備前焼 やきもん屋 

備前焼・陶芸家の渡邊琢磨(わたなべたくま)です。陶芸、料理、音楽、路上観察……やきもん屋的発想のつれづれです。

狭小仕事場

2009-11-30 08:53:05 | 陶芸
仕事場の面積は、おそらく備前焼業界中、一番狭いであろうと思われる拙宅。
狭小住宅の仕事場が狭小であるのは必然である。
窯出しを見に来られても、そこに仕事場があることを想像できない人もいるぐらい。逆に「住んでるの?」と訊く方もいらっしゃいますが…。


展示場の一部に組み込んでいるロクロ座は、実演販売ブースの如き有様。そのロクロ座のユニット周りは収納やらなんやらが付随していて、立体的にあらゆる道具が密集している。コクピットのように手に届く道具類の配置は、確かに便利ではあるが…。

フィジカルな空間サイズはメンタルに影響があるはずなので、時々「発想が狭くなっていないか?」という事に注意している。
『健全な精神は健全な肉体に宿る』かどうかは別として、『心地良い仕事は、心地良い仕事場でできる』のかも。
外の環境は良いとして、中の環境の問題。そこには音の影響もあったりもするので、せめてものの音楽は重要項目。ただしオーディオ的こだわりは無い。


かつて、酒蔵を仕事場にしていた時は、その大きな構造が心地よかった。柱も梁も板も全ての部材が立派で、精神的にもゆったりと出来る空間だった。ただし真冬はストーブが恐るべきスピードで灯油を消費するので、経理的に優しくない仕事場だったが。
夜の酒蔵で一人で仕事をしつつ『志ん生』を聴くには、実に贅沢な空間。
キッチンが片隅にあり、オープンキッチンのダイニングとして使うとかなり広くて、仕事途中の物を片付けなくても宴会が出来る。その為に突発的宴会もしばしばあったな。


さて拙宅。
仕事スペースのコクピット化は我慢できるとして、困るのが素地の置き場だ。これだけは、物理的な問題しかない。モノを作り始めるとたちまちに困る。床に置いたり、箱に入れたりしても非常に手間。


ただ、季節や場所に応じて湿気具合が異なるので、モノを置く場所によって乾燥スピードに差がある。それを利用して素地の乾燥具合をコントロールする。
上手くいけば仕事を進めやすくなるし、失敗すればず~~と仕事する羽目になるというゲーム性を持つのが面白いところ。

悩ましくも楽しんでいる。

…というか、「楽しまんとやっとれん!」というのがホンネ。


もう少し広い仕事場か、素地置き場があったらなぁ~。
その為には、アレをアレして…アレがアアなって…、生活設計の手順だけでもかなり先だ。

考えるのをやめて、仕事しよ。

という訳で…今日も前向きにガンバリマス。


土練機さまさま

2009-11-27 12:53:42 | 陶芸
大量の粘土を混ぜ合わせるのに、今の必需品は土練機。

去年の今頃は、どんなに大量の粘土でも、足で練り、手で練り…と全て手作業だった。

「なあ~に、ほんの1000kg程度なら足で練ってご覧なさいよっ」ってもんである。(嘘っ)

柔らかいうちは良いけれど、日が経って硬くなりすぎた土を成形できる柔らかさに戻す時の徒労感には、涙した日もあった…。(ややホント)

それが今や、少々固くなっていても水を入れて何回か土練機に通すと、疲れる間もなく即OK! 
感動で涙するね。(ホントに!)


仕事道具の全てが電動で動いている事が前提では、そのアリガタミが想像できないけれど、古典的方法は実体験としては良いかもなぁ。
数学の授業で新しい事を学ぶ時に、今までの知識での遠回りなやり方を再現した後で「ホラこの方程式ですぐに出来るでしょ!」って習ったときの衝撃に近い。

または、統計で電卓片手の手計算していたのに、エクセルを使った時の驚愕!とか。
あれは逆に虚無感があったか……。イママデノハ、ナンダッタノダロウ…。あの頃に今のPCがあれば…。くぅぅ~。


でも逆に言えば、こういう手作業の感覚は「何時でも何処でも作れるぞ!」という強みになるだろうしな…。きっと、海外の山奥でもOKなはず。この辺りがリアルなアナログは面白い。大工さんも然り。

逆の逆を言えば、現在のアリガタミが、誰かによる文明の利器に支えられている事も多いだろうなぁ。気にしていないだけで。


陶芸業界でもアナログ感性を持たないデジタル・ネイティブが出てくるのも時間の問題。
その時には「薪窯の裸火をみて驚愕せよっ、若者よ!ヌハハッ!」っていうオジイになっていたいな。
というか、その人々とコミュニケーションがとれるのか…?


