シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

ケープタウン

2014-09-16 | シネマ か行

王子様的な印象で人気のあるオーランドブルームの汚れ役ということで興味がありました。

あのオーリーが飲んだくれで女にだらしない刑事役ということで、どーよ?と思っていたのですが、まずそのことに関して言うと、かなりハマっていて違和感ありませんでした。無精ひげでだらしない恰好で目も常に充血しているような感じで、切れたら何しでかすかという雰囲気もありつつ、でも悪い奴じゃないっていう雰囲気をうまく出せていたと思います。酔っ払いの疲れたメイクのせいか高校生の父親というのも変には感じませんでした。くたびれた刑事とはいえ、いままでで一番筋肉隆々だったんじゃないでしょうか。正直ワタクシはいままでオーリーがあんまり好きじゃなかったのですが、この作品の彼がいままで一番好きです。

ケープタウンで若い娘が撲殺されるという事件が起きオーリー扮するブラアンエプキンとアリソケーラ警部フォレストウィティカーが担当する。その娘の体内には麻薬が残っており、ここのところスラムで頻発している子供の失踪事件の現場で残されていたものと同じ麻薬だった。

このアリソケーラ警部という人の過去が映画の冒頭で流れていて、幼少時代父親が目の前で焼き殺されたというトラウマを持っているらしい。そして、その現場から逃げたアリ少年を警察が追い、警察犬に急所を噛まれた上に警官たちに暴行を受け、どうも性的に不能になってしまったようだ。

事件を追ううちに、スラムで失踪している子どもたちは薬物の人体実験に使用されていることが分かり、これは単なる麻薬売買の事件ではなく、もっと大きな組織ぐるみの犯罪であることが分かってくる。

舞台が南アフリカということで、やはりアパルトヘイトが絡むお話なのだけど、黒人で成功しているアリソケーラ警部は、マンデラ氏が提唱したように、白人たちを許し、お互いに融合する社会を作りたいという考えの持ち主であることが同僚たちとの会話から分かる。しかし、その彼を持ってしてもこのスラムの子どもたちの命を実験材料としか考えていない悪党どものことは許せなかったようだ。

結局切れたら怖そうだなと思われるブライアンが最終的には法を守り、この事件の黒幕に手錠をかけたのに、アリソケーラ警部はもう一人の黒幕を追い詰め殺してしまう。このクライマックスがなかなかに皮肉に思えた。

少女殺害事件が過去のアパルトヘイトの亡霊のような黒い組織につながっていくという筋書はうまくできていて楽しめました。おぉ、そんなふうにつながっていくのかと。

ただ、わざわざ冒頭で描かれているアリソケーラ警部の過去と、彼の人となりやこの事件との関連がいまいちちぐはぐな気がして、ソケーラ警部の過去とか性的不能という描写があまり必要のないものに見えたのが残念だったな。彼のじとーーーーっとした雰囲気はとてもよく出ていたしこの作品にマッチしていたとは思うのだけど。

世界の中でもワーストに入る犯罪多発地域のお話なだけに、アメリカのスラムなどを描いた作品よりもまだ一層暴力も過激で不気味な怖さがありました。

南アフリカは様々な言語が公用語として存在しているし、共通語としての英語もアメリカやイギリスの英語とは少し違っていたりして、この映画を英語圏の人たちも字幕なしで見られたのかなぁと余計な心配をしてしまいました。


かぞくのくに

2014-09-08 | シネマ か行

これも公開時に見逃した作品。ケーブルテレビで見ました。ヤンヨンヒ監督の実体験を基にした作品。

北朝鮮への帰国事業で25年前に日本から北朝鮮に渡った長男ソンホ井浦新。このたび病気の治療のために日本に一時帰国することが許され、アボジ(父)津嘉山正種、オモニ(母)宮崎美子、妹リエ安藤サクラは大喜びでソンホを迎える。

帰国事業について分からない方にはググッていただくとして…ワタクシもこのお話が始まってしばらくはちょっと納得のいかないものがあった。25年振り?ソンホっていくつよ?どう見ても40歳代前半にしか見えない。ならいくつの時に日本にいる家族と別れて単身北朝鮮に渡ったの?という疑問が頭をもたげていたからだ。

しばらく見ているとどうもこの家族のアボジは、北朝鮮の社会主義と思想を同じくしているらしいということがアボジの弟テジョおじさん諏訪太朗の話から分かってくる。テジョおじさんはどうやら日本で商売に成功しお金は随分持っているっぽい。ソンホとリエのことは自分の子供のように可愛がっており、ソンホの帰国のために北朝鮮側に随分寄付もしたようだし、ソンホにもお小遣いと言ってそこそこのお金をぽんと渡してくれる。テジョおじさんはビジネスが成功している分、資本主義万歳と思っているようだけど、アボジはそうではないようだ。そのアボジの思想のためにソンホはたった16歳で単身北朝鮮に渡った。そのことがはっきりと分かるのはお話が後半になってからなので、その間さきほど書いた疑問が気になって仕方なかった。

一時帰国の期間は3か月。オモニはあまり大はしゃぎはしていないが、長男が帰って来て一番嬉しいのはもちろんオモニだっただろう。アボジは病気の治療のためにも滞在を半年までなんとか延ばせないかと働きかけをしていた。妹のリエは一番はしゃいでいて、お兄さんと買い物に出かけたり同窓会の準備をしたりして、お兄さんの当時の恋人スニ京野ことみと会わせたりなんかもしていた。

しかし、ソンホはそんなリエのはしゃぎようとは裏腹に多くを語ろうとしない。家族の側にはもちろん監視役のヤン同志ヤンイクチュンが常に見張っていて、自由な発言はできないというのもあっただろうけど、それだけではなく、どうも25年間もあの国にいたソンホは普通に何も考えずに好きなことを言うということができなくなっているように見えた。しかもそれだけではなく、リエに対し工作員のような仕事をするつもりはないかと持ちかけてきて、そのような任務を言い渡されて日本に来たことが分かる。

兄にそんなことを言わせるあの国に対するリエの怒りをヤン同志にぶつけ、それでもまるで木で鼻をくくったような態度に怒りをぶつける場所がなく苦悩する姿が真に迫っていた。安藤サクラのここんとこの演技と監督の演出が非常に良かったと思います。あのどうしようもない感じ。よくある演出ならテーブルや壁を叩くとか窓を割るとかしちゃうとこですが、あの空中を拳で叩いている表現がとてもリアルでした。

病院で脳の腫瘍を診てもらうソンホだったが、滞在期間が3か月では思うような治療はできないと手術を断られてしまう。それでも引き受けてくれる医者を探そう、滞在を半年に延ばしてもらおうと家族が奔走する中、突然の帰国命令が下る。国から帰れと言われれば理由など聞かずにただ「はい!」と言って帰る。それが当たり前の国。こちらで生まれ育ったリエにはそんなこと納得がいくはずもない。そんなリエにソンホは言う。「あの国はそういう国なんだ。ただ従って思考停止して生きるんだよ。楽だぞ、思考停止」と。兄をそんなふうにしたあの国。そんな国にたった16歳の兄を送り込んだ父。リエはそんな父親を一生許せないと思った。そんなリエの気持ちが痛いほどに伝わってきた。

