備前焼 やきもん屋 

備前焼・陶芸家の渡邊琢磨(わたなべたくま)です。陶芸、料理、音楽、路上観察……やきもん屋的発想のつれづれです。

やってきました。ジビエ。

2007-11-28 09:47:21 | 料理・食材
さて、今年もやってきました。本格的ジビエ。
電話で連絡を頂き、ダッシュで引き取りに伺う。有難う御座いまする。子供たちはシカ入手の情報に目がキラキラしている。コヤツラ、判ってるな……。


備前焼の陶郷の北、熊山のシカ。夏場に頂いた草を喰むシカは過去最高の絶品だった。今回はそのあと。果たして…。

部位は前足。今まで食べたのは後足、太もも部分。前足は初めてだ。
例によって骨付きの『ギャートルズのあの肉』状態でいただいた。

後足に比べると、やはり厚みが薄い。筋を掃除して、食べるサイズに揃えていく。筋繊維の複雑さは比較的少ないものの……やはり素人の悲しさ……ムズカシイな。

何とかバラシた。脂肪のない赤味の肉なのでオリーブオイルに漬けて、バジル、コショウを投入してマリネしておく。30分放置。

そして! いざ! 焼きスタート。

そして! 戴く。 「旨っ!」


柔らかさが後足の比ではない。ハムのようなキメ細かな肉質。オリーブオイルとバジルの香りに、塩味が角張る事なく馴染んだ渾然一体の旨さ。繊維の抵抗感が無いだけに余計に香りが鼻に抜ける。
野生味と言うよりも、ほのかな甘さがある香りだ。下手な牛肉の方が余程にケモノ臭い。

こんな華やかな肉もあるんだねぇ~。

焼く以外にはシチューにも。肉に旨みがしっかりと入っていて……、これまた「旨っ!」

コレは売れるぞ。いや売らないで。
是非、次回もヨロシクお願い致します。



◆ 現在のジャッジ 前足vs後足 ◆

焼肉・ステーキは、両者引き分け。(と言うか別物)
シチューは前足。
大和煮は後足。
赤ワイン煮込みは後足。
ルイベは両者引き分け。(むしろ季節的に夏)

基本的には、噛み締めた時の旨さは後足で、ひとくち噛んだ時のいきなりの旨さは前足と言うところか。
前歯で前足、奥歯で後足だな。(単純すぎる整理やな。)


さて、残りの骨は……、ウチの番犬的にはドローらしい。
ず~っと齧っている。

漬物樽購入

2007-11-24 19:03:21 | 陶芸
80ℓサイズ。大根なら90本、白菜なら18個漬けられるらしい。
そんなにも漬物が食べたいわけではなく、やっぱりヤキモノ関係の備品として。
原土を精製する時に使う。

蓋付きの容器は、今はホームセンターでいつでも手に入るが、一昔前は本当に漬物屋さんから調達していた。年末近くになると門松を作る人たちが大量に確保するので、秋までには入手する必要があったなぁ。弟子の頃に貰いにいったら、「若いのが来た」という事でちょっと安く、かつ蓋をオマケでくれたりしていた。

今はすぐに買える。便利になった。(いつの時代の人間?まだ、けっこう若いハズ……)

樽と言えば……、スコッチウイスキーの樽。
本来はシェリー樽を使って熟成貯蔵するが、昨今はシェリーの需要が減りシェリー樽が確保出来なくなっているとか。で、その替わりとしてバーボン樽が使われている。バーボン樽は、かの国の樽屋さんの取り決めで一回使用のみで交換する規定。それが大西洋を渡り使われている。
さて、ウイスキーの味はどうなるのだろうか?小生は寡聞にして知らない。


漬物樽が入手し易くなったのは良いが、困っている事がある。
それは必ず一樽ごとに、中に押蓋が入っているという事。
他に転用のしようが無い。


誰か要りません?押し蓋。新品なんですけど……。
または 使いみちのお知恵、募集中。


初霜

2007-11-19 07:45:23 | Weblog
昨日は、木枯らし。その名の通りの強風で、クヌギの葉を盛大に散らしている。吉井川の堰堤の止水域ではウサギのような白波が立っていた。
そして、深夜には外の温度計は0℃を示す。星がくっきり。 ……で、放射冷却。


