備前焼 やきもん屋 

備前焼・陶芸家の渡邊琢磨(わたなべたくま)です。陶芸、料理、音楽、路上観察……やきもん屋的発想のつれづれです。

流雫へ その3  ~ テストいろいろ ~

2020-06-26 11:49:47 | 陶芸


今回の個展では流雫(るな)シリーズを始めています。それらについて少し……。

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さて、これまでに伊部手(黒備前)に対して素材のテストした。
そして、次は技法のテストを始める。

自分の絵画センスは甚だアヤシイのだけれど、かつては音楽の趣味として不協和音、変拍子、十二音技法、無調性などが好みであった。
その所為なのか、抽象画は好きな部類である。
無釉焼締めの景色もいわゆる抽象画のようなもの。やはりここは抽象性を目指すのが自分にとっては自然なのだろう。
絵唐津や志野ではなく、ジャクソン・ポロック氏のpouring、河井寛次郎氏の打薬、弥七田織部のテイストを無釉焼締め陶でするという事。
自己内面的には、これまでの象嵌文様のカウンターであるのかも知れない。

手元には『自家製 備前産ベンガラ』と『備前産一次粘土』がある。
黒と白。「いかに使うか……」と、考える間もなく手が動いていた。それも衝動的に。

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◆テストピース製作◆

塗り分け。ベンガラの濃淡による発色の検証。

「焼く前の秋色コーデっぽいのん、エェなぁ~」とは思うけれど、そうはならないのがヤキモノである。

焼き上がり。

鉄以外の金属もあるのだろうな。キラキラも出るぞ。
これはこれで、良き。

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◆テスト色々◆

焼成条件を変える。


ベースの土を変える。


いやはや面白いな。

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ちょっと迷彩柄っぽくもある。
ちなみに迷彩柄は4色構成が多い。それが数学の4色問題に関係するのかは知らない。
今ある素材での発色は『素地の地色、ベンガラ、泥漿、自然釉(ゴマまたはヒダスキ)』である。
ちょうど4色ぐらいの数。
さてさて、これに焼成条件や火の走りも入れると無限の組み合わせであるなぁ。

いやはや大変だが、楽しみ。

……という事で今後も続けるべくシリーズ化します。


そして、最後に恒例のCM~~~~~~~~~。
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◆流雫シリーズは下記で展覧中◆

タイトル : Sturm und Drang 2020
会期 : 6/26(金)~7/1(水) 11:00~19:00
会場 : 備前焼ギャラリー夢幻庵 銀座店
       〒104-0061 東京都中央区銀座5丁目6−10
       TEL 03-3289-8585

※在廊しませんが、会場からZOOMでウチと繋いでお話できるようにしています。ご希望ありましたら是非!
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世界的厄災によって、価値観やスタイルの変更が急激にもたらされた。
疾風怒濤吹き荒れる時ではあるが、新しい何かが生まれるタイミングでもあろう。
そのタイミングでシリーズ化した『流雫(るな)』。
実験考古学的に始めた素材考証だったが、一気に新たな技法となった。
でも、それも良いと思っている。 Sturm und Drang

ただし、願わくば「月が綺麗ですね」とサラリと落ち着いて言える心情は持っていたい。

『流雫』シリーズ。今後ともよろしくお願い致します。























流雫へ その2 ~ 備前産ベンガラを作る ~

2020-06-25 19:58:21 | 陶芸


今回の個展では流雫(るな)シリーズを始めています。それらについて少し……。

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◆備前産のベンガラを作る◆

採取した湖沼鉄を精製してベンガラ(弁柄)を作ることにしました。しかも出来るだけシンプルな工程で作りたい。
その後、ベンガラを使って黒い備前焼を作る方針です。

ゴミを取り除き


乾燥させて


有機物を燃やすと~~~~


鉄ゥ!! 

