孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

高まる「核戦争」のリスク 軍拡競争は「スターウォーズ」時代へ 絶え間ない新兵器開発

2019-06-23 22:15:13 | 国際情勢

(【623日 NHK】 公開されたアメリカの「連合宇宙運用センター」 なんだか狭苦しいですね。

“連合”ということで、イギリス、ドイツ、フランスから連絡官を受け入れているほか、日本の航空自衛官も常駐させる方向で調整を進めているそうです。)

 

【核戦争のリスクが第2次世界大戦後で最も高くなっている】

*****世界の核兵器1万3800個=北朝鮮は最大30保有―国際平和研****

スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)は17日、世界の核軍備に関する報告書を発表し、米英仏中ロにインド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮を加えた9カ国の核弾頭保有数が、今年1月時点で計約1万3865個だったとの推計を明らかにした。

 

全体の保有量の約9割を占める米ロ両国が、新戦略兵器削減条約(新START)に沿って戦略核を減らしたことから、前年比600個の減少となった。一方で両国とも、既存の核兵器や生産施設の近代化と更新に向け「大規模かつ高額なプログラム」を推し進めているという。

 

中国の保有数は前年比10個増の290個。北朝鮮は前年の推定10〜20個から同20〜30個に増えた。報告書は北朝鮮について、「昨年に核実験と中長距離弾道ミサイルの試射中止を宣言した後も、軍用核開発を安保戦略の中心に位置付け、優先的に取り組んでいる」と分析した。【617日 時事】 

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この種の記事を読んでの素朴な感想は「米ロで1万発以上も保有なんて、何を考えているのだろうか?そんなに必要なのだろうか?」という疑問。

 

実際、核兵器も近代化されればそんなに数は必要なく、数が多くても老朽化する核兵器の管理など面倒なコストが増加するだけ・・・ということで、米ロ間の新戦略兵器削減条約(新START)があります。

 

しかし、射程5005500キロの地上発射型の弾道ミサイルと巡航ミサイルの全廃を取り決めている中距離核戦力(INF)全廃条約の失効問題に続き、米ロ対立の状況で新STARTが延長されずに破棄される可能性が危惧されています。

 

****懸念される「核をめぐる米ロの新冷戦の始まり」****

トランプ政権がINF条約破棄の意図を表明したのに対して、プーチン大統領は、米国がINF条約を破棄するならばロシアは中距離核ミサイルを配備すると反発した。このように、米ロ間では、核をめぐる新冷戦の始まりが懸念されている。(中略)

 

INFの対象ミサイルを持つ国は、中国以外にも、イン ド、イラン、イスラエル、サウジ、韓国、パキスタン、台湾など10か国に及ぶと言う。(中略)

 

中国については、陸上配備ミサイルの95%INF条約の対象である中距離核戦略であるという。これは台湾への威嚇、東アジアでの中国の軍事的影響力の増大などの観点から懸念されている。 

 

この中国の動きにどう対処すべきか。トランプ政権は、中国の中距離核戦力に対抗するため、米国自身が中距離核戦力を持つべきで、そのためINF条約から離脱すべきであると述べている。

 

しかし、その結果、中国の中距離核戦力に歯止めがかかるとは思われない。かえって、米中間で中距離核戦力の軍拡競争が起こる恐れがある。 

 

もう一つの方法は、INF条約を手直しして、中国の中距離核戦力にも縛りをかけるようにすることである。

 

後者の方が望ましいのは明らかであるが、中国がINF条約への参加をするインセンティブを持っているかが疑問で、中国の参加の可能性はまず考えられない。 

 

当面は、中国の中距離核戦力についての諸外国の関心をあらゆる機会を使って出来るだけ高め、中国をけん制するしか方法はないと思われる。

 

他方、新STARTについては、2011年に発効し、10年の期限で5年の延長が可能とされている。米ロの戦略核弾頭を1550発に、ICBMの保有数を800基、配備数を700基に制限するもので、軍備管理上きわめて重要な条約である。

 

20212月に期限が来るが、去る3月にプーチン大統領は、ロシアは延長に関心があると述べた。他方、米国では、918日に、トンプソン国務次官が、上院の公聴会で、新STARTの延長について「あらゆる選択肢が検討されている」と述べ、延長しない可能性もあることを示唆した。 

 

