備前焼 やきもん屋 

備前焼・陶芸家の渡邊琢磨(わたなべたくま)です。陶芸、料理、音楽、路上観察……やきもん屋的発想のつれづれです。

名残の紅葉

2013-11-29 10:57:04 | Weblog


陽が届く前の朝。カーテンを開けると、はっきりと季節が変わっていた。

今日は一面に輝く地面が広がっている。
ここ数日間、朝霧が多かったので「一気に冷え込んだら、霧氷が出来るかな」と期待していた。
しかし、木には出来ていない。ちと残念。
地面の葉一枚づつが光を纏っていて、それが断続的にチラチラと輝く光景が美しい。

朝の空気を吸いに外へ出る。 (いや違う。本当は今日は燃えるゴミの日なだけだ)

ドアを開けた瞬間に身が縮まる寒さに包まれる。思わず小さく声が出る。寒さに対する覚悟が希薄すぎたなぁ。
昨日まで綺麗だった紅葉を見に。
足元を振り返ると草の上の足跡は露になっている。儚い。

舞い落ちた紅葉と霜の組み合わせがひと際綺麗。
ふむふむ、出会いのものですなぁ。名残の紅葉。……自然の鱧松か。(←違う)

紅葉の赤さが残っているうちに、もう一息寒くなるともっと綺麗なんだけどなぁ。


周りの植物もそれぞれがグラデーションを作り出している。


ミント


野いちご


金糸梅


もう少ししたら、葉も落ちてしまうだろう。
あぁ、季節が変わった。

ストーブ出そう……。



朝の竹林にて

2013-11-21 19:52:07 | 路上観察


今朝、長い竹が必要になって隣の竹林へ。ウチの竹林ではないけれど「自由に切って良い」とのお許しがある。

辺り一面をイノシシが筍を目当てに掘り返している。「ひどいなぁ」と思う反面、筍が成長しないので適度に間引かれていて歩きやすい。小さなブルドーザーが行き来したかのよう。
地面から目線を上げれば明るい竹林となっている。地面さえ見なければなかなか良い光景。
枝の隙間から入ってくる陽差しが竹林の中で天使の梯子のように幾筋か見えて印象的でもある。

頃合の太さのものを選んで切る。3本ほど切り倒して枝を払う。
ふと以前切ったであろう竹の切り株が目に入った。
無意識に視界に入った一点だったけれど、そこに意識が集中すると急にクローズアップされたような感覚になる。
この切り方は竹林の持ち主によるもの。小生とは切り方が違うな。




しかし、なんとも微笑ましいというか、逞しいというか。
竹の節に溜まった水分で成長した苔。
光の加減か……詩的な光景に「かぐや姫の在りし処もかくやあらむ」と思わせる。


朝から「なるほどなぁ」と妙な感心をして竹を担いで外へ。

「路上観察学会的には系統が違うな」とか「朝なので、三文分の得があったかな」とかチラッと思う。
キレイなものを見てそういう事を思うのが俗な証拠だなぁ。いけませんなぁ。


素直に微笑んでおきましょう。

「かぐや姫がいたんだよ」って。 (う~~ん、そうなると……妄想……統合失調症……)

ミミイカ

2013-11-18 18:49:56 | 料理・食材


『美しさ』の基準のひとつに『ちいさきもの』がある。

「なにもなにも、小さきものは、皆うつくし。」(枕草子)
「ちっちゃいものは美しい、可愛いよね」と昔の才媛もおっしゃっている。

小さいモノ、とりわけ元のサイズよりダウンサイジングされた結果生じる『不足』。その不足に美を見出すは日本人特有なのかな。
不足を埋める為に想像力や余白への視線が生まれる。『不足の美』『間』とも言うか。
枯山水、水墨画、俳句……。
武道における残心も、それがあってこそ一連の所作が完結するという意味では同じ類か……。自分の心で補完することによって完全を目指す行為。

ある彫刻家曰く「彫刻は不完全でいい」とか、神社仏閣の『未完成の美学』とかもあるなぁ。
恐らく、2次元への『萌え』属性はそこに起因するんだろう。
コード進行の『Ⅴ7→Ⅰ(ex:C-durのソシレファ→ソドミ)』の解決とは異なる快感でもある。


……とか思いつつ、ミミイカを一口で。(御存じない方は是非、画像検索される事をオススメします)

もともと小さいけど火を通すと更に小さくなる。めっちゃ可愛いいのに、きちんとイカの味がする。
魚屋さんの店頭の表記によると、どうやら『チゴイカ』とも呼ぶらしい。方言かな。
勝手に『稚児烏賊』と思っているけど。




