備前焼 やきもん屋 

備前焼・陶芸家の渡邊琢磨(わたなべたくま)です。陶芸、料理、音楽、路上観察……やきもん屋的発想のつれづれです。

餃子の日

2012-02-26 20:29:53 | 料理・食材
さて夕刻、細君より『ギョウザ動議』が発動。
漁港近くの魚屋へ行ったんだけどピンと来るものが無く、珍しくエアポケットのような時間が全員にあったたので「いっちょやるか」と。

但し、皆で包むとしても、食べ方については個人任せ。
水餃子の人2名。(スープに入れたい人、茹でて酢醤油の人)
焼餃子の人2名。(醤油と酢の配合が異なる)

包み終わったら、それぞれが納得のいくように自己管理。


焼餃子に関しては、いつも通りの焼き方で。うちではもうコレが定番の焼き方。(以前の記事
常に温度がムラなく上昇して、最後にパリッと焼き目がつく。専門店では、まぁ、しない方法と思われるけど。

イメージとして(我が家というか…小生の個人的な好みで)皮はパリッとして薄く、タネはザクザク感があるのが良い。
色々な組み合わせによって今日のスタイルに至る。


家族みんなでワイワイしながら……という日曜日。

で、小生は水餃子と焼餃子の両方という欲張りな人です。今日は焼餃子ベースで。
ちなみに『酢:醤油=5:1』がデフォであります。


小さな幸せにビールを添えて、ガッツリ。


(明日は窯の焚口から焼き上がりを覗いてみる日)

2012-02-22 20:42:50 | 陶芸
窯焚き終盤になってようやく窯場にストーブが要らなくなってくる。今回は寒かったなぁ。

連房式登窯であれば火が窯の隙間から出ようとするぐらい炉圧も上がるし、輻射熱も有効に使えるように窯の形状も発達しているので、『大きな薪ストーブ』としては優秀である。反面、元々、窖窯(あながま)は引きが強い(空気流入量が多い)ので窯の周りに居ても寒い。窯の中が1000℃を超えていてもストーブを抱え込んで窯焚きするぐらい寒い。何だかなぁ……。

窯焚き中には『窯焚きの雰囲気』から感じる今回の窯詰めの推察・反省・期待などが綯い交ぜになった『想い』が心の中に充満してくる。
曰く「あの場所の棚組みが狭かった」「あそこはもっと高く出来た」「コロガシのアレはどうか?」とか色々。そういう期待やら不安を抱えつつ、ひたすら焚き続ける。
そして薪窯の場合(特に備前)は、その大きさも相まって悲喜交々。なにせ年1回ペースだからねぇ~。


でも考えてみると、年1回の製造ペースというものは、他にもある。
農家、造り酒屋など第一次産業に近い業態は概ねそんな感じかなぁ。

20年やってもたったの20回にしかならない。人ひとりの寿命から換算すると順調に出来たとして残りの生涯で経験出来る回数は限られる。
生涯で出来る事は、あまりにも少ないなぁ。


そんな色々な想いを抱えつつも、窯焚きのテクニカルな側面で一番気に掛けるのが『還元雰囲気』である。簡単には一酸化炭素、酸素量などのコントロールの事。
その目安のひとつとして観察するのが煙の出方。煙が多いと還元雰囲気はより強くなるし、少なければ酸化焼成へと近づく。
酸化焼成は「煙を出さず温度を上げる」のがポイント。

まぁ、『言うは易し』であるが。


窯の建屋よりも高い煙突は、窯焚きしている場所からは見えない。薪を入れる毎に建屋の外に出て確認するのは体力的にも即時性にも差し障りがある。
という事で、ウチの窯焚きの終盤には鏡が登場する。


煙の様子を見つつ、アクションと結果の関連付けを探る窯焚き。
「窯正面も鏡。煙突の後ろにも鏡」というセッティング。

『窖窯』という一度歴史から消えた(技術伝承の途絶えた)窯を使うヤキモノ屋は、個人の工夫を共有する事で技術的蓄積を作っている。
なので、横焚きするとその辺りの技術交換話。とヨタ話。
信頼するメンバーがあってこその話である。ありがたや。


さて、今回のセッションの結果は如何になりますやら。

火前の窯詰め

2012-02-16 02:58:04 | 陶芸
さて、怒涛のスケジュールの窯詰めも最終局面。通常7日を4日で。
一番前の棚を立ち上げると後は火前部分を詰める。連房式登窯の場合では『コロガシ』を仕込む場面。

これは最終的には欲との戦いであったりする。
残った素地を見て「焼きたい」という気持ちと「詰めても破損するだけ」「窯焚きに不都合・邪魔」などの現実との葛藤である。
大体は「もう少し、もう少し」と欲張って詰めて、得てして良い結果の方が少ないのではあるが……。


