さてさて、ややワイルド系(?)のやきもん屋必携のアイテムは、『斧』。 アックスです。
我が愛用品は、山暮らし突入記念に購入したスウェーデン製。グレンスフォシュブルークスの薪割り槌。斧として使いつつ、反対側はハンマーになっているもの。これを木に打ち込み、大ハンマーでさらに叩き込む。これで割れなければ、クサビを打ち込んでいく。太いものでも すんなりと割ってしまう。経験では、直径50cm長さ60cmのクヌギは、3回のストロークで真っ二つ。
小生は、斧を使う事に不慣れなので、クサビを順々に打ち込みながら割る方が安全。その使い方ではこれは大変便利。
刃のつき方が日本の斧とは違っている。
日本人とスウェーデン人では、体型も生活習慣の動作も違うので、必然的に薪の割り方が違う。なので当然、道具の形も変わる訳。しかし、斧を直接殴ってもよいのはこの薪割り槌だけなので、これを愛用している。
薪を切り株に立てて、気合一発! 一気呵成に振り下ろして真っ二つ!ではなく……、チョンッと打ち込んでハンマーでゴンッ!という地味な動作。でも楽に割れる。
薪割り機という便利なマシーンもあるが、古典的なツールを使いこなす方に憧れている。という事で、愛用する次第。
割りながら温まって、燃やして温まって……、薪割りは、『クワイエットスポーツ』。
山の木々の葉っぱも落ちて、すっかり冬枯れの景色。これからが山仕事本番。薮の掃除、シイタケのホダ木……。やる事がたくさん待っている。
さぁ、書を捨てて山に入ろう!
寒波襲来の感があるので、急遽、窯の空焚きをすることにした。目地のモルタルを焼き固めてしまう。これで、目地に霜柱が立たない。
理想を言えば、もう少し乾かしてからの方が良いのだが、悠長に構えてもいられない。今年の夏に知人から戴いた材木を使う。中国の松で、かなり大きな木であった事が窺えるものもある。あまりに立派なモノは後日のDIY用に残しておく。
最初は正面の下焚口で焚火を始め、温度が上がったら、中へ投入。仕上げは横焚口から順次放り込む。火を入れて ざっと12時間焚き続ける。
目安は、窯からの水蒸気の出具合。それと、低温時に窯壁に付着したススを燃やし切るという事。きちんとススを燃やしておかないと、あとで後悔する。窯詰めの時に顔が真っ黒になるのでね……。初窯以降の本焼きではススが残らないので、初窯前だけの段取り。
夕方から始めて、終わったのが午前の3時半。雨もあがり、晴れている。心地よい疲労感と少しの達成感を感じながら 暗闇のしじまに星を見上げた。オリオン座がすっかり西に傾いていた。
タイの昆布締めを作った。その残りのあら。
夕刻、時間が出来たので晩酌用に料理。
土鍋に、ショウガ、醤油、味醂、酒を入れて一旦、沸かす。あら熱が取れたところで、レンコン、ゴボウを敷いて熱湯にくぐらせたタイを投入。落し蓋をしてゆっくりと火を通す間に ひとっ風呂入る。風呂から出てきたところで、シメジ投入。準備万端整ったところで、土鍋を火から下ろして、食卓へ。
タイの上品さをゴボウが邪魔するかな?と思ったが、全体の味を少し和らげてまとまりをつけている。レンコンが抜群。
味付けの腕と言うよりも、今日の場合は、土鍋と火加減の勝利。
プロの料理人は、時期によって素材の質が気に入らなくても、料理の腕前を足して、いつも及第点を取らなければならない。その及第点がその店の味として認知される。
素人料理は、たまに100点が取れるとOK。そんな日は家族がよく知っていて、家庭の味の記憶として残る。案の定、子供たちは黙ってお皿に向き合っている。普段はしゃべってばかりで食事が進まないのだけれども……。
ニコニコしている子供の顔が 晩酌の『あて』になりました。とさ……。
本日は、友の遠方より来る亦楽しからずやの日。
おおむね窯が完成した頃合いに旧知の友が陣中見舞い。
昼から ずーーーとしゃべりっ放し。こういう日もあっていいよ。昼に港町で落ち合い、やおら拙宅へ。
窯の前で、牡蠣やタコ、タイ……。お土産に持参いただいたお酒『龍力 大吟醸 米のささやき』を頂きました。
貝の旨みをやわらかく包み込むふんわりとした味わいの酒。盃が進む。ほのぼのとしたいい感じ……。
夕まずめ、日のかげる頃。一同帰路へ。そして、皆が去った後、暗くなった帳の中、ひとり酔いに任せて音楽を聴く。『ベートーヴェンの交響曲第9番合唱付き』
酔ったせいもある。泣ける……。CDは、1976年録音のカラヤン・ベルリンフィル。
『苦悩を突き抜け歓喜に到る』 ベートーヴェンの交響曲は、5番に代表して そのイメージが強い。しかし9番の『歓喜』は個人でなく全人類に向かう。小生はドイツ語は皆目わからない。音楽的に耳に聴くだけ。しかし、そこにあるドラマをヒシヒシと感じる。詩的なシンフォニー
4楽章のダブルフーガは最もお気に入りの部分。かつて、コンサートの後、コートの襟を立てて無言で歩いたことを思い出す。感動のあまり、何かしゃべると感動が薄められるような気がして連れがいても無言で歩いたものだった。寒気には第9番が似合う。雪を踏み窓の明かりを見ながら歩を進めていくイメージ。ラストのマーチはまさに。
山の中の一軒家。最大ボリュームで 全身にベートヴェンを受ける。快感。
