オリヴィエ賞とトニー賞を受賞した舞台劇をロマンポランスキー監督が映画に仕上げた作品。舞台劇だけあってまさに舞台はオープニングとエンドクレジット以外はアパートの一室。登場人物は4人だけ。発端はブルックリンパークで11歳の少年同士が喧嘩したことにある。加害者の両親が被害者の両親の家に話し合いに行く。
ペネロペロングストリートジョディフォスター。被害者の母親。アフリカの内戦・虐殺などについての本を書いている。アートに造詣が深く、世界の問題に目を向けモラルを持ってコミュニティの人間同士は助け合うべきという信念を持っている。
マイケルロングストリートジョンC.ライリー。被害者の父親。日用品店を営んでいる。特に人生に野心もなく平凡が一番と思っている。げっし目が嫌いで娘の飼っていたハムスターを道端に捨てたりできる。
ナンシーカウアンケイトウィンスレット。加害者の母親。投資会社に勤め、家や子供のことをすべて取り仕切っている。完璧なファッションに身を包み一見隙のなさそうな雰囲気。良識派な感じでハムスターを捨てたマイケルを軽蔑する。
アランカウアンクリストフヴァルツ。加害者の父親。弁護士。家庭を顧みずすべて妻にまかせっきり。話し合いの最中にも何度も携帯が鳴り仕事の話ばかりしている。
始まって早々、話し合いは終わりという雰囲気でカウアン夫妻はアパートを去ろうとしている。のだが、、、コーヒーでもいかが?という誘いにまたリビングに戻ってくるカウアン夫妻。子供の喧嘩を解決しようと話してはいるが、なごやかな雰囲気の中にもお互い実は納得しておらずチクリチクリとやりあい始める。
このあたりまではねー、まぁ子供のいる方にはちょっと分かる部分もあるんじゃないでしょうかね。子ども同士のこととは思いつつケガをしたほうとしてはやっぱり許せない気持ちもあるだろうし、ケガをさせたほうにしても何か理由があったからじゃないかと相手の子どもを責めたいような気持ちにもなると。
それにしても、その間にもアランの携帯がガンガン鳴ってアランも悪びれず取って大声で話しているのがすごくイライラします。もちろんその場にいる全員もイライラしてくるわけですが、ここでちょっと西洋人っぽいなと思ったのはアランの妻ナンシーが決して夫の行動を相手夫婦に対して謝らないんです。日本人ならここですぐに「(夫がこんなんで)ごめんなさいね」と言うと思うんだけど、ナンシーの性格もあるとは思いますが、非常識な夫に対してナンシーも一緒に腹を立てるだけで相手夫婦に謝ったりはしません。
お互い色々とチクチクやりあっているうちにナンシーが気分が悪いと言いだし、なんとリビングルームでゲロ(失礼!)をぶちまけてしまいます。この大事件が起きて、マイケルがお酒を飲み始め全員が一緒に飲み始めたあたりから一気に話し合いはカオスとなってしまいます。
被害者親vs加害者親だったのが、一人の発言から急に男vs女になったり、妻vs夫になったり、男vs男、女vs女ととにかくめまぐるしく争いの内容が変わっていく。
ゲロの他にもナンシーが怒ってアランの携帯を花瓶にドボンしてしまったり、ナンシーの鞄をペネロペが放り投げたりとアクションのほうも色々と忙しい。ただなー、途中からは結局みんな酔っちゃって、酔っ払いのたわごととか泣き上戸笑い上戸みたいになっちゃうのがワタクシとしてはイマイチでした。こういうセリフだけが命みたいなお話では、しらふでお互いにチクチクやりやって言葉の裏を探り合っているほうが面白いと思うんですよね。まぁ、酔っぱらって泣きながらヒステリックに叫ぶジョディフォスターというのも見ものでしたけどね。この4人の演技合戦はやはり楽しく見ることができました。ケイトウィンスレットのファンとしてはやはり彼女が一番うまいななんて思っちゃいましたけど、クリストヴァルツのイヤらしい演技もさすがでした。
結局大騒ぎしたあとのエンドクレジットでくだんのハムスターは野生でたくましく無事生きていたし、喧嘩した子供同士は無邪気に一緒に遊んでいるというオチがついていてその皮肉にニヤッとしながら劇場を後にしたのでした。
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