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孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

チベット  ダライ・ラマ14世、後継者選定を中国の介入を排して、輪廻転生という伝統重視で

2025-07-03 23:48:44 | チベット
(チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世(89)は2日、インド北部ダラムサラであったチベット仏教の幹部会合で後継者の選定方法について声明を出し、輪廻(りんね)転生の考えに基づくダライ・ラマ制度を「継続する」と発表した。【7月2日 毎日】) 

【宗教に否定的な中国共産党が「輪廻転生」という伝統の尊重を訴え、チベット側が伝統によらない新しい方法を・・・・という奇妙な逆転現象】
ダライ・ラマ14世・・・単にチベット仏教の宗教的指導者と言うより、チベット社会・政治を牽引するカリスマ的なリーダーですが、1935年7月6日生まれの89歳、今月6日には90歳。

ここ10年ほど(もっと以前からでしょうか)、中国政府の弾圧を批判するチベットの問題をとりあげる者はみな、ダライ・ラマ14世の健康問題、年齢的にみて次の15世選定が必要になりますが、その15世選定がどのように(中国政府が関与するのかを含めて)行われるのかが、今後のチベット問題の行方を決定的に左右するとい認識を共有してきました。

これまでは「とは言うものの、まだお元気そうだし・・・」という感がありましたが、89歳、90歳ともなると、いつ何時何が起きても不思議ではない年齢領域に入ってきます。

それだけに15世選定をどうするのか・・・が、極めて現実性を帯びた議論にもなります。

2019年4月にダライ・ラマ14世が体調を崩して入院した際も、この問題が話題となりました。
中国当局側は「輪廻転生」による後継者選定で主導権を握ろうとしており、これを警戒するダライ・ラマ14世の方は、これまでの輪廻転生によらない選定をも検討しているとも報じられました。

いつも言うように、宗教に否定的な中国共産党が「輪廻転生」という(科学的には論証不可能な)伝統の尊重(もちろん、裏でそこに共産党が介入して、政府の傀儡を後継者にしようとの考えですが)を訴え、チベット側が伝統によらない新しい方法を・・・・という奇妙な逆転現象が生じました。

****ダライ・ラマの「輪廻転生」、中国の法律順守を 中国外務省****
チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマの後継者を選ぶ「輪廻(りんね)転生」について、中国政府がこのほど「中国の法律に従う必要がある」との認識を示した。

中国外務省の報道官は10日、肺の感染症のため入院したダライ・ラマ14世(83)について質問され、容体については認識していないとした上で、輪廻転生には「明白なルール」があると強調した。

報道官は、「ダライ・ラマを含めて生けるブッダの輪廻転生は、中国の法規制に準拠し、宗教儀式と歴史的慣例に従わなければならない」と述べ、中国政府は国民全ての宗教の自由を尊重すると言い添えた。

ダライ・ラマは9日から入院しているが、側近は11日、ダライ・ラマが間もなく退院できる見通しだと語り、「医師に言われた通り胸の感染症があったが、抗生剤を投与され、かなり回復した」と説明した。

それでも今回の入院で、ダライ・ラマの死後、チベット仏教がどうなるのかという疑問が改めて浮上している。

ダライ・ラマ本人が自身の死後の輪廻転生を認める意向なのかどうかもはっきりせず、ここ数年は、自身が最後のダライ・ラマになる可能性をうかがわせる発言をしていた。【4月12日 CNN】
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輪廻転生という極めて宗教的なものも、「中国の法律に従う必要がある」との共産党政府の認識は滑稽でもありますが、実際、今から25年前、チベット仏教で最高指導者に次いで2番目に高い地位にあるパンチェン・ラマの生まれ輪廻転生に中国政府が介入して独自の宗教指導者を擁立し、チベット側が選定した生まれ変わりは行方不明となるという、極めて非宗教的というか、政治的と言うべき事件が起きています。

