備前焼 やきもん屋 

備前焼・陶芸家の渡邊琢磨(わたなべたくま)です。陶芸、料理、音楽、路上観察……やきもん屋的発想のつれづれです。

【開催中】 備中國足守大茶湯

2015-11-20 23:59:59 | 展覧会・ご案内


本日より、お茶会&展覧会であります『備中國足守大茶湯』が始まっております。

漫画『へうげもの』と軸としたコラボイベントですが、実に多彩な方々が集結。
・漫画『へうげもの』
・スピンオフ作家集団(美濃、瀬戸、常滑、信楽、伊賀などの陶芸家。その他のクリエイターの方々)
・岡山在住の陶芸家、クリエイター。

これまで『へうげもの』とのコラボ企画は堺市『堺文化財特別公開×へうげもの』、岐阜県現代陶芸美術館『古田織部四〇〇年忌 大織部展』、佐川美術館『没後400年 古田織部展』などでも大々的に行われていて、岡山では初のオフィシャル企画になります。

多人数ゆえ段取りや調整にバタバタしましたが、今回は色々な意味で『出来る人』ばかりで、不毛なストレスもなく全員前のめりな姿勢で会期へ突入しました。
お誘いした作家さんやお茶人には快く参加して頂けて良かった。いや、まだ始まったばっかりなんだけど。

数年前より密かに岡山開催を企み、アレコレあって今回の形に辿り着きました。しかし、詳細は決まりだすと怒涛のスケジュールで、事前のマスコミ取材なども入りてんやわんやで初日を迎えました。
特にこの数日は、なかなかなスケジュール。原因のひとつには、『大人の遠足』をしたからなんだけどね。搬入前日に伊賀&滋賀。こういうのは大人として間違ってる。

早朝に備前を出発して伊賀へ。某所で「ぬぉぉ~~」という体験をして、佐川美術館の『古田織部展』に閉館ギリギリで飛び込み、備前にトンボ帰りする。
それはそれで、大いに価値がありましたが。

そして翌朝、早起きして準備。備中高松城に程近い足守へダッシュ。目指すは数寄屋造りの茶室『常光庵』です。
「備中高松城水攻めからの中国大返しもかくもありらん」の勢い。「方向が逆じゃん」というツッコミは受け付けません。
隣接する近水園の紅葉が綺麗です。

展示は、茶室のみならず、この石庭も使います。

ここが、どうなっているのかは来られた方のお楽しみ。

出版社とのオフィシャルなイベントですから、複製原画も沢山あります。
実際の作品と原画が並ぶと、モンタージュの如く新たな意味が発生したりしなかったり……とか。







●21日は、東京、横浜から来られた茶人による遠征茶会も開催。岡山初の茶会へ是非。(予約が確実です)
 ・ 世界でも広く活躍する横浜のへうげた現代茶人。勢いと笑いあり。残席わずか。
 ・ 『サラリーマンとOLは現代のモノノフである』をコンセプトにした給湯室を茶室と見立てる流派。ワークショップ感覚で気楽にご参加頂けます。

特筆は、お菓子です。超絶技巧の細工に笑い、ネーミング意図に驚嘆します。参りました。


●22日は、漫画の担当編集者・作家を交えての『ランチ&トーク』イベント。(要予約)
 ・ 本日はカフェでランチを頂きました。流石、お茶事をする場所だけに丁寧さが行き届いた料理です。参加陶芸家の器を使って頂きます。


●小生は、リヤカー茶席を随時開催。岡山では随分やった気になっていましたが、「初見」という方も多くて「まだまだやなぁ~~」とも。



是非、ご高覧ご参加頂けると幸いです。


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タイトル : 『備中國足守大茶湯 (びっちゅうのくにあしもりおおちゃのゆ)』

会期 : 2015年 11/20(金)~23(月)

会場 : 常光庵(奈々瀬)   〒701-1463 岡山市北区足守795   TEL:086-295-0550

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旬の出会い 柚子とママカリ

2015-11-17 20:57:54 | 料理・食材


今年は柚子が豊作だった。無農薬と言いつつ実際は放置しているも同然であるが、なぜか今年は多かった。園芸部部長(細君)の指示で家族総出で収穫作業。

番犬福助は「ワレ、カンセズ」であるが……。

「遊んどらんと、早よ、散歩に連れてけや!」の顔である。

収穫はしたが、さてさて……。
マーマレードや柚子酢などは勿論作るとして、フレッシュな香りも楽しみたい。ただし、ユズ風呂には興味が無い。あくまでも『食』優先。


先日来、拙宅の子供たちが「ママカリの味をキチンと認識していない」とのたまっていた。そこで「柚子もあることだし」とママカリを締める事にする。丁度、脂が乗っている時期でもある。
手順はコハダでする通りだが、フレッシュな柚子を使うのが今回のポイントである。旬の出会いにワクワクですな。


