孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

パレスチナ  住民を「人間の盾」として使うハマス、その「人間の盾」に構わず攻撃を続けるイスラエル

2014-07-30 23:09:08 | パレスチナ

(イスラエルの攻撃が始まった頃、飲み物などを持ってイスラエル軍によるガザ地区空爆の様子を丘の上から見物するイスラエル市民 すでにこの頃、“自衛”のための空爆によりガザでは100人以上が死亡しています。【7月12日 AFP】http://www.afpbb.com/articles/-/3020370?pid=

今月8日以降の犠牲者数は約1260人近く
パレスチナ・ガザ地区の惨状については、連日報道されているところです。

****ガザ地区北部の国連学校に砲撃、16人以上死亡*****
パレスチナ自治区ガザ地区北部のジャバリア難民キャンプで30日早朝、国連の運営する学校がイスラエル軍に砲撃され、少なくとも16人が死亡した。パレスチナ側の医療関係者が明らかにした。

今月8日に始まったイスラエル軍と、ガザ地区を実効支配するイスラム原理主義組織ハマスとの衝突は、30日で23日目となった。

国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)が運営する女子校への砲撃が始まったのは午前5時30分(日本時間同日午前11時30分)ごろ。国連の職員はAFPに対し、学校には自宅を追われた多数の住民が避難していたと語った。

■ガザ地区各地に砲撃、「数十人」死亡
イスラエルは同日、ガザ地区の各地を砲撃した。救急医療サービスの広報担当者は当初、攻撃による死者数を20人程度としていたが、その後「数十人」に引き上げている。

ガザ地区北部では、体の不自由な11歳の少女が死亡。
また、中部の16歳の少女が犠牲になったほか、南部ハンユニスでは同じ家族の10人が亡くなった。
さらに、南部ラファでは中年の男性1人の死亡が確認されている。

30日に死亡したのは少なくとも29人で、今月8日以降の犠牲者数は約1260人近くに上っている。

死者の3割近くが「子ども」
こうした状況を受け、犠牲になる子どもの多さに複数の人権団体が懸念を表明している。

国連児童基金(ユニセフ、UNICEF)の声明によると、これまでに死亡したパレスチナ市民のうち240人以上が子どもで、犠牲者の少なくとも29%を子どもが占めている。

一方、攻撃開始以降のイスラエル側の死者は、兵士53人、民間人3人。このほか、ガザから撃ち込まれるロケット弾で子ども6人が負傷している。【7月30日 AFP】
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30日の国連の運営する女子校への砲撃について、イスラエル側は、現在、状況について調査中で、イスラエル軍の攻撃によるものかどうか確認していると説明しています。

ガザでは24日にも、北部ベイトハヌーンにあるUNRWAの学校が砲撃を受け、避難民ら15人が死亡しています。イスラエル側は校庭に着弾したのはイスラエル軍の迫撃砲弾だったと認めてはいますが、イスラエル軍の攻撃は学校を標的にしたものではなく、着弾時に校庭は無人だったことから、「死者が出たとは考えにくい」とも主張しています。【7月29日 産経より】
28日夕方には、子どもたちが遊んでいた公園に攻撃が行われ、パレスチナのメディアによると8人の子どもを含む10人が死亡し、40人がけがをしたということです。

これについても、ハマス側はイスラエル軍によるものだとしているのに対し、イスラエル軍はこれを否定し、「ガザ地区から発射されたロケット弾が失敗して着弾したものだ」と主張しています。【7月29日 NHKより】

27日夜には、ガザ地区に電力を供給している唯一の発電施設が砲撃によって操業が出来なくなっており、ガザ地区のほぼ全域で停電しています。

パレスチナ当局者らはイスラエルによる空爆との見方を示していますが、イスラエルは「発電所は狙っていない」と主張しています。

個々の件についてどちら側の砲撃によるものだったはともかく、ガザ地区では29日だけで100人以上が死亡するなど、犠牲者は1200人を超えています。

攻撃から逃れて避難生活を余儀なくされる人も20万人を超えていますが、国連管理の学校が砲撃されるように、地区内ではどこに逃げたらいいかわからない状態です。

住民の命を無視した駆け引き
停戦が成立しないまま、攻撃と非難の応酬が続き、犠牲者だけが膨らんでいます。

****イスラエルとハマスが非難の応酬 停戦の見通し立たず****
・・・・パレスチナ解放通信(WAFA)は、パレスチナ自治政府が24時間から最長72時間の休戦を提案し、ハマスがこれに同意したと伝えた。しかし、ガザのハマス報道官はこの報道を否定した。

