孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

急拡大する太陽光発電  固定価格買い取り制度(FIT)見直しの動きも

2014-10-01 22:40:43 | 原発

(昨年11月から稼働している「鹿児島七ツ島メガソーラー発電所」 桜島を望む錦江湾に29万枚の太陽光パネルを敷き詰め、広さは東京ドーム22個分にも及び、発電能力は70メガワット。国内最大規模でしたが、これを上回る規模のものが次々に建設・計画されているようです。 そういう大規模施設が比較的簡単にできてしまうというのも太陽光発電の大きな利点でしょう。写真は【2013年8月26日 NEWSポストセブン】)

太陽光発電急拡大で需要を上回る 問題も露呈 買取中断へ
原発が稼働停止している現在、電力が足りずに停電するかも・・・といった議論がなされていましたが、実際はむしろ余る電力をコストの面も含めてどういたらいいか・・・というのが緊急の課題で、しかもその有り余る電力の原因は、普及が遅れているというイメージがあった太陽光発電の急増にあるとのことです。

個人的には、非常に意外な感じがしたニュースでした。

****九電、再生エネ買い取り事実上中断へ 太陽光発電急増で****
九州電力は、民間業者などが太陽光など再生可能エネルギーで発電した電力の受け入れを一時「保留」として、事実上中断する検討を始めた。九州では太陽光発電が急増し、電力の安定供給に支障が出かねないためだ。九電は7月下旬に一部の離島で受け入れ中断を決めたが、その範囲が九州全域に広がる可能性が出ている。

民間業者や個人が太陽光や風力などで発電した電力は、国の固定価格買い取り制度(FIT)に基づき電力会社が買い取る。自然エネルギー普及のため買い取り価格は比較的高めで、民間業者が相次いで太陽光発電などを導入している。

なかでも土地が安く日照時間が長い九州は、太陽光発電が盛んだ。九電管内の太陽光発電の出力は7月末時点で339万キロワット。九電は2020年度に600万キロワットになると見込むが、足もとではそれを上回るペースで増えている。九電のピーク需要は1500万~1700万キロワット程度で、太陽光発電の割合は今後高まる可能性が高い。【9月20日 朝日】
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この問題は、“土地が安く日照時間が長い”という地域特性ある九州で一番顕著ですが、基本的には他のエリアでも同様の問題があります。
九州以外にも、北海道、東北、四国でも認定された再生可能エネルギーの発電能力が電力消費が少ない期間の最小需要を上回っているとのことです。

****再生エネ、送電網ネック 急増に対応できず 新規契約停止****
太陽光発電などを後押しする固定価格買い取り制度(FIT)の導入から2年余り。課題が一気に噴き出した。

予想を超える太陽光の急増に、電力各社の送電網の能力が対応しきれていない。国も対策に乗り出したが、すぐに打てる手は限られ、混乱は避けられそうにない。

「電力の安定供給に支障が生じる可能性がある」
「大規模な停電になる恐れがある」

30日の経済産業省新エネルギー小委員会。北海道と九州、東北、四国、沖縄の各電力の担当者は、緊急事態であることを口々に訴えた。

沖縄を除く4社は、FITで認定した再生エネの発電能力が管内の電力需要を上回る時期があり、需給のバランスが崩れかねないことに危機感を抱く。

太陽光が急増した背景には、投資対象としての魅力がある。
買い取り価格は、普及を後押しするため費用に一定の利益が上乗せされている。事業者は高値で20年間売り続けることができ、利益を確保しやすい。風力や地熱より環境影響調査などの手続きの手間が少ないことも後押しした。

太陽光の発電量は日照時間や季節で変わる。広大な敷地を、安く確保する必要もある。条件を満たすエリアは大都市圏より地価が安い地方に集まってしまう。

だが、どこで発電をするかは事業者任せ。
経産省は、送電網の能力などに合わせて、再生エネを地域ごとに計画的に普及させる枠組みを設けず、結果的に地域の偏りをつくってしまった。
電力会社も多額の費用がかかることなどから電力会社間の送電網の増強を進めてこなかった。

FITで認定済みの設備がすべて運転を始めると、再生エネは発電電力ベースで10・7%から19・8%に上がり、政府目標の約2割を超える水準に近づくが、このままでは「絵に描いた餅」だ。

 ■容量拡大策を検討
経産省も対策に乗り出した。この日の小委では、電力会社が持つ送電網に、どこまで再生エネを受け入れられるのかを検証する作業部会の設置を決めた。メンバーには、専門知識を持った中立的な専門家5人ほどが選ばれる。

