(年末の“新千歳空港事件”のとき、空港内の売店では食べ物が売り切れていて手に入らないし、空港ターミナルは深夜、暖房が切られとても寒くなる。生後10か月の乳児を抱えた人もいて、ミルクをつくるためのお湯も手に入らない・・・といった状況だったようです。【1月17日 西本紫乃氏 WEDGE Infinity】)
【“春節”で日本にも多くの中国人観光客が 期待される相互理解】
世の中、アメリカの“あの人”の話題や、イギリスのEU離脱などで騒がしいのですが、今日はそういう話とは関係ないところで。
毎年、この時期になると報じられるのが中国“春節(旧正月)”の“民族大移動”です。
国際ニュースにあっては、季節を感じさせる風物詩的なものにもなっています。
****春節、30億人大移動…海外にも600万人出国****
中国で28日の春節(旧正月)を前に、帰省や観光で各地へ向かう人の移動がピークを迎えている。
中国政府によると旧正月を挟んだ40日間で昨年を2・2%上回る延べ30億人が交通機関で移動する見込みだという。
海外にも約600万人が向かうとされ、人気トップのタイに続き、第2位の日本にも多くの中国人旅行客が訪れる。北京駅は18日早朝から、大きな荷物を抱えた労働者や学生でごったがえしていた。
黒竜江省に帰省する内装業の李慶豊さん(37)は「半年ぶりに子どもに会うのが楽しみ。故郷のきれいな空気も恋しい」と話していた。【1月18日 読売】
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日本でも観光業関連の方々は手ぐすね引いて・・・というところでしょうが、一頃の“爆買”は影をひそめ、体験型とかグルメとか、旅行者のニーズも多様化しているとか。
日本小売業への需要と言う点では問題かもしれませんが、旅行の形態としては本来あるべき姿に近づいているということで、結構な話かと思います。
目的とした観光スポットだけではなく、旅行中のいろんな経験から、日本社会への理解が深まることを期待します。
****日本の消防車の「礼儀正しさ」が中国ネットで話題に!****
2017年1月19日、中国の動画サイト・陽光寛頻網に、日本の路上で撮影されたある動画が掲載され、ネットユーザーの注目を集めている。
動画は「日本の消防車は赤信号を通過した後にもありがとうと言う」と題された1分足らずのもので、サイレンを鳴らしながら交差点に進入した消防車が、道を空けた自動車や足を止めた歩行者などに「交差点に進入します。ありがとうございます。ご協力ありがとうございます」と声をかけ、交差点を左折後にもう一度「ありがとうございました」と感謝の言葉を述べている。
この動画にはネットユーザーから多くのコメントが寄せられている。実際に日本で同様の光景を見たというユーザーは、「これはホント!去年の10月、日本旅行に行った時に新宿で消防車がありがとうと言っているのを聞いたよ」とコメントし、別のユーザーからは「中国なら、『前の車、早くどきなさい』だな」と日中を比較するコメントも出ている。
また、消防車に当たり前のように道を譲る街の様子に、「調和がとれていて、秩序がある国だ」「他人に迷惑をかけないのは日本人の長所」「日本人は好きではないが、素養の高さには恐れ入る」と感心するコメントも少なくない。
さらに、「日本人の素養の高さ」という視点から、「おれは料理のデリバリーをやってるが、ピークの時間帯で配達が遅れた時があった。行ってみたら客は日本人だった。『すみません』と言ったら、相手は料理を両手で受け取って、『ありがとう』と言いながらチップまでくれようとした。遅れてしまったのに申し訳ないからって受け取らなかったけどね。(日本人の)素養は確かに高い」というエピソードを紹介するユーザーもいた。
中国では、ドライバーが緊急車両に道を譲らなかったり(渋滞が深刻で譲れないことも)、緊急車両専用レーンを走行したりするなど、一部のドライバーの交通ルール違反がたびたび取り沙汰される。
しかし、中国で救急車のドライバーをしているという男性ユーザーは、「最近の(中国)国民の素養はだいぶ向上していると思う。サイレンを鳴らして走っていると、9割以上の車は道を譲ってくれる。私もクラクションを軽く鳴らして感謝を示してる」と、中国人の変化についてコメントしている。【1月19日 Record china】