本当にどうしようもない。ソンホの家族は北朝鮮に残されている。もしこのままソンホが帰らないなんてことがあったら、北朝鮮の家族は強制収容所送りになるだろう。アボジもソンホがこんな目に遭うなんて思って北朝鮮に送ったわけではない。当時北朝鮮は「地上の楽園」と考えられていたのだから。

急な帰国が決まったとき、オモニは貯金箱を壊して慌てて出て行った。何を買ってやるんだろう。そう思っているとオモニはヤン同志に新しいスーツと靴とカバンを用意した。「日本から帰すのにあんな格好で帰せない」オモニにできる精一杯のあの国への抵抗だったのか。この先ソンホをずっと監視し続けるであろうヤン同志への心づけだったのか。どちらにせよ、母親の愛に涙が止まらない。

戻って行ったしまった兄のことを思いながらリエは兄が気に入っていたスーツケースを買いに行く。「お前こういうの持って世界中旅して来いよ」そう言っていた兄。自由に旅をするなんていうことは一生できないであろう兄。そんな兄の代わりに、というリエの決意が見えるラストだった。

これは2011年の作品である。その当時に見ていたら、ワタクシも大手を振って「日本のように自由ではない国」という見方ができただろう。でもいま2014年の日本で「自由に発言できない国」というのが他人事でなくなりつつあるような気がしてならない。


恋するリベラーチェ

2014-09-05 | シネマ か行

公開していた時に見たかったのですが、時間が合わずレンタルして見ました。

アメリカではHBOがテレビ放映をしてエミー賞をいくつか受賞していたので、どうして日本では劇場公開なんだろうと不思議に思っていたら、どうやら題材のせいでアメリカでは配給会社がつかなかったらしい。人気のあるマイケルダグラスマットデイモンがゲイの濃厚ラブシーンを演じるなんてダメ。アメリカっちゅう国はそういう国ですね。

1950年代から80年代にかけて活躍したエンターテイナー・リベラーチェ(ダグラス)の舞台での活躍とゲイということを世間には隠しながら、私生活では若いツバメを拾っては捨てていたプライベートな部分を描く。主に1977年からのスコット(デイモン)との出会いと別れを描く。

リベラーチェ本人が動いている姿を見たことがないので、どこまで似ているのかっていうのは分からないけれど、マイケルダグラスがリベラーチェに扮して舞台に立つ姿がもう素晴らしい。あれを見て彼のことをゲイだと思わない人がいる、というか世間は彼のことをゲイとは思ってなかったなんて信じがたいですがね。。。マイケルダグラスはもちろんリベラーチェを研究して舞台を再現したのだろうから、リベラーチェの舞台ってきっとあんなだったんでしょうね。きらびやかな衣装に超絶ピアノと楽しいおしゃべり。多分当時としてはとても珍しい舞台だったんだろうな。なんかねー、リベラーチェがとっても可愛い人に見えました。ちなみにあの超絶ピアノは首だけ挿げ替えているかなんかのCG処理なんでしょうね。それでも全然違和感なくマイケルダグラス自身が弾いているようで最近のCG技術にびっくりです。なんかでもリベラーチェはゲイの男の人っていうより、可愛いおばちゃんみたいにも見えたな。良い意味で。

さてそのリベラーチェに気に入られたスコット。これもマットデイモンがめちゃ頑張ってます。まさか彼があのジェイソンボーンだなんて誰も思わないくらい。真っ白のホットパンツとかはいちゃうんだもんなー。

ラブラブ時代のリベラーチェとスコットの関係がまたすごい。スコットに身の回りの世話を全部させて舞台にも立たせてすべて与える代わりにスコットには全身全霊で自分に尽くさせるリベラーチェ。まぁ、そこまではお金持ちとその若い愛人という関係ではありふれていると思うんだけど、なんとリベラーチェの希望でスコットの顔を自分に似せて整形しようってゆーんだからすごい。スコットもその提案には戸惑うもののそこはやっぱり純粋に恋人というよりも主従関係という感じだから断れなかった。

ここで登場する整形のジャックスターツ医師をロブロウが演じているんだけど、よくいる美容整形の医師らしくこの人自身もすごい整形している顔で、ロブロウが目とか口元を思い切りテープで引っ張って登場したので笑ってしまった。

顔の整形までしたスコットでしたが、結局後釜の若いツバメが現れて自分は捨てられてしまうんですよねー。自分の前の人がそうだったように。それで2人は泥沼の慰謝料裁判まで至ってしまう…リベラーチェもなぁ、そんなに若いのをとっかえひっかえしたいなら、別れ際はきれいにしなきゃだめだよねー。そこんとこあんまり上手な人ではなかったようですね。

結局捨てられてしまったスコットですが、数年後リベラーチェがエイズを発症して亡くなる直前に呼び出されて会っているんですね。傲慢でわがままな恋人だったけど、愛が消えたわけではなかったんでしょうね。スコットにしてみれば、一般の人が見ることのできない夢を見せてくれたのも彼だったわけですから。

リベラーチェって本当にどうしようもない自分勝手な人だったと思うんですけど、なんかそういうのもスターだからこそ許されてしまうというのかな。天性のスターだったんでしょうね。そんな人でも他人を惹きつけずにいられないというような。それだけに病魔に侵された姿は悲哀に満ちていて見ているのが辛かったです。

主演2人の演技も素晴らしく自分からは程遠い夢の世界を垣間見せてくれる作品でした。大阪出身のメイクアップアーティストである矢田弘さんがエミー賞の特殊メイクアップ賞を受賞した作品でもあります。


ゴーンベイビーゴーン

2014-08-25 | シネマ か行

ベンアフレックの初監督作品ということで以前から興味あった作品です。ケーブルテレビで見ました。

ボストンの貧しい界隈で4歳の少女アマンダが誘拐されるという事件が起きる。少女の叔父夫妻タイタスウェリヴァーエイミーマディガンは警察に限界を感じ、私立探偵をしているパトリックケイシーアフレックとアンジーミシェルモナハンのところへ捜索の依頼にやって来た。子どもの誘拐事件は自分たちの専門ではないと気の進まない2人だったが、叔父夫妻の熱意に負け捜査を引き受けることにする。

2007年の作品ということで初監督とは言え、すでにベンアフレックはハリウッドで有名な役者であったから、主演には実の弟を据えたが、脇役が警察署長ジャックドイルにモーガンフリーマン、捜査に当たるレミーブレサント刑事にエドハリスと豪華な顔ぶれである。

パトリックとアンジーは裏社会に詳しく、どうやらアマンダの誘拐には母親ヘリーンエイミーライヤンの麻薬絡みのトラブルが関係しているということを探り当てる。アマンダを奪還すべく麻薬の胴元のギャングと交渉を進めるパトリックとブレサント刑事だったが、身代金と人質交換の現場でトラブルが起きアマンダは死んでしまう。

