孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

新技術の話題 「道路をまたぐバス」「セックスロボット」「自動運転車」

2016-08-06 22:11:57 | 世相

(巴鉄(はてつ)1号と名付けられた立体バスの試作車 自動車は「バス」の下をくぐりぬけて走ります 【8月5日 Newsweek】)

【「現在の車両でカーブを曲がれるかどうかは不明」だが、とにかく試験走行実施
4月15日ブログ「サウジアラビア  変わる社会? エジプトとの間で「紅海に橋を建設」で合意 ついでに領土問題も」http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20160415で、余談として、中国の世界一長い橋「丹陽-昆山特大橋」(全長165km)や「青島膠州湾大橋」(海上部分約27km)に触れたことがあります。

安全性、環境への影響、住民との問題、経済効率等々、いろんなことはあるのでしょうが、(中国経済崩壊の危険性とか、社会が抱える様々な深刻な問題といった話はさておき)こうしたものを作ってしまう中国経済・社会の活力というか、バイタリティーというか、かつて黒四ダムなどに挑戦していた日本社会が失いかけているものを感じます。

日本は東京五輪のスタジアム建設で揉めている状況ですから。もちろん、それは社会の成熟を示すものでもあり、なんでもかんでもつくればいい・・・という話ではありません。物事にはすべて功罪の二面性があります。

ただ少なくとも、中国の技術水準にについて、「パクリ」「安全性無視」云々の悪いイメージが先行しますが、それだけでもないことは留意する必要はあるでしょう。

そんな中国らしさを感じさせる「新技術」が「道路をまたぐバス」の話題。

****道路をまたぐバス」、中国で、試験走行を実施****
交通渋滞を緩和させる目的で、複数車線をまたぐ立体構造の大型バス「トランジット・エレベーテッド・バス」(TEB)を走らせる構想が、中国で進められている。

このほど試験車両「TEB-1」が完成し、テスト走行を行った。中国国営の新華社通信が8月2日に報じ、米ニューズウィークをはじめ多くの国外メディアも取り上げている。

1台で300人を輸送
報道によると、TEB-1は1両のみの編成で、全長22メートル、全幅7.8メートル、車高4.8メートル。上部の車内には300人の乗客を収容できるという。
 
下半分はトンネル状になっているため、前方の道路が渋滞していても、TEBは止まらずに運行できる。逆に、利用客の乗降時にTEBが停車しているとき、後続の乗用車は車線を変更することなく車体の下を通り抜けられる。
 
TEB-1の試験運行は、河北省秦皇島市で実施された。今回は300メートルの直線道路に設置された軌道の上を走行。なお、現在の車両でカーブを曲がれるかどうかは不明だという。

渋滞を30%緩和、建設費は地下鉄の5分の1
TEBテクノロジー社でチーフエンジニアを務める宋有洲(ソン・ヨウジョウ)氏は、「TEBは交通渋滞を30%緩和できるうえに、建設費も地下鉄を新設する費用の約5分の1で済む」と主張している。
 
TEBの構想は2010年、北京国際ハイテクエキスポで披露され、国際的に広く知られるようになった。新華社によると、ブラジル、フランス、インド、インドネシアの政府がすでにTEBに興味を示しているという。
 
ニューヨークタイムズは5月に掲載した記事で、TEBテクノロジーが秦皇島市のほかにも、南陽、瀋陽、天津、周口の4市と、軌道の敷設を含む試験プロジェクトを実施する契約を結んだと伝えている。【8月5日 高森郁哉氏 Newsweek】
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建設期間も地下鉄が5〜6年かかる距離を巴鉄は1年もあれば完成でき、また、クリーンエネルギーを動力として使い、ガソリンを使うバス40台分のエネルギーが節約できるとも。