ハマス側は、イスラエルがガザ封鎖を解除しない限り交渉には応じないとの立場を示す。

ハマス軍事部門トップのデイフ氏はハマス系テレビ局を通し、「こちらの住民の安全が確保されない限り、イスラエルも安全を手に入れることはできない」と述べた。(中略)

一方、イスラエルのネタニヤフ首相は停戦の前提条件として、ガザからの地下トンネルを破壊する必要があると主張する。ハマスはこのトンネルを使ってイスラエル領内への攻撃を繰り返している。

イスラエル政府のレゲフ報道官はCNNとのインタビューで、「ハマス側の死者もイスラエル側の死者もすべてハマスの責任だ。ハマスが停戦を拒否するから戦闘が続き、人々が死んでいくのだ」と非難した。(後略)【7月30日 CNN】
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国連の潘基文(バン・キムン)事務総長は28日、「人道的見地から、暴力は止めなければならない」と訴えてはいます。

しかし、“(イスラエルのネタニヤフ首相は)自国への攻撃に使用されているパレスチナ自治区との境界にあるトンネルを破壊するまで攻撃を続行すると宣言。「長期的な作戦になる」と警告しており、停戦に向けた国際社会の訴えは、無視された格好だ。”【7月30日 AFP】

停戦に関しては、ハマス側はガザ地区の経済封鎖解除を求め、イスラエル側はハマスの武装解除を求めています。

****ガザ、抗戦崩さぬハマス 経済封鎖の解除を狙う****
・・・・軍事力で圧倒的に優位のイスラエル軍に対し、ハマスは徹底抗戦の構えをみせる。生き残りをかけた駆け引きの間、市民の犠牲がさらに増えるとみられる。(中略)

停戦条件をめぐり、イスラエルとハマスには深い溝がある。イスラエルがハマスの武装解除を求めるのに対し、ハマスはガザの経済封鎖の解除を掲げる。

イスラエルは境界を通じたガザへの燃料や建設資材の搬入を厳しく制限。南西側の境界を接するエジプトには昨年のクーデターでハマスを敵視する政権ができ、人の往来を救急搬送などに限って封鎖を強化し、ガザの生活を支える密輸ルートも絶たれた。

ハマス政治部門トップのメシャール氏は25日放送の英BBCのインタビューで「ガザの人々は世界最大の監獄の中で、死を伴う罰を受け続けている」と訴えた。

抑圧を受けるパレスチナ人の代弁者として存在を示す狙いとみられるが、譲歩を引き出せないまま停戦に応じれば、ガザでの支持を一気に失う恐れがある。

一方、イスラエルも後にはひけない状況だ。3週間の作戦で兵士43人が死亡。イスラエルを国家として認めないハマスを弱体化させることは、現政権の公約になっている。

ネタニヤフ氏は28日、国連の潘基文(パンギムン)事務総長に対し、ガザ情勢について「重大な懸念」を示した同日の安全保障理事会の声明について、「テロリスト側に共感し、イスラエルの安全保障に向き合っていない内容だ」と電話会談で批判。ガザへの攻撃を続ける意思を強調した。【7月29日 朝日】
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【「人間の盾」】
イスラエルにとってガザを占領しても重荷になるだけでメリットはあまりありません。それより“弱体化した”ハマスに“管理”させる方が現実的です。

右派の保守強硬派とされるネタニヤフ首相ですが、地上戦などのガザ地区への深入りには消極的だったとも言われ、地上戦についても「トンネル破壊をほぼ終える週内の作戦完了」を主張していますが、閣内には地上戦の拡大・継続を求める強硬右派のリーベルマン外相らも存在します。

