団塊的“It's me”

喜寿老(きじゅろう77歳)の道草随筆 月・水・金の週と火・木の週交互に投稿。土日祭日休み

尊い寄付

2024年08月21日 | Weblog

  友人からメールが来た。「…お隣のおばあちゃんが孤独死なさいました。いろいろあって救急車を呼んだのですが、その時は既に間に合いませんでした。…天涯孤独な91才の親しいおばあちゃんの事が猛烈に気になってしまって。…子供はいず、全く付き合いのない、生きてるかさえ分からない弟妹がいるそうなのですが、死んでも彼らには残したくない。ご主人の母校の東北大学に寄付したいと,前々からおっしゃっていました。それで、施設探し、遺言状、任意後見人(施設に入る為に身元引受け人が必要なので、やって欲しいと、言われたので)尊厳死等等の公正証書作りを公証人役場にお願いしています。…東北大学にとりあえず少し寄付をして、ご夫婦の名前をつけた奨学金を準備中です。耳が遠くて電話もダメでそれもやってます。とりあえず今週にでも入金するところまでいきました。施設に持って行くものを、決める作業もです。莫大な物量が、ゴミ屋敷にあります。…最上階の部屋に入った時は即Uターンしました。…確かに大変なのですが、奨学金の作成に携われたのは人生での素晴らしい経験でした。」

 彼女は、民生委員を長年務めている。同じ住宅地区の中に住む老人を何人もこれまでに助けてきている。どこからあれほどの行動力と隣人愛が湧いてくるのか。感心し尊敬する友人である。今回のメールを読んで思い出したことがある。長野県にいた時、アメリカのワシントンポストの記者オーバードーファーさんの長男の高校生を半年預かった。鮨の修業をしたいとのことで私の知り合いの鮨屋で修業した。学業成績が良く高校卒業の単位をすでに修得していたので東京のアメリカンスクールへ行く必要がなかった。彼はアメリカのミシガン大学からの合格通知が来るのを待っていた。彼のおじいさんが彼に約2千万円の信託をしていて、もしミシガン大学に入学したら信託金は彼に。もしダメだったらその信託金は、自動的にミシガン大学に寄付されることになっていた。鮨の修業が終わる頃、ミシガン大学から合格通知が届いた。

 USトゥデイにこんな記事が載った。『アメリカのグラナイト・テレコミュニケーションズの創業者ロバート・ヘイル氏がマサチューセッツ大学ダートマス校の卒業式で500ドル入り2つの封筒を1200人全員にプレゼント。』 なぜ2つの封筒なのか。彼は「1つは自分のためにもう1つは、誰かのために寄付する」という条件を付けた。私が震える程感心したのだから、もらった卒業生たちはどれほどの感動であったか。

 人間には寄付をして他の人を助けたいという気持ちが、あらかじめ供えられている気がする。尊い心である。アメリカには、ロバート・ヘイル氏のような慈善家が多い。日本では財産を巡る騒動はよく聞くが、寄付の話はあまり聞かない。アメリカの大富豪の数が日本より多いのが原因かもしれない。かと言って私が寄付をしているかと言えば、していない。資産を持たない年金生活者である。赤い羽根共同募金や災害時に被災地への募金があれば、持ち金の一部を入れるぐらいが精いっぱいである。

 尊い寄付は神聖でもある。91歳の老女の最後の願いを叶えるために奔走した友人にも頭が下がる。世の中には、人の尊い寄付をあの手この手でだまし取ろうとする悪いヤカラも多い。人の心の中には、神聖さと邪悪さが混在する。私は多額の寄付はできないが、最後まで私の心の中の邪悪さを抑え込み黙らせておきたいと願っている。

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 番狂わせ | トップ | チュニジアの本マグロ »
最新の画像もっと見る

Weblog」カテゴリの最新記事