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私自身は消防車が「ありがとう」と言うのは聞いたことがありませんし、あまり過剰な日本型サービスの風潮にはやや疑問も感じていますが、そういう社会の違い・特徴などを感じるというのが外国旅行の大きな魅力でしょう。
少なくともネット上では、こうした日本社会礼賛的なものが溢れています。あまり多いので、最近はあまり目をとおさないことも。
“なぜだ! 交通渋滞が起きない日本と深刻な渋滞に苦しむ中国、一体何が違うんだ?”【1月13日 Searchina】
“ケーキを買って分かった、日本人が中国人よりも尊敬に値すると言われる理由=中国メディア”【1月10日 Searchina】
その割には、世論調査などにおける日本への好感度とか反日感情が目立って減少している訳でもないところが、やや不思議でもあります。日本ユーザーが喜びそうな話題を敢えてチョイスしてメディアが流しているのでしょうか。
それはともかく、実際に日本社会を体験する中国人が増えれば、相互理解もしやすくなりますので、大いに喜ばしいことです。
日本人の側も、実際に中国の人の個人的に接することで、ステロオタイプなイメージが変わることもあるでしょう。
【年末の“新千歳空港事件” 期待を肯定するための情報に安易に飛びついたりしないように】
年末に話題となった、新千歳空港に大雪で足止めされた中国人旅行者が騒ぎ、警察沙汰になったという出来事。
「やっぱり、中国人は・・・・」という反応が多いのでしょうが、詳しく事情を見ると、一概に彼らだけを責められないところもあるように思えます。
“「新千歳空港で暴れた中国人乗客」騒動の真相”【1月17日 西本紫乃氏 WEDGE Infinity】http://wedge.ismedia.jp/articles/-/8701
非常に長い記事なので、引用は辞めます。記事が長くなるというのは、それだけ3日間にわたって、いろんな出来事・事情が重なったということでもあります。
他の国際便が飛ぶのに、問題となった中国国際航空の便だけがなかなか飛ばない。空港・航空会社・領事館の説明・対応のまずさ。日本人空港関係者の見下したような対応。空港のキャパシティの問題。言葉もわからない、食べるものもなくなる、そういう旅行先での出来事・・・いろんな事情があります。
私もしばしば海外旅行をしますが、ときに飛行機が遅れ待たされることがあります。
大体は2~3時間程度ですが、それでも十分な説明のないこと(言葉の面で十分なコミュニケーションがとれないことも含め)への苛立ち、スケジュールが狂ってしまうことへの怒り・不安等々で、心中穏やかならざるものがあります。
ましてや3日間となると・・・・「雪だから仕方がないじゃないか」では済まされないものがあります。
同じ状況にあれば、中国人ならずとも黙ってはいないでしょう。
欠航となった翌日の23日午前には、上海行きの便や台北行きの便など、22日欠航となった他の国際線の飛行機が次々に出発しています。(問題の便は、結局25日未明に出発)
そういうことであれば、一番の責任は対応が遅れた中国国際航空にあるのでは・・・と、個人的には考えます。乗客の立場に立ったサービスが軽視されているのではとも。(中国国際航空は安いのでよく利用しますが、サービスの良い会社ではありません)
もし、飛べない事情があるなら、そこをきちんと説明すべきで、説明もせずに、寒さ・空腹への対応も行わず、ただ「待て」では乗客も納得できません。もっとも、その印象も事実関係を確認する必要があります(中国国際航空への思い込みがあるのかも)。
記事の結論部だけ引用しておきます。
*****伝えられたことの誤解と誇張****
・・・・日本人の心の中には「だから中国はダメなんだ」と思いたい心理がある。
中国は経済の先行きなど、リアルにネガティブ傾向を示し始めている部分もあるが、そこは理性的に分析や判断をすべきである。
「だから中国はダメなんだ」という期待を肯定するための情報に安易に飛びついたりしないようにしたいものだ。【1月17日 西本紫乃氏 WEDGE Infinity】http://wedge.ismedia.jp/articles/-/8701*****************
「いや、それは違う。やはり騒ぐのは中国人の資質の問題だ」という意見もあるでしょう。それはそれでかまいませんが、少なくとも事実関係を踏まえたうえでの議論をすべきでしょう。
【“春節恐怖症” 日本の“つながり依存”】
話を“春節”に戻すと、移動の混雑・大変さだけでなく、ここ数年は「春節で帰省するのは、土産物も大変だし、親から結婚はまだかとうるさく言われるので、春節が嫌で仕方がない」といった若者が増えている・・・という話題もよく登場します。