10月中に初回会合を開き、年内に電力各社の再生エネの受け入れ可能な容量を検証し、複数の案を示す方針だ。容量を超えた再生エネの電力を他電力に流して送電網の周波数を安定させる広域連携などの工夫は、すぐに効果が出るため、そうした受け入れ拡大策の効果も話し合う。

電力業界からは「抜本的な解決にはならない」との声もあがる。むしろ、FIT制度自体の見直しが必要だとの認識が広がっている。
このまま、新規契約の中断が続けば、これから申請を予定していた発電事業者とのトラブルになりかねないためだ。

九電では新規契約の中断を発表した24日から3日間で、太陽光発電を計画する業者などから「保留対象かどうか」といった問い合わせが約5900件あったという。

再生エネの買い取りに伴って利用者の負担が増えていく問題もある。
経産省は、再生エネの認定量がすべて稼働した場合、電気代に上乗せされる再生エネの賦課金は、いまの年6500億円から2兆7018億円に増え、1世帯当たりの月額負担は225円から935円になるとの試算をまとめた。

今後、こうした面からの見直し論も本格化する可能性がある。【10月1日 朝日】
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FIT見直し
問題の根幹にあるとされている固定価格買い取り制度(FIT)も見直しの方向です。

****再生エネルギー買い取り制度、年明けにも見直し****
政府は、太陽光や風力などの再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度を年明けにも見直す方針を固めた。

大規模太陽光発電所(メガソーラー)で作った電気の買い取り価格が決まる時期を、現在の「国の事業認定時」から、「事業開始時」に改める方向だ。政府は買い取り価格を年々、安くしており、価格決定時期を先に延ばす。

2014年度は、10キロ・ワット以上の太陽光発電なら1キロ・ワット時あたり約35円で、電力会社が20年間ずっと買い取る仕組みだ。買い取り価格が下がる前の年度末に認定の申し込みが増えて、利用者の負担増大につながっているため、価格を決める時期を見直す必要があると判断した。

電力会社は買い取り費用を家庭や企業の電気代に上乗せして回収している。経済産業省が30日に発表した試算によると、現状の仕組みが続けば、電気代に上乗せされる利用者の負担額は年間2・7兆円、国民1人あたりで約2万円になる。制度を見直せば将来の負担額の上昇を抑えられる。【10月1日 読売】
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太陽光発電のような再生可能エネルギーをどのように位置づけるかは、国のエネルギー戦略の基本であり、本来は民間企業の事情で買取を中断したり、変更したりするようなものでもありません。

ただ、日本の場合、原発再稼働問題に関する国民のコンセンサスがはっきりしない状態で、太陽光発電・FITの扱いもなし崩し的な感もあります。

この太陽光発電などを後押しする固定価格買い取り制度(FIT)のもたらす問題は、脱原発を進めるドイツですでに表面化しています。

おそらく、日本の電力会社や政府も、ドイツのそうした動きを念頭に置いての今回の対応でしょう。
なお、脱原発を進めるドイツでは、今年上半期の総発電量に占める再生可能エネルギーの割合が過去最高の28.5%に達しています。

****脱原発の“不都合な真実”:ドイツの実態に目を向けよ****
偏向した情報を伝える日本の報道、議論すべきは最善のエネルギーミックス

8月1日、ドイツでは、改訂版の再生可能エネルギー法(以下「再エネ法」)が施行された。

昨年12月に第3期メルケル内閣が立ち上がって以来、ガブリエル経済・エネルギー大臣が、わき目もふらずに推し進めていた改訂だった。

現在、ドイツはメルケル首相のCDU(キリスト教民主同盟)とSPD(社民党)の大連立で、SPDの党首ガブリエル大臣は、副首相、そして、経済・エネルギー大臣を務めている。言うまでもなく、再エネ法の早急な改訂は、ドイツ国にとって、危急の重大事項であった。

ドイツが再生可能エネルギー法の改訂を急いだ理由
再エネ法というのは、ドイツの脱原発の一番の要となる法律だ。なぜか? それは、この法律が、再エネ電気の“固定価格20年間全量買い取り(FIT)”を定めているからだ。

再エネ法が制定されたのは2000年。ちょうど、シュレーダー首相の下、SPDと緑の党が政権を握ったときだった。以来、この“固定価格20年間全量買い取り”によって、再エネの発電施設はどんどん増えた。

特に急増したのが太陽光発電の施設で、この14年間で、発電容量は90メガワットから3万6008メガワットと400倍に伸びた。しかし、太陽光発電の稼働率はわずか9.5%なので、実際、全体の発電量に占める割合はまだ5%弱に過ぎない。

また、風力発電も急増し、再エネは、容量だけで見れば、すでにピークの電力需要を上回る巨大施設となっている。純粋に設備を増やすという意味合いから見れば、再エネ法は偉大な功績を果たした。