小池東京都知事は総2階建て車両(駅のホームも2層化)で「満員電車ゼロ」を提唱されていますが、それ以上に非常に大胆・ユニークな発想・技術です。

何がすごいといって、「現在の車両でカーブを曲がれるかどうかは不明だという」という試作品をとにかく作ってしまうところがすごいです。

実現可能性は今後の話ですが、今日はそうした「新技術」の話題から。

【「人工知能が人の命を救った国内初のケース」】
AI(人工知能)については、数十年前から期待されてきましたが、囲碁の名人に勝てるようにもなって、ようやく実用化の兆しも出てきたようです。

****人工知能 病名突き止め患者の命救う 国内初か****
東京大学医科学研究所が導入した2000万件もの医学論文を学習した人工知能が、専門の医師でも診断が難しい特殊な白血病を僅か10分ほどで見抜き、治療法を変えるよう提案した結果、60代の女性患者の命が救われたことが分かりました。

人工知能は、このほかにも医師では診断が難しかった2人のがん患者の病名を突き止めるなど合わせて41人の患者の治療に役立つ情報を提供していて、専門家は「人工知能が人の命を救った国内初のケースだと思う」と話しています。(中略)

このうち60代の女性患者は当初、医師から「急性骨髄性白血病」と診断されこの白血病に効果がある2種類の抗がん剤の治療を数か月間、受けましたが、意識障害を起こすなど容体が悪化し、その原因も分かりませんでした。

このため、女性患者の1500に上る遺伝子の変化のデータを人工知能に入力し分析したところ、人工知能は10分ほどで女性が「二次性白血病」という別のがんにかかっていることを見抜き、抗がん剤の種類を変えるよう提案したということです。

女性は、治療が遅れれば、免疫不全による敗血症などで死亡していたおそれもありましたが、人工知能が病気を見抜いた結果命を救われ、無事退院しました。

こうした病名の診断は、現在、複数の医師が遺伝情報のデータと医学論文を突き合わせながら行っていますが、データが膨大なため必ずしも結論にたどり着けるかどうか分からないということです。(中略)

こうした医療分野での人工知能の活用はアメリカで先行していて、すでに複数の病院で白血病や脳腫瘍の治療の支援などに使われています。

広がる活用
人工知能の活用は、自動運転などの注目技術に加え、企業の人事や経営判断、絵画や小説といった創作活動など幅広い分野に広がろうとしています。

このうち自動運転への応用については、トヨタやホンダが人工知能専門の研究拠点を設けるなど、実用化に向けた動きを本格化させているほか、開発をリードするアメリカでは運輸省が人工知能をドライバーとみなす判断まで行い、人工知能を受け入れる環境の整備も進み始めています。

また人工知能は、将来的には私たち一人一人の仕事にも大きな影響を及ぼす可能性が指摘されています。

10年から20年後には今、日本で働いている人の49%の職業が、機械や人工知能によって代替が可能になるとする報告もあり、すでにコールセンター業務の支援など一部の業種への導入が進められているほか、採用活動など企業の人事や、経営判断にまで人工知能を活用する計画もあります。

さらにこれまで機械が人に代わって行うのが難しいとされてきた、「創造力」の世界にも人工知能の波は押し寄せています。囲碁では、プロ棋士に勝利したほか、絵画などの芸術作品から小説の執筆に至るまで、その活用の可能性は広がりつつあります。【8月4日 NHK】
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医療など専門知識をサポートする技術としてのAI利用は、それこそ数十年前から提唱されてきましたが、今になってようやくその「活躍」が報じられるということは、逆に言えば、それだけ実用化が難しいということでもあるでしょう。

体調が悪いとき、その症状をネット検索すると、いかにもそれらしい難しい病気がたくさん出てきますが、実際は翌日になったら症状はなくなっている・・・というのはよくある話です。

単に、そうした症状をインプットすれば病名が決まるという話でもありませんので、素人がAIに相談して診察してもらう・・・というのは、まだ遠い先の話でしょう。

【「セックスロボット」】
身近な生活場面でAI技術の活用が「期待」されるのはロボットへ応用でしょう。
下世話な話で恐縮ですが、男性としては「セックスロボット」というのはやはり興味をひかれます。