初霜が降りた。

朝日にキラキラと光っている。陽が当たるとスーッと消える程のうっすらとした霜。『紅葉と霜』の出会いの季節だ。ほんの僅かな期間だけの。赤を透かしたクリスタルな煌く縁取りの美しさ。
朝のすがすがしい空気を吸い込む。心地良い。


やがて、季節が進むと、歩くたびに音が鳴るようなもっと手強い厚い霜となる。
こうなってくると、「すがすがしい」とは言ってられず、「さむい~」に尽きる。


本格的な『鍋シーズン』到来ですな。


カフェ・オ・レ・ボウル考

2007-11-10 10:01:04 | 陶芸
深夜、ひとり。工房でカフェ・オ・レを飲むことが増えた。

カフェ・オ・レ・ボウルは、その名の通りカフェ・オ・レを飲む為の器。
ホットミルクと濃いコーヒーを別々に作って、器に注いであわせる。

ざっくばらんなお茶や食事の時に飲むのがカフェ・オ・レ。デザートタイムで飲むものではないので、たっぷり沢山。エスプレッソのように香りとその余韻を愉しむタイプではない。

忙しい朝の時間にミルクパンから注ぎやすい様に、ボウルは丼鉢のごとく口径が広く安定良く作ってあるのが一般的。また、厚みがあるのも特徴。


神戸にいた頃、お茶以上ランチ以下の腹具合の時に、喫茶店で、カフェ・オ・レのセットを飲んでいた。今で言うところのカフェ。細い階段を上がったビルの二階。古びた店構えで、カタカタ鳴る木レンガの床、黒光りするカウンターの向こうに、蝶ネクタイにベストの初老のマスターがいた。クロワッサンとカフェ・オ・レがセット。

常連さんに外国人の学生さんもいて、お客さんが少ない時に、パンをビチャビチャに浸して食べていた。このときはクロワッサンではない。本来は子供じみた食べ方とのことで、大人はしない。時間がなく大急ぎで食べる時のやり方。日本人が、「今日はお茶漬けでいいや」というのに似ている。だから、余りおおっぴらに人前ではしない。でも長らく食べ慣れているのだろう。嬉しそうにやっていた。


さて、数年前からシアトル系カフェが進出して、カフェ・ラッテが席巻している。これは、小生の感覚から言うと薄すぎる。サラッとしたお茶の時間にはいいかも知れないが。でもカフェ・オ・レは、限りなくランチに近い腹具合でのお茶。物足りない。まっ、日本でいう「アメリカンコーヒー」のカフェ・オ・レ版か。


随分前に、イタリアンのシェフにスープやサラダの器を依頼された。ソーサー付で作ったのだけれど、その後それを『ソーサー付のカフェ・オ・レ・ボウル』として定番化した。これが便利。備前焼は熱湯を入れると熱過ぎる。両手で抱えて持つカフェ・オ・レ・ボウルとしては最初はツライ。なのでソーサー付。ちょっと冷めてきたら、両手を温めながら飲むという具合。

普通。カフェ・オ・レ・ボウルには、ソーサーは付かない。ソーサー付きは使い勝手を考えての事。もちろんお菓子のお皿にしてもいい感じ。(自画自賛。)

フランス映画を見ていると、最初は手袋をして途中から素手で飲んでいる。
これは当たり前で、カフェに外から入るとまだ体が寒い。体が温まったらコートや手袋を脱ぐ。だから最初は熱い器を手袋のままでボウルを抱える。理にかなった順序。実際にフランスで見たわけではないケド。