事件の暗い影を引きずりながら生活していたパトリックとアンジーだったが、ふとしたきっかけでアマンダの事件のおかしな点に気付く。そこからもう一度捜査を始めるパトリック。やがてこの事件に隠された秘密が暴かれる。

思い切りネタバレしますが、結局アマンダは死んでおらず、アマンダの母親が麻薬中毒のひどい母親であることを知った警察署長とレミーブレサント刑事が共謀してアマンダを誘拐され死んだことにして、こっそり警察署長の家庭で育てていたということをパトリックは突き止める。警察署長は昔幼い子供を誘拐されて亡くしていたということやレミーブレサント刑事の時には法を犯しても子供を助けるという熱血漢なところが伏線となっていた。

そして、この作品の山場は決してその事件の真相ではない。その事実を知ってしまったパトリックがどうゆう行動に出るか、ということだ。アンジーはヘリーンのようなろくでもない母親に育てられるくらいなら警察署長の元で育ったほうがアマンダは幸せだと主張するが、パトリックはどんな母親であろうとも実の母親に育てられるほうが良いに決まっており、警察署長らのしたことは犯罪以外の何物でもないと考える。

結局パトリックは警察署長らを告発し、アンジーはそんなパトリックの元を去ってしまう。母親の元に戻ったアマンダの様子を見に行くパトリック。ヘリーンは男とのデートの準備で忙しそうにしていた。カウチに座ってテレビを見ているアマンダ。パトリックに子守りが来るまでアマンダを頼んでいそいそと出かけていくヘリーン。

どんな母親であったとしても子供は実の母親に育てられるのが幸せに決まっている、そう考えるか、実の親じゃなくても愛情を持った温かいある程度お金もある過程で育てられたほうが幸せだ、と考えるか。最後のシーンはアマンダが誘拐されたときには「これからは心を入れ替える」と泣き、帰って来たときには大喜びしていた母親も結局しばらくすると昔のような生活をしているという感じで気が滅入るし、結局パトリックの選択は正しかったのか?という疑問を観客に植え付けていて、物語としては成功していると思う。ただ、ひとつひっかかるのが、このアマンダを助けるために警察署長とベテラン刑事がキャリアを、もっと言うと命を張って誘拐事件をでっち上げたわけだけど、いや待てよ、と。そこまでする必要があったの?と。ヘリーンはどうしようもないドラッグ中毒だったわけだから、彼女を麻薬所持やら売買やらでしょっぴいてその間に叔父夫婦がアマンダを養子にするとかっていう単純な方法もあったんじゃないの?という疑問が湧いた。

警察署長とベテラン刑事が一人の少女を救うため誘拐事件をでっちあげたというのが、大きなプロットになっているんだけど、そこんとこの説得力が弱いっていうのがちょっと難点。

それ以外はベンアフレックの監督としての腕はこの後の作品でも証明済みなように、初監督作品としてもとてもよくできていると思いました。彼の地味だけど、着実な演出がワタクシは好きです。

ケイシーアフレックはあのふにゃふにゃした喋り方はどうも苦手だなぁ。お兄さんも喋り方が似ているけどケイシーのほうがふにゃふにゃがひどい気がします。エドハリスは今回意外な役どころでした。しっかし、どこに出てきても渋いなぁ。


鍵泥棒のメソッド

2014-08-05 | シネマ か行

ケーブルテレビで見ました。正直言って堺雅人香川照之の2人とも好きじゃないんですが、公開当時話題になっていた作品だしな、と思って見ることにしました。と思ったら「アフタースクール」内田けんじ監督の作品だったんですね。確かに今回もそんな雰囲気だったな。

売れない役者の桜井武史(堺)は自殺を図ろうとするが失敗し、ふらっと行った銭湯で、コンドウ(香川)がつるっと滑ってひっくり返ったところに遭遇し、とっさに彼のロッカーの鍵と自分のロッカーの鍵を入れ替えてしまう。この時どうして桜井がそんなことをしたのか分からないんだけど、自殺にすら失敗するような人生をコンドウの人生と入れ替えたくて思わずロッカーの鍵を盗ったのかなと思った。

さて、コンドウの服を着て荷物を調べると高級車のキーが出てくる。免許証から家に行ってみるとこれまた豪勢なマンション。コンドウという男、どうやらリッチな奴らしい。それでも次の日ちゃんと荷物を返してやろうとコンドウが運ばれた病院に行ってみた桜井。コンドウを見舞うとなんと彼は銭湯で頭を打って記憶喪失。桜井は渡りに船とばかりにコンドウのリッチな生活を続けることにする。

一方コンドウのほうは記憶はないが、身体は大丈夫ということで退院させられる。これまた残された荷物を頼りに家に帰ろうとするが周辺のことも分からず道を尋ねてみたのが、父親の見舞いに来ていた水嶋香苗広末涼子。香苗は親切にもコンドウを桜井の家まで送ってくれる。家に入り色々と物色してみて、桜井のことを自分自身だと誤解するコンドウ。少しの手がかりから自分が何者か探ろうとし、香苗も手伝ってやることにした。

この水嶋香苗という女性。雑誌の編集者をしているが一風変わったところのある女性で、自分で勝手に「私結婚することにしました」と宣言して、相手もいないのに結婚式の日取りだけ決めちゃっていた。いままで自分で計画してできなかったことはなかったそうだ。

コンドウになりきってリッチな生活をしている桜井のところにヤクザの親分・工藤荒川良々から連絡が入る。なんとコンドウという男、実は殺し屋だと言うのだ。

一方自分を桜井だと思っているコンドウのほうは、実にマメな性格で、自分が役者であるならきちんと演技の勉強をしよう、とか、自分はどんな食べ物が好きである、とか、細々とノートにびっしり書き込んで記憶を取り戻そうと頑張っていた。香苗とも徐々に親しくなっていき、香苗の結婚計画の相手として有力な候補になっていく。

そんな時ふとしたことをきっかけにコンドウの記憶が戻る。当然思い出したのは自分に成りすましているであろう桜井のこと。桜井を問い詰めに行くと桜井は依頼相手のヤクザと面倒なことになっていた。自分の為にもこのピンチを切り抜ける必要があるコンドウ。さて、コンドウはどうするのか?

