孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ツバルなど島しょ国家  海面上昇による水没・洪水被害で国家の存続をかけた取り組み

2019-10-16 23:02:11 | 環境

(高潮で冠水したマーシャル諸島マジュロ環礁のエジット島(2014年3月3日撮影)【2月23日 AFP】)

 

【水没以前に洪水で居住不可能に】

台風19号の被害にあわれた方々には、謹んでお見舞い申し上げます。

 

いまだ洪水の水が引かない地域も多々あるようですが、そうした洪水による水没同様に、気候変動による海面上昇で国全体が水没してしまうという危機感を持つ南太平洋の国々があることは周知のところで、そうした国々からは先進国の温暖化対策の遅れ、消極姿勢に対し強い不満が噴出しています。

 

問題は、平均的な海水面の上昇だけでなく、海水面が高くなっているくると異常時の高潮などの被害が大きくなり、水没以前の段階で居住ができなくなるという点もあるようです。

 

****洪水で水源消滅、多くの島が数十年で居住不能に?*****

太平洋に浮かぶ1100以上の島々からなるマーシャル諸島共和国にとって、気候変動は遠い未来の危機ではない。島々の多くを占める海抜の低い環礁は、すでに大きな被害を受けている。

 

(2018年)4月25日付けの学術誌「Science Advances」に発表された研究によって、気候変動が今世紀の半ばごろまでに、この国の水源に致命的な打撃を及ぼすことが明らかになった。

 

島の周囲の海水面が上昇すると、大きい波が打ち寄せたときに、これまでより島の奥深くまで海水が到達するようになる。こうした波が連続して打ち寄せれば、島の淡水源は機能しなくなってしまう。

 

2016年に米国国防総省が想定した海面上昇シナリオでも、海水面が40センチ上昇すると、マーシャル諸島の環礁の1つ(と、おそらくほかの数千の島々)が居住不可能になると予想している。40センチの海面上昇は、今世紀半ばにも現実になる可能性がある。(中略)

 

「この研究から、海岸地域の洪水に対して、波が重要な役割を果たしていることがわかります」。都市で頻発する洪水に及ぼしている気候変動の影響を研究する気象学者のクリスティーナ・ダール氏はそう語る。

 

「海面上昇しか考えないなら、今回調べられた島々は今世紀末まで居住できます。けれども、波の作用も考慮すると、居住可能な期間は大幅に短縮されるのです」

 

晴れの日に洪水が

人類が気候変動を食い止めようと四苦八苦している一方で、海面は上昇を続け、温まった海水がグリーンランドと南極大陸の氷を解かしている。けれども近年、特定の地域が完全に海中に没するよりはるか前に、海からの洪水によって居住不可能になってしまうことがわかってきた。(中略)

 

マーシャル諸島や海抜1、2メートル程度しかないその他の島国にとって、海からの洪水は大問題だ。近年、マーシャル諸島は激しい嵐や高潮に脅かされ、家屋が破壊されたり墓地が海に流されたりする被害が頻発している。そのうえ、最近の干ばつにより水源にも影響が出ている。

 

現時点でも気候変動の影響がこれだけあるのだから、将来はどうなってしまうのだろうか? マーシャル諸島に軍事基地を持つ米国国防総省からの指示を受け、ストーラッツィ氏のチームは、海からの洪水がロイ= ナムル島の環礁に及ぼす影響をモデル化した。

 

ストーラッツィ氏は、2100年までに海水面が50センチ、1メートル、2メートル上昇するという3つのシナリオについて、地球の気候、海からの洪水の振る舞い、海水の浸入に対する地下の帯水層(水が貯まった地層)の反応を調べた。

 

2014年3月、科学者チームに自分たちの研究を確認する機会が与えられた。ロイ=ナムル島の環礁の一部に巨大な波が襲いかかり、内陸の奥深くまで浸入し、海岸の道路を水浸しにしたのだ。

 

「よく晴れた美しい日に洪水が起きたことは衝撃的で、大きな懸念を生じさせました」とストーラッツィ氏は言う。「こうした洪水のほとんどは、何百キロも何千キロも離れた場所の嵐が引き起こした波が原因となって、現地が晴天の日に発生するのです」

 

このときのデータを使ってモデルを調整したところ、海水面が40センチ上昇すると、ロイ=ナムル島は毎年のように海からの洪水に襲われ、淡水が塩水化して飲めなくなってしまうという予想になった。

 

多くの環礁では、地中の帯水層が主要な淡水源になっている。この水が塩水化して飲めなくなってしまったら、島には住み続けられない。

 

「水が飲めなくなる時期が数百年後ではなく数十年後であることはわかりましたが、具体的な時期はわかりません」とストーラッツィ氏は言う。

 

考慮すべきほかの要因も

しかし、この研究が予想する未来は海水面がどの程度上昇するかに依存している。外部の研究者の中には、彼らのシナリオを解釈する際には注意が必要だと指摘するものもいる。

 

「海水面が大幅に上昇すると、しばしば、岩礁からきた土砂が島の表面に堆積します。島の地形が変化しないものとしてしまうと、この点が考慮されません」と言うのは、海面上昇によって海岸線がどのように変化するかを研究しているニュージーランド、オークランド大学の地質学者マレイ・フォード氏だ。「今回の研究は、島の海岸線が自然な振る舞いをしない、最悪の場合のシナリオです」(後略)【2018年4月27日 ナショナル ジオグラフィック日本版

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洪水で水源が失われることは、今回の台風被害でも起きている現象です。