(磁性が発生して磁石にくっつく)


これで、備前産のベンガラが出来ました。簡単に作りましたがキチンと『鉄』です。

これを使って伊部手を再現してみます。まずは全面を均一に黒くする。基本は大事。

薄い塗膜での黒い発色です。刻文の小さな凸凹も損なっていません。


出来るね、うん。よし。

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◆別の可能性◆

黒がベンガラによるなら、他の可能性としては高梁市成羽町で作られていた『吹屋ベンガラ』があります。
それをヤキモノ屋が入手した? または、池田の殿様が呉れた? 
誰も見ていないので真偽は判りません。
鉱物由来のベンガラは釉薬的観点からしても安定していて大いに可能性はありますが、そこには興味ない。キッパリ。(……だって結果が判ってるもの)

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という事で、『近所で採った素材で黒備前が出来るのか?』という検証は終わり。

素材としての正否は不明ながらも、ひとつの方向性として示せるものではあるかな。


さて、検証は出来た。
次は自分の表現として使いたいよねぇ。解体&リミックスがモットーなので。
……という事で、色々と始めちゃうのよさ。ぐへへ。 


(その3へ、続く~~~っ!!)


ちょっとCM
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◆流雫シリーズは下記で展覧中◆

タイトル : Sturm und Drang 2020
会期 : 6/26(金)~7/1(水) 11:00~19:00
会場 : 備前焼ギャラリー夢幻庵 銀座店
       〒104-0061 東京都中央区銀座5丁目6−10
       TEL 03-3289-8585

※在廊しませんが、会場からZOOMでウチと繋いでお話できるようにしています。ご希望ありましたら是非!
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流雫へ その1 ~ 伊部手の黒はどこから? ~

2020-06-25 18:54:49 | 陶芸


今回の個展では『流雫(るな)』シリーズを始めています。それらについて少し……。
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◆そもそもの自分の製作スタイル◆

備前焼の伝統技法を現代的視点で解体・リミックスすることで、 今を生きる焼締め陶の在り方を模索しています。

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◆技法のシリーズ化◆

昨年より実験的に展覧会に出品していたモノをシリーズ化しました。
具体的には、鉄と泥漿による彩色です。

昨年のタカシマヤ新宿店でのモノ


筆描きせずに、垂らしたり飛ばしたりして自然に出来る文様を旨としています。
アメリカの画家ジャクソン・ポロック氏のpouring、河井寛次郎氏の打薬、濱田庄司氏の流描、弥七田織部などに類するものです。
差しあたって備前において技法名がないために『流雫(るな)』としました。作業的部分にフォーカスした命名です。

泥彩では鉄に言及出来ないし・・・・・・。
抽象的イメージである巌と波から『山雲濤声(さんうんとうせい)』由来の『山濤文(さんとうもん)』も考えたのだが、「伝わりにくい」&「箱書き大変!」。

よって、新しい技法名は『流雫(るな)』であります。(元号発表的)


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◆製作の前提◆

●白について
今まで象嵌で使っていた備前の一次粘土を使う。

●黒について
まずは、材料を決めなければならない。
以前より江戸期の備前焼にある伊部手の『黒』の発色に興味がありましたので、それを一考する事にします。
主に細工物や献上手に見られる色で、藩の特産品として上手なモノが求められたのか、焼き方にも随分と気遣いが見られます。
その裏面を見ると時折、極薄い塗膜での黒が見られます。小さなヘラ目の溝も埋まっていません。(墨はまた別)
つまりポテッとした釉薬のような濃度ではなく、薄くて黒く発色するもの……。(すべての細工物がそうではありません)

さて、その原料はどこから?

古今東西、人は人力だけで何かをするには出来るだけ楽な方法を考えます。
重いものの運搬などもってのほかで、そういうものは権力の誇示として使うべきものです。城、石垣、古墳などがその例です。

先人の陶工たちも身の回りの素材を利用して陶器を作ってきた事でしょう。
山や平地から粘土を採取し、木を切って燃料とし、地形を利用して窯を築き、溶着防止に稲ワラを使ってきました。
(ヒダスキは本来、重ね焼きでの溶着防止が目的。緋色はその結果として生じたもの)

生産地が異なれば材料も変わりますが、陶工がする事は同様で「手に入りやすいもので作る」のが基本です。
溶着防止材は備前焼では稲ワラですが、海に近ければ貝殻や海藻などを使います。
土地によって粘土の母岩である火山岩の組成が異なる(花崗岩、安山岩、流紋岩等)ので、出来る粘土の性質も異なります。
これらの結果として、産地の特徴が自然と出来上がります。
同じような無釉焼締め陶であっても、越前、常滑、信楽、丹波、備前……と特徴が出ます。

さてさて、話を戻して……黒の原料はどこから?