この前半で色々と種を蒔いておいて後半でキレイに刈り取って行くというのが内田けんじ監督の得意とするところですね。パターン的には似ていますが「アフタースクール」よりこっちのほうが話のややこしさは全然なかったです。

香川照之が記憶喪失の時と殺し屋として行動する時が全然別人のようでやはり演技力が素晴らしかったです。広末涼子もなんだか素っ頓狂な役で可愛らしかった。すごくナイスキャスティングだと思いました。

結構笑えるシーンはいっぱいあったんですが、ヤクザから逃れるために一芝居打とうと、コンドウが役者である桜井に芝居をつけるところが一番ウケました。コンドウはなんでも真面目にそつなく器用にこなしてしまう人で、それとは対照的に桜井はちゃらんぽらんな人間で、その2人のキャラクターの違いがうまく笑いを呼んでいました。

内田監督はオリジナル脚本にこだわって映画を作り出しているようですね。彼の非常に細かいところまできちんと収拾させていく脚本にはとても感心させられます。なんだかんだ言ってほんわりハッピーエンドというところも気に入りました。なんか全然あり得ないんだけど、あり得そうな気がしてしまう不思議な脚本でした。これからもとても楽しみな監督さんです。


顔のないスパイ

2014-07-30 | シネマ か行

ケーブルテレビで見ました。リチャードギアは歳を取るにつれ魅力が増してきた人だと思っています。多分リアルタイムで彼の若いころにキャーと言っていた人は違う印象を持っているかもしれませんが。

アメリカの上院議員が殺され、その手口から死んだはずのロシアのスパイ・カシウスの犯行と思われた。CIA長官マーティンシーンは引退した元CIA諜報員でカシウスに誰よりも詳しいポールシェファーソンリチャードギアを呼び戻し、若手FBI捜査官で“カシウスオタク”のベンギアリートファーグレイスと組ませる。

ネタバレになりますが、結構早い段階で実はカシウスはポール自身であることが観客には分かります。え?こんなに早く彼の正体が分かってしまっていいの?と思ったのですが、カシウスの本当の目的は何なのかとか、ベンがいつポールの正体に気付くのかという部分を楽しむことができました。

ネットのレビューを見ていると評価は高くなくてスパイものとしての謎解きやハラハラが物足りないと感じている方が多いようなのですが、ワタクシはどちらかと言うと、謎解きそのものよりもこのポールとベンのベテランと若手の心の交流的なものを中心に見たので最後まで楽しむことができました。

カシウスが暗殺をしている理由と言うのが、イデオロギーや組織のためというものではなくて、殺された家族のためというところに哀愁を感じました。どちらかというと昨今のアクション満載のスパイものや、驚愕の陰謀、みたいな系ではなくて、往年のハードボイルド系の話に近いといった感じです。そういうちょっと古い雰囲気にリチャードギアがとてもマッチしていると思います。

ポールがベンの家族と親しくなり、彼の家族のことを考えてやるという部分も、彼が組織に愛する家族を殺されたことを考えれば非常に納得がいきましたし、そういうソフトな面を持っているスパイというのもリチャードギアっぽかったです。まぁ、実のところ家族を持たないというスパイのコードを破ったのは彼が悪いのかもしれませんけどね…

最後にベンまでもが、ロシアのスパイでカシウス暗殺を命じられていると分かるところは、ちょっと、えー?と思いましたが。結局ポール(カシウス)は自らが犠牲になってベンを助けてくれましたが、ベンがロシアの組織から抜けることはできないだろうから、あれでベンも安泰ってわけにはいきませんよねぇ…これからどうするんだろ。

上映時間が98分と、とても短いのでその分まどろっこしいシーンがなくてその点も好感が持てました。劇場で見るほどの作品ではないかと思うのですが、渋いギア様がお好きな方にはオススメです。


かぞくはじめました

2014-07-29 | シネマ か行

ケーブルテレビで見ました。キャサリンハイグルって最初の頃はあんまり美人じゃないし、好きなタイプじゃないなぁと思っていたのですが、だんだん彼女のコメディセンスに感心することが多くなってきた女優さんです。この作品も彼女が得意とするところの役柄はインテリ女性でいながら、物語はコメディというパターンのものです。

デリを経営しているホリー(ハイグル)とスポーツ番組のプロデューサーを目指しスタッフをしているメッサージョッシュデュアメルはそれぞれの親友たちの紹介で一度デートするが、一目合ったその時からお互いを嫌う合う仲に。しかし、親友同士が夫婦である関係で2人は節目節目で会ってはいて、その度にケンカばかり繰り返していた。しかし、その親友夫婦が交通事故で亡くなってしまい、ホリーとメッサーは2人が遺した赤ん坊の親権を遺言で譲られてしまった。

当然そんなことを引き受けるわけにはいかないと、どうにか他の親戚に赤ん坊を育ててもらおうとするが、子どもを任せるにふさわしい人は誰も見つからず、仕方なく2人で子供を育てることに。ごちゃごちゃともめながらも、仕事をやりくりして何とか赤ん坊の面倒を見る2人。お互いのことは嫌いでも、亡くなった親友たちのことや目の前にいる赤ん坊の可愛さに2人はなんとかこのインスタント家族をやりくりしていた。

ってか、いくらなんでも親友だからって赤の他人の2人に子供を託すってのもすごいし、それを行政が認めちゃうってのもすごいなぁと思うんだけど、その辺の法律的なことは現実的にどうなのか全然分かりませんが、変な親戚に預けられたり、施設に入れられるよりはよっぽど幸せだとは思いますがねぇ、、、映画では突然子供を押し付けられるってのは、わりとよくあるシチュエーションかもしれませんね。

2人でドタバタとトラブりながら、赤ん坊に右往左往する姿が結構笑えていい感じです。お堅いホリーとちゃらんぽらんなメッサーの対照的な子育てが面白いし、それでもやっぱり赤ん坊のことはとても愛しているのがよく分かってほのぼのします。キャサリンハイグルとジョッシュデュアメルがとても息の合ったコメディ演技を見せてくれて、バタバタしているのに、なぜか安心して見ていられます。デリのオーナーシェフとスポーツ番組のスタッフという職業も2人ともとても合っていました。

近所の人たちがたまにちゃちゃ入れに来たりして、その辺もまぁ王道的に面白いです。近所の人の一人をメリッサマッカーシーが演じていて、彼女はアメリカでとても人気のあるコメディエンヌなんですが、ワタクシはちょっと苦手だなぁ。この作品ではそんなに出番はなかったので良かったです。お笑いパートとしては彼女よりも、福祉局の職員さんがクライマックスで笑わせてくれて非常に良かった。

最初はお互い、デートなんかもして、女遊びばかりしているメッサーと、真剣に小児科医サムジョッシュルーカスと付き合い始めたホリーっていう構図ができあがるんだけど、そこはそれ、もちろんこれロマンティックコメディですから、ホリーとメッサーの2人がくっつくのは当然みんな折り込み済み。そして、いったんくっつくと一度は別れが来て、最後にもう一度くっつくってのもぜーーーーーんぶセオリー通りです。でもそれでいいんですよねー。こういうのは変に変化球じゃないほうがいいです。

