孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

パレスチナ自治政府  「オブザーバー国家」に格上げする決議案、29日に国連総会で採択される見通し

2012-11-28 23:51:03 | パレスチナ

(自治政府の国家格上げ提案を支持するヨルダン川西岸地区住民(動員でしょうが) “flickr”より By AJstream http://www.flickr.com/photos/61221198@N05/8225158738/

賛成多数で採択される見通し
パレスチナ自治政府のアッバス議長は昨年9月、国家として国連正式加盟申請を行いましたが、審査を行う安保理で拒否権を持つアメリカが強く反対していることから賛成国が数が伸びず、アメリカの拒否権が実際に行使される採決に入ることなく棚上げ状態となっています。
(4月10日ブログ「パレスチナ  「アラブの春」による情勢変化で統一政府樹立は暗礁に アッバス議長“板挟み”」http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20120410

自治政府はその代替措置として、国連での地位を現在の「オブザーバー機構」から「オブザーバー国家」に格上げする決議案を国連総会に提出しています。
総会では安全保障理事会と違ってアメリカなどの拒否権はなく、総会に出席・投票した加盟国の過半数の支持で決議案が採択されます。
採決は明日29日に行われますが、現在のところ賛成多数で採択される見通しです。

****パレスチナ:格上げ決議案を国連総会に提出 採択の見通し****
パレスチナの国連代表部は27日、国連での地位を現在の「オブザーバー機構」から「オブザーバー国家」に格上げする決議案を国連総会に提出した。エジプトなどアラブ諸国を中心とした約60カ国が共同提案国となった。29日に採決され、賛成多数で採択される見通しだ。

パレスチナのマンスール国連代表(大使に相当)は決議案提出に先立ち、「大多数の国が賛成するだろう」と採択に自信を示した。代表はまた、欧州諸国に賛成への投票を働きかけてきたことを明らかにし、フランスやスペインが支持を表明したことを歓迎した。
一方で英国のグラント国連大使は27日、「まだ(投票行動は)決めていない」と語った。ロイター通信は欧州の11〜16カ国が賛成に回ると外交筋の見通しを伝えており、欧州諸国内では意見が分かれているようだ。【11月28日 毎日】
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イスラエル「パレスチナの行動を見守ることになる」】
当然ながらイスラエル(及び、イスラエルを支援するアメリカ)は強く反対していますが、採択は避けられない見通しのなかで、採択に伴う制裁といった強硬な対応は控える方向が伝えられています。
“悪役”のイメージが強まるのは得策でないとの判断でしょう。

****イスラエルが態度軟化か=欧州賛成、制裁中止も―パレスチナ「国家」格上げ****
パレスチナの国連での地位を「オブザーバー国家」に格上げする国連総会決議案の29日採択が不可避となる中、決議案提出の動きに強く反発していたイスラエルが態度を軟化させ始めた。欧州諸国の多くが賛成に回る可能性が高まり、パレスチナへの制裁は逆にイスラエルの国際的な立場に悪影響を与えるとみているもようだ。

イスラエルはこれまで、パレスチナが決議案採択に踏み切った場合、1993年のパレスチナ暫定自治宣言(オスロ合意)の見直しや代理徴収するパレスチナの関税の移送停止など、厳しい制裁措置を取ることも辞さない構えを示してきた。

しかし、28日付のイスラエル紙ハーレツによると、ネタニヤフ首相は、格上げを「パレスチナの象徴的勝利」にすぎないと見なし、対立を避ける方針に変更しつつある。外交筋はハーレツに「パレスチナの行動を見守ることになる」と指摘。格上げ後に、パレスチナが国際刑事裁判所(ICC)や国連機関への加盟を目指す戦略を取らなければ、厳しい制裁は行わないことを示唆した。【11月28日 時事】
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国際刑事裁判所(ICC)の加入などに関する規定は「すべての『国』に開放」とされています。そのためパレスチナが「機構」から「国」に格上げされると、ICC加入が可能とされています。
パレスチナ自治政府は、ICCに加入してイスラエルを戦争犯罪で訴えることも視野に入れつつ、和平交渉を再開するよう圧力をかける・・・とも見られています。
イスラエルとしては、パレスチナの「国家」格上げはいたしかたないとしても、戦争犯罪での起訴云々は認めないとの方針です。

採決断念に追い込むと自治政府崩壊の懸念も
なお、パレスチナの「国家」格上げについては、アメリカ・イスラエルはパレスチナに思いとどまるように厳しい圧力をかけようと思えばできないこともないのですが、先述の“イスラエルの国際的な立場に悪影響”といった問題のほかに、仮に自治政府が断念するような事態に追い込まれると、先のガザ地区の攻防を受けてパレスチナ内部でハマスの存在感が増し、自治政府・アッバス議長の求心力が低下している現状では、自治政府が崩壊しかねないという懸念があります。

イスラエル・アメリカにとっては、穏健な自治政府の崩壊・過激なハマスの台頭・・・という事態は避けたいところです。
自治政府の存立基盤の脆弱さが、「国家」格上げ提案を可能とさせる・・・という皮肉な状況にもなっています。