つまりは、簡単に身近で手に入って安定的に黒く発色をするもの・・・とは。

ひとつの仮説を立てました。
それは田んぼや用水に溜まる生物由来の鉄ではないか?
ヒダスキの稲ワラ同様、半農半陶の備前では田んぼは身近なフィールドです。
鉄をエネルギー源とする鉄バクテリアによって代謝される鉄。
つまり、ソブです。

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◆湖沼鉄=祖父(ソブ)の発見◆

事の端を発したのは、近所で『湖沼鉄』を発見した事によります。


『湖沼鉄』の名称は様々で、
●環境土壌学:斑鉄、褐鉄鉱、酸化鉄黄土
●地質学:鉄バイオマット、鉄バイオフィルム
●生化学:バイオ酸化鉄
●考古学:パイプ状ベンガラ
●工芸:ソブ

と呼ばれます。
異業種交流した場合、同じものがイメージ出来るのかしら?

ちなみに土地の名前を見ると「おや?」という発見もあるけれど、そこはまた別の機会に。
まぁ、山師の世界ですな。

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これを自分で精製すると間違いなく『備前産の鉄』が出来上がります。

「備前の素材で作りました」と言える部分で、ちょっとここは大事にしたいところ。


(その2へ、続きます)



ちょっとCM~~~~!
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◆流雫シリーズは下記で展覧中◆

タイトル : Sturm und Drang 2020
会期 : 6/26(金)~7/1(水) 11:00~19:00
会場 : 備前焼ギャラリー夢幻庵 銀座店
       〒104-0061 東京都中央区銀座5丁目6−10
       TEL 03-3289-8585

※在廊しませんが、会場からZOOMでウチと繋いでお話できるようにしています。ご希望ありましたら是非!

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ミライノカセキ(魚)の作り方

2018-09-26 09:45:45 | 陶芸


ミライノカセキの魚バージョンの作り方をよく訊かれるのでレポ。(製作中を画像で出すのは初めてだな)
伝統的な備前細工物は型起こし製作がメインですが、近年は一点モノもあります。
拙作の場合、まだまだ発展する予定なので一点製作です。

まぁ、基本的には、「ま~~る描いて、フォイッ!」です。 ( ← 古い) 
違っ。
「魚型弁当箱に、部品というオカズを詰める」です。 ( ← ちょっとザックリ過ぎか)


では、調理スタート! 食べられないけどなっ。 Ψ(`∀´)Ψ

製作時間は、午後イチ~番犬福助の散歩時間までが目安です。
あっ、設計図とかないから。
__________

【1】 粘土を丸めて、おおよその魚の形を作る。

金魚は菱形。鮭、鱒などは紡錘形とか。なんとなく。左側に頭をイメージ。


【2】 背びれをつまみ出す。顔のサイズを決める。

この段階で作らなかったヒレは後付け。別に作ります。
側線、背びれ、エラの位置のキワはキッチリ決める。顔のデフォルメはテキトー。
バランス大事。ある意味、決定的な場面ではある。


【3】 部品が入るスペースを作る。

カンナで削り出す。内側は後から入れる部品との隙間が出来ないように、カドカド、ピッピッ。
スケルトン部分は穴を貫通。展示用の穴を腹側に空ける。
イケイケドンドンで。


【4】 部品を作る。(ヒレの写真は忘れた)

チマチマと楽しい。
 ↓
バリエーションを増やすのが悩ましい。
 ↓
チマチマが辛くなってくる。
 ↓
「選択肢が増えるので、作りすぎるぐらいで丁度良い」と修行の如く作る。


(ここまで石膏型で出来ますが、敢えて手捻りで)


