備前焼 やきもん屋 

備前焼・陶芸家の渡邊琢磨(わたなべたくま)です。陶芸、料理、音楽、路上観察……やきもん屋的発想のつれづれです。

ニワトリ受難日2014

2014-12-26 11:06:35 | 料理・食材


さてさて、今年も来ていました年末恒例『ニワトリ受難日』。もとい知らないオジチャンの誕生日。もといクリスマス。
まぁ、理由は何であれ世間的にはキャッキャウフフな日らしい。景気高揚にプラスなイベントで御座います。

拙宅では子供達から洋食メニューが固定的にリクエストされる日でもある。
こんな日に「今夜はおでんよ~」なんてもんなら、暫く親子絶縁になりかねない脅迫的な雰囲気が漂っている。これに泡の出る飲み物も必須事項。
さてどうしようか……これまでのスモークチキン1羽丸ごと骨付きモモ肉、今年は御不在やなぁ。
で、冷蔵庫・冷凍庫と暫く相談する。

結果。
『チキングリル・オレンジソース』である。
間違っても『鶏肉の焼いたん たまたまあったミカンで作ったソース』ではない。あと『鴨』が本家なのも内緒だ。

鶏肉……じゃなくて、チキンはオーブンへGO~~。
オレンジソースは、錬金術の如くアレコレをゴニョゴニョとして作る。自画自賛のうちに火を止める。


素晴らしい。たぶん天才。しかし次回に同じソースは出来ない。「シェフの気まぐれオレンジソース」だよ。

しかし、鶏さんには悪いが、このメニューは本日の主役ではない。スマヌ。m(_ _)m


今年の主役は、コチラ。

じゃ~~ん。取っておきのチーズ。『アルプスの少女ハイジ』のチーズ(ラクレット)です。

ホットプレートで溶かして温野菜に絡めて頂きます。

これが美味しい。もちろんハイジと同じくパンにも良いねぇ。

これはもともとは、この時の経験がベース。

フラットスタンレー君が来日してた時だったのね。もう2年前か。

チーズがパリパリになり始めたぐらいが頂くタイミングです。


言うなれば『焼きチーズフォンデュ』といったところ。
自然と各自が好みの食べごろを見極めるべく、チーズの溶け具合を注目しつつの食卓となりました。
そして全員からの熱い視線の中、夜も更け……すっかり御陽気(酔っ払い)です。

仕事場に戻って独りブランデーを片手に、ワーグナーの『ジークフリート牧歌』を聴く。音楽と酔いに身を委ねる至福。


ふと、目の前のカレンダーに目が留まる。
いよいよ、年末ですな~~~。スケジュールが延び延びすぎて他人事にしたい今日この頃である。
残り僅かなカレンダーに恐れおののいた。これが現実か……。


宵は深まり、酔いは醒めた。


メリクリ2014……仕事するよ。



________________

【蛇足】

・ジークフリート牧歌

ワーグナーが妻の誕生日とクリスマスのプレゼントとして、12月25日早朝に自宅でサプライズ演奏したプライベートな曲。愛情と幸福を感じられる静かな曲です。曲名のジークフリートは長男の名。ちなみに子供の名前は長女イゾルデ、次女エヴァ。神々しい名前の家族ですなぁ。
この曲は小生も個人的に思い出深いが、今は昔。

















血は争えぬか

2014-12-22 12:10:36 | Weblog


「この親にしてこの子あり」と言いますか……。

小生ご幼少のみぎり、外で遊ぶ時には常に手帳を腰から紐でぶら下げていたお子様であった。
それにはアリから見た地図だったり、図鑑から抜書きした花、昆虫、動物の情報をメモしていた。
要は気になるアレコレを書いて満足するという癖。絵よりも文字情報が多かったのも特徴。
これがその後、何かの役に立ったか?といえば特に思い当たる事は無い。


さてさて、そのような事を特に子供達に話した事は無かったはずなんだけど、下の子が何やらメモしているノートを発見した。
メモ魔の血は争えぬのか……。

ノートを机に広げたままだったのでヒョイっと覗くと食べ物カテゴリーのノートらしい。
内容は先日頂いたイタリアンのコース詳細と、シェフが発した言葉、その場での会話などをダイジェストに綴ってある。
「隠し味はアミの塩辛」「イタリアの魚醤と最後に和える」「肉の付け合せは梨のソテー」「桃にピンクペッパーが合うらしい」という小耳情報。
ワインやお酒についての会話の断片などもあった。
大人しくしていたと思っていたら、その場で色々と記憶していたらしい。なるほど。