宵の頃、温度が下がっている。明朝は寒波とか。
霜柱が立たねば良いが……。窯が心配。
ちょっと お遊び。
窯を少しでも乾かしたいという思いで、窯の中で焚き火をした。炎が天井に触れない程度の火ではあるけれど、それなりに気温が上昇する。邪魔になっていた竹カゴの竹を燃やす。竹は火持ちは悪いものの火力が強い。あれほどあった竹も燃やせば数時間で無くなった。
ウロウロしている時に 夏に窯床を作った際に採っておいた粘土を発見。そこで、バケツの中で砕いて、水を入れて練ってみる。可塑性がある、指先で石を取り除き、小さな碗形にする。少々、砂っぽいが、それなりに雰囲気のある土。
火から30cm離して向きを変えながら強制的に乾燥。この時点で、窯を乾燥させるという目的は、2次的なものに降格。やる気満々で事に当たる。全体が白く乾いたら、徐々に火に近づけていく。この時点で1時間経過。昼食後、いよいよ本気モード。まずは、火の際へ。そして、熾きの上。ヒビが無いか観察しながら……。あとは、上から竹をかぶせたり、空気を入れたりする事1時間。全体が真っ赤になったところで、引き出してモミ殻の上へ。炭素を吸着させる。もうひとつは熾き(おき)に埋めてしまう。で、火がなくなるまで放置。
結果は、奥の『黒』が炭化させたもの、手前の『赤』が熾きに埋めておいたもの。
荒っぽい作りをしたけれど、傷も無く 無事に成功(?)。めでたしめでたし。
子供たちも自分で焼いた。
大喜び! もちろん、『焼きイモ』の方ですケド。
壁土を塗る。
一気にやってしまいたかったので、お手伝いをお願いして、総勢6名で壁塗り。
建材屋さんに断熱モルタルを持ち込んで、壁土を作ってもらった。山土と断熱モルタルが半々ほどの割合。おそらく建材屋さんも考えたのだろう。ワラの量、山土がこれまで経験した壁土と違う。未経験の配合なので どのようになるか予想がついていないが、とりあえず塗る。
先輩方のアドバイスを頂きつつ、希望的な勘が全て。
レンガがガタガタしていても 壁土を乗せると新しいカーブが出来ていく。見えていない曲面を、瞬間瞬間で作っていく作業。厚みが不均一になっているだろうが、気にしない。信頼できるメンバーがあってこその仕事。
後日、乾き具合を見ながら叩き締めていく。
もう一息だな。
内型にしていたカゴをはずしていく。
いままで見る事が無かった向きからの風景。
はずしていくに従って、モルタルがはみ出ていたり、足りなかったり……。それらの微調整を内側からチョットづつしていって、しかるべき時が来たら、空焚きをする。
耐火モルタルは、ヒートセットといって、火を入れないと固まらない。
後は窯の周辺の使い勝手を良くする為に、環境整備をしないといけない。階段を作ったり、埋め戻したり…。このとき使うモルタル(ポルトランドセメント)はエアセット。空気に触れると固まるモルタル。
似たような名前でも使う場面に応じて変わる。
今回 使ったのは、耐火モルタル、断熱モルタル、アルミナセメント(キャスタブル)、ポルトランドセメント。
とりあえず 煙突のレンガ積みを終了。ここのところの寒さで目地が凍りそうなので……。後は実際に火を入れてみて 雰囲気を試すとしよう。煙突は高いほど 引き(空気の入るスピード)が良くなる。もっと高く出来るが、まぁ、この辺でよかろう……。街中であれば、家々の屋根よりも高くしないと煙害がひどいが、コチラは山の中。せいぜい自分トコだけ。火事にならなければOK。
レンガが余っていたので、大きく作ろうとして、ついつい太く作りすぎた感がある。高くすればバランスが取れるのだけれども、チョット短い。ずんぐりとした感じで、煙突と言うよりも小さな窯が引っ付いた感じになっている。この太さについて訊かれたら 備前風ではなく異国風の作りだと言い張ろう。「太ったサンタクロースでも入れるのさ」って。
以前、読んだ本の中に 登窯(京都)の容積に対する煙突の太さと長さに関する方程式が書いてあって、コピーをとっていたのだが何処にやったのか手元に無い。本の題名も失念。残念。
総じて備前焼の窯の煙突は細くて長いと思う。他の窯業地の煙突は、太くて短かったり、複数あったりする。伊部が山陽道の街道筋で家が多かったからかも知れないし、レンガが豊富に手に入る産地だったからかも知れないし、築炉屋さんのセンスなのかも知れない。
最近、備前で新築される窯では丸い煙突が流行っている。レンガで丸く作る場合もあるし、カーボランダムの筒を積み重ねて結束している場合もある。可愛らしい。
まぁ、煙突と言えばヤキモノ屋のシンボル。もうチョット高くして、目立つようにしたいなぁ。
平年よりも暖かい と言っても やはり初冬。
今朝、初霜が降りた。窓の外を見ると、見える範囲が一面白く光っている。
外に置いていたバケツにも薄氷が張っている。
まだ真冬のキーンとした寒さではないものの、冬に入ったことを実感。
山からサルの群れが下りてきた。昼のひと時で、柿の実が一気に無くなる。
それでも 枝先に少し残してあるのは、木守りの心算なのだろうか。
サルもなかなか 風流な事で……。
澄みわたる青空に 色鮮やかな柿が揺れている。
明日も放射冷却で霜が降りるだろう。