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グッドモーニングショー

2016年10月18日 | 邦画(16年)
 『グッドモーニングショー』を渋谷Humaxシネマで見ました。

(1)予告編で見て面白そうだと思って、映画館に行ってきました。

 本作(注1)の冒頭では、まず東京の夜景が映り、それから午前3時に目覚ましが鳴って、澄田中井貴一)が目を覚まします。
 明かりをつけて居間に行くと、妻の明美吉田羊)と息子(弥尋)が言い争っています。
 澄田が「まだ起きているのか、どうしんだ?」と訊くと、明美は「この子が、…」と言いかけますが、「自分で言いなさい」と息子に促すと、やむなく息子は「俺、結婚するから」と答えます。明美が「お付き合いしている子に子供ができたんだって」と付け加えると、息子は「そういうこと」と言います。



 驚いた澄田は「まだ学生だろ、結婚というのは、社会人になって、胸を晴れる仕事をして、…」と言うと、息子は「そっちは胸を晴れる仕事をしてるの?朝からケーキを食べたりして」と反撃してきます。

 次の場面で澄田は、マンションの前から午前3時45分にタクシーに乗ります。
 車内の澄田に、サブキャスターの小川長澤まさみ)から電話が入り、澄田が「お早う。今日もよろしく」と応じると、小川は「いつになったら一緒に出勤できるのですか?いつ奥様と別れるのですか?私、忘れることはありません。ちゃんと話をしましょうね、これからのことを。今日の本番で話そうと思います。ちゃんと責任取ってください」と言ってきます(小川は、澄田が乗るタクシーに並走するタクシーに乗って携帯をかけているのですが、澄田は気が付きません)。
 焦った澄田は「何もしてないでしょ」くらいしか返せません。



 テレビ局に着いた澄田は、スタジオのあるフロアに入り、澄田がメインキャスターを務める「グッドモーニングショー」のスタッフらがいるラウンドテーブルの自分の席に座ります。
 皆で、放送するニュースの順番を議論しています。
 澄田は、「芸能ニュースが1番でいいんじゃないか」と意見を言ったりします。

 そこに、「グッドモーニングショー」のプロデューサー・石山(澄田と同期入社:時任三郎)がやってきて、澄田を屋上に呼び出します。
 石山は、「「グッドモーニングショー」は打ち切りだ。キャスターも変える」、「最終回は盛り上げる」と言います。澄田が「上はまだアノことを怒ってるのか?」と尋ねると、石山は「アノ時どうして本当のことを言わなかったんだ?」「報道に戻りたいのか?」と逆に聞き返します。

 こんな雰囲気で朝のTV番組「グッドモーニングショー」が始まろうとしますが、突如、品川で立てこもり事件が発生したとのニュースが飛び込んできて、慌ただしく番組の編成が変えられますが、さあ、澄田キャスターはどうなることでしょう、………?



 本作は、テレビの朝のワイドショーの裏側を、立てこもり犯に呼び出されたキャスターを主人公にしながら、コメディタッチで描いています。ただ、予告編からすると、もっと面白い仕上がりなのかなと思って期待していたところ、喜劇作品としてはイマイチの感じでした。特に、フジテレビが製作に加わり、TVドラマの脚本を多数書いている君塚良一氏が監督なのですから、もっと突っ込んだ話にすることができたのではないでしょうか?

(2)本作を見ると、すぐに、本年7月に見た『マネーモンスター』が思い浮かびました(注2)。
 同作でも、本作と同じように、TV番組司会者のリージョージ・クルーニー)がカイルジャック・オコンネル)に銃を突きつけられて脅され、番組のプロデューサー兼ディレクターのパティジュリア・ロバーツ)などがきりきり舞いさせられる様子が描かれます。

 ただ、本作が基本的に喜劇であるのに対し、同作は、司会者のリーが盛んに軽口を叩くもののコメディではなく、カイルも射殺されてしまいます。
 それに、同作の主人公・リーは、番組「マネーモンスター」の中で水を得た魚のごとく生き生きとしているのに対し、本作の澄田は、息子に言われたせいもあるのでしょうが、自分の居場所はここではないという思いにとらわれているようです(注3)。何度も、澄田が「グッドモーニングショー」を担当する羽目になった現場での失敗のシーンが挿入されたりします(注4)。

 さらに言えば、同作においてカイルが要求していることは一応はっきりしており、社会的な賛同をある程度受けられる内容であるのに対し(注5)、本作における立てこもり犯・西谷濱田岳)の要求事項は判然としません(注6)。
 そうであっても笑いつながってくればいいのですが、本作における澄田と西谷とのやり取りは、澄田が重そうな防爆スーツ(注7)で全身を覆っているせいもあり、なんだかかったるい感じのものになってしまっています。

 本作の前半において、澄田と小川とのやり取りなどなかなか面白く(注8)、この調子で後半まで行けばと思ったのですが、後半は、立てこもり事件の解決に重点が置かれてしまって、それほど面白い会話のシーンが見られず、喜劇作品と銘打つにはイマイチの感がありました。

 とはいえ、本作によって、TVに映るワイドショーの裏側でスタッフらがどのように動いているのかがわかり(注9)、また本作の制作面でいろいろ工夫が凝らされてもいて(注10)、全体としてはまずまずの作品ではないかと思いました。

(3)渡まち子氏は、「楽しく笑ったその後に、テレビや情報とは、私たちにとっていったい何だろうと、ちょっと考えてみたくなる」として65点を点けています。
 前田有一氏は、「非常に見ていて面白い映画で、とくにテレビ業界に興味がある人にはたまらない。だからこそ、もう少し完成度を高められればな、との思いはあるが、こういうことを感じるのは良作の証拠。期待して見に行って欲しいと思う」として80点をつけています。
 毎日新聞の勝田友巳氏は、「テレビの横暴さは視聴者との共犯関係だという類型的批判から一歩踏み出した、テレビの倫理を問いかける仕掛けも新鮮だ。ドタバタ劇が冗長な感もあれど、実は骨太」と述べています。