「萌え~~」


なんか自分が危ない属性にも思えてきた。


トキリマメ

2013-11-17 19:22:52 | Weblog



裏庭に自生しているトキリマメ。
小さな赤い鞘と可愛い黒い豆が印象的。この時期になると雑草に絡まりつつ垂れ下がっている。

出来ている豆の数からすると、毎年相当ばら撒かれている筈だけれども数は増えない。
実は色ですぐに発見できるけれど、それ以前の花の時期には気付かないので、草刈の時に知らずに刈っていると思う。
アケビのように可愛らしく色も綺麗なら判るんだけど、こればっかりは植物の都合でありますから。
で、毎年実がついてから「あぁ、今年もなったね」とやっと判る次第。


このトキリマメとよく似ているものにタンキリマメがある。
漢字で書くと『吐切豆』と『痰切豆』。それぞれ漢方薬のような名前です。

悪食な小生がこの実に手を出さないのは薬っぽい名前だからではなく、そもそも豆だからです。
芋、豆、南京の類にはサッパリ興味が御座いませんのでね。ハイ。
一方、今年はムカゴを取り損ねていて、今のところそれが痛恨であります。

この2種類は葉っぱの違いで見分ける。
「葉の幅が広がる場所が違う」と教えられたけれど、いやいや結構似ている。
更に「先端が丸いか尖るかというのが大きな違い」というポイントもあって、その一点のみで憶えています。
なので今も間違う確率も高いはず。ウチのものは目の前で教えてもらったので間違いは無いでしょう。

まぁ、咳も痰も出たところで、今やこの豆にお世話になる事も無いと思うので見極めなくても良いんだけど。


花材として可愛いので、豆を落とさないように採取してクルクルと巻いて柱に引っ掛けています。
何だか、おまじないっぽくて良い感じです。

さて、風邪を引かずに冬に備えたいと思います。

トキリマメも信心から。


久しぶりに魚屋さんへ

2013-11-15 12:57:46 | 料理・食材


外出先からの帰路、魚屋さんへ寄り道。本当に久しぶり。初秋の頃は忙しくて御無沙汰でした。
「うんうん、久しぶりだねぇ」と、店先の魚一尾づつに御挨拶する気分で眺める。

ゴロゴロ、プリプリのゴマサバ。
ピカピカのサンマ。
身ぐるみ剥がれたカワハギ。
目つきの悪いカンパチ。
今日は、カツオは2種類か。
おぉ、寒ブリとか出てるし。
サワラの刺身がキレイでデカイ。そして安定の高値。

おや、まだハモが居るなぁ。
モクズガニもお目見えですか、やややっ、セコガニちゃん居てはるやん~~。一年ぶり~。
ほほう、ミミイカくん達はチゴイカとも名乗るのか。稚児烏賊の字だろうねぇ。可愛いねぇ。

いやはや皆様、御尊顔を拝し奉り恐悦至極に存知まする。m(_ _)m

何といいますか、魚屋さんってアミューズメント空間。


で、結論としましては、今年の食べ納めという事でカツオ半身を購入。

「さて、帰ろうか」という時に、売り場の隅っこにパックが積まれている。
何気なく見ると……なんとまぁ、白子まつり開催中?! タラ、サケ、フグ……。
いや、別に祭ではなかったけれど、個人的には祭状態です。まぁ、真子の方がより好きだけど、まつりじゃ~~。

アミューズメントパークでのフェスタって、もう歓喜狂乱。
夢の国でのネズミパレードか? (行ったことないけど)


で、しばし落ち着いて一考。
「経験上から細君は食べない筈。子供達にバレると危ない。美味しかったら全部巻き上げられる恐れあり」
これまでの晩酌のアテを強請り盗られてきた経験を考慮しつつ、怜悧狡猾なる思惑を巡らす。
結果、一番安価なサケを3人分程チョイスする。これなら自分の分量は最低確保できる……はず。巻き上げられても被害額は少ない。


そして、本日の一品。(テキトーな発想で料理)

塩を振って湯引きして、血合いを取って……の下処理の後、片栗粉をまぶしてしばし待機。
オリーブオイルとガーリックで軽くソテーする。中心部分は温まる感じでOK。
取り出したら、そこに醤油、バルサミコ酢を入れて軽く煮詰める。格好付けるとデグラッセってやつね。
最後に日本酒をひと回し垂らしてソースが完成。ちょっと濃い目。
ソースは「湯引きにポン酢が合うなら温めた二杯酢もいけるよね」という判断から。

豆皿にも別に確保する。これ大事。
家族用には鱠皿に用意。案の定すぐに無くなりましたが、そちらをダミーにして豆皿分はこっそり、きっちり頂く。Ψ(`∀´)Ψ
七味を振ると無国籍感漂う一品となりました。
カリッっとしてネチッっときて、口の中でジワッ~……、カマンベールとモッツァレラチーズの中間ぐらい。そこに日本酒を投入して洗い流す。くぅぅ~。