小休憩チャンス。
ここからが時間が掛かるので、気持ちを入れ替えよう! コーヒーを淹れるのが吉。
_________


【5】 部品を接着していく。

設計図がないのでアドリブで。
心臓に近いところは大きい部品、ヒレの近くは歯車、口の中はパイプ、エラはコード、内臓系はタンクなど。
スケルトンになるところは、空き具合に注意。

それぞれの部品の乾燥具合を見極めながら接着するのは、楽しいけれどメッチャ気を使う。目が疲れる。
 ↓
なかなか捗らないが、途中でやめれないジレンマ。

【注意点】
「何故、これを作っているのか」という自問自答は禁止。自分を呪い出す時もあるけれど、心を強く持つ事。

【備考】
そのうち「部品が入るほど嬉しい」という製作ハイに達するので精神衛生上は大丈夫。
但し、あとから来るダメージが大きい。


大休憩チャンス!! 
既にハイな状態なので、このまま続けることが多い。
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【6】 ヒレを組み立てる。

急に曲線を意識して作るので、頭と手が戸惑うのが判る。この切り替わりが面白い。( ← たぶんビョーキ)
このタイプの金魚の尻ビレは、帯びれに隠れて見えないので省略。


シリアルナンバーを入れる。
大抵の場合、部品ギチギチでナンバープレートを入れる隙間が無くて焦る。( ← 次作でまた忘れて、部品てんこ盛りを繰り返す)


【7】 完成~~~~~~~。

透け具合はこんな感じで。

ジャ~~~ン!( ← 何の音だよ)

ご満悦の瞬間。


【8】 乾燥へ。
置けなくて手に持ったまま焦る。「何処にどうやって置くか」しばしウロウロ。福助と目が合う。
スポンジを見つけて、そっと寝かせる。

__________

てな感じです。

時系列で書くと早いんだけどなぁ。いやはや。 .....( ˘•ω•˘ ).。oஇ


この後は、福助と散歩。
歩きながらクールダウンする。
疲れてトボトボ歩くので、最初はしゃいでいた福助が途中から心配顔で振り返る。
『酒器の勉強』時間が迫っているのを思い出して元気復活!


で、コレ、焼かないと本当には完成しないのよねぇ……。

まっ、それはそれで楽しみではあるけれどさっ。 ( ̄ε ̄)~♪



鉄バクテリア

2018-06-03 18:33:15 | 陶芸


窯焚きお手伝い先のヤキモノ屋さんの窯場の横に水路がある。そこに鉄バクテリア(代謝物・死骸)が集まっていた。
鉄バクテリアとは、水溶性の二価の鉄イオンや二価のマンガンイオンを酸化する土壌微生物の一種。(←Wiki的情報)
まぁ、簡単に言えば『鉄を喰うバクテリア』である。(←小生的情報)
陶芸業界的には『そぶ』と言う鉄原料。

そういえば小松左京のデビュー作『日本アパッチ族』ってのがあったなぁ。
戦後の大阪でスクラップ置き場に住まう人々が、くず鉄を食べて精製された鉄を排泄する新しい能力を持ち、その新しい人類と権力者との闘争劇。
中学の時に通称アパッチと呼ばれてた先生が紹介した本。ふと、思い出した。

さて、そぶの件。
今までは「無釉焼き締めのやきもん屋には要らぬものよなぁ」とスルーしていた。
しかし、まぁ、「ローカルな材料で作る」という面白さはあるので、ちょっと思い立って回収した。梅雨入り前の今がチャンスか。
そもそも安定した鉄ならば、ベンガラがあるんだけど……。しかも安いし。


窯元に在籍中にやったテストピース。

テストしただけで、その後は何もせず。

今日、掬ったもの。

手が黄色くなるが、臭いはしない。

ひとまず、裏漉しだな。


塊もすぐに潰れる。


液体が出来た。

これを乾燥させて擂るのが本来の作業工程なんだろうけど……、え~~と、白象嵌の土に使っている乳鉢は汚したくないので……、ひとまず密封の儀だ。

う~~ん、これでまた先送りか? 塩を使っていないけど塩漬けか?