****セックスロボット】数年以内に「初体験の相手」となるリスク、英科学者が警鐘****
英シェフィールド大学で人工知能(AI)とロボット工学を専門とするノエル・シャーキー名誉教授が、数年以内に普及するセックスロボットが青少年の「初体験の相手」になる場合、深刻な悪影響を及ぼすとして警鐘を鳴らした。

10代の人間関係に悪影響を及ぼす
シャーキー教授は、チェルトナム科学フェスティバルの「Robots: Emotional Companions?」(ロボットは心の友?)と題された討論会に登壇。セックスロボットの分野が適切に規制されない場合、「10代の若者がヒューマノイドを相手に童貞や処女を失うリスクがある」と訴えたと、英テレグラフなどが報じている。

かつて国連のロボット工学顧問を務めたシャーキー教授によると、韓国と日本の少なくとも14社が、「子供の世話」用のロボットを製造販売。セックスロボットの性能が向上すれば、数年以内に同分野へ参入する可能性が高いという。

なお、以前に「年内にも発売されるセックスロボット、英研究者が禁止を呼びかけ」という記事で取り上げた米新興企業トゥルーコンパニオンの女性型「Roxxxy」(ロキシー)と男性型「Rocky」(ロッキー)は、現在それぞれ9995ドル(約104万円)で販売されている。今後参入するメーカーが増えれば、当然価格は下がっていくだろう。

同教授はこう述べている。「私が心配するのは、本質的に中身がコンピューターの相手と、人々が絆を感じたり関係を持ったりすること。もしそれが、性的な初体験の相手だったら? 反対の性に対してどう考えるようになる?」(後略)【6月17日 Newsweek】
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個人的には、およそ人類の歴史は、必要性の問題がクリアされるにつれて、群れ社会から大家族、核家族と次第に小規模化し、現在は「結婚しない若者」なども増え、将来的には「個人」に細分化していくのではないかと考えています。

その流れにおいて「セックスロボット」は当然に出現しますが、将来的に高度なAIを備えた「セックスロボット」が実現すれば「家族の崩壊」を加速させることにもなるのではないか・・・とも考えています。「東京エレキテル連合」の「朱美ちゃん」ですね。当然、セックスだけでなく、話し相手にもなり、家事もこなすアンドロイドです。

もちろん「ロボット」相手の“人間関係”の問題性は多々ありますが、なんだかんだ言っても生身の人間を相手にするより楽ですから。

おそらく、いろんな問題があっても“果敢に挑戦する”というか、“儲かるなら何でもつくってしまう”中国あたりが大量生産してくれるのではないでしょうか?

【「AIの暴走・反乱」は?】
そうなると、当然のごとく出てくる問題が「AIの暴走・反乱」の話です。

****グーグル、人工知能の暴走を阻止する「非常ボタン」を開発中****
人工知能(AI)が人類の敵になることへの懸念を表明する著名人が増えている。

こうした懸念に応え、グーグルは、AIが人類に反逆しそうな場合に人為的な操作で回避する「非常ボタン」のような仕組みを開発中だと発表した。(後略)【6月10日 Newsweek】
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ただ、進化したAIが素直に「非常ボタン」でストップされるのを座視するだろうか・・・という点については、“将来的にAIが非常ボタンを無効化する方法を学習しないよう、手動による中断操作を偽装して、AIが自らの判断で挙動を変更したように「思い込ませる」仕組みについても説明している。”【同上】とも。

それで“謀反を起こした”AIに対抗できるか・・・・SF小説・映画の世界の話が現実のものになるかも。

【「自動運転」車に問われる「究極の選択」】
すでに実用化テストが始まっている技術が「自動運転」
今後、高齢化社会がどんどん進みますので、高齢者ドライバーの事故を防ぐためにもぜひとも実用化が望まれる技術です。

「自動運転」技術については、5月に「テスラ」の自動車が高速道路を自動走行中に、側道から出てきたトレーラーと衝突し、運転手が死亡した事故が注目されました。

ただ、この「テスラ」に関しては、そもそも「自動運転車」ではなく、ハンドルから手を放すことに問題があるとも指摘されています。

****死亡事故のテスラは自動運転車ではなかった****
<事故で死亡したドライバーが乗っていたテスラ車は「運転支援」は搭載しているが当局規定の「自動運転車」ではない。例え運転支援機能があっても、ドライバーは注意を怠ってはならないし、この事故によって自動運転の開発が滞ることもあってはならない>

