映画的・絵画的・音楽的

映画を見た後にネタバレOKで映画を、展覧会を見たら絵画を、など様々のことについて気楽に話しましょう。

ゴーストバスターズ(2016)

2016年08月30日 | 洋画(16年)
 『ゴーストバスターズ(2016)』をTOHOシネマズ渋谷で見ました。

(1)予告編で見て面白そうだと思って、映画館に行ってみました。

 本作(注1)の冒頭では、男の案内人(ザック・ウッズ)が人々を引き連れて、19世紀に建てられた古いオルドリッジ邸(注2)の中を歩いています。
 案内人は、「1894年10月25日の朝のこと、朝食の支度ができていないので、主人が召使を呼んだにもかかわらず、誰も出て来ません。というのも、夜中に召使が一人ずつ殺されていたから。殺したのは、オルドリッジ家の長女のガートルード。しかしながら、主人は彼女を警察に渡さず、地下牢に幽閉しました。新しい住人が彼女の遺体を発見しましたが、以降、この地下室の扉を開けた者はいません」と説明します。
 と、突然、大きなローソクが倒れたり、ドアのノブが自然に回ったり、すさまじい叫び声がしたりします。これらは、見学者を怖がらせるために作られた装置によるもので、見学者が帰った後、案内人は装置のチェックをします。
 すると、なんだかわからない力によって案内人は壁にたたきつけられ、そこを脱出しようとして、彼は椅子を投げつけて窓を割ろうとしますが、逆にその椅子が投げ返されます。
 案内人が「やめてくれー」と叫んだところで、タイトルが流れます。

 次の場面は、コロンビア大学。
 大きな講義室で、「良い質問ね」などと呟きながら独りで講義の練習をしている物理学博士のエリンクリステン・ウィグ)。



 彼女はテニュア取得を目の前にして気分が高揚しているのですが、大学の学部長(dean)のフィルモアチャールズ・ダンス)に呼び出されて、彼女が過去に書いた本について尋ねられます。
 エリンが「何のこと?」と尋ねると、フィルモアは「君は、『過去からのゴースト(Ghosts from Our Past)』の共同執筆者では?」と訊かれます。エリンは、最初は「いいえ」と否定しますが、否定出来ないとわかると「それは友達とギャグで書いたもの」と言い逃れをします。
 ですが、フィルモアは「テニュアを取得したいのなら、もっと高名な学者の推薦をもらってほしい」と、エリンに釘を差します(注3)。
 その後、マルグレイブエド・ベグリー・ジュニア)という男がエリンのもとにやって来て、「オルドリッジ邸について調査してくれないか?」と言います。彼も、『過去からのゴースト』を手にしています。
 自分の了承解なしに本が販売されているとわかって頭にきたエリンは、共同執筆者のアビーメリッサ・マッカーシー)のいるビギンズ大学の研究室に乗り込みますが、さあ話はそれからどのように展開するのでしょうか、………?



 本作は、1984年に公開された『ゴーストバスターズ』(1989年には続編)のリメイク作。と言っても、オリジナルの4人の男性バスターを女性に置き換えた上に最新の映像技術をふんだんに取り入れてもいるために、本作だけ見てもまずまず面白い娯楽映画となっています。暴れまくるゴーストたちを新兵器を使ってやっつけるというお話は、最近見た『シン・ゴジラ』と大まかには似た設定ながら、こうしたコメディータッチの、主人公たちが目立つ活躍をする映画もまた捨てたものではないな、という感じがしました。

(2)本作は、悪人ローワンニール・ケイシー)によって解き放たれたゴーストたち(注4)を4人のゴーストバスターが倒すというストーリー。大づかみすれば、大評判の『シン・ゴジラ』に似ていないわけでもありません。

 例えば、『シン・ゴジラ』では、それまで誰も見たことがなかったゴジラが、突然東京に出現して暴れまくるわけですが、本作においても、誰もその存在を信じていないゴーストたちがニューヨークにいきなり出現するのです(注5)。

 そして、既存の組織が役に立たないところで、新しい部隊が目的を果たすという点でも類似している感じがします。
 『シン・ゴジラ』では、自衛隊や米軍がゴジラに立ち向かうものの歯が立ちませんし、本作でも、警官隊や軍隊はローワンによって動きを止められてしまい、手も足も出ません。
 それで、『シン・ゴジラ』では、「ヤシオリ」と命名された作戦により、「アメノハバキリ」という名の実行部隊がゴジラの口から血液凝固剤を流し込み、ゴジラの動きを封じることに成功します。
 他方、本作では、4人のゴーストバスターの縦横の活躍によって、ニューヨークを席巻するゴーストたちを退治することに成功します。

 とはいえ、むしろ、違っているところが多いと言った方がいいのかもしれません。
 例えば、何といっても、『シン・ゴジラ』は“リアル”さを狙った怪獣映画ですが、本作はコメディー作品なのです。
 それに、『シン・ゴジラ』では女性が印象的に描かれていると言ってもその数は少なく(注6)、登場人物の大部分は男性です。これに対し、本作のメイン・キャラクターは4人の女性のゴーストバスターであり、登場する男性はダメ人間なのです(注7)。
 また、『シン・ゴジラ』ではヒーロー・ヒロインが存在せず「集団」が描かれていますが、本作では4人の女性ゴーストバスターが大活躍します。

 さらに、『シン・ゴジラ』では一匹(頭?)のゴジラしか登場しないのに対し、本作では、最初はガートルードのゴースト1体ですが、最後には1000体以上のゴーストが出現します。

 加えて、『シン・ゴジラ』は日本政府が一丸となってゴジラに対処します。他方、本作では、ニューヨーク市長(アンディ・ガルシア)は、市民を動揺させないことを第一として、ゴーストバスターたちの動きを抑制しようとするくらいです(注8)。

 こうした本作に対して、あれこれ言い募っても何の意味もなく、楽しく見ていれば十分なのでしょう。
 ただ、例えば、
・ローワンをより存在感のある柄の大きな悪人として、名前のよく通った俳優に演じさせたら、物語に締りが出てくるのではと思いましたし、また、出現するゴーストにしても、主なものについてはそれぞれガートルードくらいの背景説明があってもいいのではないでしょうか?

