巣窟日誌

お仕事と研究と私的出来事

一般家庭における「間取りソフト」の功罪

2005-10-29 23:02:36 | 日記・エッセイ・コラム
家の建て替え(詳しくは「F(S)家の建て替え記録」を参照)に向けて、間取りソフトを買った。わたしが買ったのではなく家族が買ってきたのだが、「3DマイホームデザイナーPRO 4」というやつだ。一般家庭向けの「3Dマイホームデザイナー 2005」ではなく業務用を買ったのは、ITエンジニアである購入者の趣味だろう。

家を建てようという人が「間取りソフト」に分類されるソフトウェアを買うのは、ふつうはこれから間取りを決めようというときだろう。しかしわが家ではこのソフトを買った時点で、すでに間取りは9割以上決まっていた。

それでも間取りソフトを買ったのは、主に家具の配置を決めるためだ。そしてもうひとつ、家づくりにあたって、自分たちの心理的な盛り上げを図ろうという目論見もあった。なにしろ短期間で契約をしたせいか、もとから建て替えの意欲満々だった母以外は家造りに対する意欲がいまいちだ。そこで、具体的な3Dイメージでもあったら、きっとやる気が出るに違いない…

しかし、間取りが決まったあとでも、間取りソフトは有効だ。

まず、壁紙や床材などをペタペタ貼ったあと、いまある家具のうち新しい家に持っていくもののサイズを正確に測って、間取り図の中に配置する。既存の家具を間取り図の中におさめてしまえば、新しく買わなければならない家具について、どのぐらいの大きさでのようなデザインのものを選ぶべきかについての見当を、それなりにつけることができる。

家電製品などもすべて配置すれば、コンセント、テレビ用アウトレット、電話用アウトレットといったものが、どの位置にいくつ必要なのかが具体的に見えてくる。

しかし、欠点もある。

今回最大の欠点(というか失敗)は、母がわたしの作業を見ていて「どんな間取りでも、ソフトで作れるならば、実際に作ることも可能」だと思いはじめてしまったことだ。「間取りが決まる前にこのソフトを買っておけば、どんな間取りにでもできたのに」と、最初にソフトのパッケージを見て言われたときに、内心「これは厄介なことになるかもしれない」と思ったのだが、そのとおりになった。

家の間取りは、画面上(あるいは紙の上)ではどうにでもなる。しかし工法や耐震性等を考えると、実際に実現可能な間取りは限られる。しかもわが家はセキスイハイムのユニット工法で建てるのだから、制限はかなり多い。家の広さはユニットを単位として大きくしたり、小さくしたりしなければならない。が、画面上では自由に間取ったものがきちんと3Dでビジュアライズされるだけに、よけいに実現性があるものと錯覚しやすくなるのだ。

で、こんな会話が交わされることになる。

母「もう少しお金がかかってもいいから、あと20cmぐらいずつ北側と西側を広げてもらって」
わたし「そりゃあ、無理だよ」
母「なんで、できないの? このままじゃ、玄関がすごく狭いのに」
わたし「ユニット単位で増やさないと。ハイムを選んだ以上は仕方がないよ」
母「簡単に広げられないの? じゃあなんでハイムを選んでしまったんだろう。(この時点で、ハイムを選んだ理由を忘れている)」
わたし「工期の早さと耐震性で選んだんじゃじゃないの。お母さんも賛成したでしょ」
母「それじゃあ、『少しだけ広げる』ことはできないの? そんな…」

上記のような会話が繰り返され、そのたびの母は落ち込んで眠れなくなり、わたしも疲れる。どうやっても母を納得させられないからだ。

ghostとはいえ、間取りソフトは非常に役立っている。間取ったあとに立体化して、家の中をバーチャルに歩き回るのは楽しい。部屋のドアや窓だけではなく、冷蔵庫のドアまで開けることができるのには感激した。

しかし、ソフトにバグが多少はあるらしい。ダイニングのペンダントライトの上にラジカセが乗っかって、取れなくなってしまった。ペンダントランプを消去しても、ラジカセが同じ場所で空中に浮いている。

…データ上は存在しないラジカセのゴースト。ちょっとしたミステリー