 

最後にあげられているニュージーランド、オークランド大学の研究チームによれば、土砂の堆積で、むしろ島は拡大した・・・とも。

 

****「沈みゆく島国」ツバル、実は国土が拡大していた 研究****

気候変動に伴う海面上昇によって消滅すると考えられてきた太平洋の島しょ国ツバルは、実は国土面積が拡大していたとする研究論文が(2018年2月)9日、英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズに発表された。

 

ニュージーランドのオークランド大学の研究チームは航空写真や衛星写真を使用し、ツバルの9つの環礁と101の岩礁について1971年から2014年までの地形の変化を分析した。

 

その結果、ツバルでは世界平均の2倍のペースで海面上昇が進んでいるにもかかわらず8つの環礁と、約4分の3の岩礁で面積が広くなっており、同国の総面積は2.9%拡大していたことが判明した。

 

論文の共著者の一人ポール・ケンチ氏によると、この研究は低海抜の島しょ国が海面上昇によって水没するという仮説に一石を投じるものだという。

 

波のパターンや嵐で打ち上げられた堆積物などの要因によって、海面上昇による浸食が相殺された可能性があるという。

 

オークランド大学の研究チームは、気候変動が依然として低海抜の島国にとって大きな脅威であることに変わりはないと指摘する一方、こうした問題への対処の仕方については再考すべきだと論じている。

 

同チームは、島しょ国は自国の地形の変化を考慮に入れたクリエーティブな解決策を模索して気候変動に適応していかなければならないと指摘し、海面が上昇しても安定していることが分かっており、これからも面積が増えていくとみられる比較的大きな島や環礁への移住などを提唱している。【2018年2月10日 AFP】AFPBB News

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まだまだ予測が難しい点が多々あるようですが、仮に上記オークランド大学研究チームの指摘するように、島の面積は拡大しても、冒頭記事にあるような海面上昇に伴う高潮・洪水などで居住が困難になるということはありそうです。(面積は拡大しても、平均海抜は低下していき、高潮・洪水の影響を受けやすくなることが考えられます)

 

また、今後グリーンランドや南極の状況如何で、海水面上昇の速度が速まったとき、堆積との兼ね合いがどうなるのか・・・。

 

島の地形にもよるでしょう。

 

そのあたりはよくわかりませんが、現実問題として、次第に居住環境が劣化するという事態が進行しているようにも見えます。

 

【陸地かさ上げや人工島計画】

基本的な対応策の方向は二つ。

ひとつは、安全な地域への集団移住。(場合によっては、“国土”は消滅しますが)

もうひとつは、島の改良。

 

今回の台風被害でも、「地下神殿」や「遊水地」といった対応策で、被害を食い止めた、最小限にとどめた事例もあるようです。

 

海面上昇に対しても、陸地のかさ上げでなんとか・・・というのが後者です。

 

****このままでは国が水没して消滅…陸地かさ上げ計画を検討 マーシャル諸島*****

太平洋の島しょ国マーシャル諸島は、海面上昇によって島々が沈没するのを防ぐために陸地をかさ上げする必要があると、同国のヒルダ・ハイネ大統領が22日に警鐘を鳴らした。

 

マーシャル諸島では、29のサンゴ環礁に点在する1156の島々のうち、どの島なら、かさ上げが可能かについての協議が進められている。

 

大半の島々の海抜は2メートル未満で、政府は陸地のかさ上げこそが同国を消滅から守る唯一の方法だとの考えを示している。

 

ハイネ大統領は、22日付の地元紙「マーシャル・アイランド・ジャーナル」のインタビューで、「島をかさ上げするのは非常に難題ではあるが、やらなくてはならない」と主張した。

 

マーシャル諸島の政府機関が作成した「気候変動の危機」に関する政策文書は、5万5000人の人口を擁する同国について暗い見通しを示し、「冠水や深刻な干ばつ、サンゴ礁の白化現象」が頻発するようになり、「現状および今後の展望は悪くなる一方だと信じるに足りる十分な理由がある」と指摘している。

 

政府は詳細については明らかにしていないが、年内には、かさ上げ計画の計画を策定したいとしている。

 

一方で政府が実現性の高い選択肢として注目しているのが、島しょ国モルディブの人工島「シティー・オブ・ホープ」計画だ。

 

2023年に完成した暁には13万人が住めるようになるとされる同島では現在、基礎を築くために周囲の環礁の砂州に土砂を流し込み、海抜3メートルの壁で補強する工事が進められている。

 

完成すれば、モルディブで最も高い海抜にある自然の島を抜く高さになる見込みだ。 【2月23日 AFP】

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上記記事のモルディブと同様の「人工島計画」はツバルでも。

 

****海面上昇に人工島計画、南太平洋 ツバル首相、国土保全で****

南太平洋の島国ツバルのナタノ首相は16日までに共同通信との単独会見に応じ、地球温暖化による海面上昇で国土消失の危機があるとして「人工島」の造成を計画していることを明らかにした。

 

首相は「海抜5〜10メートルまで埋め立て、海面上昇でも、すべてのツバル人が住めるようにしたい」と述べた。

 

ツバルには九つの島があり、人口は約1万人。海抜は平均1〜2メートルで、海面上昇で水没の危機にある。最大の島の環礁地帯を、近くから採取した砂を使って埋め立てる計画で、予定面積は約16平方キロだ。

 

首相は日本など各国の資金援助に期待した。【10月16日 共同】

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国家生き残りを託す壮絶な戦いでもあります。

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