さらに土練機の良いところは、「ロクロする気がおきひんけど、仕事せななぁ~」という時に使うと「今日は、仕事したもんね!」という気にさせてくれて、晩酌の言い訳に貢献するアリガタミもある。

まさに、土練機さまさまである。


ちなみに1年間使いましたがこの土練機(日本電産シンポ株式会社製 NRA-04S)は良く働きます。
サイズが小さいので土練機の中に残る粘土の量が少なく、多くの種類の粘土を使い分ける窖窯(あながま)ユーザーには便利です。ステンレス仕様なので、なお良しです。
アマチュアにも単相100vは使い易いでしょうし、場所も取りません。オススメ。

お店紹介しまっせ~。(別に小生は得しませんが…)



怒涛のスケジュール敢行中

2009-11-25 15:25:55 | 陶芸
世間様の3連休突入日から怒涛のスケジュールが続いている。(まだ続くけど)

お楽しみも面白い事もいっぱいあったんだけど、エントリーする暇もなく、スケジュールに追われている。最近はメールチェックするぐらいでPCの電源を落としている始末。


完了スケジュールとしては、出かけたり、イベントへ参加したり、お客様とか、プラス同級生とBBQとか、その間に、呑み会に継ぐ呑み会。
「あまり無茶しちゃいけないんだけど」と思いながらも、呑んでしまったなぁ。
あとは、窯焚き手伝いの予定が入っている。ウチの窯も焚いて頂くので、お声が掛かると「よろこんでぇ~~」馳せ参じる次第。
備前焼はお互いに助けられて成り立つ。特に窖窯はメンバーが大事だし。


最近は決まったように、睡眠不足で呑み会に出席する事が多い。
バッド・コンディションで呑むと、あまり良い結果にならないので、自重するように気を付けているけれど、話が盛り上がるとついつい…。気軽な場面ばかりで無くなってきつつあるので要注意ではある。

最近は努めて人間関係をオープンでフラットな繫がりにしているので、そうでない場面との切り替えが苦手になってきている。こういうのを社会不適合というのだろう。山に籠っている事の弊害か…または、やきもん屋気質なのか。その辺りは『成長の余地あり』であるな。


さて本日は、同じ会に所属するK氏が『日本伝統工芸展』(岡山会場)での列品解説をするので、その時間に合わせて展覧会場へ。
会場には知った顔がチラホラと。解説者本人からしたら応援なのかプレッシャーなのか判らないけれど、こちらの気持ちとしては一応、応援。

今回は例年に比べて点数が少ないようにも思えた。やはり地方展では全体の俯瞰は出来ないな。
図録は購入したものの、質感は隔たりがあるし、写真は片面だけだし。


久しぶりの岡山市街地は、だいぶんクリスマスモードになっていた。
「今年も、あとひと月」とか言われると、妙に焦る。

このまま、バタバタと仕事をしながらの年越しが目に見えている。


あとは、窯焚き手伝いまでにロクロしよっ。


イチジクのジャム

2009-11-21 14:15:03 | 料理・食材
イチジクを沢山頂いた。そのまま食べても天然ジャムのようで好き。

収穫終了時期の物なので水分が少ないとか。「ジャムにするのが良いよ」とのオススメ。


「では、ジャムを作ろう」といいながらも、忙しいので子供に下請けに出す。

時々、鍋を覗いて砂糖やレモンを入れるタイミングを指示。焦げないようにかき混ぜる係は下請け職人の仕事。親方は口だけだ。
火に掛けると想像以上に水分が出てくる。煮詰めていくと苦味が立ってきたので、早めに仕上げた。という事で少々トロトロとした感じのジャム。ぽってりとしたソースという方が良いかも。

火からおろす前に味をみると「砂糖が多すぎたか?」という感じがしたので、最後にレモン果汁を追加する。酸味で砂糖の甘さが中和され、色も赤みがはっきりとして奇麗。
結果として、そのまま食べるよりもコントラストがしっかりとした味になった。

これで、いつでもすぐに食べられる。「いいなぁ、ジャムって」とシミジミ。


子供達が大きくなるつれて、美味しいもの争奪戦が激しくなってきつつある今日この頃。
子供に先に食べつくされないうちに、食べないと…。


出張パック検索

2009-11-20 10:01:26 | Weblog
公募展がらみで東京出張になった。(行くのは、まだ先だけど)
先日の見逃した展覧会が東京での話だっただけに妙な感じだ。噂をすれば何とやら…みたいな。