ただ、今では、再エネ法の欠点も多く露出してきている。欠点が無ければ、もちろん、ガブリエル大臣がこれほど慌てて改訂に走る理由もなかった。(中略)

不都合の1つは、電気代の高騰だ。

「再エネはすでに世界の多くの地域で最もコストの安い発電方法」と言っている人がいるが、これは正確ではない。太陽や風は確かに無料だが、しかし現実には、ドイツ政府は電気代高騰を抑えるため、再エネの拡大にブレーキを掛けなければならなくなっている。(中略)

なぜ、再エネが増えて電気代が高騰したかの理由は、言うまでもなく、再エネに掛かっている“固定価格20年間全量買い取りの補助金”が膨れ上がってしまったからだ。

しかも、今までの再エネ法には施設拡大の上限もなく、いくらでも増やせた。だからこそ再エネは増えたが、しかし、安い電気代からはかけ離れたものになった。

反対に、この補助金なしでは、再エネがこれほど増えることもなかっただろう。再エネは、補助金なしで普及し、市場で競争できるところまで、まだ進化していない。

電気代高騰、滞る送電線建設、増加するCO2・・・
電気代高騰の原因は、太陽光と風力による発電が計画的に制御できないために起こる。太陽光は曇りや雨の日はもちろん、夜は絶対に発電できないし、風には凪がある。

反対に、需要がないのにたくさん電気ができてしまうこともあるが、その場合、蓄電ができない。そうなると、しかたなく捨て値、あるいは持ち出しで、隣国に買ってもらうことになる。

生産者は、電気の卸値が安くても、固定価格で全量を20年間にわたって買い取ってもらえるのでどんどん発電する。その買い取りのお金は、一般消費者の電気代に乗っている。買い取りと卸値の差額は、電気がだぶつくとますます増える。

だから、いずれにしても電気代は上がり、つまり、損をするのは一般国民ということになる。別にむずかしい話ではない。

ただ、この問題は、蓄電ができればある程度片付くはずだ。だから、現在、ドイツはその研究に余念がない。しかし、まだ、大量の電気を蓄電できる採算の取れる技術は確立していない。まもなくできる見込みもない。(中略)

法律の改訂で買い上げ値段を下げても、すでに設置されている施設に対しては既定の額を払い続けなくてはならないから、すぐに電気代は下がらない。

また、送電線の建設がほとんど捗っていないことも、日本ではあまり報じられない。
来年はいよいよ、バイエルン州のグラーフェンラインフェルトの原発が停止される予定だが、その代替となるのは、北部ドイツの風力電力ではなく、近隣の火力電気になる。というのも、北から南に電気を運ぶ送電線の建設が整っていないからだ。

原発は、その後、17年と19年にさらに1基ずつ、21年と22年に3基ずつと、あと8年ですべて停止することになっている。それまでには、再エネの生産量はもっと増えているだろうが、送電線の建設は間に合いそうにない。だから、実際に原発を代替するのは再エネではなく、火力発電になるだろう。

それを見越して、ドイツではこの2年の間に10基の石炭火力発電所が建設される予定だ。すでに今でも、経営が苦しくなってしまった電気会社は、高いガスではなく安い石炭を使っているので、CO2の排出が増えている。

褐炭(石炭よりももっと空気を汚す)の消費は、東西ドイツが統一した1990年と同じ水準まで戻ってしまった。ドイツの脱原発の進捗具合については、こういう全体図を見る必要があるのではないか。(後略)【8月20日 フォーサイト 川口マーン 惠美氏】
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ドイツの法改正は、これまでの固定価格買取の対象となる発電設備を段階的に減らし、「フィードイン・タリフ(FiT)」から「フィードイン・プレミアム(FiP)」と呼ばれる助成方式(簡単にいえば、発電事業者は電力を自ら市場で販売し、その売上に一定の助成金が上乗せされるシステム)に近づけていくというものです。

その評価については、上記記事とは異なる評価もあります。

【「自然エネルギーつぶし」の批判も
また、日本の固定価格買い取り制度(FIT)見直しについては、電力会社・政府の“原発再稼働ありき”の発想に基づく「自然エネルギーつぶし」ではないかとの批判もあります。

****原発偏重 安倍政権下で進む自然エネルギー“つぶし*****
原発再稼働へ向けて、なりふり構わず突き進む安倍政権。経済産業省、電力会社と一体となった「原子力ムラ」連合にとって、太陽光などの再生可能エネルギーは“邪魔者”に過ぎないようだ。