トランプ政権は、INF条約にせよ、新STARTにせよ、軍備管理を優先させて考えていないようである。が、上記のニューヨーク・タイムズ紙によると、米国は、オバマ政権の時から、INF条約からの撤退を検討していたようである。

 

国防総省は、当時から、静かに米国の核戦力を強化する選択肢を模索していた。(中略)

 

トランプ政権は、軍備管理体制が無くなった状態が軍拡競争を招き、世界、特に欧州、アジアのみならず、米国自身の安全保障環境を極めて不安定にすることを認識すべきである。

 

米国内の心ある者、欧州、日本を先頭とするアジア諸国は、トランプ政権が軍拡のリスクと軍備管理の有用性を認識し、INF条約につき、欧州や日本などと協議するよう説得に努めるべきである。【17日 WEDGE Infinity

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中距離核戦力(INF)全廃条約については、ポンペオ米国務長官は22日、破棄するとロシアに正式通告したと声明で発表。アメリカは同日付で条約の義務履行を停止。条約で定められた6カ月の猶予期間にロシアが条約を順守しなければ、条約は8月初旬に失効します。

 

514日にロシア南部ソチで行われたロシアのラブロフ外相と米国のポンペオ国務長官の会談で、両氏は2021

年に期限が切れる米露間の新戦略兵器削減条約(新START)の延長に向けた協議を進めることで一致したと報じられていますが、方向性はまだ定まっていません。

 

米政府高官は、新START延長の是非に関し、トランプ大統領は来年判断するとの見通しを示しています。【530日 時事より】

 

一方、プーチン大統領は・・・。

 

****プーチン大統領、新START破棄の可能性を示唆****

)ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は6日、米国との間で締結している新戦略兵器削減条約、通称「新START」について、延長することに利益がないなら同条約を破棄する用意があると発言した。(中略)

 

プーチン大統領はサンクトペテルブルクで開かれた経済フォーラムで、「もし新STARTの延長を誰も望まないなら──(延長)しないだろう」という見方を示した。

 

さらにプーチン氏は、「われわれは(延長する)用意があると何百回も言った」にもかかわらず、米側が協議に応じていないと批判。「正式な交渉プロセスが存在しない。2021年には全てが終わるだろう」と述べた。 【66日 AFP】

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このプーチン大統領の発言の前、5月末にはロシアが低出力の核実験を行っている可能性について米ロが非難しあう事態も。

 

****ロシアが核実験か 米ロ対立さらに強まるおそれ 米紙****

アメリカのメディアは、情報機関の分析として、ロシアが低出力の核実験を行っている可能性があると伝え、核軍縮をめぐる両国の対立がさらに強まるおそれがあります。

 

アメリカの有力紙、ウォール・ストリート・ジャーナルは29日、情報機関の分析として、ロシアが新たな核兵器を開発する目的で、北極圏にあるノーバヤ・ゼムリャ島で、低出力の核実験を行っている可能性があると伝えました。

アメリカとロシアは核爆発を伴う核実験を停止していますが、ワシントンで29日、講演したアメリカ国防情報局のアシュリー長官は、「アメリカ政府はロシアが核実験の一時停止を守っていないと考えている」と述べました。

一方でアメリカは、ロシアが批准しているCTBT=包括的核実験禁止条約を批准しておらず、ことし2月には西部ネバダ州で核爆発を伴わない臨界前核実験を行ったことが明らかになっています。

ウィーンにあるロシアの国際機関代表部のウリヤノフ常駐代表は、「アメリカこそCTBTの批准を拒み、核実験場を維持している。自分たちが批判されないようロシアに矢を向けるとは、やり方が汚い」と非難しました。

アメリカとロシアは、INF=中距離核ミサイルの全廃条約を破棄するなど、核軍縮をめぐって対立していて、この対立がさらに強まるおそれがあります。(後略)【530日 NHK】

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米ロの対立、中国の軍備拡大の流れのなかで、「現在は核戦争のリスクが第2次世界大戦後で最も高くなっており、これは世界がもっと深刻に受け止めるべき喫緊の課題だ」(国連軍縮研究所(UNDIR)のレナタ・ドワン所長)という状況にもあります。

 

【加速する衛星破壊兵器の開発】

しかし、既存の核兵器にも歯止めが有効にかからない状況で、新たな分野での新たな兵器開発が加速しています。

 

