備前焼 やきもん屋 

備前焼・陶芸家の渡邊琢磨(わたなべたくま)です。陶芸、料理、音楽、路上観察……やきもん屋的発想のつれづれです。

大晦日

2011-12-31 17:13:16 | 陶芸
今年もボチボチ終了。
陽のあるうちの最後の外仕事は溶かした粘土をドベ鉢へ。お世話になった各種道具もキレイに洗って……。
今年最後の日は暖かかった。「今まで雪の降った大晦日もあったけれどなぁ」とか思いながらの水仕事。一番季節をリアルに感じるのが水温です。今日は良かった。

ウチのドベ鉢の冬仕様は植木鉢流用スタイル。夜中の冷気で凍らせてしまって翌朝氷が解けると同時に排水というのが便利な使い方だけど、今年はそれが出来ていない。
今年はまだあまり凍っていないですね。なので、本来のスピードで粘土が出来て来ないのでちょっとイライラ。ボチボチ製作の方も本格シフトしないといけないんだけどな。粘土が少ないような気が……。うむむ。

という焦り混じりの製作期間ながら、今、『ジェイアール京都伊勢丹』の8F和食器売り場横で拙作が並んでいます。特設のブースらしいんだけど。

そこは、もう正月の雰囲気なんでしょうねぇ。

~1/10までです。

京都駅そのまんまなので便利な場所です。青春18切符が10日まで使えるので、その間に店番に行きます。8・9・10日。
その頃は、新年の仕事も始まっていらっしゃる方も多いでしょうし、会社の行き帰り、お買い物のついで、遊びがてら……お越しいただければ幸いで御座います。
ちなみに実家から通います。京都泊まりでは御座いませんので悪しからず。m(_ _)m 
でも、時刻表見たら実家から京都まで新快速で1時間程。近っ!! これは、京都で呑んで帰れ……。正月明けですから自重します。(たぶん)


そんなこんなで、年末も年始も切れ目無く製作も展示も色々……仕事しております。


最後に今年も暮れかかっておりますが、皆様、色々とお世話になりました。

来年もよろしくお引き立ての程、お願い申しあげます。m(_ _)m

チキン何チャラ

2011-12-25 12:41:39 | 料理・食材
クリスマスという名の『ニワトリ受難日』に、我が家も『チキン何チャラ』という強迫観念メニューを遂行する運びとなった。
拙宅の場合、御馳走感を出すにはオーブン料理が一番。薪ストーブや暖炉があるご家庭なら、特別なスタイルではないだろうけれども。

マイクロウェーブ調理器具は小生には些か理解が及ばない部分がある。

『鍋を覗く・煙を見る・裸火を管理する・熾きを調整する』という直接的な情報があるなら判りやすいのだけれど、ジワジワっと化学変化をおこしていく食材が電磁波保護シートのアチラでおこっているのはなんとも……調理の実感が無い。なので性にあわん。

それゆえ、この装置に限っては細君の管轄である。よって子供達にとってオーブン料理の花形はママ。父の権威なし。
オーブン料理って父権の象徴だった気がするけど……。まぁ、いいや。


パリパリの皮を失敗無くする為には、フライパンで先に表面を焼いておくらしい。そして野菜やハーブをあしらって、いざオーブンへ。ふむふむ。

 (これがさ、ダッチオーブンとかなら簡単なんだけどな。←まだ言い訳)



焼けるまで、子供達はオーブンのタイマーを見て、細君は焼け具合を見て、小生は何を呑むべきか酒を見て……。皆、ワクワク。


クリスマス寒波の下、それぞれの家に小さな灯りが灯っている。
日常のささやかな喜びの連なり。今年はこれが一番しみじみとするなぁ。
気仙沼以来、『当たり前の有り難さ』を感じている。

子供達皆に「全ての星の下、祝福されてあなたは生まれた」そう言ってあげたいクリスマスの夜。

「誰かの誕生日の前祝ってだけじゃないぞ」と思いつつ……酔っ払い。


そういや、この日、一番感謝せんとあかん対象はニワトリさんだなぁ。

南無。(-人-)

ホーリーカラー

2011-12-21 18:33:59 | Weblog
『聖なる何チャラ』が近いとかで、世間一般かしましい。

我が家でクリスマスツリーを飾ったのも子供が小さい頃だけで、いつの間にか飾ることもなくなってしまった。特に子供達も「出して欲しい」とは言わないので良いのだろう。何処に行ったのかな?ウチのツリー……。


この時期、聖なる(ホーリーな)色の組み合わせも多々あるようで、『赤・緑』『金・銀』『赤・白』など色々と見かける。
某炭酸飲料メーカーの作戦に拠るところの『赤・白』のサンタクロース・カラーも、すっかり定着している。普段は特に気にも留めないラベルのカラーだけど、この時期には特別感を醸し出すのが不思議。世界で最も成功したカラーデザインだろうなぁ。