まぁ、これが今後、何かの役に立つのか?は判らないけれど……「へ~~~」という感じ。
何にせよ体験や感情を言葉にして残すトレーニングは大事だし。


ただ、こういうノートがあるって頃は……今後、色々と書かれる?
「こちらもそれなりにキチンとしなきゃ」って事なのか?
希望としては、ダメ出しは書かないで欲しいなぁ……。

良いようで新たなプレッシャーか?


エンゲル係数低下中 【備前牛、ポン酢、野菜、酒】

2014-12-09 11:23:06 | 料理・食材


エンゲル係数絶賛低下中の我が家。
様々な珍味佳味の雨あられ。未経験のアレコレ、貴重なアレコレ、故事来歴あり、自家特製、いわく付きなどなど。
こんな小生に……、うぅ! ありがたや~~。「私は泣いています。キッチンの中で」


過日、拙宅にサプライズ訪問された高校の先輩御夫婦からは、自身のお店の自家製ポン酢をお土産に。大阪で河豚・鱧のお店をされています。
先輩は高校生の時から芯のある剛毅な人で、後輩男子から「3歩下がって付いていきます!」と言われるぐらい尊敬も慕われもされてたなぁ。
その彼女であった眉目秀麗なる先輩(奥様)は、こちらは「1歩も下がらず付いていきたい…」という癒しオーラ。
お二人の仲良し御夫婦っぷりを見ているとニマニマしてしまいますが、仕事では絶対に別の顔の筈なので、やはりお会いすると若干緊張する。
21歳で独立してオーナーシェフ、その後心斎橋に二号店も出して、ふぐの本場大阪で各種ランキングで常に上位をキープされている人だし……。
柔和な笑顔が厨房で豹変しているのは火を見るより明らか。でもそこがカッコイイな。

で、そのパワフル&ピースフルな先輩の作られたポン酢。「早よ、使い切ってや~~」と頂く。
鍋シーズンが始まる前から、湯豆腐やサラダなどにチョイチョイ使っている。このふぐ屋の命と言われるポン酢が「飲める!」
柑橘系のカツンとくる刺激を出汁で柔らかくして香りを立たせて仕上げてある。このバランスが肝なんだろうなぁ。


日々、先輩のポン酢を大事に頂いているところへ、業界大先輩の奥様より地元銘柄牛『備前牛』を賜る。
ど~~んと重い。流石でございます……。


頂いた折には「先日の御礼に」との伝言でしたが、もう既に過分に頂戴していた気が……。いや、もちろん頂きます!
で、ひとりあたり250グラムに立ち向かうのでした。焼肉を超えて『ひと口ステーキ・大盛』の世界です。
カロリーオーバーとか言っている場合ではありません。「舞い踊る程の到来物は一気に堪能すべし」の教えもありますし。(←誰の?)


焼く前から「この脂には、あのポン酢と大根おろしで行こう!」と決定。


これがウチに旋風を起こしたと言いますか……記憶に残るねぇ。旨み成分のミルフィーユ、香りのポリフォニーですな。
各自から「むむむ」という無言の気迫が発せられる堪能っぷり。「お肉食べな、チカラが出ぇへん気がする」と言う家人も今や黙々とガッツリ。

そして、隣家から採りたての椎茸と野菜も参戦。ど~ん。
そして、お客様より頂いた日本酒と焼酎も参戦。ど~ん。


かくして頂き物ばかりで成り立ったウチの食卓。いやはや幸せな事で御座います。家でこれが実現する一期一会に感謝。

さて、ポン酢はこの一件で終了しましたが、パッケージが良いので我が家の自家製ポン酢を入れます。(叱られそう……)
この他にもまだ色々とエンゲル係数圧縮食材はあるのですが、只今メニュー構築中の為、冷蔵庫を開けるたびに鑑賞中です。
ちなみに、この日の全ての食材は年長の方々からの頂き物でした。