まずは、ママカリを仕入れる。


大名卸しでバラす。よく乗った脂で包丁に心地よい抵抗感が生まれる。塩を振ってしばし「待て」。


昆布、酢、ママカリ、柚子のミルフィーユ仕立てで仕込んで冷蔵庫へ。

一番上にも柚子を撒くが如く。
あとは時間が調理する。出来る事といえば、魔法の呪文「美味しくなぁ~~れ、萌ぇ萌ぇキュン!」ぐらいだ。(←よく知らない)

仕込んだ当日はすぐには頂けないので、世間のママカリ味として売っている酢漬けを出す。

いや、本当はその日の『酒器の勉強タイム』の教材として買ってきたものだけど。


さて、満を持しての本日。食べ比べと称して自家製ママカリの酢漬けを出す。


子供たちに感想を訊くと、ひと言。

「愚問!」と答えたきり。パクパクと。


え~~と、これは褒めているという意味らしいけれど……。そこは素直に言っても良いんじゃないかな? ツンデレとは違うし……。
そもそも、褒められて伸びるタイプなんだしさぁ。

ご飯をご近所に借りることなく、液状のお米をお代わりする。良いねぇ。


さておき、柚子はまだまだある。近日中に他にも色々と仕込まないとなぁ。

う~~ん、忙しいねぇ。(´・_・`)





























第3回 ふるさとあっ晴れ認定委員会

2015-11-16 21:05:51 | Weblog


昨日は、尾道へ参りました。
育った土地柄、坂の上から見る海が好きな光景です。ここも同様のロケーション。良いですなぁ。

山を見上げ、

海もすぐそば。

良いねぇ。


で、遠足ではなくて、お仕事で御座います。
JR西日本岡山支社様による『ふるさとあっ晴れ認定委員会』の第3回目の委員会(備後エリア)でした。
岡山県内の『えぇとこ、えぇもん、うめぇもん』の逸品を掘り起こし全国発信するものを認定します。最終的には来年の大イベント『晴れの国おかやまデスティネーションキャンペーン』に大きく関わっております。
今回は、イタリアンシェフ、フラワーエンターティナー、温泉旅館女将、書家、パーソナリティー、やきもん屋の面々で。


開始前の自席から。

真面目モードで臨みますよん。

こんなのや、こんなのや……と、地域性とメッセージ性ある魅力的なプレゼンがされていきます。









触ったり、試食したり、意見を述べ合って……。
それぞれのジャンルの次世代をしっかり担う方々(但し自分は棚上げ)、話の切り口に新鮮な印象を感じて素敵。


結果。
『あっぱれ大賞』としては、瀬戸内しまなみ海道、備後絣、備後府中黒味噌、コロラムプリン。

『あっぱれ認定』されたものは、
えぇとこ : 尾道~鞆の浦、笠岡諸島 
えぇもん : 尾道帆布、府中桐箱
うめぇもん: くわい焼酎、おのみちサルシッチャ、はっさく大福、無花果酢いーと、雑穀物語美人うどん、瀬戸内ど真ん中のり幻紫菜

などが選定されました。


終了後は懇親会へ。「軽食がでます」とお伺いしておりましたが、なかなかしっかりとした分量かつ、和洋取り混ぜたユニークなコースで良かったです。

色々と頂きつつ歓談し、最終的には直近のお茶会&展覧会『備中國足守大茶湯』をガッチリとご案内させて頂きました。


今朝は、審査中の写真も新聞記事になっておりました。

備後絣に興味惹かれているところ。


駅前で仕上げの一杯をして新幹線の終電で帰宅。

楽しい一日でしたが、朝から行けば良かったなぁとも。


次回も楽しみです。 (念のため、繰り返しますが、遠足ではございません)












































サワラとママカリ

2015-11-11 20:20:00 | 料理・食材


過日、密談 いや、打ち合わせの機会に、某お寿司屋さんで鰆(サワラ)の刺身を頂きました。
岡山県人が愛してやまぬ魚である。岡山では刺身を見かけるけれど、全国的には珍しく『西京漬けの魚』という認識でしょうか。

サワラは出世魚であるので、魚屋さんでサワラと称されても実際は若魚のサゴシである場合も少なくない。
サワラの刺身は別格の美味で、一旦知ってしまうとサゴシの刺身やサワラの味噌漬けでは食指が動かぬ不幸が訪れる。
しかし、鮮度が良くて大きいサイズは全国的にみても高値である。
「岡山といえば……」という名物として、『鰆の刺身』が全国的に知られていないのが優越感であるけれど、有名になって高騰するとかなり困る。( ← なら、書くなっ!)


