今年もご縁に恵まれまして、兵庫県龍野にあります永富家へ参りました。
毎年、アヤメの咲く時期に開催される『あやめ茶会』。(昨年の様子は
こちら)美術館所蔵クラスの名品揃いのお道具、室礼の茶会であります。それを国指定重文のお屋敷で。
「お手伝い、どう?」とメールで誘われて、もう光の速さで返信。
「何はさておき、謹んで参上仕り候。なんでも致します。いや、出来ないことも多いですが……」
それからは、期待一杯にワクワクする日々。
さて当日。庭のあやめ・花菖蒲も咲いておりました。
今年は速水流のお家元によるお茶会で、高貴な方々へのお手前を拝見致しました。京風の雅なお手前とお道具で華やかでありました。袱紗が襲の色目になっているのも特徴。
お道具類は、孝明天皇より賜った茶碗、流祖宗達の手による掛物、茶杓など、まず見ること、手にする事が出来ないものが多くありました。
変わったところでは、貴人ばかりのお茶会で天目台よりも高貴な台として作られた台、仁清の飴釉の茄子茶入など。清恭棚というのも大変興味深いものでありました。
また、正客は高貴な方であるので「ご自由にどうぞ」というお作法フリーな立場としてあり、雲上人、殿上人やかくあらむ……という世界でした。
薄茶では、柄杓、茶杓なしのお手前でした。
風炉として聖護院蔵の蒔絵の台。聖護院宮の仰せにより宗匠が考案した『脱杓点法』がここに繋がる……と。その華やかさに対比する侘びた瓢形の鉄瓶。水差代わりの青竹、棗は振り出し……。
2日目の最後の席に入れていただいたところ、なんと正客は宗匠、次客は若宗匠。これは贅沢でした。お手前のお姉さまの手は震えていましたが。
やきもん屋としては、真葛香山につながる真葛香斎作の京焼香合『かわせみ』が良かったなぁ。
華やかな金の上絵でカワセミの羽、嘴を表現してあり、カワイイかつクールな造形。心の中ではキュンキュン萌え萌えしていました。
食いしん坊としては、粽の頂き方を知ったのが良かった。
紐を外すのにグルグル手一杯に広げるのではなくて、「本来はこういうスマートな食べ物だったのか!」と目からうろこが多数剥落。
フォークとナイフでバナナを頂く手順を知った中学生の頃の衝撃を思い出しました。まっ、今後はさも当然のように振舞いますがね。(←やらしい)
今回、一番印象的だったのは『伝・尾形光琳の燕子花図』。
これは初日に見てあまりにも衝撃的な存在でした。「本物?だよな…ここにあるんだし」と目の前にあることが信じられない状況。
二日目の早朝一番に会場入りして、誰もいない空間でマジマジと独り占めして拝見しました。
ふと気が付くと、背後に男性が静かに居らして、その方が所有者と知らずに間抜けにも「良いですよね~~。早起きして見に来ました!」と会話をスタート。途中から所有者と判り「えっ?」「おっ?」となったが、好機とばかりに謂れをゆっくりと拝聴。
落款はないものの金箔の状態、絵の具、その家に光琳が来ていた事など状況的に本人作じゃないかなと。「まぁ、琳派だよね」と事も無げに。
「落款の入ったものもあるけどね、こっちの方が良いかなと思って持ってきた」と……。会話のトーンと内容のギャップが凄すぎる。
美術館のガラス越しではなくて、数センチまで寄って拝見できたのは本当に良かった。
かくして、今年も良い体験をさせて頂きました。感謝。
m(_ _)m
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