・さらに、ゴーストバスターズの内、エリンとアビーについては、どういう経緯で若い時分に『過去からのゴースト』という本を書くに至ったのか、ホルツマンケイト・マッキノン)はアビーの同僚ながら、なぜ超常現象に興味があるのか、といった点についていくらかでも説明がなされていたらなと思います。



・ゴーストバスターのパティレスリー・ジョーンズ)は、オリジナル作品におけるウィンストンと同じような位置づけなのでしょう。でも、他の3人からどうも浮いている感じがします。彼女を必要としたのは、とりあえず地下鉄構内について詳しいという点なのでしょう。ですが、サブウェイゴーストを取り逃がした後はそれほど存在意義が亡くなってしまっているのではと思えるのですが(注9)。



(3)渡まち子氏は、「リケジョ(理系女子)の痛快な活躍と、ワクワクするガジェット、あくまでもライト感覚のストーリーと、夏にぴったりの娯楽作に仕上がっている」として70点をつけています。
 前田有一氏は、「「ゴーストバスターズ」には、女性が登場し活躍する必然性があるから、不自然さは感じないし、普通に楽しく見ることができる。今年の「女性推し」ハリウッドムービーの中でも、なかなかよくできた部類といえるだろう」として70点をつけています。
 真魚八重子氏は、「女優陣はアメリカの歴史あるバラエティー番組や、コメディー映画でヒットを連発する第一線のスターたち。そのため、非常にコミカルでパワーに溢れた作品に仕上がっている」と述べています。
 清水久美子氏は、「プロフェッショナルなリケジョたちの痛快なゴースト退治を見れば、暑さも吹き飛ぶくらい楽しい気分になれます」と述べています。



(注1)監督・共同脚本はポール・フェイグ

 なお、メリッサ・マッカーシーは『ヴィンセントが教えてくれたこと』、クリステン・ウィグは『オデッセイ』、クリス・ヘムズワースは『ラッシュ/プライドと友情』で、それぞれ見ました。

(注2)案内人は、「このオルドリッジ邸は、ニューヨークに現存する唯一の19世紀の建物で、外観も内部も当時のまま保存されています」などと説明します。

(注3)エリンは、既にプリンストン大学の教授の推薦状を大学側に提出しているので、フィルモアはエリンに、「そんなキワモノを出版しているのであれば、テニュア取得は難しい」と言っているも同然なのでしょう。

(注4)劇場用パンフレット掲載の「ローワンの巨大マシーン」についての解説によれば、レイライン(地球上を走る未知のエネルギー・ライン)の交点(パワースポット)に建てられたホテル「メルカド」の従業員になりすましているローワンが、ホテルの地下に大型核装置を設けています。そして、ケヴィンに憑依したローワンがこの装置を爆発させることによって、沢山のゴーストが空中に放たれます。

(注5)それでも、『シン・ゴジラ』における尾頭・環境省自然環境局野生生物課長補佐(市川実日子)と同じように、本作でも、アビーと同僚のホルツマンとはずっと超常現象を研究し続けていました。

(注6)『シン・ゴジラ』に関する拙エントリの(2)の「イ」をご覧ください。

(注7)4人のゴーストバスターが設立する調査会社の受付となるケヴィンクリス・ヘムズワース)は、満足に電話の応対ができないほどのダメ人間として描かれています。



 例えば、ケヴィンが「職場に「my cat」を連れて来てもいいかな?」と尋ね、アビーが「私、少々猫アレルギーなんだけど、ここにおいてもいいよ」と答えると、ケヴィンは「僕は猫なんか飼ってない。犬なんだ。名前が「 My Cat」」と答え、アビーが「犬の名前が「My Cat」」と驚くと、ケヴィンは「「Mike Hat」だ。正式には「 Michael Hat」」と涼しい顔で言うのです。

(注8)モット違いを言えば、「核」についてです。
 『シン・ゴジラ』では、国連安保理の決議に従って熱核兵器が使われることになっていましたが、「ヤシオリ作戦」の成功により、結局のところ核兵器は使われませんでした。
 他方、本作では、ローワンによって作り出された巨大な渦(あちら側の世界とこちら側の世界を結ぶ通路上に出現)を潰すために、ゴーストバスターたちは、自分らが使う車「エクト・ワン」の屋根に取り付けられていた核爆弾を車もろともその渦に投げ込みます(核兵器が使われたことになるでしょう)。
 総じて、本作では、いとも簡単に核兵器が入手できるように思われます(なぜ、エクト・ワンに熱核兵器が積み込まれているのでしょう?どうやって、ゴーストバスターたちはそれを入手出来たのでしょう?また、ローワンは、ホテルの地下に「大型核装置」を設置しただけでなく、他にも「ヘルメット型核爆弾」も持っているのですが、これらはどのように確保できたのでしょう?)。

(注9)さらに言えば、ホルツマンが作り出す様々な武器(プロトンパックとかプロトンブラスター、捕獲ユニットなど)が、どんな原理でゴーストを倒すことができるのか、もっともらしいことで構わないのですが、説明が与えられたらなと思いました。



★★★☆☆☆



象のロケット:ゴーストバスターズ(2016)