さて、「岡山といえば……」という名物で、よく取り上げられるのがママカリである。
皆様ご存知の「美味しすぎて、ご飯(ママ)を借りに行くほど旨い』というものである。確かに美味しいものは美味しい。調理の手間と技術で結果が大違いになる。


いままでのベスト・オブ・ママカリは、岡山の名店でご馳走になったもの。
光モノ代表のシンコ、コハダの明確なエッジの強さある旨さに対して、ママカリはふっくらした脂に包まれた優しい旨みである。

シンコは、益荒男(ますらお)。
ママカリは、手弱女(たおやめ)。

といったところか。


しかし、実際のところ、岡山の若い子はママカリを食べる機会が少ないらしい。確かに喧伝に比して魚屋さんではあまり見掛けないし。
小ささ故に調理に手間が掛かるのも世の奥様方から敬遠される要因か。
古老に伺うと「丸まま白焼きにして二杯酢に漬けるのが一番美味しい」との事であるが、若者向きメニューとは、やや言い難いかも。

お土産品も酢漬けばかりだったけれど、食生活の変化に対応して提案も変わってきている。

『ママカリのオリーブオイル漬け』などは期待値が大きいなぁ。
まだまだ拙宅でも色々と試す余地はあるはずだ。


という事で、個人的都合から言えば……、地元名物として、サワラは頑張らなくて良いけど、ママカリは頑張って!

あと、ヒラ、ケッケ、イシモチ、ゲタ、アナゴ、ガザミ、ガラエビ、シャコ、アナジャコ、アミ、ナマコ、ベイカ、イイダコ、テナガダコ、カキ、タイラギなども頑張ってよし! 
……ってな、ところであります。


皆様、ご縁がございました是非! (*^ー')b


























西洋音楽史上、織部っぽい人って? 

2015-11-10 21:30:29 | Weblog


戦国乱世の頃、古田織部という茶人武将が「数寄を以って天下を獲らん」と活躍しました。信長→秀吉→家康に仕え、利休に師事し、弟子には小堀遠州、上田宗箇などがいます。活躍の結果、現代において尚ひとつの様式として『織部』があります。我々が非対称さに美意識を見出す事が出来るのもその辺りも要因のひとつでしょう。

その人生は、歴史大河ギャグ漫画『へうげもの』として長期連載中です。(まもなく21巻が出ます)
『へうげもの』は剽軽者とでも書くのでしょうが、隙あらば命のやり取りをする日本全国任侠時代において、命掛けで趣味趣向を貫く豪胆さ、それに対して表現の軽さが主題でもあります。そして、一世風靡し、ある時を境に灰燼に帰して忘れられる人生。あくまでも体制側に居ながら新しき事をなすという存在でした。
まさに『桃山に散った』というべき人生で、このあたりに現代人は感化されるのでしょうか。


さて、そんな事を思っていると、ふと疑問が。

「音楽(クラシック)の歴史において、古田織部に当たるのは誰だろう?」


ボンヤリと考えていましたが、答えはすぐに出る。

つまり、いない。

権力者(王、貴族、武家、教会など)があり、かつ体制側の人から探さねばならない。つまり時代としては古典派ぐらいまでである。
しかし、西洋では権力者自らが表現した芸術はほぼ無い。あちらの芸術は発注側と受注側の階層がはっきりとあるので存在しないのである。
織部も発注者側であるが、陣頭指揮をして形式、様式を牽引したという意味では表現者ともいえます。
オペラにおけるバレエ導入を国王が許すとか、そういう程度ではない。価値観やその後の美意識に影響を創出した人……。

となると、思いつかないなぁ。( ← 不勉強は棚に上げて)



ちなみにザックリとした音楽のメインストリームを書いておくと……、(西洋美術史や現代アートは、音楽史に置き換えて覚えました)