ジョシュアデュアメルとのツーショットも絵になってたし、今まで見たキャサリンハイグルのコメディの中で一番好きです。


コロンビアーナ

2014-07-28 | シネマ か行

ケーブルテレビで見ました。これははっきり言ってなぁぁぁぁんにも期待せずに見ました。ただぼーっと見られる作品もたまには、ということで。

コロンビア。父親は麻薬カルテルのボスを裏切って組織の人間に両親もろとも殺された9歳の少女カトレアアマンドラステンバーグは追っ手から逃れ、父親が残した情報を持ってアメリカへ亡命。CIAに保護されるが、それもかいくぐってアメリカに住む叔父エミリオクリフカーティスの家へ向かい、将来は復讐のため殺し屋になりたいと言う。

この9歳の少女が逃げる一連のシーンがすごく鮮やか。いたいけな少女と思いきや父親がいつか来るこういう日のために鍛えていたのか、マフィア・マルコジョルディモリャの手のひらをナイフでぶっさし、ヤマカシよろしく家々の合間をかいくぐり、父親の残したチップは飲み込んでアメリカの職員の目の前でオエーっと出して見せる。ありえないほど根性の据わったお嬢ちゃん。

そんなお嬢ちゃんが叔父さんに鍛えられ、美しい肢体を持つ冷酷な殺し屋に成長した。大人になったカトレアゾーイサルダナが華麗な仕事っぷりをまた惜しげもなく見せてくれます。警察署内で酔っ払いとしてわざと留置所に放り込まれ、別の場所に留置されている男を殺しに行くカトレア。この酔っ払い娘から超クールな暗殺者に変身していくゾーイサルダナを見るだけでも十分に価値があると言えるでしょう。

暗殺した死体にカトレアの絵を描くことで、両親を殺したマフィアたちをあぶりだそうとするカトレア。まんまとマフィアは動きだし、ついに復讐の時が。

上映時間108分ということで無駄なシーンはまったくありません。こういうアクションものによくある、敵に向かってぐだぐだとしょうもない話をしているうちに主人公がピンチに陥るなんてことがないのがワタクシ的にはスッキリ。脚本がリュックベッソンなので、まぁちょっと雑だなと思う部分もあるのですが、その辺にちょっと目をつぶればゾーイサルダナの華麗なアクションを楽しむことができると思います。やっぱりリュックベッソンって強い女性を描くのがとても好きですねー。

カトレアが訓練していたあの犬たち。あれ?あれは前振りだけで登場しないの?と思っていたら。最後にやってくれましたねー。「Eat!」って。まさか最後の大物をあれでやるとは思ってませんでしたが。ちょっと笑っちゃいましたけど、ちゃんと登場させてくれて良かったです。


カールじいさんの空飛ぶ家

2014-07-24 | シネマ か行

これもケーブルテレビで放映していました。またまた吹き替え鑑賞です。

「怪盗グルーの月泥棒」のところでピクサーのスピード感に触れたのですが、この作品はちょっと違った形のスピード感で冒頭10分、いきなり泣かされますよー。子供の時に出会った冒険好きのカール飯塚昭三とエリーが恋人同士になり、結婚し、子供ができずにあきらめ、2人仲良く老い、日々の生活に追われ子供の頃誓ったパラダイスフォールにエリーを連れて行っていないことを思い出したカールが旅行の手配をした矢先エリーが倒れ亡くなってしまう。最初の10分で主人公の人生の大半を見せてしまうのだから、お話はほのぼのしているけど、スピード感と言えばスピード感ですね。掴みはOK!ってところはばっちりです。

さて、その後が本編。エリーを亡くしたカールは孤独に暮らしていた。カールは町の開発計画で立ち退きを迫られていたが、エリーと暮らした家を守るため一人立ち退きを拒否していた。しかしある日立ち退きを迫る業者に誤ってケガをさせてしまったカールは立ち退きせざるをえなくなった。

立ち退きの前夜、エリーの残した冒険アルバムを見ながら、カールは一大決心をする。なんと家に無数の風船をくくりつけてパラダイスフォールへと引っ越そうと考えたのだ。そうして空へと旅立ったあと、近所のボーイスカウトの小学生ラッセル立川大樹が乗り込んでいたことに気付く。そのため不本意ながらラッセルを連れての珍道中となった。

2人はなんとかパラダイスフォールにたどり着くが着地した地点はパラダイスフォールから少し離れたところだったため、風船で浮いている家を引っ張って地上を移動することにした。そこでラッセルは巨大な鳥(ドードー?)ケヴィンと出会い、飼いたいと言い始め、カールは反対するがケヴィンはついて来てしまう。そして、ケヴィンを探しているダグ松本保典という犬にも出会う。

このダグっていう犬なんですが、なんと首輪に翻訳機をつけていて人間と喋れます。へ?なんじゃそりゃ?っていう設定。しかも、ダグの仲間たちもみんなその翻訳機をつけていて、犬が全員喋れます。この設定にはまいった。さすがのディズニーでもそれはちょっと禁じ手じゃないの?と思いましたが、登場人物が非常に少ない作品なので犬にも喋ってもらわないと物語が成立しないってとこでしょうか。

実はその犬の翻訳機を作ったのがマンツ大木民夫という昔エリーとカールが憧れていた冒険家で、巨大な鳥ケヴィンを捕まえるために犬を使っていたようです。てか、マンツさんそんな鳥に固執しなくても犬語翻訳機があれば十分一躍スターになれるよって思ってしまいました。

禁じ手とは思ったものの、このアメリカ人が表現する犬という動物はいつも面白いんですよねー。ワタクシも犬を飼っているから余計分かるのですが、本当に犬の性質をすごく理解して表現しているなぁというところがいつ見てもとても興味深いです。カールの使っている杖の支えの部分がテニスボールになっているのも犬の特性を生かした笑いのためだったんでしょうね。この犬たちのドタバタは結構笑えました。

ケヴィンを奪おうとするマンツを戦うハメになるカールなんですが、この中でカールはラッセルへの愛情、エリーが残してくれた冒険アルバムの本当の意味を知るのです。エリーの冒険アルバムは、エリーにしてやれなかった過去を悔やむための物ではなくエリーが去ったあともカールが新たな冒険の旅を続けられるようにエリーが用意してくれたものなのでした。エリーの深い愛にカールが気付くところでまたうるっと来ますね。

あれほどエリーとの家に固執していたカールがラッセルを助けるために家を捨てざるを得なくなり最後には「たかが家だ」と言えるほどになり、ラッセルとともに新たな冒険に旅立つ。エンドロールで流れる2人の冒険にまた笑いと涙がこぼれる素敵なお話でした。


怪盗グルーの月泥棒

2014-06-20 | シネマ か行

ケーブルテレビで放映していたので見ました。吹き替えでの鑑賞です。

アメリカでアニメ映画と言えばもちろん筆頭にくるのはディズニーですよね。ディズニーを傘下に収めてるピクサーや「シュレック」や「カンフーパンダ」で有名なドリームワークスも。そして、このグルーは「アイスエイジ」で有名な20世紀フォックスアニメーションです。映画ファンでない方にとってはどこの会社のアニメかなんてどうでもいいのでしょうけれどもね。やはり一番よく知られているディズニー系とは特徴が違うので知っていても面白いかと思います。

