シェイクスピアの悲劇「コリオレイナス」を現代版にしてレイフファインズが自ら監督し、主演した作品。
ローマの英雄コリオレイナス(ファインズ)は執政官になる直前に民衆の怒りを買い、ローマを追放される。コリオレイナスはそれまでずっと戦ってきた小国のリーダー、オーフィディアスジェラルドバトラーのところへ行き、ローマに報復するために小国の軍に入る。ローマに攻めてきたコリオレイナスに対して母ヴォルムニアヴァネッサレッドグレイヴと妻ヴァージリアジェシカチャスティンは情けを請い、両国は和平に至る。ローマを手中に収めることができなかったオーフィディアスはコリオレイナスを暗殺する。
元がシェイクスピア悲劇ですから、はっきり言ってお話はめちゃくちゃです。シェイクスピアって古典であるがために妙に難解に思われていると思うんですけど、詩的なセリフの難解さ以外で言うと物語のすじとしては結構むちゃくちゃなとこあります。娯楽がなかった時代の貴族も平民も一緒に楽しめる物語というわけで、悲劇となるととことん復讐に燃える登場人物たちがやたら執念深く恨みを抱いているかと思えば、一人の人の忠言でいきなり180度意見を変えたりだとか、妙に単純な思考回路だったりすることが結構あります。だから、シェイクスピアを見るときにはそういうつもりで見ないと「なんでそうなるわけ?」みたいなことが沢山起こってしまうのです。
この映画に関しても、コリオレイナスに怒っている民衆たちが彼の演説によってころっと彼の味方になったかと思うとその直後に他の政治家たちの扇動に乗ってコリオレイナスを追放してしまえーーー!なんてことになったりします。舞台が現代なだけ、これは世論なんてすぐに意見を変えるアホな連中の意見と皮肉っているのかとうがった見方をしてしまいました。
コリオレイナスという人は軍の英雄でありながら、家に帰ると強い強い母に精神的には支配されているようなマザコン男。この母親のキャラクターというのもかなりシェイクスピアっぽいですね。ヴァネッサレッドグレイヴの演技がもうさすが。
そして、コリオレイナスとオーフィディアスのライバル関係の描き方がまた何と言うか、「これはゲイ萌えムービー?」と途中で疑ってしまうような展開。現代の戦いらしくマシンガンやロケットランチャーが炸裂する中、この二人の対決はなんとナイフ。二人でくんずほぐれつ、もう愛し合っちゃってるの?っていうくらい激しく抱き合いながら息を荒くして戦ってくれます。コリオレイナスが自分の軍に入ってきたはいいけど、やたらと傲慢に振る舞われて怒るオーフィディアスもなんだか愛憎あいまみれって感じで。最後にとどめを刺すシーンもなんだかメイクラブ?的な。もちろん、そんなつもりはないとレイフファインズに怒られるかもしれませんが、そういうふうな見方をする人も結構いるんじゃないかなぁ。
現代劇なのに、「追放」とか「執政官」とかセリフ回しは古典のままとか、そういう部分で違和感を拭い去れないと感じる方には全然ダメな作品だと思います。ワタクシはシェイクスピアの「なんでそうなんねん?」みたいな展開が結構好きなので面白く見ることができました。
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