(注1)監督・脚本は、『誰も守ってくれない』の君塚良一

 なお、出演者の内、最近では、中井貴一は『柘榴坂の仇討』、長澤まさみは『アイアムアヒーロー』、志田未来は『誰も守ってくれない』(沙織役)、池内博之は『おと・な・り』、報道担当ディレクター役の林遣都は『僕だけがいない街』、吉田羊は『SCOOP!』、松重豊は 『ソロモンの偽証(後篇・裁判)』、濱田岳は『ヒメアノ~ル』、大東駿介は『TOKYO TRIBE』、グルメ担当ディレクター役の木南晴夏は『秘密 THE TOP SECRET』で、それぞれ見ています。

(注2)『マネーモンスター』についての拙エントリの「注2」で触れましたが。

(注3)もともと、澄田は報道部のエースキャスターでしたが、下記「注4」に記したような出来事があって、報道部を出て今の仕事をしているという設定になっています。
 プロデューサーの石山は、何度も「報道部に戻りたいか?」と澄田に尋ねたりします。ただ、澄田は、最初のうちは言葉を濁していましたが、立てこもり事件が解決した後は、「ワイドショーが好きだ、面白い」と答えるのですが。

(注4)台風の被害現場からの中継で、顔に泥を塗ってエヘラエヘラしている澄田が画面に映し出されてしまったのです。これに視聴者からの非難が殺到したこともあり、澄田は報道番組を降りざるを得なかったようです。ですが、これにはわけがあり、それを澄田が公表しなかったことを、新人アナの三木志田未来)が番組の中で暴露してしまいます。



 ただ、そばにいる男の子を巻き込みたくなかったからという理由は、あまり説得的とは言えないように思います。それを公表したからといって、その男の子が酷く不利な立場になるとは思えませんから。それに、この件で澄田は現場恐怖症になったとされていますが、自分の信念に従ってやったことなら、いくら批判されようともトラウマなどにはならないのではないでしょうか?

(注5)カイルは、自分の全財産を失わせたアイビス社の株価暴落の真相を明らかにせよと要求します。司会者のリーも、カイルの言うことに一理あると考え、一緒にアイビス社の社長・キャンビードミニク・ウェスト)の不正を暴こうとします。

(注6)西谷の要求は「キャスターの澄田を呼べ」というもの。澄田がやってくると、西谷は「毎朝、くだらない放送で、上から目線で偉そうなことばかり言って、全国の視聴者に謝れ」と求めます。その背景には、2年前にそのカフェで起きた火災について、当時そのカフェに努めていた西谷がやったこととされ、オーナーに解雇されてしまい、それを西谷は、澄田が担当していた番組で取り上げてほしかったにもかかわらず、そのことを書いた手紙を澄田が受け取ってくれなかった、という事情があるようです(実際には、その手紙は映画の中で開封されませんでしたから、どういう内容なのかわかりませんが)。
 ともあれ、西谷の要求するものは、全体としてごく個人的なものであり、社会的な共感を得られるものでないように思われます。

(注7)この記事によれば、澄田が着用した防爆スーツ(あるいは対爆スーツ)は約50キロの重さがあったとのこと。
 ただ、警察の特殊班は、黒岩松重豊)を始めとして皆単なる防弾チョッキを着用しているに過ぎません。あえて澄田だけに防爆スーツを着せたのは、中継担当の府川大東駿介)がおたく的に作った隠しカメラや隠しマイクをそれに取り付けることを考えたからでしょう(それを澄田に現場に持っていってもらわなければ、映画にならないでしょう)。

(注8)例えば、政治家の贈収賄事件について澄田が話した後、小川が「隠してもバレますね。隠し事なら、実は私も…」と言いかけると、すぐさま澄田が「CMです」と遮るように言ったために番組にCMが流れますが、チーフディレクターの秋吉池内博之)は、「勝手にCM入れるなよ!」と怒ります。

(注9)例えば、カンペというものはあのような位置からあのような形で出されるのか、と初めてわかりました(この記事が参考になると思います)。

(注10)例えば、コミュニケーションを拒絶するという意思表示の道具として、椅子と机を積み上げたバリケードが2度使われています。一度目は、立てこもり犯がカフェに作ったもの、もう一つは澄田の妻・明美が家のドアの後ろに作ったもの。尤も、2番目のものは、澄田の浮気に対して明美がお灸をすえるためのもので、結局は、二人で仲良く片付けることになります。
 そうしてみると、最初のバリケードも、その間からお互いが見えたり会話ができたりするのですから、完全にコミュニケーションを拒絶しているわけでもなさそうです。要するに、コミュニケーションを絶とうとしていながらも、完全には絶ち切れないでつながりを求めているというのが、この机と椅子で作られたバリケードの意味合いではないかと思えます。



★★★☆☆☆



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2 コメント

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Unknown (atts1964)
2016-10-19 09:37:03
そこそこの笑いを取り、テレビ局の裏側を描いた感じでしたね。厳しめに言うと、フジテレビの軽さが出ていたという事でしょう。
もっと深く掘り下げれないこともなかったと思いましたが、基本コメディ路線なんでここまででしょうね。
こちらからもTBお願いします。
Unknown (クマネズミ)
2016-10-19 20:38:12
「atts1964」さん、TB&コメントをありがとうございます。
おっしゃるように、「基本コメディ路線」だと思いますが、そうであれば、後半部分でもう少し笑いが欲しかったように思います。

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