****「宇宙運用センター」米軍公開 背景に中ロの脅威 軍拡懸念も****

宇宙空間の監視や防衛を担うアメリカ軍の「連合宇宙運用センター」がNHKなど一部のメディアに公開されました。アメリカ軍は中国やロシアが衛星への攻撃能力を高める中、防衛力の強化と同盟国との協力態勢の構築を進める方針です。

 

公開されたのはアメリカ西部、カリフォルニア州のバンデンバーグ空軍基地にあるアメリカ軍の「連合宇宙運用センター」で、19日、NHKやアメリカの一部のメディアのカメラが入りました。

「連合宇宙運用センター」はアメリカの軍事衛星や商業衛星に対する妨害や攻撃、それに宇宙ごみの動きを監視し、衛星網を防衛する任務に当たっています。

センターでは各国の衛星や大量の宇宙ごみなど宇宙空間を漂う2万5000の対象物を24時間体制で監視していて、この日は地上からミサイルが発射された場合の対応を再現しました。(中略)

アメリカ軍によりますと、衛星はGPSや通信をはじめ地球規模で展開する部隊の活動の基盤となる一方、中国やロシアが衛星を攻撃する能力を発展させ、対衛星ミサイルに加え、衛星自体から攻撃する「キラー衛星」と呼ばれる兵器の脅威も高まっているということです。(中略)

アメリカ軍ではこうした脅威に対抗するため宇宙軍の創設など防衛能力の強化と同盟国との協力態勢の構築を進めています。その一環として連合宇宙運用センターではイギリス、ドイツ、フランスから連絡官を受け入れているほか、日本の航空自衛官も常駐させる方向で調整を進めています。(中略)

宇宙空間での軍拡加速に懸念の声も

アメリカが中国やロシアに対抗して宇宙での軍事力の強化に乗り出すことで、宇宙空間での軍拡競争が加速し、平和利用に深刻な影響を与えるとして、国際的な議論を求める声も上がっています。

トランプ政権が宇宙軍の創設を打ち出したことに対し、アメリカの団体、「憂慮する科学者同盟」は声明を発表し、「各国が宇宙兵器の開発を進めれば軍事衝突の可能性が高まる」として、宇宙の平和利用が脅かされると懸念を示しました。

そのうえで「宇宙空間の安全保障は軍事的手段だけでは達成できず外交を通じたよりよい方法がある」として、宇宙での軍拡競争を防ぐための国際的な行動規範の策定や国連の場での議論の提起を求めていて、今後、国際的な議論を求める声も高まりそうです。

 

アメリカ 来年までに「宇宙軍」創設目指す

アメリカのトランプ政権は中国やロシアによる衛星破壊兵器の開発を受けて、宇宙をサイバー空間とともに「新たな戦闘領域」と位置づけ、来年までに新たに「宇宙軍」の創設を目指すとしています。

アメリカ軍はGPSや通信からミサイルへの警戒など活動の基盤を衛星網に大きく依存しているため、これが打撃を受ければ軍の行動全体に深刻な影響を及ぼす危険性が指摘されています。

このためアメリカ軍では宇宙軍の創設で宇宙空間の監視能力を高めるとともに、新たな兵器の開発など防衛力の強化に取り組むとしています。

さらにアメリカ軍は同盟国との「宇宙同盟」の構築を目指していて、西部カリフォルニア州バンデンバーグ空軍基地にある「連合宇宙運用センター」をその基盤に位置づけ、同盟国からの連絡官の受け入れを進めています。(中略)

アメリカ軍としては宇宙空間での同盟国との連携を強化することで、中国とロシアに対抗する態勢づくりを進めるねらいです。

 

宇宙での中ロの脅威 米政府が分析

アメリカ国防総省の国家航空宇宙情報センターはことし1月に発表した「宇宙での競争」と題した報告書で、「中国は複数の部隊で対衛星ミサイルの訓練を開始した」と指摘し、中国軍が対衛星ミサイルの配備に向け訓練を活発化させているとの分析を初めて示しました。

またアメリカの情報機関を統括するコーツ国家情報長官がことし1月に議会に提出した報告書では「中国は低軌道衛星を撃ち落とすことをねらった運用可能なミサイルを保有している」として、衛星破壊能力の急速な進展に強い危機感を示しています。

