備前焼 やきもん屋 

備前焼・陶芸家の渡邊琢磨(わたなべたくま)です。陶芸、料理、音楽、路上観察……やきもん屋的発想のつれづれです。

東京出張 その3

2015-11-07 18:24:57 | 料理・食材


さて、東京出張には裏テーマがありました。
出張にテーマをつける時点で「仕事として如何なものか?」ですが、テーマはあったほうが楽しいのでね。しかも裏。

少し前から久しぶりに『立ち食い蕎麦』というものに行きたくなっておりました。
学生の頃は電車の乗り換え時間や呑み会帰りに利用していましたが、岡山ではさっぱりご無沙汰。と言うか、岡山には立ち食いの店がない。
「貧乏学生や多忙なサラリーマン諸氏は如何されているのか?」と思いますが、地代と回転率から考えてカウンターに椅子を置く方にメリットがあるのでしょう。それに市街地サイズからして飛び込んで秒単位で「メシ!」というニーズも少ないのかも。
そんな土地柄ですが、立ち食いではないもののセルフ式うどん店(自分で麺を温める方式)は好きです。
あと、「最近、東京の立ち食い蕎麦が侮れない」という噂も小耳に挟みましたので、これは是非ものかと。


という事で、出張の裏テーマは『立ち食い』です。
歩き疲れと己の探究心とのせめぎ合いの予感がします。「己に克たねば得るものはなし」の心意気でいざ!( ← おおげさ)

立ち食い界の定番である駅蕎麦を中心に攻めたいところですが、東京は駅以外にも沢山あるので街中で調査を開始します。
また、蕎麦、居酒屋以外に、焼肉、ステーキ、イタリアン、バル、パブ……とジャンルの枚挙に暇がありません。
しかし「江戸に来ちゃぁ蕎麦でしょう」という事で、街中の蕎麦屋を調査対象のメインにします。

それに東京では『うどん』に食指が動かない。江戸落語で「うどんなんて野暮なもんは食わねぇよ」とは誰の『時そば』だったかなぁ。
へうげもの的には「大金時様が微動だにせず」である。


到着した昼。
増上寺前で大手チェーン店を発見。何せ何処も初めてであるので選択の余地はない。日本最高峰の店名に期待。

東京うどんに対して関西蕎麦はガッカリした経験が多いので、関西圏では大抵はうどんを頂く。「立ち食いでは、うどん」であるが、その思い込みを凌駕していた。
細麺だけでも関西のそれとは異なるし、出汁の香りも立っている。しかし、かき揚げがお好み焼き化していたのが残念。
立ち食いもあるが椅子もあった。疲れた足には何より。ファーストコンタクトは良好に恙無く終えた。


夜。
ちょいっと(?)知り合いと呑んだ帰り道。単身、近道と称して煙が立ち込めるエリアに突入する。学生の頃は近寄り難い場所だったが、今は平気。

その中ほどに外国人が行列している店があった。老舗然とした風格。出汁の香りが周囲の煙に負けていない。ここを締めの蕎麦と定める。( ← 締める必要はない)

行列から他店の裏側が見える。細い路地になっていて、どうやらこの奥にトイレがあるらしい。タバコと香水の残り香を漂わせつつお姉さんが入っていった。しかし、いつまで経っても帰ってこない。なんだ? 新宿の闇なのか? まだ、小生にはデヴューが早かったか? 外国人の振りでもしていよう……。

暫し後に順番到来。行列中に先客の行動でオーダーの仕方、お金を渡すタイミング、水の配置などは予習済みである。これなら言葉がわからなくても大丈夫なシステム。外国人の小生にも判るぜ。

『名物 天玉そば』をオーダー。温泉卵が好ましい。かき揚げは揚げ立てでサクサク。粉が少なく大きいカットの野菜。これも好ましい。
酔っ払っているのもあって何もかも旨い。VIVA新宿。

蕎麦で締めてホテルまでの道すがら、おもむろに米を欲す。寿司で締めるか……。( ← 再度繰り返すが、締める必要はない)
「よっ、寿司でも摘めるかい?」と、自分の中では江戸時代の江戸っ子気分で暖簾をくぐる。勿論、テーマ通りに立ち食いである。
オススメを貰いつつ生ビールを片手に壁のメニューを睨む。「長居は野暮だぜ!」とばかりにオーダー順を考える。
金目鯛を炙って塩、北寄貝は貝紐もつけて、〆は葉わさびの手巻きだな。本人的には丁々発止のオーダーをしてサクッっと。

隣の若い兄ちゃんが「鯖をダブルで」と4貫並べてご満悦なのを尻目にして帰る。イナセを気取るがフラフラしてたはずだ。


翌朝。
「薄っすらした宿酔いを出汁で薄めるか……」と思いつつ、駅の反対側の蕎麦屋へ。朝から蕎麦は半分意地である。

当たりをつけている店は歌舞伎町直近エリアにある。「夜はご遠慮したいが、朝なら大丈夫だろう」と思いきや、朝でも元気な町でした。
地下の店に吸い込まれていくサラリーマン風のオジサマの御武運を背後から祈るばかり。

この店の天麩羅はオーダーが通ってから揚げる。無料サービスとして、生卵、梅干、出汁、蕎麦湯、ワサビがある。そして24時間営業。
「どんな店や……、東京スゲェ~」と感心。
見上げるほど大柄で派手なオネエさん(性別年齢不詳)が、千鳥足のボックスステップを踏みつつ蕎麦湯を飲んでいた。江戸っ子だねぇ。締めは蕎麦!ただし朝。粋ですなぁ。
揚げたてのかき揚げが旨い。麺は温め直しではなくてまさに茹で立てだったし。バイト君ながらもなかなかレベル高し。


昼。
今回の本命のお店へ。鰹節屋さんが経営する立ち食い蕎麦屋さんである。
前評判では、出汁の旨さもさりながら、タマゴかけごはんに鰹節粉を振り掛けるのが美味しいとの事。かなり期待して行く。

しかし、定休日?!
残念がって写真を撮っているとオーナーが出てきて謝られた。次の楽しみにするよ。ほら、残心が大事っだってさ。( ← 何か違っ!)

仕方なく、大手チェーン店へ。どちらにせよ初めてなので問題なし。

ホウレンソウというのが今まで無かったパターンである。何故か東京ラーメンを髣髴とさせたのは気のせいか。


まぁ、そんなこんなで最終的に蕎麦には食傷気味でしたが調査終了。

かくして、半ば意地になりつつの食行脚でした。

立ち食い蕎麦は、スタイルも味も隔世の感あり。
立ち食い寿司は、回転寿司より疲れないし、他のお客さんとオーダーの呼吸もありライブ感が楽しかったかな。
立ち食い焼肉は、煙が凄かった。そして決して安くは無い。看板と実物の差もあって直ぐにお暇を。コンセプト優先か。
立ち食い串焼き魚は、コンセプトに無理があるのか閑古鳥な雰囲気。バイトちゃんが店先で焼きながら呼び込みしている侘びた風情が良かった。

どこも全体的に外国人が多いのも納得。手軽に日本の味を楽しめて、日本人観察にも抜群です。
「海外ファストフード、何するものぞ」の逞しさでありました。


諸々、当分行かなくて良いほど満喫しました。

さて、暫くは尿酸値を下げるメニューとビタミン補給を心掛けます。(健康でないと都市生活はできんなぁ)


















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