孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

インド総選挙  与党連合“大勝”、過半数には届かず 「第3勢力」大幅減

2009-05-17 12:42:09 | 国際情勢

(インド総選挙での「マハラシュトラ新生軍団(MNS)」支持者 インドには1000を超える政党があるといわれ、そのひとつMNSはムンバイを中心とするマハラシュトラ州で過激な地域主義を標榜する政治結社 
独立から一党優位にあった国民会議派も、勢力の衰えとともに地域政党との協力関係が不可欠になってきていましたが、今回選挙では国民会議派がやや勢力を持ち直しました。
“flickr”より By Al Jazeera English
http://www.flickr.com/photos/aljazeeraenglish/3475957154/)

【与党連合大勝】
昨日は国内外でふたつの選挙結果があきらかになりました。
国内では民主党代表選挙。
国会議員だけの投票で決めてしまう選挙方法と、政治の世襲制が問題となるなかでの“鳩山VS吉田”の構図を結果として選択するセンスはいかがなものかと思われます。

国外では注目されていたインド下院総選挙が発表されました。
こちらも、ネール王朝世襲に途を開く、国民会議派率いる与党連合大勝の結果となりました。

****インド総選挙 与党連合が大勝、政権維持へ****
インドの総選挙(下院、定数545)が16日に開票され、国民会議派が率いる与党連合が大きく票を伸ばし、インド人民党中心の野党連合を引き離して勝利した。5年間続いた現政権が信任を得た形で、シン首相(76)の続投が確実視されている。堅実な経済運営や親米外交など基本政策を維持しつつ、約11億人の人口を抱えるインドのさらなる発展を目指す。
国営テレビの推計では、午後7時(日本時間同10時半)現在で国民会議派陣営が261議席、野党のインド人民党陣営は156議席。会議派は単独でも205議席で前回の145から大きく伸ばし、人民党は単独で116議席と前回より減らす見通しだ。

会議派陣営は過半数には届かなかったが、今後、少数政党の取り込みを図って連立政権を組織する見通しだ。
04年の前回選挙で8年ぶりに政権を奪還した会議派は今回、安定した経済運営など実績を強調。手厚い貧困対策とともに、ソニア・ガンジー総裁の長男ラフル氏を将来の首相候補として売り出し、若年層の支持獲得にも成功した。

人民党のジェイトリー報道官は「国民の審判を受け入れる」と敗北を認めた。前回総選挙まで6年間政権を担った人民党陣営は、昨年11月のムンバイ同時テロなどを引き合いに与党の治安対策の不備などを批判したが、目新しい対立軸を打ち出せなかった。

米印原子力協定に反対して閣外協力を解消した左派連合と、近年勢力を増していた地方の小政党は「反2大政党」の第3勢力による政権を目指したが、上滑りに終わった。
総選挙の有権者数は約7億1千万人。投票は電子投票方式で地域ごとに5回に分けて実施され、投票率は58.43%だった。下院定数のうち2議席は、選挙後に大統領が任命する。 【5月16日 朝日】
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国民会議派の与党連合、インド人民党の野党連合ともに過半数はとれないということは選挙前から予想されていたとおりですが、予想に反して与党連合が過半数にもう少しで手が届くところまで議席を伸ばす“大勝”となっています。
記事にもあるように経済成長という実績と、従来から低カーストやイスラム教徒などに幅広い支持の裾野を持つ国民会議派の安定感が選択されたと思われます。
敗北した野党連合・インド人民党以上に、躍進が予想された左派・地方政党の「第3勢力」が大きく議席を減らしており、選挙前予想とは逆に全国政党・国民会議派への回帰が生じています。
“(選挙期間中)ヘリコプターでやって来たラフル氏は「会議派は宗教を問わない国民政党だ。出身で差別しない。BJP(最大野党・インド人民党)は宗教と経済で国家を線引きしようとしている」と、人種や宗教が複雑に絡むインドを主導できるのは会議派だとアピールした。”【5月10日 産経】

