電脳筆写『 心超臨界 』

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( ジョン・ロック )

不都合な真実 《 「鬼滅の刃」の経済効果とテレビ局――渡邉哲也 》

2024-05-08 | 05-真相・背景・経緯
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実は、このドル箱コンテンツは民放キー局にはほとんど利益をもたらしていない。その理由は「鬼滅側」がキー局を選ばなかったからだ。まず人気爆発の分岐点となったアニメ放送だが「鬼滅――」の地上波放送は東京MXなどローカル局のみ。全国放送はBSの「BS11」とCSのアニメ専門チャンネル「AT-X」のみである。(中略)キー局を選ばなかった理由の一つが、キー局が制作者側にふっかける高額な「局印税」にあるとされている。


『情弱すら騙せなくなったメディアの沈没』
( 渡邉哲也、徳間書店 (2021/10/30)、p61 )
第1章 切り裂かれたメディアのビジネスモデル

◆「鬼滅の刃」の経済効果とテレビ局

テレビ局が完パケ納品のコンテンツを増やしていることは前述した。

とはいえ電波のレンタル業を行ってしまえばMXテレビのような事故が起こる可能性が高くなる。そこで番組製作にあたってはテレビ局がスポンサーの一部になったり、テレビ局側のプロデューサーが制作に加わることで、番組を制作しているのが現実だ。

こうすることで著作権の一部を保有し、二次使用、三次使用時に稼ぐことができるという大きなメリットもある。

ところが近年ではその完パケ納品の形が進んでしまった。製作会社がテレビ局に納品するのではなく、NetflixやHuluなどが制作したコンテンツをテレビ局側が使用するという方法に置き換わりつつある。

ネット配信事業者にはコンプライアンスも整備されていて、差別表現や年齢制限のチェックなどもしっかりしているので事故リスクも低い。

また現在のテレビ業界と比較すれば、ネット配信業者の製作費は潤沢そのもので、多くのクリエーターたちが目指す場所となっている。必然的に多数の高質な作品が生まれているのだ。

テレビ局側とすればスポンサーを集めて制作、放送してみたものの視聴率的に「惨敗」。その結果、莫大な損失を抱えるというリスクも極めて小さい。

テレビ局によるコンテンツ制作の外注や、コンテンツそのものの購入はコスト削減で行った苦肉の策ともいえるのだが、このことが裏目に出ることが起こった。

その典型例が『鬼滅の刃』である。

同作品は2016年から「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載が始まったマンガだ。両親を鬼に殺され、妹を鬼にされた主人公の少年が仲間とともに鬼を倒し、妹を人間に戻すストーリーである。

連載のみの段階ではジャンプ愛読者を中心にしたニッチな人気だったが、2019年のアニメ化をきっかけに大ブレイク。国民的人気となった。

2020年10月から『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』が劇場公開されると同年の年間興行収入世界第1位を記録、21年8月時点で日本国内の403憶円は日本歴代興行収入第1位、全世界では517憶円を稼ぎ出している。

実は、このドル箱コンテンツは民放キー局にはほとんど利益をもたらしていない。

◆強請りの常態化で巨額を逃した

その理由は「鬼滅側」がキー局を選ばなかったからだ。

まず人気爆発の分岐点となったアニメ放送だが「鬼滅――」の地上波放送は東京MXなどローカル局のみ。全国放送はBSの「BS11」とCSのアニメ専門チャンネル「AT-X」のみである。

ただしAbemaTVやプライムビデオなどネット配信はテレビ放送と同時に行った。

キー局を選ばなかった理由の一つが、キー局が制作者側にふっかける高額な「局印税」にあるとされている。

現在のアニメ製作は出資者を集めた「製作委員会」を立ち上げ、収益を分配するのが一般的だ。ところが、放送局がアニメをテレビ放送する際、「作品のプロモーション効果がある」という理由で、支払いを製作委員会に要求する慣習がある。

この解釈に従えば、アニメ放送には「広告」を明示しなければならなくなるのだが、そんなことが行われたことはない。何より公共財である電波の使用権を背景にした「優越的な地位」を利用して、立場の弱い製作会社からおカネを徴収していたという構図だ。

強請りと呼ばれるべき行為が常態化していたのである。

実は総務省は「局印税」を問題視していて、「放送コンテンツの製作取引適正化に関するガイドライン」を作成している。暴力団まがいの収益確保手段も間もなく潰える可能性が高い。

通常アニメ製作には10社ほど集まって製作委員会が出来上がるのだが、鬼滅の製作委員会は原作の集英社、企画したアニプレックス、アニプレックスから製作を依頼されたアニメ製作会社のufotableの3社のみだ。

アニプレックスとufotableは、少数精鋭の製作委員会システムで、赤字を出したことがなく、何度も修羅場をくぐり抜けてきた歴史がある。「鬼滅――」の勝利を支えたのは作品の質で、火が付く過程では「原作よりアニメを先に見ろ」という言葉がアニメファンたちのSNSで連ねられた。

繰り返し述べたようにテレビの影響力は、かなり小さくなっている。もはやなんの効果もなくなったキー局による「局印税」というコストを、鬼滅側が「無駄」と判断したことは、容易に想像できるだろう。

何よりネット配信の影響力、そこからもたらされる収益の方がはるかに大きいのだ。

そもそもアニメファンはキー局でもローカル局でも、放送媒体を選ばずに良質な作品を観る。ローカル局ということで当初こそ火が付かなったが、ネット配信のおかげでSNS上で話題になり、それが視聴率に跳ね返ってくることになったのだ。

「鬼滅――」は、キー局抜きで大ヒットを生むというモデル構築を行ってしまった。同時にそれは、民放キー局がコンテンツ制作やプロモーションに1ミリも寄与しないことを実証したということでもある。
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