****若者に「春節恐怖症」、コスト増や比較の風潮などで****
春節(旧正月、今年は1月28日)が徐々に近づいてきた。春節は本来は家族が集まり、楽しく仲良く過ごす祝祭日だが、つきあいにかかる費用が増大し、人とあれこれ比較する風潮も強まり、多くの若者が「春節恐怖症」に陥っている。新華社が伝えた。
湖南省長沙市のサラリーマン夏佳さん(26)が最も恐れるのは春節連休期間の「多額の消費」だ。いとこたちに子どもができ、それぞれに少なくとも数百元(1元は約16.5円)のお年玉をあげなければならず、両親や年長者に包むおこづかいに宴会の費用もあり、最低でも数千元の支出は覚悟しなければならない。「自分のような働き始めてからそれほどたっていない者にとって、この支出はほぼ2カ月分の賃金に相当するもの」という。
「財布が大変」なだけでなく、「脾臓や胃腸が大変」なことも若者の悩みの種だ。毎年、春節にはさまざまな集まりがあり、小学校、中学校、高校の同窓会はもとより、親戚や友人からも代わる代わる招待を受ける。一つの会食が終わると次の会食、白酒の後はビールという毎日が続き、体は悲鳴を上げ、仕事がある日よりも疲れるというのが実態だ。
心理的に受ける無形の圧力も多くの若者が春節を避けたくなる要因だ。春節で一番いやなことは年長者から過去1年間にどれくらい稼いだか、ガールフレンドはいるか、いつ結婚するのか、いつ子どもをつくるのかなどと聞かれることで、自分を心配して言っているとは知りつつ、晩婚派にとってはこの上もなく大きなプレッシャーになる。
若者が「恐怖症」に陥るだけでなく、中高年の一部も同じように「帰郷恐怖症」にかかっている。山東省に家がある鄭さん(65)は、長沙で結婚した息子のところへ行って孫の面倒をみていた。「家に帰ろうとしても交通機関の切符はなかなか手に入らないし、帰ったら帰ったで親戚一同が集まる宴会を開かなくてはならず、連休中は毎日親戚を訪ねて贈り物を贈ったりもらったりしなければならない。もう年なので、体はつらいし気力もない」という。
中国の伝統的な考え方では、故郷を離れてがんばる人が帰郷する時には「故郷に錦を飾る」ことがこれまでずっと一番の願いとなっていた。
だが今はつきあいにかかる費用が増大し、生活のストレスも増大し、成功の基準がどんどん高くなっていて、多くの人がどうしたらよいかわからなくなっている。
湖南商学院で心理学を教える蒋瑛瑾さんは、「春節の『功利化』を図りつつ、伝統的祝祭日がもつべき文化的な内容や祝典ムードを保ち、他人と比べたり見栄を張ったりすることをやめ、家族で長く過ごすようにし、必要以上にメンツを気にしなければ、春節は負担ではなくなる」との見方を示す。【Record China】
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晩婚派・独身派も増えている中国若者が親・親戚からのしつこい攻撃をかわすための「レンタル彼女」「レンタル彼氏」といった方策も。
****春節前に人気の恋人レンタル、「彼氏」の料金高いのはなぜ?****
2017年1月18日、中国新聞網によると、中国の春節(旧正月)連休を前に、「レンタル彼氏」の料金が急上昇している。
帰省シーズンとなる春節連休は中国の独身男女にとって親や親戚から「結婚はまだ?」とせかされる頭の痛い時期でもある。この時期に特に注目を集めるのが恋人役の相手を「レンタル」するサービスだ。
「レンタル彼女」に加え、近年は「レンタル彼氏」も出現、しかも1日当たりの利用料金が1000元(約1万6500円)を超えることも珍しくなくなっている。
事情に詳しい人の話によると、通常は600〜1000元だが、春節間近は書き入れ時とあって1000〜1500元に上昇。「世間の人々が男性に求める条件は高いため、春節シーズンはレンタル彼氏の方が料金が高めになる」という。(後略)【1月19日 Record China】
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基本的に、昔からの“村落共同体”的な人間関係・束縛が中国ではまだ強く残存しており、多様化する若者らの意識とずれも大きいようです。
同様の悩みは韓国でもきかれますが、韓国社会は少し変化しているようです。
****<コラム>韓国人がひとり飲み?衝撃的な変化に、ただただ驚いた****
韓国の新聞、中央日報の記事に驚いた。