●黎明期 
民衆の生活で伝わったもので楽譜はない。吟遊詩人やお祈りの歌など。

●ルネサンス 
スポンサーは教会。
ミサ曲、合唱曲や世俗曲など。現代とは異なる記譜方法。教会旋法(チャーチモード)など現代と音の配列が異なる。

●バロック 
スポンサーは教会、貴族。
現代の調性や和音進行など基礎が出来る。延々と繰り返される通奏低音に主旋律が乗る形式。伴奏と旋律など楽器が分業化。
バッハ、ヘンデル、ヴィヴァルディなど。

●古典派 
スポンサーは貴族から富裕層市民へ。
室内楽メイン。整然とした『起承(転)結』の形式が出来る。現代楽器の基礎が出来る。ピアノの発明により婦女子向けの曲が楽譜として出版される。
ハイドン、モーツァルト、ベートーベンなど

●ロマン派 
スポンサーは市民。
主題に対して物語性をもって表現する。作者の主観が強く「俺の話を聴け」的な曲も多い。
楽器がコントロールしやすくなり、奏法が確立するにつれて楽器編成が大きくなる。オペラやフルオーケストラが誕生。

・前期:メンデルスゾーン、シューマン、ショパン、ブラームスなど
・後期:ワーグナー、ブルックナー、チャイコフスキー、マーラー、シュトラウス(R)、シベリウス、ラフマニノフなど

●近代 (ロマン派末期と被っている)
肥大化するロマン派に対してアンチな立場。印象派、新ロマン主義など。調性の有無、拍子、旋律数、破調した和声進行などの作曲、編成の多様性など、主義主張が乱立する。
ドビュッシー、シェーンベルク、ストラヴィンスキー、ショスタコーヴィチなど

●現代
やったもんがち。現代アートとの連動でコンセプチュアルなものもある。「音楽なのに楽器を弾かない」などは有名すぎる。
ジョン・ケージ、アルバン・ベルク、武満徹など


という事で、権力者かつ表現者は……、いない。

しかし、それではつまらないので作曲技法だけで考えてみると、『エリック・サティ』かな? 時代は古織様からずれて19世紀末から20世紀に達するが。


サティーは奇行が多い変人であったけれど、『家具の音楽』を自認する作風でBGM業界の創始者である。
伝統的な規則性や規律から生まれる安定した心地良さを根底からひっくり返し、調性、リズム、和声進行を崩壊させた。いわば『歪みの心地良さ』である。
印象派といえばドビュッシーが有名だが、その人に影響を与えた意味では印象派プロトタイプを生み出した人である。
その後は、記譜も独自のものになり、調性記号、拍子記号、小節線が放棄され、『そこにあるなら、あるんじゃね?』というありのままな形となる。

百花斉放、百家争鳴なロマン主義の中で、伝統を破壊し、新しい表現を創造し、やがて様式となる。
超人的作為を通して無作為を装う技巧。流れていく旋律に対する和音の諧謔性。

『破調の美』であり『乙』であります。

あと、曲のタイトルも一興。
タイトルと曲の関連性を持たせない為にあえて言を弄するスタイル。『無題』という風にテキトーに投げていないのが乙です。


な~~~んて事を思いながら、本日は『Préludes flasques <pour un chien> =(犬のための)ぶよぶよしたした前奏曲』から始まりました。

























東京出張 番外編

2015-11-08 17:01:06 | 路上観察


東京シリーズ(?)もこれにて終了と致します。「どんだけオノボリさんやねん!」というツッコミはスルー致しまして……。
締めは感動したものを。トマソン物件と食です。( ← ライフワークですな)


方角の見当だけをつけて新宿を歩いていた時に、目の前に数段の小さな階段が現れた。
「しゃーねぇな」と上がった。途端にすぐに下る。

「イマノハ、ナンダ?」 ゾワゾワした違和感があって振り返った。


純粋階段!!  ……( ̄□ ̄;)!! 


視覚情報よりも体験が先に来るという感動的な出会い方でした。すぐに人波を避けて壁に張り付くようにして、マジマジと鑑賞する。
ぬぉぉ~~。感激じゃぁ~~~。
しかし、眺めているうちに「何だかわざわざ作ったっぽいなぁ」という疑念が湧き上がる。
こやつは、フェイクなトマソンかも知れぬ。佇まいがあざとい。

この翌日、赤瀬川原平氏の『大日本零円札(本物)』と思いがけず出会った。偽札風作品でタイトルが『本物』である。
これらの事から、「フェイクとは、本物とは何か?」というお題に行き当たるが、勿論、それ以上は何も考えていない。