イスラエル国内の世論調査では、戦闘継続を求めた人は87%で、停戦を求めた人(7%)を大きく上回るという状況で、“国際社会の圧力と国内世論のはざまで、ネタニヤフ首相は難しい判断を迫られている。”【7月28日 毎日】とも。

ハマスについては、ガザ住民を「人間の盾」とすることで、犠牲者を増加させているとの批判があります。

犠牲者が増えれば、住民のイスラエル憎悪からハマスの求心力が強まり、国際的にもイスラエル批判が強まることで交渉に有利に働く・・・との思惑があるとも言われています。

****人間の盾」で被害拡大  病院・学校にハマス軍事拠点****
パレスチナ自治区ガザ地区の戦闘は死者が1000人を超え、イスラエルの大規模作戦で1400人超が死亡した2008~09年の軍事衝突の際に迫る被害規模となっている。

ガザ地区で民間人の犠牲が増大しているのは、イスラム原理主義組織ハマスが軍事拠点を住宅密集地に置くなど、一種の「人間の盾」戦術を駆使していることも要因となっている。

「われわれは民間人に退避を促しているのに、ハマスが(攻撃対象地域に)とどまらせている」。
イスラエルのネタニヤフ首相は27日、米テレビ局のインタビューでこう述べハマスはガザ住民の犠牲をあえて増やし国際的な宣伝戦に利用していると非難した。

ハマスが、病院や学校などの民生施設を隠れみのに利用していることを示す情報もある。
国連の潘基文(パンギムン)事務総長は23日、ガザ住民の避難先となっている国連管理下の学校の一つで大量の武器類が見つかりその後所在が分からなくなっていると指摘した。ハマスなどの武装勢力が武器隠匿に関与している可能性は高い。

ハマス軍事部門は、司令部をハマス系の病院の地下やその付近に設置しているなどとも指摘される。

軍事力で圧倒的に劣勢なハマスは従来、拠点を分散させて攻撃を受けにくくする戦術をとっており、軍事目標と民間施設との区別を難しくしている。

また、イスラエルから退避警告があったとしても狭いガザ地区で逃げ場が少ないのも事実だ。

国際社会による停戦調停が難航する中、ハマスには停戦の前提条件としているガザ封鎖解除の保証を得るためガザの惨状をアピールする思惑もありそうだ。

■「ガザ再占領」政権に強硬論も
一方、イスラエルとしては、どの時点で停戦に踏み出すかが大きな問題だ。
イスラエル軍は、地上作戦の目的はガザからの秘密トンネル網破壊と、ハマスのロケット弾攻撃を阻止することにあるとしている。

しかし、ネタニヤフ政権内では、極右「わが家イスラエル」を率いるリーベルマン外相らがガザ再占領とハマスの完全武装解除を主張。

シャロン政権期の05年に一方的に撤退したガザやヨルダン川西岸を含めた領域が本来のイスラエルの版図だと唱える「大イスラエル主義」勢力なども「再占領」を支持している。

再占領には軍事的・経済的に多大なコストがかかると予想され現実味は薄いとの指摘もあるものの、一連の強硬意見が軍事作戦拡大につながる可能性もなお排除できない。【7月29日 産経】
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住民を「人間の盾」として使うハマス、その「人間の盾」に構わず攻撃を続けるイスラエル。
互いの念頭にあるのは、いかに交渉を有利にするかということであり、双方とも住民の生命を無視している点では同罪です。

国際社会も無力です。かつてのエジプトのような仲介国もありません。

いくらロケット弾を撃ち込んだところでイスラエルがなくならないことぐらいハマスも承知です。
いくらハマスを叩いてもイスラエルを敵視する勢力がなくならないこともイスラエルは承知です。犠牲者に倍する復讐者を生むだけです。おそらく現在のハマスよりもっと過激で凶暴な。

それでも勇ましい主戦論だけが叫ばれ、戦いが止みません。
あとどれだけの血が流されれば事態が収まるのか・・・救いのない話です。

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