団塊的“It's me”

喜寿老(きじゅろう77歳)の道草随筆 月・水・金の週と火・木の週交互に投稿。土日祭日休み

クリスマスセール

2018年12月18日 | Weblog

  「牛一頭お買い上げいただければ、豚半身をサービス」 日本では聞いたこともなければ見たこともない宣伝文句。これはカナダ アルバータ州のDidsbury(デツベリー)当時人口3千人あまりの小さな町のクリスマスセールでの出来事だった。53年前の事だった。今でもこのような売り出しがあるかどうかはわからない。招かれてクリスマス休暇をこの町に住む一家と過ごすために訪ねた。夫婦と子供が5人の家族。

 なんとこの家族、豚半身付き牛一頭を購入した。早とちりの私は、牛一頭と豚半身がそのまま配達されるのかと思った。よく話を聞いてみると、セールをした店が、牛も豚も客の要望で切り分けて配達してくれるそうな。家族の主人の弟家族と共同で購入して半分づつ分ける。納得。もう一つ気になったのは、牛と豚の内蔵だった。日本では普通に売られているモツ、レバーなどカナダの店でそれらが売られているのを見たことがなかった。そのことを主人に聞いてみた。答えはNo。その家族は一切内蔵を食べないと言った。それ以上聞けなかった。あれから53年経った2018年、テレビの料理番組で内臓を食べるのはヨーロッパとアジアやアフリカなどでカナダやアメリカでは食べられないと言っていた。食文化の違いを感じた。

  その家族が住む家には、地下室があった。地下室の一部が食料倉庫になっていた。そこに大きな冷凍庫があった。日本の私の家には冷凍庫などなかった。畳一枚はどの大きさで、上のフタが開閉できる。日本の冷蔵庫を倒して置いた感じだった。牛肉と豚肉双方の包みには、どこの部位で枚数が書かれていた。毎年クリスマス前にそれら全て食べつくすと聞いた。学んでいた全寮制の学校の食堂で肉、牛、豚、鶏は、食事に入っていることがなかった。一年に数回、“ステーキ”とあり、喜んだが出てきたのは“レバーステーキ”でがっかりしたものだ。カナダ人の学生は、レバーは肉でないと、口にしない者も大勢いた。寮生は、休暇時に家へ戻って、たらふく肉が食べるのが何より嬉しいと言っていた。休暇に学生に招かれて訪問した家では肉、肉の攻勢に圧倒された。その量が半端なかった。農家では朝から分厚いステーキが出てきてびっくりした。

  カナダ渡航前、欧米のクリスマスといえば七面鳥と先入観を持っていた。当然クリスマスセールなら七面鳥がセールの対象であろうと思い込んでいたが、やはり百聞は一見に如かず。カナダの小さな町でクリスマスは、一年で一番盛り上がる行事なので、普段では見られないことがたくさんあった。

  忘れられないのは、カナダの西部のクリスマスには、日本のミカンが欠かせないものであったこと。日本の正月に小さな木箱入りのミカンを買ってもらいコタツでミカンを剥いて食べた。そのミカンが海を渡ってカナダのクリスマスを祝う必需品になっていた。Didsburyのスーパーに日本からはるばる運ばれたミカンの木箱が山になっていた。そのミカンを見て日本が恋しかった。牛一頭豚半身を買うこともなく、ケーキぐらいで迎えているであろう私の両親、姉妹を思った。

  私は古稀を過ぎ今、あのカナダのクリスマスを盛り上げたミカンを輸出した産地に住んでいる。日本からカナダのクリスマスを懐かしむ。

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