さて、もうひとつ。

下北沢で行列の出来るカキ氷屋さんにご案内頂きました。
お茶舗がされるカキ氷で、過日の横浜『へ茶』会場でもされていましたが頂けず心残りでした。その話をすると特別に『へ茶』バージョンで出して頂きました。『横浜の仇を東京で討つ』第2弾でした。

甘くない抹茶ムースと餡子とを交互に食べると、めちゃ旨っ!! 
かき氷なのに「何服頂いたかなぁ」という抹茶を頂いた錯覚に陥ります。
流石にお茶屋さん。お茶の楽しみ方としては未体験かつ大満足。行列できるはずです。良いなぁ。

下北沢は下町っぷりが育った街にも似ていて良かった。多分、坂と商店街の雰囲気なんだろう。これで海が近ければ最高だわ。


さてさて、これで長い長い出張顛末記はオシマイです。ご高覧に感謝。m(_ _)m


さぁ、まだまだ色々イベントや展覧会が続きます。ガンバロー。(*^o^*)/

















東京出張 その3

2015-11-07 18:24:57 | 料理・食材


さて、東京出張には裏テーマがありました。
出張にテーマをつける時点で「仕事として如何なものか?」ですが、テーマはあったほうが楽しいのでね。しかも裏。

少し前から久しぶりに『立ち食い蕎麦』というものに行きたくなっておりました。
学生の頃は電車の乗り換え時間や呑み会帰りに利用していましたが、岡山ではさっぱりご無沙汰。と言うか、岡山には立ち食いの店がない。
「貧乏学生や多忙なサラリーマン諸氏は如何されているのか?」と思いますが、地代と回転率から考えてカウンターに椅子を置く方にメリットがあるのでしょう。それに市街地サイズからして飛び込んで秒単位で「メシ!」というニーズも少ないのかも。
そんな土地柄ですが、立ち食いではないもののセルフ式うどん店(自分で麺を温める方式)は好きです。
あと、「最近、東京の立ち食い蕎麦が侮れない」という噂も小耳に挟みましたので、これは是非ものかと。


という事で、出張の裏テーマは『立ち食い』です。
歩き疲れと己の探究心とのせめぎ合いの予感がします。「己に克たねば得るものはなし」の心意気でいざ!( ← おおげさ)

立ち食い界の定番である駅蕎麦を中心に攻めたいところですが、東京は駅以外にも沢山あるので街中で調査を開始します。
また、蕎麦、居酒屋以外に、焼肉、ステーキ、イタリアン、バル、パブ……とジャンルの枚挙に暇がありません。
しかし「江戸に来ちゃぁ蕎麦でしょう」という事で、街中の蕎麦屋を調査対象のメインにします。

それに東京では『うどん』に食指が動かない。江戸落語で「うどんなんて野暮なもんは食わねぇよ」とは誰の『時そば』だったかなぁ。
へうげもの的には「大金時様が微動だにせず」である。


到着した昼。
増上寺前で大手チェーン店を発見。何せ何処も初めてであるので選択の余地はない。日本最高峰の店名に期待。

東京うどんに対して関西蕎麦はガッカリした経験が多いので、関西圏では大抵はうどんを頂く。「立ち食いでは、うどん」であるが、その思い込みを凌駕していた。
細麺だけでも関西のそれとは異なるし、出汁の香りも立っている。しかし、かき揚げがお好み焼き化していたのが残念。
立ち食いもあるが椅子もあった。疲れた足には何より。ファーストコンタクトは良好に恙無く終えた。


夜。
ちょいっと(?)知り合いと呑んだ帰り道。単身、近道と称して煙が立ち込めるエリアに突入する。学生の頃は近寄り難い場所だったが、今は平気。

その中ほどに外国人が行列している店があった。老舗然とした風格。出汁の香りが周囲の煙に負けていない。ここを締めの蕎麦と定める。( ← 締める必要はない)

行列から他店の裏側が見える。細い路地になっていて、どうやらこの奥にトイレがあるらしい。タバコと香水の残り香を漂わせつつお姉さんが入っていった。しかし、いつまで経っても帰ってこない。なんだ? 新宿の闇なのか? まだ、小生にはデヴューが早かったか? 外国人の振りでもしていよう……。

暫し後に順番到来。行列中に先客の行動でオーダーの仕方、お金を渡すタイミング、水の配置などは予習済みである。これなら言葉がわからなくても大丈夫なシステム。外国人の小生にも判るぜ。

『名物 天玉そば』をオーダー。温泉卵が好ましい。かき揚げは揚げ立てでサクサク。粉が少なく大きいカットの野菜。これも好ましい。
酔っ払っているのもあって何もかも旨い。VIVA新宿。

