備前焼 やきもん屋 

備前焼・陶芸家の渡邊琢磨(わたなべたくま)です。陶芸、料理、音楽、路上観察……やきもん屋的発想のつれづれです。

南蛮煙管

2012-09-30 14:12:28 | Weblog


台風に備えて、アチコチのシートを縛り直したり、重しを足したりとテンヤワンヤで御座いました。

窯の横の矢筈薄(ヤハズススキ)の株が広がっていたので、紐で結んでおこうと束ねている時に、足元に咲く花に気がつきました。
鬱蒼とした枯れ草色の中にあって、ビビットなカラーがお洒落です。台風の最中に風流ですなぁ。

もう、ススキの穂が出ているので咲かないかと思っていましたが、部分的にきちんと寄生しているようです。
ススキも大事だけれども、この寄生植物も大事。
南蛮煙管(ナンバンギセル)とは、なかなかに艶っぽい名前です。今は煙管そのものに馴染みがありませんが。

煙管は昔だったなら……様子の良いお姐さんが艶やかな朱塗りの長煙管を、格子の向こうから吸い口をコチラにして「ちょいっと、おにぃさん~~」とか言って差し出すんでしょうねぇ。
こっちでは「煙管の雨が降るようだ」なんぞ言いつつ、一回りひやかして。
そのうちのちょいっと小粋なのを受け取ろうとして手を伸ばしたら、ひょいっと逆に手首を掴まれて、「よせよぉ~」と言いつつ自分から進んで登楼したり……。
なんとも色気のある道具ですなぁ。

(……という妄想をしつつ、レンガを運ぶ無骨者です)


実際の煙管の思い出といえば、棟梁だった祖父が煙管を吸っているのを見た事があるぐらい。なかなかに上手いものでした。
吸い終わりのまだ火のある燃え残りを手に受けて転がしておきつつ、片手で新しい煙草の葉を詰めて、手のひらのそれから火を移していました。
なんとも一連の動作がオトナでした。
子供には出来ない芸当で、これだけで尊敬の眼差しキラキラになっていました。
もっとも普段は紙巻煙草を吸ってたので、孫に対するサービスだったのでしょう。(寡黙な人だったので判りにくかったなぁ)
あと、煙管でカンナを引っ張って、カンナの重みだけで経木のように薄くて幅のあるカンナ屑を作ってくれたり。
ザ・職人でしたねぇ。なので、煙管といえば木の香りと結びついています。色気と関係なし。


さて、台風。

こちらは、風が吹いても風流とはいきませんが、どうやら岡山は逸れるようです。
良かった。(これからの地域の方々は御注意下さい。)


今夜はコロッケにするか……。

(やはり風流ではないな)



紫式部が色づく頃に

2012-09-21 21:01:58 | Weblog


コムラサキシキブも色付いてきました。
小さな実は毎年豊作ですが、裏年ってあるのかなぁ。


ちょうど時期を同じくして、ヨモギの花も咲いています。
小生はヨモギの花粉がアレルゲンでして、極力外出を控えております。
残念ながら花粉症です。ヨモギ怖いです。

ついでにヨモギ餅も怖いので、差し入れなどはもってのほかで御座います。
是非、渋いお茶と一緒に……。3時ぐらいが希望です。


という事で、最近は引きこもり生活です。

(いつもか……)

カリッ、コリッ

2012-09-17 21:37:46 | Weblog


台風の影響で風が強い日だった。朝からシートを張り直したり、重しを増やしたり大忙し。

裏山のようやく色づいてきた山葡萄も激しく揺れているけれど、今のところ落ちる気配はない。
10月の中旬ぐらいまで落ちずに保って欲しいものです。備前焼まつりで使えるので。
でも、それ以前にサルに持っていかれる心配もあるけれど。葡萄を巡るチキンレース。


さてさて、日も暮れて外から虫の音に混じって、「カリッ、コリッ」という音が聞こえてくる。
聞きなれない音。
それにしても、番犬福助の犬小屋からは数歩の近さ。普段、野生動物が来たなら発狂もので吠えますが静か……。
肝心の番犬は爆睡中らしい。昼間の雨風で疲れたのでしょうかねぇ。