本来なら行く必要がまだ判らないタイミングだけれど、陶芸界の重鎮であらせられるI先生からの電話で教えていただけた。日程はいつもの事なので、把握済み。

「さて、どうやって行こうか」と悩む。

今回はスケジュールが早目に分かったので、ネットで出張パックを検索する。『飛行機往復+ホテル一泊』の出張パック。初めての利用。しかも、かなりお得な価格設定でオドロキ。
旅行会社によって価格やサービスに若干の差があるけれど、『夜行バス往復+ホテル一泊』をネットで自分で探して予約するのとさほど変わらない程だ。今回選んだホテルは、いつもより良いぐらい。
早目に教えていただけた事に感謝。

前回は、フェルメールの展覧会を朝一番に見たかったので、夜行バスで行った。美術館の開館前には行列に並ぶという快挙ながらも、体の節々が痛く、また寝不足。開館と同時に一気に目的の絵まで直行。誰もいないフロアで数分間フェルメールを独占出来たので、良しとしたが…。
今回は、そういう事は止めて最初から飛行機をチョイス。それでも、8:25には羽田着ではある。早いなぁ。

朝メシ前に東京だ。

Webで予約、入金を済ませて、あとはチケットが宅配便で送付されれば完了する。


「もし、行くまでに飛行機会社が無くなったりするとどうなるのかな?」という一抹の不安が…。
今回は、時節柄、赤い方の飛行機会社を選ばせていただきました。


見逃した!

2009-11-17 12:43:48 | Weblog
完全に見逃した展覧会!しかも既にかなり経過しているし…。(-_-;)
いろいろなメディアでも大々的に取り上げられていて、話題にもなっていただけに…オハズカシイ。
安藤建築・イッセイミヤケ企画・杉浦康平エディションも話題の一端だった。


見逃した理由は、三人展であるにも関わらずルーシー・リィーだけの展覧会だと思っていた為。
そうなのです。展覧会自体はめっちゃ知ってたのに!
その他のメンバーに興味があったのになぁ~。見逃した…。くぅぅ~


そして、その事に今日、気付いた。 遅っ!



気になるその人は、エルンスト・ガンペールという木工作家。年齢もさほど変わらない人。
10年ほど前に工房(窯元)で定期購読していた雑誌の片隅に載った小さな写真で、その作品と名前を知り注目していた作家。当時使っていたスケッチブックの端に、忘れないようにその名前を書き留めてある。
これまでに実物は数点見たことがある。どれも展覧会会場ではなく、インテリアとして扱われているモノで、キャプションも無い状態だったけれど。
それを、まとまって見られる機会を逃していたとは!


大工DNAを持つ小生は子供の頃から木が好き。祖父の仕事場でカンナ屑を一日中、眺めていた事もある。
現在、小生の家と仕事場は、諸般の都合で(というか理由はひとつだが…)全くその気配はない…。


さて、見逃した作品の画像を見ると、以前よりも技術的にかなり整理された印象があった。
10年前の作品はもっと粗野であった。
流木を人工的に作るためにコンクリートミキサーに石と木塊を放り込んでみたり、割れ目にカシュー(漆)を入れたり、針金で縛ったり鎹(カスガイ)を打ち込んだり、泥に埋めたり…。錆びた金属と木のヤニとが同化して渾然としていた。

自然な歪みもそのまま形とし、経年変化後の割れも作品の一部という発想は、今回も同質だけれど、よりスタイリッシュになっている。
中でも光が透けるほど薄く削った大きな作品は知らない。うーん、実物を見たかったなぁ~。痛恨~~。


都市在住者は日常的に否応なしに情報にさらされて、思い込みも情報修正されるので、こういう事にはならないと思うけれど、中山間部在住者は情報と出合った時に掴まないと何処かへ行ってしまう。今回は教訓だ。



ルーシー・リィーは、来春に200点ほどの大きな展覧会がある。
小生は、多分行かない。
(日本人好みで、ルーシー風デザインが巷に氾濫していて食傷気味なのが原因。本歌を見る価値は、大いにありますが…。これまでにちょこちょこ見てきてるしなぁ。)





ルーシー・リィーの『リィー』って、前は『リー』という表記だったように思うけれど…?
RieとLeeの違いなんだろうけれど、良く判りませぬ。『リュー』と間違えそう…。