窖窯でも同様に『コロガシ』も出来るけれど、小生は『匣鉢(さや)』を使って仕込みをする事が多い。


匣鉢は個別の部屋みたいなもの。モノひとつに対して様々なセッティングが出来る。
半分を隠したり、籾殻に埋めたり、あれやこれや……。アクロバティックな形態でも詰められる。
何かが起こっても個室の中だけの事。ひとつひとつが実験室の如く。これらの焼き上がりを想定するのが窯詰めの楽しみ。未経験のお試し事が多いので。
一昨年は映画アバターの異星人的な景色のモノが出て、窯出しの時に「えっ?」となったけれど。(コレ
さて、今回はどうなりますやら。

火前が詰め終わると鏡を作る。鏡は正面の入り口をレンガで塞ぎ、同時に焚口となる部分。レンガのパズルである。

で、完成したのが窯焚きメンバーとの約束時間ギリギリ。顔を見る直前に火入れ完了。間に合った!(*^ー')b
まぁ、最終日は朝ドラ直後から23:55分まで窯の中だった訳だが。(いささか疲れたな)
何だかアスリートのような仕事振り。「己に勝て!」みたいな。
性格的にイラチなので短距離向きだけど。(実際もそうだったな)


窯を焚きつつ体力を戻して、次は窯焚きの終盤へ備える。



今が一番、体が休まる時間。やれやれ。 (終わったら温泉にでも行くかのぉ~)

窯詰め終盤

2012-02-14 05:04:05 | 陶芸
窯詰めもいよいよ終盤です。
今回は前半に雪、後半は雨となり、なんとも冬のような春のような不安定な天候です。
掃除して表面の湿気が無くなったと思ったら、しっかりと地下水を呼び込んでいます。
この湿気があってこそ濃厚な緋色が出るというものです。


さて、備前焼では『コロガシ』というなんとも不思議な詰め方をします。モノを横倒しに置いて側面に何らかの模様を発生させるという目論見です。
この詰め方は窯床でも棚でもしますが、特に窯床の『熾き(薪の燃え尻)』が溜まる場所に置いたモノは特に珍重します。
『自然サンギリ』『コロガシ』とも言いますが、『窯変』という言い方で一括りにします。

本来、陶芸における『窯変』という意味は「窯焚きの結果、思いがけず発色した色」というぐらいなので、備前焼の場合は全てが『窯変』であるものと言えます。
が、そんな事を言っていると無釉焼締めの場合はキリが無いので、特に珍しい景色を指しています。

連房式登窯の焼成なら効率良く『窯変』が狙えますが、窖窯(あながま)の場合は焼成方法、窯詰めの方向性が逆です。
なので大量には出ませんし、色の濃厚さも異なります。反面、思わぬモノも出てくるので、まさに窯変です。

備前焼業界では、この「窯変をいかに取るか」ということが延々と研究されてきた経緯があるので、各陶家に独自の方法があります。
マニアックな見方をすれば景色を見て「どの陶家の筋か」という事が判る場合もあります。

まっ、もっとも小生の場合は、大いに師匠の方法から外れていますが……。


小生は貝を使う事が多いです。窯元に居た頃に始めました。
最初こそ周囲から違和感を持って迎えられていましたが、展覧会で受賞して以来は平気で使っています。

使う貝は、アカガイ、サルボウ、アラメなど貝殻に筋のある貝殻です。モノの大きさで使い分けています。
瀬戸内で食べられる『藻貝』もサルボウなので、これらもよく使います。もちろん中身は美味しく頂いて。
この場合、貝は食材ではなく窯詰め消耗品ですので経費として……。(^。^ゞ


深夜、窯の中に居るとシンシンと足下が冷え込みます。ちょいっと芋焼酎などを液体燃料にして。
それにしても、かつての晩酌のアテと窯の中で出会うとは……若干「おかしみ」があります。


さて、この調子なら夜に火が入るはず。
窯焚きスペシャリストAさん(仮名)が来られるまでには終わらさんとなぁ~~。


2番目に嫌いな仕事

2012-02-08 08:53:15 | 陶芸
窯詰め前にすることが……。

前回、2月に窯出しした後、寒くて春まで窯掃除延期していました。で、春になると色々な事が起きてちょっと延期。
梅雨は鬱陶しくて延期。夏は暑くて、秋は忙しくて、冬は寒くて……。
要は、やりたくないので延々と駄々をこねてました。

しかしながら、次へ進む為には必須事項。
とうとう今回は、窯詰め直前という今までにない延期っぷりになりました。MAX。

窯掃除は、ヤキモノ稼業で『2番目に嫌いな仕事』な訳でして……。


棚板・棚足掃除も並行して掃除します。今回はアルミナ塗りは無し。
この延期っぷりで良かったことといえば、湿気がしっかりと窯床に廻っていて埃が立たないという事か。
灰や砂を掃いても大丈夫。マスクが欠かせない仕事としては有り難い状況です。

うん、窯掃除は後回しにするに限るなぁ~。


埃が少ないほうが健康に良いし。
窯詰めのイメージも出来るし。
ウチの窯は湿気が多い方が良い訳だし。
割り木だって少々湿気ていても平気だし。
そもそもマイノリティーな人だし。

『窯掃除における認知的不協和』発動中~~。


(さて、ぼちぼち怒涛の窯詰めをするかのぉ)