ワタクシはディズニー&ピクサーのファンで、どうしても他の会社のアニメはあんまりだなぁと感じてしまいます。特にピクサーの作りは非常にスピード感があっていつも冒頭から掴みはOK!って感じでぐぐっと観客を引き寄せるという運びなので、それに慣れているとこのグルーのように冒頭が普通の物語運びだとどうにもトロくさいなぁという印象を持ってしまいます。

というわけで、最初はそんな感じで見ていたんですが、ちゃんと筋を追って見ているとだんだんと面白くなってきました。

題名通り“怪盗”グルー笑福亭釣瓶がピラミッドを盗んだライバル・ベクター山寺宏一に対抗して、世紀の大犯罪を成し遂げようと月を盗むことを企む。そのためにはベクターが持っている縮小ビーム銃(ドラえもんのスモールライトみたいなやつ)を手に入れなくてはならず、グルーのために色々な機械を開発してくれるネフィリオ博士伊井篤史とネフィリオ博士がバナナから作ったミニオンたちと協力してベクターの家に忍び込もうとするグルーだが、ベクターの家の警備が固すぎて侵入することができなかった。

そんなある日、ベクターの家にクッキーを売りに行った孤児の少女たち3人マーゴ須藤祐実、イディス矢島晶子、アグネス芦田愛菜が簡単にベクターに招き入れられたのを目撃したグルーはこの3人を養子に迎え、3人を利用してベクターの家に入り込もうと画策する。

勝手にグルーがミニオンたちに振り回される話なのかなぁと想像していたら、悪党グルーがこの少女たち3人に振り回される話でした。ミニオンたちはグルーの忠実な僕なんですね。少女たちを利用するために養子にしたグルーですが、結局彼女たちをむげに扱えない善い人の部分が見え隠れし、それが徐々に少女たちへの愛に変わって行くところにほろっと来ます。

でもやっぱ可愛いのはミニオンですねー。バナナから作ったってこと以外特に素性は知らされてないのでよく分からない存在で、言葉も喋れるんだかなんなんだかって感じなんだけど、言ってることは分かります。似たような奴らがいっぱいいるんだけど、実は一人一人特徴があって、ちゃんと名前もついていて、それをグルーがちゃんと把握しているところなんかは、そもそも少女たちを可愛がるだけの素地があったんだなって感じです。最後はミニオン一人一人にもおやすみのキスをしてあげていてすごく可愛らしかった。

それとあのグルーが飼っている超ヘンテコリンな犬カイルにもウケました。あれは一体何?狂犬な感じなくせに、ちゃっかり少女たちと仲良くなってるし。グルーの世界って色々と不思議なものが存在して面白いですね。グルーの車とかもすごかったし。

あと鶴瓶の吹き替えはどうなんですかねー。グルーの関西弁って合わないような気がするなぁ。英語のほうはスティーヴカレルだから鶴瓶の声とは全然違いそうですね。グルーって見た目はあれだけど、結構クールなイメージのほうが合うと思いました。英語のほうもチェックしてみたいです。

グルーと少女たちの交流にはジーンときましたが、もっとミニオンが活躍するものと期待していたのでその点は少し残念でした。続編は「ミニオン危機一髪」となっているのでもっとミニオンが活躍するのかな。それにミニオンのスピンオフ作品も作られるというウワサなので期待して待ちたいと思います。ワタクシ自身のひいき目もあって、やはりピクサー×ディズニー作品には及ばないなという印象がありますが、続編、スピンオフも見て総合的に判断したいなと思います。


小悪魔はなぜモテる?!

2014-06-18 | シネマ か行

アメリカの高校を舞台にしたコメディ。特に目立たない存在の女子生徒オリーヴエマストーンがひょんなことから親友アリアンヌアマンダバインズに大学生と寝たと嘘を言ってしまう。それをトイレで聞いた他の女子生徒が学校中に噂を広めてしまい、その噂にもどんどん尾ひれがついてオリーヴは一躍有名人になってしまった。

これまで誰にも見向きもされなかった自分が校内の注目の的となり、最初はまんざらでもなくその噂に乗っかって嬉しがっていたオリーヴ。その噂を利用してゲイでいじめられているブランドンダンバードが自分とセックスしたことにしてほしいと頼んでくる。同級生の家のパーティで2人はセックスしたふりをし、オリーヴはアバズレというレッテルを貼られてしまうが、この際開き直ってしまえと授業で習ったばかりの「緋文字」のヒロインのように服に「A」という刺繍を服に貼り付けビッチな服装で通学するように。

ブランドンとの噂の真相を知る男子から次々と嘘のセックスの依頼が舞い込み、オリーヴはクーポン券や現金などを受け取って、冴えない男子たちとセックスしたふりをしてあげる。

しかし、やがて嘘にも限界を感じ始め、お金を払ったらヤらせるんだろという奴に襲われそうにもなるし、気になる男子と真剣に交際もしたいし、ということでそれまでの嘘をネット配信で告白することにする。

ウィルグラック監督の演出がうまく、映画の運びとしては最初からオリーヴがネット配信をするところでスタートしており、観客もその告白を聞く形で事の顛末を知るようになっている。「ステイフレンズ」はそこまで素晴らしいとは思いませんでしたが、これは結構良かったな。

エマストーンは可愛いけどとびきりの美人ではなく、賢そうに見えるので、アバズレの噂を流されながらも実はとても真面目というこのオリーヴの役柄に非常に合っていた。なぜか彼女が80代の青春映画に詳しくてジョンヒューズ作品へのオマージュが見られるのだけど、これは監督の趣味なのかな。ジョンヒューズ作品を知っているととても嬉しくなってしまうシーンがあります。

全編エマストーンのナレーションで進むのだけど、彼女の落ち着いた印象でドタバタしたシーンもバカバカしくなり過ぎず、それは彼女の演技力の賜物かなと思いました。

オリーヴのお気に入りのグリフィス先生にトーマスヘイデンチャーチ、その奥さんでスクールカウンセラーにリサクドロー、出番は少ないけど校長先生にマルコムマクダウェルとなかなかのメンバーがオリーヴの高校生活を支え、さらにオリーヴのお母さんにパトリシアクラークソン、継父にスタンリートゥッチと家庭でも大先輩の役者さんがしっかりと支えてくれて安心して見ることができます。

このねー、オリーヴの両親のキャラクターが最高なんですよー。オリーヴの下に養子にした弟君がいて、その子が黒人なんです。それで、その子が養子だからうんぬんって話をすると「どうして知ってるんだっ?時期を見て話そうと思ってたのに!」とかわざと大騒ぎしてみたり、オリーヴの良い所は僕に似たんだなーって継父なのに言ってみたり、「私がアバズレってことになってて」と話すと「お母さんもそうだったから大丈夫よ。ほとんどは男の子が相手だったけど、、、」とか娘としては絶対に聞きたくないようなことをあっけらかんと話したり。もう2人とも面白すぎ。パトリシアクラークソンとスタンリートゥッチだからまたそれもカッコ良くてねー。ワタクシの中ではこの両親のおかげで映画の評価が上がってます。