その後、行方不明となっていたチベット側が選んだパンチェン・ラマの生存が確認されたとのことですが・・・・

****25年前に失踪したパンチェン・ラマ、「大学卒業して就職」と中国外務省****
今から25年前、チベット仏教で最高指導者に次いで2番目に高い地位にあるパンチェン・ラマの生まれ変わりと認定された6歳の少年が、突如として姿を消した。
この少年、ゲンドゥン・チューキ・ニマさんの消息は、その後伝えられていなかった。

しかし中国外務省報道官は19日の定例記者会見で、今は31歳になったニマさんが、大学を卒業して就職していると語り、本人も家族も「現在の普通の生活」がかき乱されることは望んでいないと強調した。

ニマさんは1995年、チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマから、パンチェン・ラマ11世に認定された。パンチェン・ラマ10世はこの6年前に死去していた。

これに対して中国政府はニマさんのパンチェン・ラマ認定を認めず、中国政府が指名したギェンツェン・ノルブさんこそが、「真の」パンチェン・ラマだと主張していた。

成長したギェンツェン・ノルブさんは、中国の政治団体に加わって、北京で重要行事に出席するようになった。

ニマさんが、自分がパンチェン・ラマに選ばれたことを知っているのかどうかは不明。チベット亡命政府はニマさんの失踪から25年に当たって声明を発表し、「中国がパンチェン・ラマを拉致し、その宗教的アイデンティティーと、僧院で修行する権利を強制的に否定していることは、信教の自由の侵害であるだけでなく、重大な人権侵害に当たる」と非難した。

米国務省のポンペオ長官も、中国がニマさんを迫害しているとして非難、中国政府に対して「パンチェン・ラマの居所を公表し、チベット人の宗教の自由を尊重する」ことを要求した。【2020年5月21日 CNN】
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宗教に否定的な中国共産党が「輪廻転生」という伝統の尊重を訴え、チベット側が伝統によらない新しい方法を・・・・という奇妙な逆転現象も、こうした中国政府の宗教指導者選定への介入、それを拒否したいチベット側の思惑から生じたものです。

そして、チベットの今後を決定づけるダライ・ラマの「輪廻転生」で、パンチェン・ラマの転生と同じようなことが起きるであろうことをチベット側が警戒してのことです。

しかし、チベット側にとっても、宗教的に「核心」にあたる指導者の輪廻転生を放棄することは、その宗教的権威を著しく損ねるだけにとどまらず、チベット世界の文化・社会・民族的アイデンティティをも損ねるリスクがあり、チベット側でも反対の声がありました。

ダライ・ラマ14世「輪廻(りんね)転生」制度を継続すると表明
そうした賛否双方が存在するなか、ダライ・ラマ14世は、従来どおり「輪廻転生」で後継者を選ぶことを表明。

****ダライ・ラマ、「輪廻転生」制度の継続表明****
インド亡命中のチベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世は2日、自身の死去後に生まれ変わりを探す600年の伝統を持つ「輪廻(りんね)転生」制度を継続すると表明した。

これはチベット人だけでなく、ダライ・ラマを非暴力、慈悲、そして中国統治下のチベットにおける文化的アイデンティティーのための永続的な闘争の象徴とみなす世界中の支持者にとっても画期的な決定だ。

チベット人によると、ダライ・ラマ14世はダライ・ラマの14代目の転生者。声明は6日の90歳の誕生日に合わせて発表された。

ダライ・ラマは、数十年にわたり居住しているインドのヒマラヤ山脈の町で行われた宗教指導者による会議の冒頭で流されたビデオメッセージで、過去14年間にわたり、亡命中のチベット人、ヒマラヤ地域、モンゴル、ロシアと中国の一部の仏教徒から、「輪廻転生制度の存続を切実に求める」訴えを何度も受けてきたと述べた。

「特に、チベット本土のチベット人からさまざまなチャンネルを通じて、同様の訴えを受け取っている」と続けた。
公式翻訳によると、ダライ・ラマは「こうした要請すべてに従い、輪廻転生制度を継続することを表明する」と付け加えた。