蕎麦で締めてホテルまでの道すがら、おもむろに米を欲す。寿司で締めるか……。( ← 再度繰り返すが、締める必要はない)
「よっ、寿司でも摘めるかい?」と、自分の中では江戸時代の江戸っ子気分で暖簾をくぐる。勿論、テーマ通りに立ち食いである。
オススメを貰いつつ生ビールを片手に壁のメニューを睨む。「長居は野暮だぜ!」とばかりにオーダー順を考える。
金目鯛を炙って塩、北寄貝は貝紐もつけて、〆は葉わさびの手巻きだな。本人的には丁々発止のオーダーをしてサクッっと。

隣の若い兄ちゃんが「鯖をダブルで」と4貫並べてご満悦なのを尻目にして帰る。イナセを気取るがフラフラしてたはずだ。


翌朝。
「薄っすらした宿酔いを出汁で薄めるか……」と思いつつ、駅の反対側の蕎麦屋へ。朝から蕎麦は半分意地である。

当たりをつけている店は歌舞伎町直近エリアにある。「夜はご遠慮したいが、朝なら大丈夫だろう」と思いきや、朝でも元気な町でした。
地下の店に吸い込まれていくサラリーマン風のオジサマの御武運を背後から祈るばかり。

この店の天麩羅はオーダーが通ってから揚げる。無料サービスとして、生卵、梅干、出汁、蕎麦湯、ワサビがある。そして24時間営業。
「どんな店や……、東京スゲェ~」と感心。
見上げるほど大柄で派手なオネエさん(性別年齢不詳)が、千鳥足のボックスステップを踏みつつ蕎麦湯を飲んでいた。江戸っ子だねぇ。締めは蕎麦!ただし朝。粋ですなぁ。
揚げたてのかき揚げが旨い。麺は温め直しではなくてまさに茹で立てだったし。バイト君ながらもなかなかレベル高し。


昼。
今回の本命のお店へ。鰹節屋さんが経営する立ち食い蕎麦屋さんである。
前評判では、出汁の旨さもさりながら、タマゴかけごはんに鰹節粉を振り掛けるのが美味しいとの事。かなり期待して行く。

しかし、定休日?!
残念がって写真を撮っているとオーナーが出てきて謝られた。次の楽しみにするよ。ほら、残心が大事っだってさ。( ← 何か違っ!)

仕方なく、大手チェーン店へ。どちらにせよ初めてなので問題なし。

ホウレンソウというのが今まで無かったパターンである。何故か東京ラーメンを髣髴とさせたのは気のせいか。


まぁ、そんなこんなで最終的に蕎麦には食傷気味でしたが調査終了。

かくして、半ば意地になりつつの食行脚でした。

立ち食い蕎麦は、スタイルも味も隔世の感あり。
立ち食い寿司は、回転寿司より疲れないし、他のお客さんとオーダーの呼吸もありライブ感が楽しかったかな。
立ち食い焼肉は、煙が凄かった。そして決して安くは無い。看板と実物の差もあって直ぐにお暇を。コンセプト優先か。
立ち食い串焼き魚は、コンセプトに無理があるのか閑古鳥な雰囲気。バイトちゃんが店先で焼きながら呼び込みしている侘びた風情が良かった。

どこも全体的に外国人が多いのも納得。手軽に日本の味を楽しめて、日本人観察にも抜群です。
「海外ファストフード、何するものぞ」の逞しさでありました。


諸々、当分行かなくて良いほど満喫しました。

さて、暫くは尿酸値を下げるメニューとビタミン補給を心掛けます。(健康でないと都市生活はできんなぁ)


















東京出張 その2

2015-11-06 19:46:32 | Weblog


さて、今回の東京出張のもうひとつの目的は、『横浜の仇を江戸で討つ』で御座います。
前回、横浜出張でのフリーな移動日は秋の月曜日ということで、美術館関係が休館または展示入れ替え中でありました。

その為、特に何をするわけでもなく……いや、酒は呑んだな。こちらは休肝日ではありませんでした。
「ミズダコを香住鶴で」という東京で呑む必要の無い……いや、だからこそ相応しいのか? という逡巡を山場として一日が終わったのでした。
何も見れなかった仇を返さねば。

という事で前乗り。当日は月曜日で美術館は休みですが大丈夫。(←何が?)