目を凝らしてみても暗くて見えないけれど、時折、動物らしき足音もします。3匹ぐらいの雰囲気。

見えない時は文明の利器で。
カメラのISO感度をマックスにして、音の方角へストロボを一閃。直後に闇雲に逃げ出す音がしました。

あとで見ると、なんとか撮れていました。



ウリ坊です。

庭のナツメの実がほぼ全て落ちていたのを、見つけたらしい。その落ちた実を食べていました。カリッコリッは種を噛み砕く音。
彼等にすれば御馳走なのでしょうねぇ。

こちらとしては掃除しなくて良くなるので、ジャンジャンどうぞ。


ということで、『天高くシシ肥ゆる秋』になりにけるかも。ですなぁ。






かれこれ20年のワイルド系

2012-09-16 19:22:40 | Weblog


今日は台風による刺激なのか、雨がパラついたり風が急に吹いたり。かと思うとキツイ日差しだったりして安定しない天気だった。
明日からは雨になる予報なので、雑草の処理やら溝の点検などをしていました。
ついでに邪魔になっていた枝を伐っている時に、ふと行平鍋の取っ手を付け替えないといけない事を思い出した。

まぁ、鍋の取っ手なんて、どこかの店で木工ロクロで削り出したキレイなものを買えば良いんだろうけれど、あえての手作り。

そもそも、この行平鍋は、弟子入り2日目の夕方に近所のスーパーで買ったもの。かれこれ20数年を共にしているなぁ。
安っぽくて、薄くって、くたびれてて……本当はもっと格好良い鍋が欲しいと思う事もあるけれどもね。
しかし、使い続ける。(でもチャチなのはイヤやなぁ~~)

そこで、この安っぽい鍋を味わい深くするのは取っ手の造形でしかないのだ!

……というのは違っていて、単に色々なサイズがある取っ手を店で選ぶのが面倒なだけ。

手作りといっても10分かからない仕事だしね。
スモモの頃合の良さそうな太さの枝を伐って、手跡を少し残しつつ、木の皮もザックリと処理。う~~ん、ワイルド。
手跡を残すのはね、味わいじゃなくて妥協の産物なのは秘密だ。

まぁ、良いんだよ。自分で使うものだし。貧乏性丸出しだけどさ……。


これで3回目の付け替えになるけれど、自分でするといつもコレ。
流石に包丁の柄の付け替えは、怪我してはいけないので買ってきますが。


さて、帝国ホテル御用達のヤットコ鍋を買う寸前まで気持ちが盛り上げっていたけれど、これでまた先延ばしだな。


(いよいよ鍋本体に穴があいたらリペットで直すのかな……)

オーダーミス

2012-09-12 19:00:03 | 陶芸


今日は参った。

注文していた桐箱が今日届きました。
で、見てみると「あれ? なんか小さい?」 すぐに違和感を覚えました。

予定していたモノを入れてみると……キッチキチの余裕なし。やっちまいました。 ┐(-。ー;)┌
今年に入って2回目。独立以来2回目のミス。余裕分を見ないでオーダーしていました。


陶芸業界において桐箱は一点モノになります。注文する毎にサイズを測ってオーダーします。
通常は、モノの実寸に対して『横3分、高さ5分』の余裕をみます。

オーダーするに当たっては、ヤキモノ屋さんが統一のフォーマットで注文するはずもなく、皆さん自分流の方法でオーダーします。
長さの表記ではセンチ・ミリの人がいて、尺寸の人もいます。
また、余裕部分を桐箱屋さん任せの人もいれば、指定する人もいます。なので表記がモノの実寸の場合と箱寸の場合があります。
それを電話、FAX、メール、郵便と色々な方法で伝えます。
手書きなら読めなかったり、電話なら聞き間違えなどもあるでしょうねぇ……。

桐箱屋さんからすれば、「この人はこのパターン」という把握なのでしょう。
小生の場合は、箱寸を尺寸表記でメール。間違いは自分のミスという方法。

これで起きる間違いは余裕分の計算をしなかった場合。
で、見事にそれでした。


さて、ここからがリカバリー。

徳利のつもりだった箱にはジョッキを。
ジョッキのつもりだった箱には湯呑を。
湯呑のつもりだった箱には冷酒杯を。

大は小を兼ねますが、違和感のない組み合わせもなかなか難しいものです。
サイズをひとつづつ落として合わせていくと、最終的にあぶれるのは一番大きいモノと小さいモノ。と明らかに違和感のあるもの。
こればっかりは、再オーダーしかありません。

それでも、なんとか追加発注を数点で抑えることが出来ました。


あぶれた箱に合うモノが、そのうちに出来れば良いのですが、そうする間に箱が傷むという……。

あ~~、なんだかなぁ。


さてさて、骨董業界におきましては、サイズ違いの箱がありますと(以下略……。


閑谷学校と耐火レンガ

2012-09-11 22:03:41 | Weblog


閑谷学校に行きました。
知り合いが窖窯(あながま)を作っていて、その見学というか邪魔しに行った帰り道。

入場料300円也を支払って講堂にも。
岡山の子供達は小学校で『閑谷研修』と銘打った課外授業があって、拙宅の子供達も随分と慣れ親しんでいる様子。
時折、話に出るので再訪しておこうと思った次第。
う~~ん、20年振りぐらいかな。前回は、先生のお客様を御案内した時に見たんだと思う。