精製しても効率が悪そうなので、手軽に使える方法をテストしたいなぁ。
いや、もっとも手軽なのはベンガラ使う事だろ!という内なる声が聞こえるが。それはそれとて。

でも、使い物になれば地元原料での製作となるしなぁ。
「備前産!」と言いたいだけでは……。


今回はテストだけでなく、完成イメージもある。
しかし、テストするのに時間がかかるなぁ。


さてさて……。 ( ← ベンガラは既に持っているんだが)


春は擂鉢

2018-04-02 15:42:47 | 陶芸


このところマイナス要素が多い日々です。

『かまどホール @坂出』でのグループ展も始まりましたが、お気に入りのうどん屋さんが閉店。出鼻を大いに挫かれました。
しかし、風景の記憶だけで山の中のうどん屋さんに再訪できたのはミラクル。(閉店時間後でしたが)

そして、春の花粉症が発症。(今までは秋だけだったのに……)
アレルゲンの特定はしておりませんが、しばらくはクイズのように推測を楽しみたいと思います。楽しくないけど。

あと、左肘のピンポイントな痛みは『テニス肘』のようです。テニスせぇへんのに!
「ストレッチで直す」方式を積極的に採用して経過観察です。
筋肉の稼動域をみると、どうやらPCのキーボードも良くないようですなぁ。


この春は、斯様にマイナス要素が目に付きますが、ポジティブに行きたいところです!


さて、最近のポジティブなお話を。

先日、お客様から「備前陶苑(かつて小生が在籍した窯元)出身者はスリ鉢が上手いよね」というお言葉を頂きました。
備前陶苑の先輩方の作行きを見ますと、古備前追求型・スッキリ派など方向性はバラバラでありますが……なるほど。


窯業地としての備前では、スリ鉢、甕、壷などが古くからのメインのアイテムでした。
擂鉢の製作で、ひとつハッキリと言える事は、ロクロを引く手順があるという事です。
この順番を間違うと形になりません。書道における書き順と同様で、挽き順が違うと形が取れません。

それに加えて、古備前スタイルの方でしたら「底をアバタ高台にして縒り土を3段重ねて、蹴ロクロで挽く」とか味わい要素の追加もあります。
また、時代による形の変遷もありますので、形やスリ目との組み合わせは重要な要素でしょう。

(参考文献:備前市教育委員会)

古備前の擂鉢を観察し、ロクロ経験から学ばないと形が出来ないのは確かです。

(参考:備前一千年の流れ展(朝日新聞社1991))
  
お客さんに言われてから、まわりを見渡すと……なるほど。

小生も褒められたと思っておきます。(レッツ ポジティブ!)


拙作は、古備前指向ではなく、現代の食卓に出せる方向性です。
道具ではなく『食器としての擂鉢』というラインです。



学術的な「形とスリ目が…うんぬん」には興味がないので、キチンと使える事がテーマです。
摺り目があろうとも無かろうとも。


備前の擂鉢は独特な造形美があると思います。
春の山菜も出始める頃。これから大いに活用したいと思います。
フードプロセッサーは便利だけど食器として出せないしね。

白和え、
酢味噌和え、
胡麻よごし……

蕗のジェノベーゼ風も良いか。


さぁ、本日の『酒器の勉強』は擂鉢だな……。


さてさて、あぁ、忙しい! ( ← ご機嫌で仕事しよう!!)
























備前擂鉢ワークショップ

2017-11-07 21:37:40 | 陶芸


昨日で展覧会は終了。
今回の展覧会ではワークショップを色々と実施しました。
来年の干支である『戌(仔犬)の型起し製作』『擂鉢ワークショップ』、そして『お茶会』。

小生は『擂鉢ワークショップ』を担当致しました。

DMの原稿段階では『所要時間2時間』となっておりましたが、「いやぁ、そんなに出来ないですよ」と「1時間程度かな?」と思っておりました。

それから後日、資料作りを。
昔の資料から抜粋したり、実演レシピも作りました。レシピの分量の検証が大変。(割りとマジメにやったしね)

事前には、実際に擂鉢で料理をして検証しておく。

ニンニクも擂れるし、(知ってた!)