見たいものは美術館だけにあるのではない。まずは、落語でお馴染みの増上寺。

まずは参堂から伺います。鐘楼を横目に「ここの鐘は海風に乗ってくるンで鈍い音……。ぐぉぉぉぉ~~~ん」と独り言。
お参りした後は、今年オープンした宝物展示室へ直行。大殿の地下に潜る格好。


お目当ては、狩野一信の『五百羅漢図』です。

全100巻を20巻づつ入れ替えながら展示。今回は21~40巻までで、地獄から人々を救済する羅漢様がメインのシーン。
キャプションも判りやすく見ごたえ充分。平面的な構図のレイヤーを重ねて奥行きを表現。緻密な細い線、気配のあるぼかしなど遠くからも近くからも見飽きない。う~~~ん、良いなぁ。
『地獄八景亡者戯』的な緩さではなくガチンコ表現で、怖さと有難さの波状攻撃に見入ってしまう。


見終わって地上へ。ふと門を見上げると、なにやら可愛らしい図案を発見した。

魚?

そのまま、視線を上げると……。

『魚がし』とある。魚屋の親父さん達からの寄進でしょうか。

トラックが通行していた門には、高さ制限の枠のようなモノが異彩を放っていた。視認性を高めるビビットな色が現代アートっぽい。いや、このお寺なら現代アートかも。 

道の反対側から「現代的な襲の色目とするなら、名前はどうするかなぁ」とボンヤリ眺めていましたが、個人的に『711』と命名する。( ← まんまですな)
( ← のちほど『エニートーキョー 2015』というデザインイベントと判明しました)


次は現代作家の描いた五百羅漢図を見に六本木へ。

見上げても見上げても曇り空 ( ← 山頭火風に )
どちらも高い蜘蛛と雲    ( ← ??? )

このビルの高いところの美術館へ。この方は実物を見たことが無かったので。喰わず嫌いはイケナイしね。

で、やはり……。感想はさて置き、色々な音が気に障る会場でした。

「商用でなければ写真撮影OK」という海外の美術館スタイルは良いのですが、シャッター音がやかましい。
全てをスマホで撮っていた兄ちゃんは、目の前の実物よりもスマホ画面を見ている時間の方が長かっただろうなぁ。
「あとで本でも買えば?」と何度言いそうになった事か。その方が写真もより良いし。モノより空間体験という人か。

観客の話し声も大きかったし多かった。普段、美術館へ行かれない層もご来場かな。展望台からのお流れ? 
パステルカラーのジャージ・ケミカルなサンダル・ピカピカしたスマホの団体さんは「Youは何をしに美術館へ?」って感じ。
展示室を本当に駆け抜けて、ミュージアムショップで大騒ぎ。それで廻る経済もあるという事でしょうか。


さて、翌日。
三越入りする前に、東京駅丸の内側へ。

綺麗になったドームを見上げて、読んだ事はないけれど『点と線』をふと思ってプラットホームを見やる。

駅から出て中央郵便局跡地の商業ビルへ。

ここでの目的は、日本郵便・東京大学産学協働プロジェクト『インターメディアテク』にある。簡単に言えば、東大の学術標本の一部が展示してある場所。しかも入場無料。素晴らしい。
出来た当初から行きたかったけれど機会が無かったので、やっとこさであった。

館内は撮影禁止。(←こういうところだよっ! 日本は)
入場無料ではなくて、「部屋ごとに寄付金箱を置いておけば良いのになぁ」とも。鉱物、数理模型、機械の教育模型の展示にはお礼がしたいぐらい!!
一番の驚きは、貨幣コーナーで赤瀬川原平氏の『大日本零円札(本物)』があったこと。『千円札裁判』の最中に作っていた作品で、思わぬ場所での初見となりました。洒落の効いたキュレーターさんですなぁ。
前日に新宿で『純粋階段』の発見&体験したこともあり感動もひとしお。出会う時には出会うんだなぁ。

そこから三越まで歩いて、館内をグルグルと。それはそれで楽し。

という訳で、「東京では色々見たよ」という報告まで。


で、実は、他にもテーマもあったりして……。

「まだ、あるのかよ!」という向きも御座いましょうが……、はい、続きます。 (^。^ゞ














































東京出張

2015-11-05 18:41:13 | Weblog


ひょいとお江戸に参りまして、昨日遅くに帰宅しました。今回は、三越本店5階で行われておりました『剽軽大茶会』がその目的。

会場に向かう途中は天気がよく、汗ばむ程でありました。



大茶会というタイトルながら、今回はお茶を点てることも無く、在廊していらっしゃる陶芸家の皆様とワァワァとやっておりました。
SNSのお陰でチラチラとお見かけする事もあったので、初めてお会いしても初めてでないような不思議な感覚もありでした。
共通点は、ヤキモノ屋かつ漫画『へうげもの』読者ということであったのがフレンドリーさの要因かも知れません。