「スパイダーマン」のヒロインとして日本でも有名になる少し前のエマストーンが見ることができます。「スパイダーマン」で彼女のファンになった方も多いと思いますのでぜひご覧になってみてください。

オマケ「緋文字」がモチーフとなっていますので、原作をご存知ない方はリサーチしてからのほうが楽しめるかもしれません。オリーヴはデミムーアバージョンはダメって言ってましたけど、それでもよろしいかと思います。


カンフーパンダ2

2014-05-23 | シネマ か行

「1」に続いてケーブルテレビで放映していたので、続けて見ました。

公開は「1」が2007年、「2」が2011年と4年の歳月が流れているので、テレビで見ても分かるくらいCGがキレイになっていました。

前作で龍の戦士となったパンダのポー山口達也はマスターファイブ(タイガー木村圭乃、ツル真殿光昭、ヘビMEGUMI、モンキー石丸博也、カマキリ桐本琢也)と共にシーフー老師(レッサーパンダ)笹野高史の下で暮らしていた。

そこへカンフーを抹殺し中国全土を支配することを目論むシェン大老(クジャク)藤原啓治が大砲を使って攻撃をしかけてくる。シェン大老の軍隊であるオオカミたちに襲われた村を助けにいったマスターファイブとポー。ウルフ隊長森川智之と対峙したポーはウルフ隊長が身に着けているシェン軍隊のマークである赤い目を見て突如悲しい記憶の断片が蘇り、その隙にウルフ隊長に逃げられてしまう。

あの悲しい記憶はなんだったのか。赤ちゃんのときの悲しい記憶の正体を探るためポーはミスターピン(ガチョウ)龍田直樹の元へと向かう。そこでポーは初めて自分の出生の秘密を知るのだった。

ポーがお父さんの本当の子どもじゃないと知るシーンは、笑っちゃいけないんだけど、笑えるシーンでしたね。ポーもガチョウの子どもではないことはうすうすは感じていたようなんですが、、、そんな告白を聞いてタイガーもどんなリアクション取っていいんだか、困っていたところも笑えました。でも、ポーの育ての親ミスターピンの愛には真剣にほろっと来ちゃいました。

CGもですが、アクションも「1」と比べるとかなりパワーアップしていて、最初からポーがカンフーマスターだから当然と言えば当然なのですが、戦いに次ぐ戦いで結構ドキドキの展開が続いて楽しいです。

その赤い目の秘密っていうのが、ちょっとハリーポッター風でしたね。ポーもある意味選ばれた子だし。そのあたりのポーとシェン大老の過去の因縁っていうのがうまく話にフィットしていて良かったと思います。

最後のシェン大老とポーの戦いは劇場で3Dで見たらキレイだっただろうなというのが分かる映像でした。

最後に実はポーの両親やパンダ仲間は生きているっていう映像があったので、これが「3」に繋がるということなのでしょう。と言っても「3」のアメリカ公開は来年のクリスマスってことなので、まだまだ待たないといけないようです。


カンフーパンダ

2014-05-16 | シネマ か行

ケーブルテレビで見ました。ドリームワークスの作品なのに、ディズニーチャンネルで放映するのは不思議な気がしますが…子供向けの放映なので吹き替えだったのが残念です。本当はアンジェリーナジョリーとジャックブラックの声で見たかった。

平和の谷が極悪人タイラン(ユキヒョウ)中尾彬に狙われ、伝説の「龍の戦士」を選び出すことに。当然、シーフー老師(レッサーパンダ)笹野高史の元で修業に励んでいるマスターファイブ(タイガー木村圭乃、ツル真殿光昭、ヘビMEGUMI、モンキー石丸博也、カマキリ桐本琢也)の中から選ばれるはずだったが、ひょんなことから紛れ込んでいた太っちょパンダのポー山口達也がウーグウェイ導師(カメ)富田耕生によって選ばれてしまう。

ポーは大のカンフーファンで、龍の戦士が選ばれる儀式をひと目見たかっただけだった。まさか自分が選ばれるなんて本人も夢にも思っていなかったし、ポーが選ばれたあとも誰一人としてポーを龍の戦士と認める者はいなかった。しかし、ウーグウェイ導師は物事に偶然などないと運命に選ばれたポーを龍の戦士に育てるようシーフー老師に告げる。

ラーメン屋を営むミスターピン(ガチョウ)龍田直樹に甘やかされて育ったメタボ体型のポーにカンフーなどできるはずもないが、食べ物で釣るというシーフー老師の作戦勝ちでポーは知らないうちに進歩していった。

このポーの修行のシーンが昔のジャッキーチェンの映画を彷彿とさせるような内容で、コミカルでありながら、カンフー独特の流線的な動きをうまくアニメで表現していてとても楽しい。ジャッキーチェンはオリジナルのほうではマスターモンキーの声優として参加していますね。

マスターファイブたちもポーが選ばれて反発は覚えているものの、そこはさすがカンフーのマスターたちで、ポーをいじめたりせず、導師の選んだ道を信じている様子だったのが、なかなか素敵な展開でした。ポーがマスターファイブのファンでそれぞれのフィギュアを宝物にしているところなんかも可愛かった。

マスターファイブの戦いっぷりはみんなそれぞれの動物の特徴を生かしていて、それもとてもうまいなと感じました。特にヘビの滑らかな動きが良かったし、5人プラスポーで協力して戦うところも爽快でした。敵役のタイランもカッコ良かったし。このタイランが実はシーフー老師に育てられた孤児だったというのも興味深い設定でした。

龍の戦士だけが手に出来る奥義が書かれているという巻物には実は何も書かれておらず、自分の姿が映るのみ。ポーのお父さんのおいしいラーメンにも秘密の材料があると思っていたが実は特別な材料なんてなかった。そう。何事も成功するのに、特別な材料なんてない。あるのは自分自身。自分自身を信じるのみってことかな。これは子どもたちには良いメッセージとなるのでしょう。

ディズニーアニメが大好きなワタクシとしては、どうしてもやっぱりディズニーには敵わないなと思ってしまう部分はありましたが、それでもドリームワークスのアニメの中では一番面白かったな。「シュレック」よりもこちらのほうが好きです。


桐島、部活やめるってよ。

2014-04-11 | シネマ か行

ケーブルテレビで放映していたので見ました。

なんかすごい作品ですねぇ。まさか桐島が出てこないと思っていなかったので最初は誰が桐島?っていうのばっかり気にして見てしまいました。それで途中で、あ、これは桐島は出てこないんだなと気付いてやっとそれを気にせず見る体勢に。

とある金曜日、全国大会クラスのバレー部のキャプテン桐島が部活を辞めるというニュースが校内を駆け巡る。中学高校と帰宅部だったワタクシにとってはまさにそれがどうした?な話題なんだけど、その頃を振り返ってみるとそれが人生の一大事みたいに受け取る子たちもたくさんいたことを思い出す。