ちょっと今、軽い虚脱感です。くぅぅ~



求む お掃除代行サービス

2009-11-16 13:03:20 | 陶芸
ヤキモノ製造業のうちで、二番目に嫌いな仕事をした。
春に窯を焚いて以来ずっとホッタラカシだった窯の掃除。いくら嫌いでもこれは避けては通れない。

ウチは仕事場が狭いので、焼く前の素地を一窯分全部を置いておく場所がない。その為、箱詰めして窯の中に積み重ねておく。窯詰めになるとその箱を窯から出して足の踏み場もない状況で窯詰めがスタートするのが慣わし。その箱の量で窯詰め出来る数があるかどうかという目安にもなっている。なので、ある程度仕事場に素地が溜まってくると窯へと移さなければならない。

その為には、まず窯掃除。同時に棚板掃除も。

砂や灰を掃くと、埃となって窯の中に充満する。
マスクをしているので吸い込む心配はないけれど、髪の奥、耳、服の中まで……とにかく、叩けばホコリが出まくる体になる。これが嫌っ。

掃除が終われば、結果がハッキリと出るので満足度は高いのだが……。


一番嫌いなお仕事は『炭割り』。
汚れるのは窯掃除以上、満足度は窯掃除以下。

まっ、今は窖窯(あながま)なので関係ない。使うとしてもチビ窯程度だし。
窯元勤務時代は『炭割り』の作業日は朝から憂鬱だった。なにせ大きな登窯で半端な量でない。仕事場にシャワーがあったのでそれで助かっていたけれど、それにしても…。


結局、窯掃除は「一日で終わろう」と頑張ったけれど、一日半かかった。

親切丁寧な『窯専門 お掃除代行サービス』ってないのかな?


瑞兆

2009-11-13 19:02:10 | Weblog
雨と晴れの繰り返し。きっと上空の大気では色々な事が起きているのだろうけれど、直接は見えない。唯一見えるのが雲であったり天気の具合。

大気や雲の水蒸気などと太陽の位置の関係で、虹が出たり彩雲が出たりする。

彩雲は今年に入って何回見たかな?流れ星と同じぐらいか、もっと少ないか…。
空に小さな五色の雲が現れると、『大気光学現象』とは判っていても「何かいい事あるかな?」と瑞兆めいた期待を持ってしまう。
自然現象と判っていながらも、自分に都合良くありたいというワガママ。


先日は山の麓から虹が立ち上がっていて、虹の端っこを見た時はちょっと感動した。しかしカメラを持っていなかったので記憶に留めるのみ。
それからは「記憶だけでなく記録にも残そう」と思い、外出時にはカメラを持って行くようにしているけれど、そうなると今度はなかなか出くわさないもので…。


「まぁ、瑞兆がいつも見られたらアリガタミが無いしなぁ」と思いながらも、空を見上げる事が多い今日この頃です。


梱包荷造のボルチーニ茸風

2009-11-11 13:02:44 | 陶芸
朝から梱包作業。
何があったというわけでもなく、たまたまアチコチの発送がまとまっただけのハナシ。


ワレモノと書いて宅配業者さんへ持ち込むと、必ず「梱包の方は大丈夫ですか?」「保険を掛けますか?」と尋ねられる。
最近は、嫌になる程しつこい…。きっと事故があってその対応が大変なのだろうけれど。

でも先日、某宅配業者さんが『ワレモノ・Fragile』って赤字で大きく書かれているのを荷台から落として積み上げているのを見て目が点になった。
最近は丁寧になったという評判もあった業者さんなので残念な光景。人通りのない店の裏道なので気を抜いたんだろうけれど、どこで誰が見てるか判りませんよ~。
もうその宅配業者さんに依頼することはありませんな。


普段の梱包は、新聞紙とダンボールでする。
新聞紙が良いのはお届け先で処分し易い事。
段ボール箱はご近所で調達しやすい。ホームセンターやスーパーマーケットへ行った時に目ぼしいサイズがあれば即入手。
レジでビニール袋を断って店先の空箱に買ったものを入れて帰る事も多い。
お蔭で、物置のひとつがダンボール箱に完全占拠されている。

例外的に新聞紙以外のものを使うこともある。
これは公募展などの搬出で業者さんが梱包材として使うマットの切れ端やら、産廃まがいのもので送られて来たものを再利用する場合。
使わずにゴミ処分するのが厄介なので、相手先に迷惑にならないと判断した時に、大量に投入する。一般のご家庭には送らない。
言ってみれば、ババ抜きのジョーカー扱い。「最後に持った人が負けですよ~」という押し付け合いに近い。