さらに国防総省の情報機関、国防情報局はことし2月に取りまとめた宇宙空間の脅威に関する報告書で、来年までに中国が低軌道の人工衛星をねらったレーザー兵器を配備する可能性が高いと指摘しました。

またロシアについては、すでに去年7月の時点でレーザー兵器の配備を開始し、人工衛星をねらった兵器である可能性が高いと分析しています。

 

専門家「中ロがキラー衛星開発も」

宇宙空間の安全保障問題を研究するアメリカのシンクタンク、「セキュア・ワールド・ファウンデーション」のブライアン・ウィーデン氏は、中国が衛星攻撃能力を高めアメリカへの大きな脅威になっていると指摘しました。

このなかでウィーデン氏は「中国はアメリカがこの20年近くイラクとアフガニスタンでの戦闘でいかに軍事衛星を活用してきたか、分析を進めてきた」として、中国が軍事衛星に依存するアメリカ軍の特性をねらって、衛星攻撃兵器の開発を進めているという分析を示しました。

(中略)そのうえで「おそらく低軌道の人工衛星を破壊できる能力はかなり成熟しており、ミサイルの運用に向け配備を進めているとみられる」と述べ、中国が対衛星ミサイルの配備を進めているとの見方を示しました。

またウィーデン氏は中国が2016年に打ち上げた人工衛星の軌道に注目し、「一定期間、別の衛星の近くにとどまったあとに他の衛星に近づいている」と指摘しました。

これについてウィーデン氏は、衛星自体から攻撃を仕掛ける「キラー衛星」の開発に向けた実験ではないかと分析しています。

さらにウィーデン氏はロシアについても、「低軌道と静止軌道の両方で数多くの実験を実施してきた」と指摘し、「キラー衛星」の開発をかなり進展させていると指摘しました。

そのうえで「ロシアは電子戦能力にも多くの資源を投じ、実際にシリアやウクライナでの紛争で使用している」と述べ、衛星との通信を妨害するロシア軍の能力は実戦段階に入っているという分析を示しました。

ウィーデン氏はこうした中国やロシアの脅威への対抗策として「衛星を多数保有することで1つの衛星が攻撃されても影響を抑えることができる」として、安価で簡易な衛星を多数、打ち上げるとともに、同盟国との連携を強化する必要があるとしています。【623日 NHK】

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いよいよ「スターウォーズ」の世界のようです。

 

【新兵器開発への驚異的な情熱】

そのほかにも、新たな兵器開発の報道は多々あります。

 

****EMP攻撃の恐怖と日米共同対処について****

大都市の電気、ガス、水道、交通、インターネットなどのインフラが一瞬にして破壊される新たな軍事的脅威にいかに備えるか―日米両国はこのほど、防衛相会談で、そのための情報交換や抑止力向上などの面で共同対処していく方針を確認した。

 

「新たな脅威」とは従来の核ミサイルなどとは異なり、EMP(電磁パルス)による攻撃を意味し、「EMP兵器」として知られる。

 

EMPはもともと、強力なパルス状の電磁波であり、雷、大規模な太陽フレアといった自然界の現象としても生じるが、高高度の大気圏外核実験でも人工的に大量発生させることができる。これを軍事転用したのが「EMP兵器」だ。(中略)

 

通信、交通、公衆衛生、食糧供給、給水といった電力グリッドに依存した緊要なインフラ体制は、EMP攻撃によるブラックアウト(大停電)によって1年あるいはそれ以上の長期にわたり機能停止となる。(中略)

 

ロシア、中国、北朝鮮はすでにこの核EMPによる対米攻撃能力を保有しており、テロリスト集団もその気になればEMP攻撃を仕掛けることも可能だ。というのは、ミサイル発射後の大気圏再突入システムや正確な標的誘導装置などの高度技術を必要としないからだ。(後略)【610日 WEDGE

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以下、見出しだけ。

“米が秘密の新ミサイル開発、標的をピンポイントで殺害”【510日 WSJ】

“米当局が「昆虫兵器」開発? 欧州の科学者が懸念”【310日 朝日】

“インド、ミサイルによる人工衛星破壊実験に成功 米露中に次いで4カ国目”【327日 毎日】

 

各国がこうした方面の研究開発への情熱・関心、資源・資金の配分を平和的な分野や貧困等に苦しむ国への支援に振り向ければ・・・とも思うのですが、残念ながら・・・。

 


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