さて、閑谷学校と言えば、備前焼の瓦。

池田藩の紋、黒揚羽がしっかりと丸瓦に入っています。

瓦以外にも備前焼があったり……。



とはいえ、やはりメインの見るべきものは講堂です。
床板の黒光りした佇まいには、誰が居るわけでもないのに凜とした雰囲気があり居住まいを正します。

しかし、外国からのお客さんにはその雰囲気が伝わりにくいのか、騒々しかったので暫く一人になるまで待ちましたが。
「ヨク、チョンギレル、ハサミダ!」とか「パンニ、ハム、ハサムニダ!」とか仰っているのが聞こえていました。
ん~、空耳か。

講堂の周囲もよい感じです。


寝転がるのは禁止。なので、お昼寝厳禁ですね。

陰影礼賛



楷の木(かいのき)も間近で見つつ。


石塀の外に出て、すぐ隣の椿山にも行きました。ヤブツバキが管理されていますが鬱蒼としています。
入るのは初めて。
奥には『御納所(ごなつしょ)』という池田光政公の髪、髭、爪、歯を納めた供養塚がありました。


異次元空間への道か? という雰囲気。
光の加減ですが、計算して作ってあるとしたら劇的な効果です。

そのヤブツバキの間から見える講堂もなかなか。

花が咲いた頃にまた来たいです。

周囲に点在するほかのポイントも巡りました。
黄葉亭も今ほど道が整備されていない頃には、随分と趣きがあったと思われます。



で、本日の所用の窯の方は…と言いますと。


あと、一週間でアーチが組み上がって、次の一週間で土塗り、煙突といったところでしょうか。
一人でするのと違って早いなぁ……。
別の窯の再利用レンガの雰囲気も良い感じです。
耐火レンガは昭和の備前焼不況時代における工業化の歴史のひとつでもあります。
色違いレンガの雰囲気は閑谷学校の瓦にも通じますなぁ。


備前焼業界の長い歴史の一部である閑谷学校と耐火レンガ。
そのコントラストの延長線上に今の我々があります。

いとをかし。









アペリティフに

2012-09-10 19:48:23 | 料理・食材


お天気具合を睨みつつ、夕刻に草刈りして軽く汗をかいた後、そのまま番犬福助とウォーキング。
福助くんのご飯をあげて、小生は風呂場へ。この時点でノドのカラカラ具合はMAX。
ここで泡の出るものがあれば万全の態勢ながらも、本日はアワアワ系が皆さん不在。ビールも炭酸もないな……。

暗澹たる我が身の不幸を呪いつつ(こういう書き方って、昭和風翻訳の海外小説みたい)、
冷凍庫に愛用のグラスごと突っ込んでアイスを掬い、無造作にウイスキーを満たす。
このグラスは古いノベルティーで、何故かずっと手元にあって気が向いたら使っているモノ。昔のノベルティーは出来が良い。

さて、結露するグラスを片手に冷蔵庫の中を見やるとイチジクがある。

「『イチジクと生ハム』でアペリティフも良いな」

……と言っても、まぁ、今日は(…というか普段から)生ハムはお留守なんだけど。
『イチジクとお徳用スライス・ボンレスハム』の組み合わせは出来るけれど、ハムを消費してしまっては、明朝ハムエッグを作る子供達からの叱責を受けかねない。
あと、あのアミノ酸たっぷりソミュールの毒々しさは生で頂くにはちょっとキツイ。

さてさて、アテにするもののヒラメキが何も得られないまま、目の前の小振りのニホンイチジクを剥いて口に含む。
そして、ついでに片手に持ったままのウイスキーも口に含む。


その瞬間。 ぬぉ……( ̄□ ̄;)!!

衝撃が走りました。なんとも抜群のマリアージュ。
イチジクの天然ジャムの如き甘味とシャープなウイスキーのドライさが相俟って、爽快感のあとに深い余韻が残ります。

冷蔵庫物色中に、こんなマリアージュを発見するとは思いもよりませんでした。
スバラシイッ!