ジャーナリストの桐島瞬の取材で、固定価格買い取り制度(FIT)の見直し論の裏に、「自然エネルギーつぶし」の思惑が浮かび上がってきた──。

太陽光発電は、二酸化炭素排出を減らすため、09年から余剰電力買い取り制度(12年からFITに移行)の名前で電力会社による購入が行われてきた。

当初の買い取り価格は1キロワット時当たり最高48円。現在は最高で37円まで下がったが、太陽光発電が急激に拡大したのはこの制度のおかげだ。

だが、「さらなる電気料金の値上げにつながる」と経済界から見直しを求める声が上がり、経産省は総量規制の導入などを検討しているという。

「買い取る上限を設け、一定量を超えた場合に自由に価格を決められるようになりそうだが、太陽光発電には特に厳しい制限が設けられる見込みです。枠を超えた部分は価格を大幅に引き下げたり、1年に何度も価格改定できるようにすることも検討される」(経産省関係者)

だが、今の時点の総量規制は技術革新を鈍らせると、自然エネルギー財団の大林ミカ氏は言う。
「日本の1キロワット時当たりの買い取り価格が高いのは事実ですが、送電設備の整備が進み、運転開始できていない人たちが市場に参入してくれば、コスト低下も促します。事実、ドイツでは、すでに大規模発電の太陽光で13円まで下がっています」

さらに大林氏は、このタイミングで総量規制の導入論が出ていることについてこう語る。

「初めから落としどころを決めて議論を進めようとしているのではないかと懸念しています。その証拠に、政府の検討委員会では総量規制という議論は出ていないのです」

前出の環境エネルギー政策研究所の飯田哲也氏も言う。

「毎年の市場規模を安定化させるための総量規制であれば良いが、全体の枠を決めるものであれば許されません。もしそうなら原発の再稼働が前提にあると言えるでしょう。大体、電力会社が送電線を持ち、発電をし、売電もする現状では市場原理が働いていない。そこが価格を決めるとしたらおかしな話です」【7月31日 dot】
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再生可能エネルギーにどう対応するかは、原発にどう対応するかということと表裏の関係にもあります。

米クリントン政権時代の副大統領で、気候変動問題への貢献で2007年のノーベル平和賞を受賞したアル・ゴア氏は、朝日新聞のインタビューで原発について以下のように語っています。

「個人的には、原子炉を安全に制御し、使用済み燃料も安全に保管できるようになると信じている。しかし、最大の問題は年々増え続けるコストだ。一方、太陽光発電のコストは下がっている。この先も原発は一定の役割を果たすと思うが、熱狂的な支持者が信じるよりも小さな役割にとどまるはずだ。」【10月1日 朝日】

私個人の考えとしては、原発に関して巨大噴火を持ち出すような安全性議論はややリスクに関する常識的なバランスを欠いているような違和感を感じます。

ただ、使用済み燃料をどうするのかは、特に日本のような世界有数の地震国では難しい問題です。
コスト的にも、そうした膨大な使用済み燃料の保管費用、廃炉費用を考えて検討すべきでしょう。

そのうえで、再生可能エネルギーも重要なエネるギーミックスのひとつであり、せっかく大きくなりかけている芽をつぶさないような、うまく育て活用する方策が望まれます。送電網にしても電力会社の姿勢の問題もあるでしょう。

原発も、再生可能エネルギーもという“いいとこ取り”では答えにならないでしょうが。

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2 コメント

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Unknown (きっど)
2014-10-05 16:15:18
はじめまして
さて、太陽光発電ですが、安定して発電できないのでは、いくら発電能力が有ろうと無意味、いや害悪です。
貯金せずにギャンブルで生計を建てるようなものです。その尻拭いを、安定的な発電が可能な火力で補っているのです。
これでは何時までたってもCO2の排出は減らず、地球は温暖化し、南方の病気が北上し、蚊に怯えて暮らさなければならないようになるのです。
現状の太陽光発電では、安定的な発電が可能な火力・原子力の足元にも及ばないのです。発電コスト云々以前の問題です。
また、送電分離を行ったところで発電部門ばかりに集中するのは目に見えていますので、送電設備は老朽化し、アメリカのように停電が頻発するようになるのでしょう。旧軍は補給を軽視したと嘲う資格は有りません。
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Unknown (Unknown)
2014-10-06 19:47:05
ドイツのケースでもうひとつ忘れてはならないのは、
電気代の高騰でやっていけなくなった国内工場がどんどん隣国のチェコに移転し、チェコではその電力を賄うために、
原発が相次いで建設されているという事実でしょう。
ドイツ人は働き口と安い電力を失った上に、
原発の維持管理を自分たちで行う権利すら失いました。
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