中国人民解放軍は1950年、チベットに進駐。1959年、これに反発するチベット人らが首都ラサで蜂起したが、中国軍に鎮圧された。以来、ダライ・ラマら数千人のチベット人がインドで亡命生活を送っている。

ダライ・ラマの高齢も、チベット指導部の将来と、ダライ・ラマの後継者というデリケートな問題への懸念を引き起こしている。(中略)

亡命チベット人の多くは、中国がチベットの支配を強化するため、独自に15世を擁立するのではないかと懸念している。

しかしダライ・ラマは2日、15世の認定に関する責任は、インドに拠点を置くダライ・ラマの事務所「ガンデン・ポタン財団にのみ」あると明言。

「私はここに改めて表明する。ガンデン・ポタン財団は、将来の転生者を認定する唯一の権限を有しており、他の誰にもこの件に干渉する権限はない」と付け加えた。 【7月2日 AFP】
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これまでためらっていた「輪廻転生」を敢えて受け入れる方針を明確化した背景は・・・

*****中国政府の介入を警戒して、自らも伝統的な輪廻転生によらない後継者選定にも言及してきたダライ・ラマが、ここにきて伝統重視に舵を切った背景は?****、

ダライ・ラマ14世が2025年7月2日、輪廻転生制度の継続を明言した背景には、いくつかの政治的・宗教的な意図があると考えられます。とくに注目されるのは、中国政府による後継者選定への対抗戦略として、あえて「伝統の枠組み」に立ち戻ったという点です。

✅ これまでの立場:輪廻転生を否定する可能性も示唆
ダライ・ラマ14世はこれまで、輪廻転生制度そのものの廃止、生前指名(非転生による後継)なども含めて柔軟な選定方式を示唆していました。

背景には、中国がダライ・ラマの後継を政治的にコントロールしようとしている懸念(パンチェン・ラマの前例)
宗教的伝統よりもチベット民族の未来を優先する姿勢がありました。

✅ 今回なぜ「輪廻転生の継続」を明言したのか?
1. 中国政府の「後継者介入」に対する対抗
中国は「ダライ・ラマの転生には政府の許可が必要」とする異例の法令(2007年・通称「第5号令」)を定め、実質的に後継をコントロールしようとしています。

これに対抗するために、ダライ・ラマ自身が「輪廻は続く」「私が正統を指名する」と先手を打ったとみられます。
→ 転生制度そのものを残すことで、「正統性争い」の舞台を宗教の中に引き戻す狙い。

2. チベット仏教界内部からの要請
一部の高僧や信者からは「伝統を守るべき」との声が根強く、転生制度の否定は宗教的アイデンティティの動揺を招きかねません。

今回の発言には、信者・僧侶の不安を和らげ、宗教的権威の一貫性を保つという目的も含まれているとみられます。

3. 後継問題を「自らの生前に整理する」方針
近年の発言では「私は90歳になる前にどうするか決める」と明言しており、89歳の今年、後継問題の決着をつけにかかっている可能性があります。
転生を継続すると明言したことで、今後の正式な「転生の方針」「探す地域」などの具体化が進むと考えられます。

✅ まとめ
ダライ・ラマ14世が輪廻転生制度の継続を表明した背景には、
中国政府による介入に対する防衛策としての「伝統への回帰」という戦略的判断があると考えられます。

それは単なる宗教的な発言ではなく、チベットの未来と正統性を賭けた政治的布石でもあるのです。【ChatGPT:】
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宗教的に極めてコアな部分になる輪廻転生を捨てることへの宗教界での抵抗が強いこと、中国政府との「正統性争い」の舞台を宗教の中に引き戻す狙い・・・などがあっての判断だったようです。

ただ、中国側はパンチェン・ラマのときと同様に、独自の後継者を擁立して強引にことを運ぼうとすることが十分に予想されますので、その混乱も大きなものになるかも。パンチェン・ラマのときと同様に「2人の15世」が並立するのかも。
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