ほぼ釉薬の方々なので、作品の展開が華やか。

焼〆作品も鮮やかなビードロで、やはり華やか。


その中で、我らが赤いリヤカーも存在感を放っておりました。「おぅ、頑張ったな!」と褒めたいところです。

これまでは、お茶を飲みつつヤキモノの話をするステージとしての活用が主でしたが、今回は物言わず展示に尽力した健気なヤツです。

お客様からの評判も良かったようで、特に日曜日のお茶会は盛況だったようです。

いつかは、銀座のど真ん中、歩行者天国で引きたいものですな。

さて、最終日でしたので片づけをして終了。
解散まで時間が掛かったけれど、その多くは搬出のエレベーター待ちでした。流石、日本を代表する物欲の館で御座いました。周辺道路の大混雑な事。


しかし、東京は本当に良く歩きます。特に地下鉄は……。
きっと「田舎もんがヨロヨロとしてらぁ」と思われていたのでしょうが、そんな事にも気が回らないほど疲れました。

以上、お江戸出張話は終わり。


「え? 終わりなん?」と思われた方は、ご明察で御座います。
これだけで終わる訳が御座いません。長くなるので分割です。

ひとまず今日のところはこれにて。m(_ _)m





破格 --桃山備前--

2015-11-01 10:38:32 | Weblog


昨日、ボチボチ会期が終了する展覧会へ行きました。
「東京出張の前か?後か?」と思っていましたが、後顧の憂いのないように『前』を選択。

改めてフライヤーを見ると、ちょうど博物館学芸員による列品解説日である。「おそらく話をするのはあの人であろうな」と決めてかかって行く事に。
これまでに、我々(備前焼作家集団けらもす)が企画したイベントやフランス講演でゲストスピーカーをして頂いた方である。
時間を狙って博物館へGO~~~。

途中で所用で伺った先で、「今日はどっち行くの?」と訊かれる。何の事かと思いきや、ほぼ同時刻にアチコチで備前焼トークがあるとか。
お伺いすると人間国宝の先生から始まり……。おぉ、なるほど。
「お客さんが分散してしまって勿体無いなぁ」とも思うが、秋の企画にはさもありなん。


博物館に10分前に着いて、ひとまず展示ガラスの前を流し見していく。歩むスピードを緩めずに行きたいが、しばしば立ち止まる事多し。フムフム確かに名品揃いである。
久しぶりに見るもの、初見のもの……など色々。「岡山でこのレベルが揃うのはちょっと無いな」という感想である。内容が濃い。事前交渉の大変さを推察します。
コストパフォーマンスで言えば、いやコスパで言わずとも『見ないと損! というか、後悔するかもよ』というレベルです。

個人的には武家茶人である上田宗箇の茶碗に興味を惹かれた。お気楽に「あっ、お茶飲む?」というレベルからは遥かにぶっとんだ気迫ある面取りでありました。


定刻直前。
おや? 知り合いの奥様がいらっしゃる事に気付く。
ふと会場を見回すと、おぉ! ウチのメンバーの半数が。フランス事業でお世話になった方も!「今日はお祭りですか?」
お互いに打ち合わせもなく同時刻に集まるとは、流石というか、例によって滑り込みというか……。たぶん、後者。


定刻に解説開始。
学芸員さんは流石に話慣れている。内容と同時に話の構成にも注目する。展示趣旨、時代区分、背景、その比較と続く。なるほどね。

今日行ったのはトークそのものも目的であるが、ちょっと仕込みの為の参考もあっての事。
11月に予定しているグループ展の中でトークイベントをする。しかし、どうやら周囲は「貴方がお話するよね」的な雰囲気である。
なんだ、このプレッシャーは……。

お茶も点てて、トークもして……という段取りになりそうだなぁ。う~~む。まぁ、受けて立つか……。
またしても例によって『返事のなべちゃん』『いっちょかみ』が発動である。要請に「YES」と返事してから「さぁ、どうしよう」といういつもの流れ。


さて、もろもろ頭を耕しておかねば。


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タイトル : 『特別展 破格 --桃山備前--』
会場 : 岡山県立博物館(後楽園横) 
会期 : ~11/8(日)

 土曜日14:00~15:00 学芸員による解説
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まだの方は、是非! 


(『後』にも行こうかな……。)