紫蘇も擂れる。(知ってた!!)


諸々と確認しておく。(知ってた!!!)


さて、当日。
ワークショップの構成は、お話とクッキング。

お話のパート。
皆さんの興味次第で端折ろうと思いつつ喋る。しかし、喋るパートだけでも1時間越え。

擂鉢の形の歴史的変遷などマニアックな部分もがっつりと。有難い事です。

クッキングのパート。

4種類のレシピを実際に作る。
『玉子サンド』は好評だった気が……。お持ち帰りもあったので、恐らく好評と思っていますが、自分では実食せず。
擂鉢でフワフワを作るのがポイント。(ここが大事!)



最後は皆さんで五平餅(クルミ味噌)を作って、チャイの講座も。
お菓子とお茶を頂きました。


でっ、結局のところ裕に2時間ちょっとのワークショップ。

初めてでしたが、うん、なんだか今後も出来そうな気がするなぁ。まぁ、予定はないけれど。
また、いつか出来れば楽しいかもね。(←自分が)


皆様、諸々、有難う御座居ました。m(_ _)m



















土作りのプロセス

2017-09-12 01:04:03 | 陶芸


時々……というか、概ね忘れているけれど、拙ブログは陶芸ブログなんですな。
なので、ヤキモノのお話。

陶芸業界において最も重要な材料は『粘土』です。
チビッ子が大好きな粘土は、かつてはアブラ粘土ばかりでしたが、今や小麦、寒天、お米、蜜蝋など植物性まであります。

さて、我が業界で扱う粘土は岩石の風化物です。
その元となる岩石の種類、風化分解の仕方によって粘土の性質が変わります。粒度、粘度、耐火度、金属含有量、砂分などが異なります。
それらを感覚的には『土味』と表現します。
備前焼は、釉薬を使わない為、その焼肌が重要になってきます。その焼肌を決定的にするのが、原料となる粘土です。
古来より『一土、二焼、三細工』などと云われてきたのは、その為です。
陶芸においても潮流というか流行というものも勿論あるわけですが、近頃は世界的に『Wild Clay』についての話題が多いようです。
これは地域に根ざした個性のある土(local Clay)の元を意味します。

現在の陶芸家は、輸送手段の発達によって窯業地に限らず何処でもアトリエを構えて製作可能になりました。
しかし、どの分野でも便利さが進み一般化する過程で、失われつつあるものが注目されるのは良くある事です。言葉やファッションなどはその身近な例です。
その伝であるか否かは別問題として、近年はローカルな素材『Wild Clay』が注目される時代のように感じています。
奇しくも現代アートにおいても『場との呼応性』(サイトスペシフィック)がキーになっているのも偶然ではないでしょう。
材料屋さんで便利よく買える粘土に対して、コツコツと自分で作る粘土。


さてさて、釉薬を掛けない備前焼の粘土。
土の表情がはっきりと露呈する為、土作り(=粘土作り)は最も重要な表現のプロセスとなっています。
作家によって原土や土作りは異なり、結果として焼成後に現れる『土の色・質感』が異なります。


では、ここで小生のレギュラーな土作りのプロセスを。


原土には夾雑物である小石、砂、シルトなどがあります。それらをどのサイズまでをどうやって取り除くか、または残すかが重要な要素となります。

【以下手順】

原土


乾燥


粉砕


水で溶かす


数日放置


攪拌


ザルで漉す(土によって使うメッシュサイズが異なる)


ドベ鉢で水分を適度に抜く


となっています。

いわば、湿式による土作りです。乾式というのもあって、これは粉砕して水に溶かす前にザルを通します。(=早く出来るが埃っぽいのでしません)
これが基本の土作りですが、一窯あたりに数種類の土を使うので、それぞれをストックしておきます。
作るモノによっては、原土のまま作る場合もあって、この場合は手で小石をひとつづつ取り除くという地味極まる方法をとります。