秋鮭の白子も美味しいね。日本酒が抜群だね。カツオも宜しゅう御座いましたし。
酔っ払いの自画自賛。


さて、これから美味しいものが沢山出回ります。
「日本万歳、魚屋さん万歳~~」で、本日は終了。


(でも、やっぱりフグが良いなぁ)




紅葉鑑賞のひととき

2013-11-13 09:39:53 | Weblog


朝夕の冷え込みがジワジワと実感される頃です。
一日の寒暖差が大きくなると一気に山が装いを変える。
しかしながら、ウチの周辺は里山故にクヌギやカシなどが多く錦秋とは程遠い。
その中にあって、ウルシの類は鮮烈。



見頃は陽が当たり始める朝。夜露を纏った深みのある色が美しい。
そこに柔らかな朝陽が少し当たると、葉っぱの縁が黄金色に輝き、葉の一枚一枚が微細な光に包まれる。
「こういう一瞬への想いが古来から絵の題材になってるんだろうな」と、如何せん絵心というには不調法者なのに……想う。

風もなく、穏やかな朝陽を背中に感じながら見る紅葉。
マグカップを片手に家の周辺を歩いてみる。脳内BGMは、ジョン・ケージの『4'33"』。外で飲む朝のコーヒーが旨い。


春にあれほど孤高の存在感を出していた山桜も既に冬枯れの装い。
見上げると青空にフラクタルな景色を描き出している。


手近にあった椅子に座って、遠くの近くの山を見つつ、懸案の構想を纏めるでもなく散逸させるでもなく……コーヒーの香りを楽しむボンヤリとしたひととき。

うん、この景色も悪くないな。


確実な季節の変わり目。
怒涛のスケジュールも一段落したので、気持ちを切り替えて次への仕事にかかろうか。

目線を下げて、周辺の状況から仕事の段取りを決める。現実へ。
まず割り木の整理。原土を乾かして、粘土を篩で漉してドベ鉢に。
発送案件を終わらせて、そういえば木箱がそろそろ届く頃か?……となると紙箱も仕入れなきゃな。そういえばメールのアレコレの返信も溜まっている。
割り木も頼まないとなぁ。

先程から感じるこの視線は……( ̄□ ̄;)!!  あっ、福助くんの朝御飯ね。ハイハイ。


「春の為に冬を過ごす。(≒ひきこもり)」には、まだ早いようで……。


陽差しが強くなってきた。
さぁ、BGMを切り替えてスタート!




久しぶりに鷹

2013-11-05 22:23:37 | Weblog



夕方、ジョウビタキの騒がしい声がして窓の外を見た。
普段なら一直線に飛んで行っった後は暫く姿が見えないけれど、どうも不断なく山を往復していて落ち着きがない。
「何かあったんだろうな」とは思っても観察までには至らない日常の事でもある。

普段は寝ている番犬福助くんは、山の中腹あたりに目を向けて耳をそばだてている。
犬の聴覚と嗅覚の鋭さからして何かあるのだろう。

「う~~ん」と思いつつ山に目を向けてしばし。……判らん。
諦めかけた時に、やっと判った。
森の中にトンビぐらいのサイズの白い鳥がいる。腹側が白くて足が黄色い。
タカだな。久しぶりの登場。


最近、見かけなかったけれどまた来たのか、代替わりしたのか。
しかし、木々の中にあっては迷彩色で種類の同定までには至らない。気になるぅ。

距離が遠いので肉眼では限界。(そもそも近眼)
カメラの望遠でキャッチすることにした。しかし、手近にあったカメラは10年もの。大丈夫かよ。
何せ、シャッターを押してからちょっとイラッっとするタイムラグの後に、ようやくシャッターが切れる年代ものである。
いまや携帯電話のスペックに負けている。

まずはじっとしている今と飛んでいる時がシャッターチャンス。
「飛び立つ瞬間にシャッターを切ればなんとかなるか」と思いつつ、スナイパーの如くファインダーを覗く。
数分後、前触れもなく急に飛び立つタカ。飛んでいる間に切れたシャッターは2枚だけ。




で、確認する。


はい、ノスリですな。


羽の端と中央の黒いのが特徴。

地面の一点を目掛けて飛び立ちましたが、途中から上昇。
獲物でも居たけれど逃したのかも。身を捻って方向転換する時は「カッコイイ~~」と思わず口から出ました。


ただ、別名がクソトビとは少々可哀想かつ残念な名前です。糞鳶……って。
しかもノスリとて漢字で書くと『鵟』(鳥の上に狂)だし。

あの、もうちょっと何とかなりませんでしたかねぇ……。