「これは大発見!」


……と思いましたが、ふと「これに生ハムの塩っ気と香りが加われば最高だろうなぁ~~」と思い至り、やはり定番の組み合わせの偉大さに感じ入りました。
なので、ぬか喜びというスパイスを足されたイチジク(生ハム抜き)でアペリティフですな。


まぁ、これも悪くないよ。うん。


ついでながら映画の影響で、『イチゴにシャンパン』ってあるけれど、あれって個人的には「?」なんですよね。きっとイチゴの品種やお酒にもよるのでしょうが、まだ巡り合っていません。
今日はおとなしく『イチジクにウイスキー』で、ひと口毎に「ぬぉ!」ってやりましょう。


まぁ、これも悪くないよ。うん。


うどん県へ

2012-09-09 18:03:40 | 展覧会・ご案内


昨日は、高松へ日帰り出張。香川県改めうどん県ですね。
高松天満屋さんでの『大備前焼展in高松』と銘打った展覧会の会場当番として出向きました。

展覧会自体は「人間国宝から若手作家まで130名と窯元14社の800点集めました。備前焼まつりも近いですので、ひとつよろしくお願いします。」という備前焼陶友会様の事前アピールのニュアンスもあり、まぁ、小生も『おまつりゲリラ』的立場ながらも挨拶しておくかと……(誰に?)。
丁度、知り合いの展覧会やら美術画廊の見学も兼ねて……。

兼ねて……といいますと、岡山と香川を結ぶフェリー『宇高国道フェリー』も10月半ばで終了が決まっておりまして、その初乗船も目的。最初で最後の乗り納めのタイミングです。
更には「香川といえば、当然うどんもね」という業務内容であります。

おぉ、忙しい。(*^o^*)/


さて、近所の備前焼作家U氏と連れ立って早朝出発。窯焚き直前の多忙中のところ拉致。ゴメンナサイ。
フェリー乗り場(宇野港)まで自宅から1時間半。
待合室には『萌えキャラ3姉妹』が待ってました。かれん、いおん、まりんさんだそうです。

twitterもしていらっしゃいます。

乗った船は『次女いおんさん』担当であり、降りるときには「よい、うどんを!」と言って下さいました。(艦内放送テープがね)
まぁ、当初からそのつもり。でも期待が脹らみますな。
いおんさんは見かけの割に落ち着いた声でしたねぇ。(個人の感想です)

琴電のホームからは、テレビ番組定番の高松城のお堀の鯛を見ました。お堀が海水なんですな。
公園の鯉のように水面に口をパクパクさせて擦り寄ってくる鯛には、もう天然鯛のプライドは微塵も感じられませんなぁ。
「釣るぞ、コラ!」ってなもんです。

瓦町駅の駅ビルの高松天満屋7階催事場へ向かいます。


広いです。
「どうぞ、人間国宝の方々のモノもお手にとってご覧下さい」ですが、緊張しますね。プライスカードに。
とかいいつつ、我々はしっかりと見て触って。(^。^ゞ


お昼は、個展中のO氏がご友人のうどん屋さんへ案内して下さいました。
着いたのは『玉藻うどん』さん。有名店です。内心「おぉ!」とテンションアップ。

丁度、時間的に麺が無くなった直後で、目の前で麺を伸ばすところから始まりました。更に「おぉ!」
まさに打ちたて、湯掻きたてのタイミング。これは『釜玉』あたりがベストではないでしょうか。


ちょっと予想以上に時間が掛かり、個展中のO氏はお客さんを待たせての昼食。ゴメンナサイと有難う。m(_ _)m
ピッピよりもややモッチリよりな感じ。旨し。


昼からは、K先生のギャラリートーク。館内放送もしっかりあって満場のお客様です。


ポロポロとオモシロ話も。流石です。あっという間の30分。

終わってから備前焼小町を挟んでの図で少々照れ気味の先生でした。



さて、陽が暮れなんとする頃、再びフェリーへ。
港から拙宅までは車ですので、気分ばかりのノンアルコールビールで。客室のテレビでは沈没船特集をやってました。

瀬戸内海の沈没船もかぁ……。船に乗っている時に、なかなかのタイミングですなぁ。

無事沈没することなく、1時間で到着。

降りるときには、長女かれんさんが「よい、うどんを!」と言って下さいましたが、今度は岡山側ですのでうどんは止めておきました。

ただ宇高【国道】フェリーのはずですが堂々と「宇高【うどん】フェリー」と言っていたのには笑えました。



帰宅して、コロッケで晩酌。
「今回はゴメンナサイとおぉ!が多かったな」と若干反省しつつ……気付いたら椅子で寝落ち。


さて、秋めいて参りました。仕事しよう!
そして10月には備前焼まつりでは、「よい 備前焼を!」


 ※萌えキャラはいません。ゴメンナサイ。