まぁ、世間の皆様が思う陶芸家の仕事風景とはロクロ仕事なのでしょうが、実際はこれが一番時間が掛かっている仕事です。

以上が、土作りでした。


さぁ、この個性ある素材としての原土『Wild Clay』。その過程、結果としての『色』を切り口とした展示を致します。


所属しております『備前焼作家集団けらもす』の展覧会のご案内です。
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タイトル : けらもす8.1 Wild Clay
会 期 : 2017年9月15日㈮~10月1日 ㈰ (9月25日㈪は休館)9:00~17:00
会 場 : 加計美術館 
       〒710-0046 岡山県倉敷市中央1丁目4−7
       TEL 086-427-7530
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是非、ご高覧いただけると幸いです。 よろ。 (`・ω・´)ゞ


(まったく笑う要素がない記事にしてしまった……。反省)


終戦の日に

2017-08-15 20:25:08 | 陶芸


美術工芸の歴史において書くことが憚られるが、我が業界における『負の遺産』がある。

しかし、それが時代であった。


写真のモノは手榴弾。武器である。


伝え聞いた話を滔々嬉々と書きたいわけではないが、メモとして。
・製作は、ロクロ成形と型作りがある。
・溝があるモノと無いモノがある。
・作者がわかるように番号が割り振られている。
・実戦配備はされなかった。
・戦後は戦争協力者として逮捕されぬように、地中に埋めてGHQから隠した。


備前焼の手榴弾が作られたのは、全国規模での金属供出でも武器材料が足りなかった為である。堅牢であった備前焼は代替材料して注目されたのだろう。
しかもこのレベルのものは、傷を負わせる程度の能力である。
つまり戦場で怪我人が出れば、その対応の為に人員を割く必要がある。怪我人+αが戦線を離脱し、効率良く敵兵を減らせる事が目的。
しかし、怪我する方にしてみれば、殺さぬように大怪我をさせられるのでタチが悪い。

これを作った当時の思い、終戦後の思い、今これらを見る思い……。
人それぞれの状況や事情で見方は変わると思う。


今、シンプルに言える事は、市井の陶工が自由にモノ作りが出来る環境や時代が続いて欲しいという事。

終戦記念日であり、近頃の周辺諸国の危うい緊張関係に思った次第。


















陶芸教室では教えてくれない便利グッズ

2016-03-20 19:12:10 | 陶芸


「陶芸教室では教えてくれない便利グッズ」とはいえ、実際のところ陶芸教室に行った事がないので真偽不明。あしからず。

では早速。便利度合いを順位にして発表です。


【第3位】

オカマ

ロクロをする時の手水の容器は色々とありましょうが、オカマが抜群。
縁が内側へ入っているので、手に付いたドベを一発で拭う事が出来ます。火に掛けて温められます。
難点はビジュアル的な面だけど。専用の四角い台を作って使っています。


【第2位】



ロクロをしている時に、頭が痒い~~とか、蚊に刺された~~とか……急な痒みが発生したけれど手が泥だらけ。そんな時に備えて専用の道具を決めておけば探す手間無くサッと使えます。スピードが肝心なトラブルに即対応です。
カケヤブリ(先端が櫛状の道具)を作ったものの使いにくかった為、それを転用しています。


【第1位】

細いマジックハンド

ロクロ座の下に道具が落ちる事は、ままあること。しかし、狭くて遠くて拾いにくい。いざ拾おうと思うとアレコレと大事になる。その時にコレ。「ウワッ」と思ったときにこそ心強いアイテムです。
今期は3度ほど活躍しました。少ない使用頻度に比して絶大なる効果ありです。


先端が開いて……

掴む。

個人的に落とすのは鹿革が多いのですが、概ねこれで対処可能です。


【番外編】

某駅弁の容器

何故か集まるこの容器。いや、まぁ、買うからですがね。細君が好きなもんでして。
この蓋が、ちょっいっと便利。簡易なカメ板といったところ。
ちなみに小生は『柿の葉寿司』の鯖が大好き。葉っぱは特に転用しませんが。


どれも職人的な大量生産過程の中で便利なものなので、手捻り一点モノが多い陶芸教室では必要がないかなぁ~~と。


しかし、いやはや与太話ですな。


これって誰の参考になるんやろ?
まぁ、いいや。

だって、陶芸ブログだもの。(たぶん)