庭にある『シナヒイラギ』もホーリーカラー。ウチで唯一のクリスマスらしさというところか。この時期に常緑樹につく赤い実は目立つ。
12月になった途端、俄然キレイになる。葉っぱの形も変わっていて、なかなかに好ましい。
ただウチの場合、ホッタラカシなので樹形がなんとも残念であるが、この時期にしか思い出さないという不遇な立場なので致し方なしか。

シナヒイラギは中国原産なので、名前に『シナ』と入る。けれど和名も多い。
チャイニーズ・ホーリー、ヒイラギモチ、ヒイラギモドキ、ヤバネヒイラギモチなどと呼ばれている。
最近は、リースや寄せ植えなどに使われていて『クリスマス・ホーリー』とも呼ばれているみたいだけれども、クリスマスホーリーは『セイヨウヒイラギ』に対する名前のはず。(少なくとも花屋バイトの頃はそうだった)

いつの間にかシナが本家を乗っ取っている?


とはいえ、植物の名前は人が勝手につけたもの。彼らには何ら罪はなし。

クリスマスにシナヒイラギ飾って、炬燵でワイン呑んで、第九聞いて、鍋でもして……世界中のローカルを寄せ集めて仲良く雑多。
これが日本のクリスマス。皆仲良くて全て良し。
「えーと、趣旨はなんだっけ?」ぐらいで……。


Seid umschlungen, Millionen!  Diesen Kuß der ganzen Welt!





気仙沼に行ってました

2011-12-19 14:34:50 | Weblog
『気仙沼市 唐桑周辺』


『岡山から被災地へ手仕事を届ける会』の活動で、気仙沼へ行ってました。
写真は、リアス式海岸の小さな入り江で出合った光景です。

門柱だけが墓標のように途絶えた道の先に残されていました。
穏やかな波の上には、牡蠣の養殖いかだを再建している人々の姿がありました。

今回の東北滞在中、一番心に衝撃が走った光景でした。



活動報告は、『岡山から被災地へ手仕事を届ける会』のブログにあります。

初嵐

2011-12-10 02:02:35 | Weblog
初嵐の実生が咲いてます。これから他の種類も次々と咲くだろう。
備前焼には椿が似合うので、「備前のヤキモノ屋の家には大抵植わっている」といっても過言ではない。拙宅のような山に囲まれた場所なら植えずとも藪椿も多いし。

椿は花の形のまま落花する。子供の頃の印象として、それが何となくマイナスなイメージであまり好きな花ではなかった。けれど京都のお寺で石段を埋め尽くす落椿を見て衝撃が走った。美しい。だんだんその良さが判ってくると奥深さに圧倒される思い。

潔い散り際や、存在を香りでアピールしないなど桜に通じるところもある。桜好きの民族としては愛好するのも必然か。


この初嵐は一番想いが深い一本。共に幾度となく引越しを繰り返して、この地に根付いた椿である。
でも初嵐なんだけど、ちょっとピンク掛かってるんだよなぁ~。まぁ、純白になりきれないのも小生にはお似合いという事かも。
遠目からは真っ白なんだけど。夜なら尚のこと白い。

良い感じです。完全ではない少しの破調。


月下、闇に漂うが如く朧に見ゆるのもまた愉し。
夜の椿に盃を重ねる独酌の宴。
ひと盃ひと盃、ゆるり散り初めし。


(あ~~つまり、仕事が終わって電気を消して独り静かに呑みつつ平盃を上げ下げしていると、ふと窓の外にボンヤリとした白い椿に気がついたわ~~という状況ですな)

シラサエビ

2011-12-06 19:32:12 | 料理・食材


瀬戸内では、シラサエビというエビを食べる。

釣り人なら心当たりがあると思うけれど、これは釣りエサに使うものとは種類が違う。
食べるシラサエビは、『ヨシエビ』という海の海老。
釣りのシラサエビは、『スジエビ』という淡水の海老。
エサを食べている訳ではありませんよ。念の為。


味は、最近見かけなくなった大正エビにも似て淡白な甘味がある。殻が薄くてそこそこの大きさになるので唐揚げや天麩羅なども可能。
旬は夏~秋との事だけど、大量に入荷があったのか非常にお求め安い価格で魚屋さんにあった。全部で25尾あって198円。@7.9円である。
獲れちゃったか……。

もちろん迷うことなく買い求める。


シンプルに塩茹でにしてオーロラソースで頂く。ソースといっても小学校の給食程度のもので、マヨネーズとケチャップを同量で混ぜてレモンを垂らしただけのもの。
柔らかい甘味のある身に、なんともフワフワしたソースが合う。
しかし、食材もソースもあまりに優しすぎて、最後にはバジルを追加する。これでちょっと大人向けに改良。