お肉は少し残して、翌日『青椒肉絲』にしました。
普段は豚肉で作る我が家。この日は「豚じゃなくて和牛だよ」が合言葉。これもまた良しでした。


御礼をブログに変えて、皆々様に謝辞。 m(_ _)m




名人に囲まれた日

2014-12-01 20:09:17 | 料理・食材


(このブログのポリシーとして、御存命の方の実名は出しませんが、このような機会を得られた事に大変感謝しております)

さてさて、随分前にこの話をお伺いした瞬間に「お客さんでなくともスタッフとしてでも……なんとかして潜り込みたい!」と切望した企画。
とある美術館の『友の会』のイベントである。

企画のメインは日本を代表する名人による蕎麦の出張料理。「もうコレを食べたらOKでしょうよ」ってな蕎麦です。
しかも以前、山梨でお店をされていた時に伺って悶絶して以来なので期待値MAXです。
名人は既に引退を宣言されていて、恐らく相見える事は今後無いのでは……。その総本山にお参りみたいな状況が備前で実現。これは是非ものの企画である。
スタッフの名乗りを上げてスケジュール帳にしっかりと予定を書き込み、この日は「あらゆるお誘いも全て却下」の体制で待ちわびていた。

当日、早めに会場入りして蕎麦打ちを見学させて頂く。「あぁ~~」と溜息が出る程の美しく無駄のない動き。もう眼福。

お仕事は設営・撤収・備前牛の焼き方主任を拝命した。全体で15キロほどある肉をひたすら焼いて提供するポジション。(ほぼ過不足なくお客様へ渡り一安心)

お蕎麦以外も豪華でした。ワイン、ビール、日本酒、チーズ4種、カキフライ、巨大マッシュルーム、牛、海苔……。
日本を否、世界レベルの『岡山のチーズの作り手』と『広島の牡蠣養殖家』の名人お二方に挟まれて肉を焼く。
その合間に直接、御本人からチーズとカキフライを試食させて頂きました。当然、お客様向けのものは口に入りませんが「今、これが美味い」の状態を直接生産者から頂く幸せ。これは間違いない美味しさです。
カキフライの上手な揚げ方も解説付きで拝見できたのも収穫でした。

この規模のイベントって、20年前なら富裕層向け雑誌の『婦人○報』や『家庭○報』の取材が来るレベルの素敵セレブパーティーじゃないかなぁ。
お客様も全国レベルで一方的に見知った方々も。過日お世話になった某雑誌の編集長とも御挨拶。(その時の記事


全ての肉を焼き、あとは「スタッフさんもお蕎麦をどうぞ~~の声を聞き漏らすまじ」とスタンバイする。


そして、時は来た。

これが最後の記念写真か。

汁も良し、ワサビも良し。一日経った今も鼻から香りが抜けるよう。しっかりと記憶に刷り込み済み。


蕎麦を頂いていると、仕事終わりの牡蠣養殖家の社長が「こんなのどう?」と持って来られたものが、当日最高の余禄でした。


カクレガニ(隠れ蟹)の素揚げ。
これは参った。この発想はなかったな。お伺いすると「牡蠣打ちしながら少しずつ溜めていた」との事。これは現場の人しか口にする事が出来ない貴重品。
いままで頂いたカニの中で最も軽い食感。カニ風味の薄いパリパリ感が最高に笑える。この日の為に仕込みをしていた洒落に脱帽。
しかも「旬とかもあるんよ」って言われてしまったし。

見ていた蕎麦名人も数匹口へ。暫くすると戻って来られて掌一杯に盛る。ニコニコしながら口へ。
そこにチーズの名人も登場。皆が、この洒落に笑ってカニを摘む構図。
最高の作り手がお互いに共鳴するような現場に居合わせた事が幸せ。


蕎麦湯の余韻を感じつつ撤収して終了。

名人の蕎麦に関しては惜別の念もあるけれど、お弟子さんが多く巣立っているのが素晴らしいなぁ。
個人的には大阪高裁の裏にあるお店がお気に入り。そういえば、牡蠣蕎麦が出てる頃なんじゃ……。


これは、しばらく思い返すだろうなぁ……。

感謝。m(_ _)m