記事によると、食品医薬品安全処が20〜30代の男女2000人を対象に昨年11月に行った「2016年下半期酒類消費・摂取調査」の結果を12月23日に発表。「20〜30代の66.1%は最近6カ月間に1人で酒を飲んだ経験があると答えたという。「1人酒」をする理由は「気楽に飲める」(62.6%)が最も多く、「ストレス解消」(17.6%)、「一緒に飲む人がいない」(7.7%)、「費用を減らすため」(5.2%)などの順だった。
もう15年以上前。当時留学していた学校の正門前の食堂で、私はひとり昼食を食べていた。以前から視線は感じていたが、ついにある日、女主人が憤然と私の前に立ち「日本の学生さん!いっつもひとりだけれど友達はいないの!?」と叫んだ。ひとりで食べているのは私だけ。おののく私に女主人は「今日から私を韓国の母と思いなさい!」といい放ち、隣の席にどんと座るとスプーンを取り上げ、チゲを無理やり食べさせる暴挙に出たのだった。
それから数年後。新宿で韓国人留学生とご飯を食べた。彼女は日本に来てわずか半年余り。しかし日本語は実に流暢で、話をしながら彼女が韓国人であることを時々忘れた。「ひとつだけ、出来ないことがあるの」。なに?と聞くと声を潜めていう。「ひとりで学食や外でご飯を食べること」。「好きなものを食べられていいじゃない?」というと彼女はしかめっ面をして見せ「絶対ムリ!周りからどう見られるかと思うと耐えられないの」と言ったのだった。(中略)
食事と酒の違いはあるが、周りの目が気になりひとりで食事をすることが出来ないと言っていた韓国人がひとり酒を飲み、そのことを認め回答し、そのトップの理由が「気楽に飲める」だったことにただ驚いた。
15年以上前、韓国人に感じた底抜けの温かさと孤独へのもろさ。おせっかいな食堂の女主人や韓国人留学生の彼女は、今どうしているのだろう。すっかり没交渉になってしまった人たちの顔を久しぶりに思い出した。【1月19日 Record China】
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日本ではどうか・・・伝統的な“村落共同体”的な人間関係・束縛は以前よりは薄れ、その点では“個人”が認知された社会にもなりつつありますが、一方で、SNSを通じた“つながり依存症”的な現象が非常に強まっています。
****ランチメイト症候群****
ランチメイト症候群という名称は、町沢静夫に相談を訴えた者が、食事をする相手のことをランチメイトと表現したことから着想を得た呼び名であるという。学会に認められた症状名や病名ではないが、2001年の4月頃から報道で取り上げられたことでこの呼び名が広まった。
相談の内容は主として、一人で食事することへの恐れと、食事を一人でするような自分は人間として価値がないのではないかという不安である。
当事者は次のように考えがちである。「学校や職場で一人で食事をすることはその人には友人がいないということだ。友人がいないのは魅力がないからだ。だから、一人で食事すれば、周囲は自分を魅力のない、価値のない人間と思うだろう」。こうした考え方が主な症状である恐れと不安を誘発する。
さらに、断られることを(「価値のない自分」への不安を惹き起こすから)恐れているので自分から誰かを食事に誘うこともできない。ランチメイト、つまり食事相手を確保できない者は、一人で食事をする姿を学友や同僚に見られないように図書館などで隠れて食べることがある。
中には食事の様子を見られそうになってトイレに隠れたり、食事を摂ることを断念したり、ひどい場合は仕事を辞めたり就職を諦めたり学校へ行けなくなる。(後略)【ウィキペディア】
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“こうした友達がいないように見られることを恐れる傾向はアメリカの若者にも多く見られるとし、先進国に共通した特徴ではないか”との意見もあるようです。
四六時中スマホで誰かとやり取りしていないと気が済まないといった若い人は、街中に溢れています。
一人暮らしで、旅行も一人旅という私からすれば、「病気じゃないか・・・」とも思えますが。
まあ、そういう私も、読む人もいないブログを毎日書いているというのも、社会への「つながり依存」なのかも。
伝統的な“村落共同体”にせよ、SNSにせよ、ひとは他者とのつながりなしには生きていけない・・・ということでしょうか?
いささか陳腐な結論にたどりついたところで、今日はおしまい。