****パレスチナ:格上げ採決、イスラエルと米国は静観の構え****
パレスチナの国連での地位を、現在の「オブザーバー機構」から「オブザーバー国家」に格上げする総会決議案が27日、国連総会に提出された。採決を強硬に阻止しようとしてきたイスラエルと米国は、採決は不可避と判断し、静観する構えをみせている。

自治区ガザ地区を実効支配し両国が「テロ組織」に指定するイスラム原理主義組織ハマスは、イスラエルとの戦闘と停戦をへて、パレスチナ内部で発言力を強めた。イスラエルや米国には、和平路線のアッバス議長の自治政府に代わってハマスが台頭する事態を避けたい狙いがある。アッバス議長に圧力をかけ、採決を断念させればパレスチナ内での議長の権威が失われ、自治政府の崩壊すら危ぶまれるため態度を軟化せざるを得なくなった。

総会決議は、安全保障理事会の決議とは異なり、法的拘束力を持たず、国際世論が「将来のパレスチナ国家樹立」を支持することを示す政治的な意味合いが強い。また、パレスチナ側は、格上げされた場合に国際刑事裁判所(ICC)への加盟を計画。刑事裁判所にイスラエルによるヨルダン川西岸への入植活動などが「国際法違反」だと提訴する狙いがある。

イスラエルや米国は当初、アッバス議長に対し採決の断念を求めていたが、決議案の採択は避けられないと判断。地元メディアによると、米国側がイスラエルのネタニヤフ首相に、決議案の文面を弱めることに重点をおく外交作戦に変更するよう提案。また、当初イスラエルが警告していた、採択された場合の報復措置についても緩和を求めた。

イスラエルは「自治政府が崩壊すれば、その負担は私たちにのしかかる」(イスラエル外交筋)と判断。パレスチナ側に▽決議採択後にICCに加盟申請しない▽決議でヨルダン川西岸、ガザ、東エルサレムでの主権を宣言しない−−ことなどを確約させることで決着させようとしている。【11月28日 毎日】
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エジプト仲介の停戦協議開始、ただ、そのエジプトは政治混乱
なお、ハマスは、自治政府の今回提案を支持する姿勢を表明しています。
存在感の高まりを背景に、余裕の対応とも見られます。

****国家格上げ」を支持=ハマス指導者****
パレスチナのイスラム原理主義組織ハマスの最高指導者メシャル氏は26日、アッバス自治政府議長に電話し、議長が目指す国連での「オブザーバー国家」への地位格上げに賛成すると表明した。ハマスが声明で明らかにした。

声明によると、メシャル氏は議長に対し、イスラエル軍によるガザ大規模攻撃で停戦が実現したことを踏まえ、「ガザの勝利を生かすための最優先課題は(パレスチナ内の)和解達成だ」と強調した。【11月26日 時事】 
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そのハマスとイスラエルの停戦協議は、エジプトを仲介に始まっています。
****ガザ地区:ハマスとイスラエル、停戦協議を開始*****
レスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム原理主義組織ハマスとイスラエルは26日、カイロで、エジプトを仲介者として本格的な停戦協議を開始した。AP通信が報じた。イスラエルによるガザ封鎖の解除などについて協議する。

激しい戦闘を展開した両者は21日夜、停戦合意し、具体的な条件を詰める協議は停戦入り24時間後に始めるとしていた。イスラエルはハマスをテロ組織に指定し、直接対話する関係にないため、双方が個別にエジプトと協議して要求を交換する。ハマス側はガザ封鎖の完全な解除を、イスラエル側はガザへの武器密輸停止を要求する見通しだが、隔たりは大きく、歩み寄りは難しそうだ。協議に期限は設けていない。【11月27日 毎日】
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互いの主張に隔たりがあるという根本的問題はもちろんありますが、仲介にあたるエジプトではモルシ大統領の憲法宣言に対する世俗派からの抵抗運動が激しくなっており、腰を据えて仲介にあたるような状況にはないのではないでしょうか。
停戦協議が進まなければ、ガザ封鎖解除も進みません。

【「アラファト前議長・ポロニウム毒殺疑惑」】
パレスチナに関しては、例の「アラファト前議長・ポロニウム毒殺疑惑」に関する調査も始まっています。
遺体を掘り起こしての調査ですが、結果には時間がかかるようです。

****アラファト氏遺体掘り起こし=ポロニウム毒殺説で調査―パレスチナ****
故アラファト前パレスチナ自治政府議長の死因をめぐり浮上した放射性物質ポロニウム210による毒殺説の解明に向け、パレスチナの死因究明委員会は27日、ヨルダン川西岸のパレスチナ自治区ラマラにあるアラファト氏の墓で遺体の掘り起こしを行った。パレスチナのメディアが伝えた。

遺体から採取した検体をフランス、スイス、ロシアの専門家が調査する。結果判明には1カ月半から3カ月程度かかるとみられるが、2004年の死去から8年が経過しており、ポロニウムの検出は難しいとの見方もある。今回の調査で毒殺説の真相が明らかになるかは不透明だ。【11月27日 時事】 
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