。

夫の幻を演じたジムブロードベントも同じように素晴らしかったです。彼はある種のチャーミングさと辛辣さを絶妙のバランスで兼ね備える演技ができる人だと思います。二人の若き日を演じたアレクサンドラローチハリーロイドも良かったですね。

思っていたよりも映画館がガラガラだったんですが、あんまり人気がないのかな…?これから行かれる方は背景を少しだけ勉強して行ったほうがより楽しめると思います。


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