家で使うのに、イチイチ始めに手袋はしないので、ソーサー付きでないとツライ。



備前に来てから喫茶店にもカフェにも行く機会が激減した。
また極上のクロワッサンが食べたいな。

「触れなば散らん」という佇まいのクロワッサン。食べる歯先から焼けた皮がパリパリと鳴り……。バターの香りがフワーッとして……、カウンターに蒔いた様に散ったそれを、マスターが満面の笑みで拭いてくれるような……。
うーん悶絶。



追い込み中のハズ…。

2007-11-08 10:56:07 | 陶芸
先日の『金継』に、かなり多くの反響がありました。
凄い数のメールでした。皆様、お手元の作品をお大事に。
順次、返信中です。

『真鍮継』ゆえに、黒ずんできたら『歯磨き粉』か楽器磨きの『ポリッシュ』(ラッカーポリッシュとか、シルバーポリッシュ)で磨く必要はあります。トイレの漂白剤(サ○○ー○)という手もあります。気にしなければ放置でもOKです。


今年は遅い紅葉ながら、ヌルデ、トサミズキ、ガマズミなどは、もうすっかり真っ赤です。そろそろ散る気配の木もあります。
『錦秋』と言うには程遠い我家ではありますが…。

あまりにも良い天気で何処か遠くに出かけてみたいのですが、実は窯焚き前の追い込み時期なのです。ちょっと実験的にやりたい事があったりして……。
理屈では可能でも実際にやってみないと。結果がヤキモノですからね。


天気はいいけどストイックに仕事です。
本当にストイックかは謎。お菓子も絶賛消費中。


仕事のお供は…


午前中 : amラジオ(浜村淳、菊水丸)

昼食  : ちりとてちん

昼過ぎ : fmラジオ(FM岡山、NHK-FM)
       CD(シンフォニー、コンチェルト)

お茶  : CD(シンフォニー、コンチェルト)

夕方  : 散歩
       CD(室内楽、ピアノ)

夕飯後 : CD(ジャズ、落語) 
   


手は動かすけど、耳は趣味だな……。



ウチの『金継』

2007-11-03 01:41:32 | 陶芸
拙宅の子供に「ヤキツギのヤツ借して!」と言われる。
即座に「ヤキツギ」が『焼継』であるのに思いが至らなかった。

「焼継を知っているのか」と訊くと、ご本人はきちんと説明する。
「骨董趣味の人ぐらいしか知らんのとちゃうか」と思う言葉なのだが……。
感心していたら、どうも学校での環境問題に関する学習で習ったらしい。昔はそんな商売があったと。でも鋳掛屋さんは習わなかったとの事。

「ウチに焼継のものはないけど」と言うと、「ある」といって小皿を持ってくる。しかし『金継』と勘違いしていた。
言葉は知っていても実物は見なかったとの事。という訳で、家に実物があれば学校に持ち寄る次第。ヤキモノ屋んチが多い学校ならではのテーマ。

仔細は承諾した。
けれど、ウチの『金継』は金継ではない。正確に言うと金(きん)ではない。これは、かつて金継修理を依頼され、「本格的な修理は何万円もする」と答えた折に、依頼主が「何とかして」と言うので自前修理をした時の練習品。テストピースである。

第一、本当に大事で高価だからこそ『金継』をする訳で、こんな普段使いの小皿にはしない。しかも、つい最近これでギョーザを頂いたぞ。

要は、『もったいない精神』で『モノを大事にする心』が学習の狙いである。継いである事自体が重要なのだろう。小学校の教室で金継を見ることもないだろうから、詳しい説明は止めて「持ってけ」と言っておいた。本人は『金継』だと思っている。


本当は、『真鍮継』だ。 スマン。 m(_ _)m



※『焼継』
鉛が主成分の低融点の金属(白玉粉)をパーツの間に入れて、加熱して接着。ステンドグラスの枠のようになる。普段使いの食器などは、この方法で修理する。
あえて違う意匠や焼色を継いで、侘びた風情を演出する事もある

※『金継』
茶道具などで使われる修理方法。漆で接着後、金箔や蒔絵を描き、あえて修理した事に美しさを見出すもの。