【ネール王朝】
そのネール王朝後継者としてのラフル・ガンジーですが、党内には世代交代待望論もありますが、今回選挙で与党連合が“圧勝”したことで、しばらくは現在のシン首相を中心とする体制が当面継続されると思われます。
今後については“国民会議派はソニア・ガンジー総裁(62)の長男、ラフル幹事長(38)を前面に立てた選挙戦を展開。現政権の経済運営の実績や貧困層支援への取り組みをアピールし、支持を広げた。シン首相は2期目の政権作りにあたり、「将来の首相」と目されるラフル氏に入閣を要請する考えを示した。高齢で健康悪化が伝えられるシン首相が、任期途中でラフル氏に首相職を譲る事態を想定した人事との見方もある。”【5月16日 毎日】とのことです。

ひとは何故“貴種”を望むのか?・・・というのは心理的・文化的側面、現実政治の側面、いろいろあるかとは思われますが、ネール王朝関係者は野党インド人民党にもいるようです。

****故ガンジー首相の孫逮捕=選挙集会で宗教対立あおる-インド*****
1984年に暗殺されたインドのインディラ・ガンジー元首相の孫で、野党・インド人民党(BJP)から総選挙への初出馬を予定していたバルン・ガンジー氏(29)が28日、演説で宗教対立をあおりかねない発言をした疑いで警察に逮捕された。
同氏は今月上旬、選挙区での集会で、ヒンズー教徒を侮辱するようなことがあれば「(イスラム教徒の)腕を切り落とす」などと述べたとされる。多宗教国家のインドでは、候補者や政党は宗教対立を誘発するような行動を禁じられており、選挙管理委員会が同氏を刑事告発した。バルン氏はBJPの若手ホープと目されている。
バルン氏はガンジー元首相の事故死した次男の息子。ガンジー家は元首相の父で初代インド首相のネール氏以来、現与党・国民会議派を率いてきた名門。バルン氏は、母親が元首相と折り合いが悪くBJPの政治家となった縁もあり、BJPに入党したと伝えられている。【3月28日 時事】
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まあ、鳩山兄弟も与野党に分かれていますし、どこの世界でも本流に反発する傍流・異端は存在するものです。

【“ダリットの女王”伸びず】
今回選挙で個人的に一番注目していたのは、このブログでもしばしば取り上げた、地方政党・大衆社会党の党首で、インド最大の人口を抱えるウッタルプラデシュ州で現在首相を務める“ダリット(被差別民)の女王”こと、マヤワティ党首(53)の動向でした。
二大政党の伸び悩みが予測されるなかで、選挙後のキャスティングボードを握る存在として、「インド4千年の歴史で初めてダリットの支配者が誕生するのか」とも報じられていました。
支持者も「州政権の次はニューデリーだ」との勢いでした。

大衆社会党は、出口調査でも大きく議席を伸ばすのではとの予測もありましたが、結果的には現有19議席から22議席への微増に留まったようです。
左派政党・地方政党などの「第3勢力」の選挙戦は、“上滑り”に終わりました。

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総選挙を終えたインドは、大衆社会党など「第3勢力」が、インド国民会議派など全国政党の「対立軸」になりうるかどうかが大きな焦点となる。米国との民生用原子力協定に反発して昨年7月に野党に転じた左派政党や、旧来政治に嫌気している与党・野党連合の一部政党も第3勢力に参加する動きを見せており、今後の連携協議に注目が集まる。
インドでは今、宗教やカースト、民族などを土台にした旧来政治への反省が高まっている。
都市と地方の格差も、国政を主導してきた全国政党への失望感につながった。こうした声の吸収を、地方政党は求められ、勢力を伸ばしてきた。
会議派は選挙中から、「我々に合流する党はどこでも歓迎する」と訴えた。しかし、第3勢力では「核」となる政党は見えず、主導権を巡る駆け引きも健在化している。96年に地方政党中心の連立政権が発足したが、政策の違いなどから約10カ月で崩壊しており、その教訓をどう生かすかが問われている。【5月16日 毎日】
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といった見方もありますが、与党連合“大勝”の流れで、国民会議派主導の政局が展開されるように思えます。


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