今年5月にフロリダ州で発生した交通事故で、運転支援機能が搭載されたテスラのセダンのドライバーが死亡していたことについて、多くのメディアが「自動運転で初めての死亡事故」と報道した。

ここで理解しておかなくてはならないのが、事故にあったテスラは自動運転車ではないことだ。アメリカ運輸省高速道路交通安全局(NHTSA)が「レベル4」や「レベル3」と区分している自動運転車、つまり「走行中に、安全上必要なすべての動作を自動で行う」ものでも、「特定の状況で、安全上必要なすべての動作を行う」ものでもない。

「手を離していい」故の勘違い
このテスラに搭載されていたのは「高度運転支援システム(ADAS)」という機能で、走行中のハンドルや速度の調整は自動で行うが、ドライバーは安全確認を継続しなければならない。

これはNHTSAの区分では、運転中の主要な動作を少なくとも2つ自動で行う「レベル2」に区分され、テスラの場合、前の車への衝突を回避する「クルーズ・コントロール」と車線の外に出ていかないようにする「レーン・センタリング」機能のことだ。

BMWやメルセデス・ベンツなど他の自動車メーカーもこれらの運転支援機能を搭載した車を販売している。しかし他社は、ドライバーが数秒以上ハンドルから手を離すことを許していないが、テスラはそれを許している。

このためテスラのドライバーは、自分の車が「特定の状況で安全上必要なすべての動作を自動で行う、レベル3」の自動運転車だと勘違いしてしまうのだろう。(後略)【7月8日 Newsweek】
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それはともかく、「自動運転」技術に関して興味深いのは、事故回避に係る「究極の選択」についてです。
前方に多くの歩行者がいて、事故を避けるためには自分が道路から飛び出して木に激突するしかない・・・という場面です。

そうしたケースにどのように「自動判断」するかをプログラミングしておく必要があります。

「そのまま突っ込んで大勢を跳ね飛ばすべきか(その場合、運転者は助かります)、それとも車が木にぶつかって大勢を救うべきか(その場合、運転者は死亡します)」と訊くと、多くのひとは「自動運転車が木にぶつかる形で事故回避すべき」と答えるそうですが、「では、そのようにプロミラミングされた車を買いますか?」と訊くと「・・・・・」という話です。

*****歩行者とドライバー、自動運転車はどちらを守る*****
<自動運転は交通事故死を減らせる「夢の車」かもしれないが、歩行者と搭乗者のどちらの人命を守るべきかという究極のジレンマも突きつけている>

道路を走る自動運転車の前に突然、数人の歩行者が現れた。ここでの選択肢は2つ。歩行者の間に突っ込むか、それとも進路を変えて木に激突し、車に乗っている人を死なせるか。

これは先月末、科学誌サイエンスに発表された「自動運転車の社会的ジレンマ」と題する研究論文の質問だ。この調査に協力した人々は、車に歩行者を守る選択をしてほしいと答えた。

でも、車に乗っているのが自分だったら......。この自己防衛本能が社会的ジレンマを生み、さらに新たな輸送技術の導入を遅らせ、防げるはずの何十万もの交通事故死につながる可能性があると、論文は指摘する。

「多くの人は、事故の犠牲者数を最小限に抑える車のほうがいいと考えている」と、論文の共著者であるマサチューセッツ工科大学(MIT)のイーヤド・ラーワン准教授は述べる。「しかし誰もが自分の車には、どんな犠牲を払っても自分を守ってほしいと考えている」(後略)【7月22日 Newsweek】
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人間の行動は曖昧で、非論理的で、場当たり的です。そうした人間の行動をAIで代用しようとするといろんな問題が浮かび上がってくるようです。「人間とは何か」が問われることにもなります。
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