演じる子たちがみなとても自然で、だいたいテレビドラマの学園ものだと、いやいや高校生がそんなこと言わんやろーとか思うセリフがぼんぼん出てくることが多いんですが、この作品の彼らのセリフはものっすごく普通でした。良い意味で。

登場人物が多いのだけど、それぞれが何部で、クラスではどのような位置にいる子か、親友か、表面上の友達か、誰と誰が付き合っているか、内緒で付き合っているのは誰と誰か、みたいな人間関係がこのひとつの出来事を中心にクリアに見えてくる演出がすごい。

帰宅部、バドミントン部、バレー部、野球部、吹奏楽部、映画部ってのが出てくるんだけど、キャストの配置が絶妙ですね。ほんとそれぞれのカラーにめちゃくちゃ合ってる。

桐島の彼女・梨紗山本美月みたいな女王様然とした女子とか、その取り巻きの沙奈松岡茉優みたいな女子いたなぁとか。沙奈みたいなタイプは苦手だ。この2人は帰宅部か。帰宅部なのにバレー部の彼氏が終わるのを待ってるとか、いたいたそういう子ってなつかしくなったな。

バドミントン部の東原かすみ橋本愛は帰宅部の竜汰落合モトキとつきあってるんだけどみんなには内緒とか。そのかすみは学校の外では中学が一緒だった映画部の前田涼也神木隆之介と話しをするけど、学校内ではしないとかね。そういうとこもリアルな感じが出ていました。

野球部の菊地宏樹東出昌大は幽霊部員なのに、運動神経抜群だから試合の時だけ呼ばれるし、部活に行かなくても先輩ははっきり文句も言ってこなくて、それが逆に菊地の焦燥感みたいなものにつながっていたり。

映画部は自由にゾンビものやりたいのに顧問の書いた脚本で無理やり青春ものやらされそうとか。撮影場所を巡って吹奏楽部の部長・沢島亜矢大後寿々花に文句言いたいけど勇気が出ないとかねー。

桐島が抜けたバレー部の必死さとかもう暑苦しいねぇ。これはもう帰宅部のワタクシには一生分からない世界の話。

なんか全部が、高校生活あるあるって感じで面白い。まぁ物語的には「で?」っていう気もしなくはないんだけど、たったひとつの出来事を中心に色んな周囲の人間関係や背景が見えるという構成は面白いと感じました。

ワタクシは日本の若い芸能人には詳しくないのですが、これだけ若い子ばっかり集めてみんな演技が上手で感心しました。これからの日本の映画界を背負っていくであろう若い役者さんたちがこんなに上手でこの先楽しみです。


恋の罪

2014-02-19 | シネマ か行

*作品もR18、レビューもR18です。

今まさにレビューを書こうとしているところでこんなことを言うのもなんですが、この作品を取り上げるべきか否か実はまだ迷っています。なんと言っていいやら、好きな作品かと言われれば好きではないと答えるし、他の人に薦めるか?と聞かれたら、薦めないと答えると思います。園子温監督ねぇ、、、彼のことも好きかと聞かれれば好きじゃないと答えると思うんですよねー。ただやっぱりこのインパクトの強さは放っては置けない。

東電OL殺害事件を基にしたお話。昼間はエリートOLだった被害者が夜は時に数千円という値段で客を取り売春をしていたという事件だった。この被害者が映画では大学教授・尾沢美津子富樫真という設定に変わっている。彼女は昼は大学教授、夜は娼婦という生活を送っていた。そんな彼女に弟子入り(?)するのが潔癖症の小説家・菊地由紀夫津田寛治の妻いずみ神楽坂恵。彼女は初めは騙されてAVに出演させられるのだが、それが鬱屈した生活からの解放となったのか、後に知り合った尾沢美津子の世界へどんどん堕ちていく。

時系列が少しいじってあって、最初に猟奇的な死体が発見されるのだが、それがおそらく尾沢美津子で、その事件を調べるのが刑事の吉田和子水野美紀。一見ごく普通の女性に見える吉田だが、彼女は夫二階堂智の後輩児嶋一哉と不倫関係にあり、彼から性の奴隷のような扱いを受けていたがそれもまんざらでもないようだった。

「冷たい熱帯魚」もそうでしたが、とにかくエログロがえげつないです。今回はグロは少ないけど、エロがグロいです。正直気持ちが悪くなるようなセックスシーンが延々あります。あとはこの監督特有の妙な長回しシーンですね。ポンビキのカオル小林竜樹って男が何回も何回もピンクの蛍光塗料の入ったボールを投げつけてくるシーンとか、いずみが素っ裸で鏡の前に立って「ご試食いかがですか~」ってスーパーの試食のパートの練習するシーンとか、とにかく異常に長い。そういうわけの分からんシーンを長々と見せるのも園監督の特徴ですよね。彼には意味があるんでしょうけど、よく分からない。

しかもその素っ裸で「ご試食いかがですか~」って言ってた女優さんの神楽坂恵と園監督ってご夫婦なんですよね。。。当時はまだ夫婦ではなかったんでしょうけど、自分の恋人だか恋人になろうかっていう女性にあれをさせられる園監督ってすごいわ。それだけじゃなくてセックスシーンもすごいし。。。なんだろう。監督も女優さんもすごいなぁ。すごいすごいって書きながら褒めてるわけでもないんだけどねぇ。なんかもう突き抜けちゃってて感心はします。

こちらが吐きそうになるほどのエログロの中で、尾沢美津子がいずみに言う「愛のないセックスならお金を取りなさい」とか身を落としたいずみが言う「男はタダでやらせる女より、お金を取ってやらせる女を軽蔑する」という言葉なんかは妙にふむふむと納得してしまったりもしたなぁ。いや、売春に賛成しているわけでは決してないのですがね。

尾沢美津子といずみに関しては、一応娼婦にまでなってしまう彼女たちなりの理由というのはあるのですよね。もちろん、なぜにそこまで!?という思いはあるにしても、それなりの理由はある。一番マトモそうで一番不可解なのは実は刑事の吉田でごく普通に思える彼女が不倫相手の性の奴隷になっていた「理由」は一体何だったんだろう。「女ってそういうものよ」なんて言ってみせたりもするけど、それこそ男目線での女の捉え方なんじゃないのかなーとか思ったり。いや、特に深い理由なんてないのかもしれないけれど。

強烈なセックスシーンを見せつける女性3人が主人公の作品なんだけど、実はもう一人尾沢美津子の母親・尾沢志津大方斐紗子という人が一番強烈だったりした。顔色ひとつ変えずにいずみに「あなた、売春はいつから?」とか聞いちゃうんだもんなー。なんなんだ、あの婆さん。このキャラは他の女性3人と違って完全に監督が作りだしたキャラでしょうから、やっぱり良くも悪くも強烈な個性を持った人だなぁ、園監督って。

なんか嫌いなのに、目が離せないっていうね。ラヴアンドヘイトな関係に入ってきてるような気がします。園作品とは。