殻を剥いてはディップしてひと口に。合間は言わずもがなである。忙しい。
あっという間に無くなりました。
この時期のシラサエビにはミソが入っていない。それが安さの原因か。
しかしながら、そのまま捨て置くのも残念である。ひとまず頭だけ小鉢に集めておく。


然るに……翌日。この頭で出汁をひく事に。エビ出汁である。
本来ならば、小さな殻が混じらない様に、出汁を布巾で漉すのがベストと思われるけれども手順省略。

自分だけの昼ごはんである。省力化。スピード重視。(いつもの事か)


頭ばかりをザルに入れて、直接トーチバーナーで上から炙る。焦げないように注意して。香ばしさは欲しいが焦げ臭さは不要である。
そのままザルごと土鍋へダイブ~。
グラグラに沸いたところで、ザルを引き上げて終了。「小さな殻が……」は「気にしない」という解決法。モーマンタイあるよ。

あとは味を調えて、うどん投入~~。

寒い日は、鍋焼きうどんですなぁ~。ハフハフ。エビとユズのダブルの香りが味わいどころである。
わざわざエビ出汁を作るとなると高価だもんねぇ。

まぁ、余禄というか余興というか……、いや、貧乏性だ。これは。


シラサエビって、全国的には流通していない種類らしい。
こちらでは普通に見かけるので有り難味が薄いけれど。しかも、茹でても全体が白っぽいままでエビとしての御馳走感が弱い。それが安さの原因?
まぁ、そういうものって各地にあると思う。「その地方でしか食べないもので有り難味も薄いもの」って。

伝助、ガンガゼ、イソギンチャク、アメフラシ、シッタカ……その他イロイロ。


さて、シラサエビは、お鮨屋さんの卵焼きに使っても良いと思えるけどなぁ。柴海老みたいに。
でも、あまり知れてしまって他の土地で食べるようになっても困るんだけどね。

なので、このまま『庶民派エビ』としてのステイタスにいて欲しいな。それも悪くないと思うよ。


それに『ボイルド・シュリンプのオーロラソース・バジル風味』と言えば、なかなかの有り難味が出るというものであるしね。




(追記)
通販サイトを見たら『天然ヨシエビ(瀬戸内産) 500グラム(10~18尾)で7000円』って出てました。何気に高級じゃん!
貧乏性ではなくて、本当に高価な出汁だったのか……。




やきもん屋の変態性

2011-12-02 22:22:23 | 陶芸


通常、テストピースには工業的安定性が求められる。

陶芸の粘土の場合、原土を精製して出来たそれをよく混ぜて、均質に大量に使えるモノである事を前提にする。ある程度、常に同じ結果として安定して使えることが条件。釉薬も同じく。

このテストピースは、それを真っ向からする気が無いものである。安定には程遠く、原土の中から何となく取り出した欠片を焼いてみたもの。この抽斗だけで10種類以上ある。
練らない為に、粒度・砂などの夾雑物・金属の含有量の違いなどがひとつのテストピースの中でバラバラ。たまたま偶然取り出した部分なので隣りは全く違うかも知れない。

ただ、練らない事でしか判らない事もある。
そこから、その土の素性や可能性を読み取る努力をするのである。しかし、読み取ったところで大量に使った時には違うかも知れないのだけど。


この土は、可塑性が無いなぁ。
この土は、還元しかアカンな。
この土は、高温ですぐにへたるな。
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冷静なうちは他人とも共通に話せる表現である。



ただし、やきもん屋の変態性の発露というものがある。
この土を見ながら呑めるのである。つまりテストピースが晩酌のツマミ。食べないけど。

この土は、優しく扱って可愛がってやろう。
この土は、裏が表になるな。
この土は、火前でいぢめるか?
この土は、なかなかにセクシーやな。
この土は、磨いたらエエ子やで。

ホホゥ~、イヒヒ、エヘヘ、フフン……。

無機物が有機的に思えるのは、病気である。
もっともこれらの話し声が聞こえてきたりすると、完全にホンマもんになるけど、まだ、そこまでは行っていない。可逆的な範囲。


しかし、わりとね、見ながら呑んでると飽きないのよ。これが。
若干、変態感は否めないけれど、そ~~~っとしといて下さい。本人はご機嫌なんです。

ほらっ、ヒゲのおっちゃんが土くれを手先で転がしながら呑んでる姿ってさ……まぁ、想像しなさんな。美しくないから。


美しさは、その手先の粘土の中にあると思うよ。
その美しさと話をしているつもりなんだけど、傍から見るとそうは見えないのが残念である。

「変態とは誤解からも生じるのである」という事に気付くひと時。