処理に困るものを送るのは気が引けるけれど、「また、どこかで使って下さい」という、やさしい気持ちで…。
「送り返さないでね」という、やましい気持ちも入っているけれど。


さて、ワレモノの梱包について。

ダンボール箱は必ず2重に入れ子にする。
内箱が丸めた新聞紙で支えられて、全面がクッションになるようにする。
内箱に入れるモノもプチプチ等のクッション材で包み、個別に箱に入れる。
上からの加重で潰れないように天板を厚くしたり、柱を四隅に立てることもある。あとは、「割れませんように」と念じておく。

大体はこれで大丈夫なハズ。


さて、新聞を丸めるにあたっては、某ギャラリーさんがやっていたやり方を踏襲している。新聞の端を丸めながら全体を回していくやり方。
出来上がりがキノコの傘のようになる。
これを敷き詰めると丁度、ボルチーニ茸の缶詰みたいな感じに積み重なって、良い感じ。


「今日はキノコを晩酌に…」とチラっと思いながら梱包終了です。



展覧会~土と火のオブジェ

2009-11-09 08:50:32 | 展覧会・ご案内
今、岡山後楽園前にある岡山県立博物館で『土と火のオブジェ―縄文の土器・土偶から現代備前焼まで―』という展覧会が催されています。

会期少なくなってきて、見逃す前に行ってきました。
(…って、先日と同じような書き出し)


本当は「見に行けんなぁ」と思っていた。忙しいので。
ところが、知り合いの方から「火焔型土器を見に行くべし」と電話があり、いそいそと昨日、日曜日に出かけたのでした。

その日は『土器の実物に触れる』というイベントがあるのをキャッチしたので、それも目的。

展覧会の題名と展示内容については、個人的に違和感あり。土器、土師器について用途不明であるのをもってしてオブジェとするのなら、まぁ良いのか?……という感じ。ちょっと格好付けたか…。


さて実際見ると、確かに数・質ともに良い。


特に火焔型土器は信濃川流域で多く発掘され、西日本ではあまり馴染みがない形だし。
「隙間なく模様を入れることが、魔除けの意味を持つ」という学芸員さんの見方を伺いつつ鑑賞。確かにそういう考え方の民俗風習は多い。さもありなん。
現代でこれぐらい執拗な反復をすると何かのパラノイア扱いされそうだけれど…。
『水玉模様のカボチャ』や『世紀末退廃・淫靡的要素の絵にある金銀の描き込みの繰り返し』などがチラッと頭をかすめたけれど、深く考えずにスルーする。


実物(破片)を見て驚いたのは、砂やシルトがかなり多いという事。
いくら温度を上げても焼き締まらない程ザックリとしている。
粘土質とは到底言い難く、だからこそ急熱急冷の野焼きにも耐えられるのかと。
「よくこれで作れるなぁ~」というのが正直な感想。

複雑な立体的部分は結構、土が柔らかいうちに成形したのだろう。手早く作られたような感じでライブ感のある痕跡が見て取れる。
ボディの溝は棒であとからしっかりと撫ぜたりしてあり、表面の雰囲気が違っている。「湿らせて撫ぜたでしょ?」というようなツルツルした部分もあり、面白い。
全体として、かなり手馴れた作りを感じた。

修復再現された展示物からは、そういう痕跡は判りにくいけれど、実物を手にすると一目瞭然だ。重さも然り。
ただ、「これひとつで全体を言うべきではないな」と自重。あくまでもサンプル。


学芸員さんの話は、形態変遷の時代分け、発掘状況が一番の興味らしく、その他はロマンチックな想像に終始。
「アカデミズムやなぁ~」とか「その情報は、役に立つ人には役に立つのだろうなぁ~」とか雑念を持ちつつ話を聞いていたけれど、その横でボランティアガイドさん達はすごい食いつき。「前期と中期の境目…」とかが痺れるらしい。

小生が聞いたこれらの情報が「焼くに役に立つ」のかは、まだ不明。


どうも…、『やきもん屋』としては、その土を見てしまうのがサガ。
前期、中期、後期という分類はあまり頭に入らなかった…。
でも、楽しめました。


岡山で火焔型土器がまとまって見られることは少ないので、この機会に是非。
先日、ご案内の『備前焼の細工物』と合わせて見ると、かなり楽しめます。
これに関しては「楽しめる人には楽しめます」という組み合わせです。


15日(日)まで。